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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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2-13 決闘!

2-13 決闘!



 その日は風が不自然に泣いていた。自分はそこはかとない不安を覚えたとエルフの人は言う。

 まあ、異変というのは過ぎてみればあれが前兆だったかと思うことはあるもので、しかも後からなら何とでも言えるものだ。


 それは見事な変態じゃなくて編隊だった。


 前後左右に機を配置するダイヤモンド編隊が三つ、前と左右の位置にあり、後ろの四番目の位置に一機大型を配置した大ダイヤモンド編隊が、森の向こうからやってきた。


 その異様にして威容にエルフは空を見上げ、町の木々に止まる小鳥たちは一斉に飛び立って場は騒然とした。

 編隊は一度上を飛び過ぎ、きれいに並んで反転をしてまた町の中に。そして整然と着陸態勢に入る。

 三つのダイヤモンドが高度を下げ、大型の一機がそのまま突出する。

 前に一機、その後ろに三つのダイヤモンドの編隊になってゆっくり効果。整然と着陸した。

 砲弾梟が。


 それはルトナの真ん前だった。


 一度飛び去ったのは彼女の位置を確かめるためだったろう。

 そう、それは前日ルトナに負けたキャノンオウル(超大型)だった。


 彼、もしくは彼女はそのままルトナの前に進み。


『再戦に来たぜ』


 とかっこよく述べた。ちなみに通訳はフフルではなくエルフの若者(みんな見た目若すぎるんだけど)だった。

 どうやら妖精族というのはこういった連中の言っていることが何となくわかるらしい。

 

 その通訳を聞いてルトナは当然のように胸を張り、


「その挑戦受けて立つ!」


 と言って歓喜した。

 エルフの間で語り継がれる伝説の戦いの始まりだった。


 ◆・◆・◆


 エルフの故老(見た目幼女)は語る。

 それは素晴らしい戦いだったと。

 ちなみにこの時俺はこのはるか上空を跳び回っていた。


 キャノンオウルの群れとエルフたち、そしてシャイガさんとエルメアさんとフフルが見守る中戦いは始まった。


 ぴーーーーっ。とか言って(多分)気合を入れ、砲弾梟が駆け出す。なぜ飛ばないのかと思ったがそう言うことは聞いてはいけないのだそうだ。

 その動きに合わせてルトナも駆け出す。


 ルトナは半そでのシャツに短パンを穿いていてかなり動きやすい恰好。

 対する砲弾梟は…まあ鳥だからすっぽんぽんだな。どうでもいいや。


 両者が接近しもう少しでお互いの間合いに入るという所で砲弾梟は地面をけり、空中にジャンプ。翼の風切羽を器用に繰りだし見事な打撃技を繰り出す。対するルトナは腕でこれを迎撃。

 一拍、ビシバシと打ち合ったのちすれ違いざまに砲弾梟が『ずばばばばっ』と足技を繰り出す。

 ルトナはダッキングでそれを躱し、魔力撃を放った…そうだ。


 ほんまかいな? 

 と、思わずにいられない。


 しかして本当にいい勝負だったようである。


 シャイガさんとかが相手だったら『ぷすっ』とか言ってあっさり終わっていただろうが、この両者。たまたま実力が釣り合ってしまっていた。


 もともとは砲弾梟の方が攻撃力があり、防御力も厚い事から圧倒的にルトナが不利なのだが、ルトナは先日の戦いでとうとう魔力撃が使えるようになっている。これは大きなアドバンテージだ。なぜなら相手の防御を無視してダメージを与えられるから。


 もしルトナがこれになれていたならばやはり早晩決着がついたかもしれない。だがまだ慣れないルトナの攻撃成功率は100%とはいかず、威力もそこそこ。

 結果いい勝負になってしまったらしい。


 エルメアさんあたりがルトナの修行にちょうど良いと背中を押した可能性を俺は否定しないけどね。


 結局、長い時間『ずばばっ』とか『ビシバシ』とか言い音をたてながら激しく動き回る大立ち回りが繰り広げられ、観衆は大いに盛り上がった。

 結果は引き分け。


 最後に俺が呼ばれて両者に『イデアルヒール』をかける。そうするとまたエルフの通訳で翌日の再選を約束してお開きになって、砲弾梟の群れは夕日に向かって飛び去っていく。

 なにやってんのキミら?


 この日から数日そんな戦いが毎日繰り広げられた。

 その間俺はエスティアーゼさんの執務室の脇の会議室で重力や空間について講義をしていた。

 そして講義の参加者はわずか二〇名ほど。ほとんどが見物に回ったらしい。


 講義にきていたエルフの中にも泣く泣くあきらめたというやつがいて…ほんとに涙を流したりする。やめて。マジで。


 そして五日目、最終日。

 ついに決着はついた。


 ルトナはこの数日の戦闘で明らかに腕を上げ、しかも魔力撃に習熟したのだ。

 こうなれば砲弾梟に勝ち目はなかった。


『私の負けだ。今度こそ悔いはない、とどめをさすがいい』

「ううん、いい戦いだったよ。また闘いたいな」

『いや、もう良い、私は負けたのだ。納得がいったからこれ以上の戦いは望まない。この命はあなたのものだ。とどめをささないというのであればこれからはあなたの僕として働こう』

「うん、分かったよ。一緒に道を究めよう」


 道を究めてどうすると言いたい。いや、道を究めること自体はいいんだけどね。梟と究める道ってなんだろう。少なくとも武術の道ではない気がする。

 戦闘狂の道とかか?


 とかいうやり取りがあってめでたく砲弾梟はルトナの従魔になった。

 まじかー。

 なんか魔物と戦って相手が納得したりするとこういうことがあるんだと。


 で群れの方はと言うとサブリーダーの三羽ガラスならぬ三羽梟が群れのリーダーに昇格してこれから群れを率いることになる。その三羽梟もここ数日、エルフと並んでポップコーンみたいなお菓子を食べつつ観戦していたためにすっかり仲良くなっていて、以降この町に住み付いてエルフの従魔として共存を目指すことにしたんだと。


 お前ら本当に魔物か?

 それでいいのか?


 冗談のような本当の話、深いな…異世界。


 ちなみにその間俺の方はエスティアーゼさんたちとの魔法の実践練習にかかりきりでその戦いを一度も見ることはできなかった。


 なんか納得いかねえ!!


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