9-43 追撃➂ SF?
9-43 追撃➂ SF?
「なるほど、ドラゴンを倒すと剣が出てくると…」
神話の定番だ。
《剣でありますか?
あれが~で、ありますか?》
「あー、うん、あれも間違いなく剣だよ…」
俺は内心白目をむきながら尻尾を割って出てきたそれを見つめた。
地球で、日本で『剣』などと表現されることもあるそれは、一言で言うと『起動兵器』と呼ばれるもの。
飛行機というよりは宇宙船ぽい形態で、でも顔とかついている。リアルロボットもので、人型でないから主役期ではない感じの、でも強者っぽい役割のやつだと思う。
SF世界で戦う戦士の『剣』であることには相違ない。うん。
「あれ?」
でも少し変なことに気が付いた。
あのアレキサンダーって、艶さんと長いことやり合っているぐらいなんだから結構昔の人だろ?
何で日本の、アニメっぽいメカデザインとか知ってるんだろう?
そんなことを考えながら、起動兵器を睨んでいたのがよかったのだと思う。
それが〝キラン〟と光った瞬間体が動いた。
魔力を斜めに盾に死ながら横っ飛びに動く。
そしてそこを輝く光線が走り抜けた。
まるでアニメのビーム砲のように。
いや、ビームなんだろうな。きっと。
どん!
という音を響かせ、急発進して高く舞い上がる起動兵器。
大きく旋回しながら機首をこちらに向けてビーム砲を撃ってくる。
ドツーン。
ドツーン。
と、ご丁寧にそれっぽい効果音付き。
どこまで行ってもアニメのイメージ通りの攻撃だ。
すごく懐かしい感じ。
こんなアニメに胸を高鳴らせたものだよ。特に前世は体が弱かったからね。かっこよく活躍するヒーローにあこがれたものさ。
かっこいいロボットとか、超越的なヒーローとかね。
変身ヒーローはちょっと違う感じがするけど。
「まあ、それはともかく間違いないね」
《そうでありますな》
何がって起動兵器=アレキサンダーだということだ。
魔力の動きからあれが本体。
たぶんだけど、そこに起動兵器が存在すると、存在しうるのだと世界をだましてあれを実在させているんだ。
ただどんなアニメでも見たことのないデザインだから、オリジナルなのか。はたまた俺が死んだ後の作品か。
「さて、ではその性能やいかに」
俺は飛行魔法を起動して空に浮かぶ。
地上を走りながら躱すのは大変なんだよね。
浮かび上がったところにまた攻撃が来るからするりと躱す。
ご丁寧に『ドツーン』という発射音と『びいぃぃぃぃぃん』という効果音付きのビームが飛んでくるんだけど、重力制御中の今は簡単に躱せる。
いや、もともと余裕はあったんだけど、加速も減速も一瞬だから今は楽勝だ。
轟と、音を立てて起動兵器が通り過ぎる。結構大きいな。戦闘機の半分ぐらいか?
金属質でピカピカで、結構トゲとか生えてるし、本当にSFアニメに出てくるような機体だな。
こんなのが尻尾の先に…入っているわけないよね、大きさ的に無理だろ。所詮は『嘘』ということだな。
おまけに飛び去るときになんか聞こえるんだよね…
ごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
と通り過ぎるときに。
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ…」
なんか話し声みたい?
耳を澄ます…
『な…で…なん…で…いな…わか……ゆ……にく……」
《肉でありますか?》
いや、それはたぶん関係ない…
関係ないが、意味もなくしゃべり続けるというのはちょっと怖い感じ?
耳を澄ましてみると同じ言葉を繰り返すのがよく耳にとどく。
一体何なのか?
その間も起動兵器はごうごうと飛び回り、ビームやミサイルを撃ってくる。
「主武装はビームだね。ビーム砲とビーム剣。あと補助武装としてミサイルか…」
機動性がいい機体だと思う。
本当にアニメの戦闘シーンのように、エースパイロットのようにアクロバティックな動きで俺のバルカン砲を躱していく。
ありえない機動だ。普通なら。
俺?
俺は同じようなことできるよ。
重力とか質量とかコントロールして飛んでいるんだ。どんな機動だってお手の物。
だけどあいつは違うみたい。
重力に引きずられるように滑ってみたり、そのくせ物理法則を無視して動いてみたり。
それにも違和感があるんだよね。
でもそれだけじゃなくて…
俺は突っ込んでくる起動兵器を躱し、それに後ろから砲撃を加える。
それを相手は横に滑って躱し、旋回してまたビーム攻撃。
砲撃を続けていたから正面から打ち合うような形になって…それで違和感の正体が分かった。
「なるほど、アニメだアニメ」
《は?》
「俺もよくアニメは見てたから引きずられてた。
でも気が付けば致命的な欠点だな」
突っ込んでくる起動兵器をぎりぎりで躱し、躱しながら至近距離からバルカン砲を撃ち込む。
「びぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
おっ、中の人に当たったかな?
『@』@aprgj[.h;@e[ty;jey.@lvspx.s』
あっ、なんかわけのわからないことをわめいてる。外れたな。
ならもう一度と今度は正面からバルカン砲を撃ち込んでやる。
相手もビームを撃ってくるけど…
《むむっ、であります。ビームよりも砲弾の方が速いであります?》
相手の撃ったビームが尾を引いて、効果音を響かせて飛んでくるわけなんだが、それなりに速いんだが、俺の撃ったバルカン砲の弾の方が飛翔速度が速い。
ビームが近づくころにはバルカン砲弾が次々に起動兵器に着弾し、機体に穴を穿っている。
《どういうことであります?》
「あいつの知識はアニメなんだよね。
アニメのイメージで嘘を組み立てるから…」
いやね、本当のビームが目で終えるはずなんてないんだよ。レーザーほどではないにせよ、かなり早いはずなんだから、亜光速程度には。
だから化学考証的には撃った次の瞬間に当たってないといけない。
だけどあいつのビームは輝きながら尾を引いて伸びてきて、しかも本物のバルカン砲よりも弾速が遅い。効果音までついていて本当にアニメ映像のようだ。
いや、元ネタがアニメ映像なんだよ。間違いなく。
そういうものだと思っている。
アレキサンダー自身はたぶん昔の人のはずだ。かなり昔からいるというし。
だからああいった起動兵器。、ロボット兵器のイメージを持っているわけがない。
でもわけがないというのであれば、先日の怪獣だっておかしいことになる。怪獣映画だって昔はなかった。まあ、ビーム兵器よりは古いだろうけど。
だからああいったイメージは、たぶん他の勇者から取り込んだものだ。
おそらく間違いなく。
だからせっかくの超兵器がどこまで行ってもアニメのイメージから自由になれない。
視聴者が視て理解ように見せているわけだから、現実と違うのは当然。
それが分かれば避けるのは簡単だし、切り払うのだってできる。
そして撃墜だって…
俺はバルカン砲の砲弾を作り置きの実体弾から魔力の塊に切り替える。
「まあ、エレメンタルショットの変形だけどね」
俺の魔力弾はどうしても冥属性になる。
純粋な冥属性の魔力の塊。
それが砲身を通って高速で打ち出されていく。
「ほとんど黒いビーム砲だな」
黒いビームというイメージが、嘘を構成するイメージの何かに触れたのかもしれない。
そして亜光速のビームを躱せるだけのスペックはアレキサンダー自身にはなかった。
ビームに撃ち抜かれた起動兵器は〝ゴバッ〟と炎を拭き上げてコントロールを失い墜落していく。
《今度は決まったでありますか?》
ありゃ、フラグとか信じないけど、なんか続きがあるような気がするぞ。




