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3-11 約束通りの一週間で再登場。

3-11 約束通りの一週間で再登場。



『やあ。また会ったわね』


 おおう、メイヤ様。

 あれから大体一週間、本当にまた来週の登場だった。早速報告だ。


「メイヤ様、あの邪壊思念というやつまた見つけましたよ」

『うーん、寄りにもよっていきなり大物にぶち当たったわね…』

「ひょっとして知ってました?」

『ええ、あそこはね…もうずっと長いこと、あそこにあって、邪壊思念を撒き散らしているのよねえ、量的にはそれほど強いものじゃないんだけど…継続的に休みなくだから結構バカにならないの』


 メイヤ様の話によるとあの不瞑の迷宮というのは大昔、古代魔法王国期の大規模な商業施設を含む積層都市だったらしい。

 ここのように王国が滅んだ時に残った施設というのはいくつかあるらしいのだがそのほとんどが迷宮化しているらしいそうだ。魔力が集まりやすい場所に街をたてているからであるらしい。


『迷宮化自体は古いんだけど、千数百年前にね、『魂食らい《ソウルイーター》』という魔物が発生してね、当時の人たちがこの迷宮にソウルイーターを誘導して、魔法王国の残した秘宝で封印したの。四階層にね』


 そのソウルイーター自体は四階層の中から動けないのだそうだ。

 だがその力は迷宮全体に及んで、四階層の両隣、三階層と五階層はそこにいるだけでソウルイーターに生命力を食われて死に至る階層になってしまったらしい。


 ものすごくイヤーンな感じだ。


 ソウルイーターのその力はさらに他の階層にも伸びて二階層、一階層でもその力にとらわれたものは命を失い、魂を食われ、アンデット化する。

 それがこの迷宮のアンデット化の仕組みだ。

 うーむ…


「ねえ、メイヤ様、そもそもアンデットってなんですか? 獄卒も同じ様な姿をしていますけど、アンデットとは違うですよね」

『おっ、よくわかったね、獄卒というのは生前、あまりにも深く闘いにのめり込み過ぎた魂だね』

 

 え? マジ? 家の連中もやばい?


『そんなに簡単な物じゃないよ、戦いへの思いが魂に刻みこまれて、まともな転生できなくなってしまったほどの…者たちだね。そのまま生まれ変わっても不幸なことにしかならないからある程度『業』をすすいでから生まれ変わるの、その浄罪のための奉仕というわけね』


 ふむ、よかったうちの連中はそこまでひどくはない。


『一応私の眷属で、あの水晶骸骨の身体を作っているのは冥精の正しい力だから、あいつらの属性は『神聖冥属性』ということになるねえ、骸骨タイプだけじゃなくて幽霊タイプも あるのよ冥の聖獣ということになるわね』


 やっぱお化けではある。


『あははっ、見た目はね』


 メイヤ様は楽しそうに笑った。


『でね、冥精のお仕事というのは死者の魂をあの世界に導いて癒したり、調整したりして正しくととのえてまた送り出すこと、これが一つ、もう一つはこの世界の朽ちていく法則そのものも冥精の力ね。

 死体に限らす、いろいろなものが朽ちて自然に帰っていく。そう言う自然現象を統べるのも冥精のお仕事なの』


 魂が肉体を離れるという意味での『死』そしてすべてのものが朽ちていくという意味での物理的な『滅』それが冥精の仕事ということだ。


『アンデットというのは魂が離れた後の肉体に邪気が憑りついて動き出した世界に対する悪意そのものや、生前強い恨みや未練を残して冥府に旅立てずに邪気を集めて変質してしまった魂のことを言うのよ。その究極のひとつがソウルイーターね、生きている魂を吸い取ってすり潰してしまう…地獄に似ているけど全く違うわよ、こちらは罪のあるなしに関係なく際限なくすり潰して消してしまう。完全に法則から外れた悪意なの』


 それは死を司る精霊的には非常にまずい存在だろうな。


「で、私の仕事はそのソウルイーターを倒すこと?」


『そのとーり…と言いたいけどまだ無理で危ないと思うの、だからそれは後回しでいいわ、今回のお願いは別のこと、四階層にこのソウルイーターを封印している『宝具』という魔道具があるの。これは土と水の精霊の力でソウルイーターを四階層に閉じ込めているんだけど…逆にこの宝具のおかげで冥精はここに干渉できなくなってしまっているのよ、これを取っ払っちゃってくれない?』


 一瞬そんなことして大丈夫なんだろうかという考えが頭をよぎった。

 こんな魔物が出てきたらまずいんじゃないかな…


『その心配はないわ。ここは迷宮自体がソウルイーターを核にして取り込んじゃったからソウルイーターはこの迷宮からは出られなくなってしまっているの、だから封印を解くこと自体は問題ないわ、封印がなくなれば冥精が迷宮にはいれるようになるから、少しずつソウルイーターの力をそいでいける。

 あと肝心なのがこれね』


 そう言うとメイヤ様は一つの小さな玉をくれた。ビー玉ぐらいの蒼い中に金色の光が揺れる玉だ。


『これは冥力石とでもいうのかしらね、冥精の力を固めた玉よ、これを封印の代わりに四階層においてきてくれればソウルイーターの力はゲシゲシ削れるから、後は龍ちゃんが大人になったら弱ったソウルイーターをビシっと倒してくれればオッケー。

 実を言うと悪巧みしている人がいるんだけど、それも問題にならなくなるから。お願いね』


「え? 悪巧みって?」


 聞き返したがその時にはメイヤ様の姿は次第に薄れ始めていた。


『時間切れ…人間を、三階層に…噂…』


 そんなとぎれとぎれの声が聞こえてきた。

 どうも本当に時間がないらしい。

 あっ、違う、俺が目覚めかけてるんだ…


「うーん、仕方ない…」


 やるべきことが分かっただけましとしよう。

 何でもかんでも神様に聞くというのは間違いだろうしな。


 メイヤ様とこの世界とのかかわりとか、いろいろ聞きたかったんだけど…ここは我慢だな。


「よし起きよう」


 俺はそう言って意識を現実に切り替えた。


 ◆・◆・◆


「あら起きた? ディアちゃん。もうすぐ晩御飯よ」


 はて?

 あっそうか、迷宮から帰ってすぐ寝落ちしちゃったのか…というかひょっとしてメイヤ様に拉致られたのかな? それであそこか? ありそうだ。


「ここ何処?」

「あらあら疲れたのね、ギルドで話をしているうちに寝ちゃったから」


 いくら起こしても起きなかったらしい。


 眠っていても思考できる俺だが、意識は一つということだろうな、向こう側にいる時はこっち側はお留守。しかしこちら側の影響が全くないわけでもない。

 その証拠にルトナが俺のほっぺをピニョーンと引っ張って遊んでいる。

 これのせいで目が覚めたな。


「えへへー、おはよう」

 朝じゃないけどね。


 しかしいいにおいが漂ってくる。

 武闘派のエルメアさんだが実は料理上手だ。


「ここはギルドマスターが用意してくれた貸家よ、しばらくこの町にいることになりそうだから…」


「シャイ…ガ父さんのお仕事は大丈夫なの?」


 あの人はブラジャーを作らないといけないのではなかったかな?


「大丈夫だって、ここでもできる仕事はしていくし、それにあんまり長いこうそくきかんにはならないっていってたよ」


 高速機関…あっ、拘束期間か。

 でも拘束期間って何?


「とりあえず一週間、あの迷宮を封鎖することになったのよ。その間にみんなで準備を整えて、一斉に一階層のアンデットを駆逐する計画が立ち上がったのよ。つまり一回迷宮をリセットするということかな」


 ふむふむ、何となくわかった。

 今はアンデットが多くてほとんど増殖というありさまだが、アンデットというのは素材がないとできないようだ、つまり一度迷宮の魔物を殲滅すると次に迷宮自体で発生する魔物は生きている魔物ということになる。

 まあそこまで行かなくても、大部分のアンデットを倒せれば魔物の状況が落ち着くと考えたのだろう。


 だが本当にそうだろうか?

 メイヤ様の話を聞くとよくないことをやっている人間がいて、そいつのせいでこの状況ということになる。のかな?

 だったら現状でリセットをかけてもうまく行かない可能性があるな。


 つまり反攻作戦までにメイヤ様の依頼である封印解除と冥力玉の設置をしないとまずいということか…


「さっ、ご飯にしましょう」


「よしさっそくごはんにって…ちゃう!」


「なにが?」


「ううん、なんでもない」


 そうそう、とりあえずご飯は食べよう。


「シャイガ父さんは?」


「まだギルドでギルマスとお話ししているわ、あなたたちは気にしないで食べなさい」


 テーブルの上には俺とルトナの分の御飯だけが置かれていた。

 エルメアさんはシャイガさんと一緒に食べるつもりなんだろう。良い夫婦だというかラブラブだな。


 俺はご飯を食べながら考える。

 さてこれからどう動くべきか…


「ディアちゃん、ご飯食べたらお風呂の準備お願いね、おっきい部屋があるの」


 そうそう、まずお風呂の準備をって…ちゃうがな!



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