8-11 実家に帰れば…
8-11 実家に帰れば…
「あははっ、そうなのよー、そういうわけ。じゃあまたねー」
クラリス様はそういうと携帯のスイッチを切った。
すでに使いこなしている。
今の話し相手はマチルダさんだ。
それ以前にサリアが犠牲になっている。
ついたのが夕方だったのが敗因だな。許せサリア。
携帯であちこち連絡を取れるのはいいことだが、同時に保護者連中から頻繁に連絡が入ってしまうのはデメリットだ。
きっと恨まれているだろう。
だがこれは仕方がないこととしてあきらめてもらおう。
「えっと、じゃあ次は…エルメアにはもう渡したの?」
「いえ、まだです。王城の着陸ポートに直接来ましたから」
これは王城にあった屋上のような場所に着陸用のマーク(ヘリポートみたいなやつ)を描いただけのものだ。
だけど夜光塗料で描かれているので暗くなっても安心して着陸できる。
まあ、使うのは俺とサリアとエルフだけなんだけどね。俺とサリアはめったに使わないんだけどね。つまりエルフが頻繁にここに出入りするようになって新設された設備なのだ。
着陸するとドアがあって、ドアをくぐるとそこに一人役人が詰めていて、すぐに対処をしてくれる。
俺たちはほとんどだけどエルフって結構来ているみたいなんだよね。
そのために人を一人配置しておくぐらいやっちゃうのが王城ということだ。
で即座に携帯をわたして使い方を教えたら次々と連絡をしまくっていると。
「そっかー、じゃああとは…ルトナちゃんにも連絡しようかな~」
苦笑しか出ない。
「まあ、それもいいんですがあと二つ置いていきますから使う人を選んでください、登録しないと使えませんから…」
「うーん、といってもねえ…王城だから持っていると便利な人とかたくさんいてね…誰に渡せばいいのやら…」
「あー、そりゃそうか…」
国の行政機関だものな、あと二つぐらいあっても焼け石に水だ…
「わかりました。いま勇者ちゃんたちが別の機種を解析中なので、そちらを行政用にして、こちらはプライベートにしましょう。
クラリス様と先王様の分だけにします」
「あら、マルディオンは?」
「彼に渡すとサリアに恨まれますから、そちらは行政用で対応してください」
「まあ、仕方ないわね。
これももともとはディアちゃんたちが使うためのもので、おこぼれだものね」
ここら辺のさばさば感がありがたい。
あと欲をかかないところとか。
「あと、これは見つけたのは勇者ちゃんたちなので」
「わかっているわ。その行政用というのは正式に買い取らせてもらうわ。
あと功績も大であると」
そうしてもらえると助かる。
さて、そろそろ退出しようかな。
■ ■ ■
「あら、マルディオン殿下。ごきげんよう」
「何だ来ておったのか」
クラリス様の部屋から玄関に向かう途中でマルディオン王子に出くわした。
なんかうるさいんだよね…この人。
いや、これはいいタイミングか?
俺はポケットのに入れておいた携帯を使ってクラリス様と先王様に連絡を入れる。
自分でやらなくてもモース君がやってくれるのだ。
そのうえでマルディオン王子の声が拾えたら二人とも携帯を隠してくれるだろう。
「今日は何ようだ?」
「先日の豊穣の砂の一件で」
「あれは片付いたと思ったが…何かあったのか?」
「いえ、精霊の協力が得られたので『キルトム男爵領』の土地の再生が始まった旨を報告に」
「修復されたのか?」
「いえ、そこまではまだ。ただ後数年でとりあえず畑は復活するのでは? という感じですか?」
「それは重畳だな。それでサリアもまだ参加しているのか?」
「いえ、サリアは現在学校に行ってますよ。今回は公務にはならなかったので」
そうか、と、王子は胸をなでおろした。
だめだなー、そんな露骨にやっちゃー。
というのもクラリス様から聞いた話なんだけど、サリアの方が王位を継ぐべきではないのか?
みたいな話が出てきているらしいんだよね。
とにかくサリアは目立つから。
そこにいるだけで自然と人目を集める花があるし、それでいて功績がてんこ盛りだ。
勇者事件とかカニ迷宮事件とかいろいろ活躍して、しかもそれが大々的に触れ回られている。
主にクラリス様たちが娘じまんをするためなんだけど、もともとが可愛い王女様。しかも実力があってエルフや獣王とも親密なお付き合いをしている。
これを王国の中枢から外すのはいくら何でももったいないのでは? という流れになっているらしいのだ。
王女であればやはり嫁に行くし、まあ、俺の所に来るのは本決まりなんだけど公表はされていないからな。
もし他国に嫁に行くようなことがあればその損失は計り知れない。という感じだ。
なのでいっそのことサリアを女王に。でマルディオン王子を公爵当りにしてといううわさも聞こえてくるらしい。
問題は王子自身がこれを気にしている所だろう。
あとは当り障りのない話をして普通にわかれる。
やっぱりクラリス様の所に向かったが、まあ、これだけ時間を稼げば問題ないだろう。
■ ■ ■
で次は実家。
携帯を一個ずつ渡したら早速ルトナと話をしていた。
『子供はまだ?』
『まだだよー、もっとイチャイチャエロエロしたいもん』
『ハーレムはどう?』
『順調、今とりあえず三人ねもう少し増やしたいのよねー』
なんて会話をしているんだから、やめてマジで。
「まあ、なんというか頑張れよ」
「父さん、そう思うんだったらルトナ止めて」
「無理なことを言うなよ。世の中にはぜったいに勝てない敵ってのがいるんだぞ」
その敵はいま電話をしながら大笑いしている人だ。
そして電話が終わると矛先がこちらを向く。
「にしても父さんから聞いたけど。獣王挑戦、やったんだって?」
やはりここに来ればその話は出るだろう。
なので詳しく話して聞かせる。
「ふーん、あの曲者おばさんとねえ…やっぱりルトナは私より才能があるよね」
「悔しいかい?」
「まさか誇らしいわよ。もう私じゃかなわないし、きっと私たち相性が良かったのね。あと四、五人産みたかった~」
シャイガ父さんエルメア母さん相変わらずいい感じ。
まあ、まだ二人とも30代だから不可能ではない。と思うんだが、これはねえ。
「そういえば今年の獣神大武祭は盛り上がるんじゃないかな?」
「当然やるんでしょ?」
獣王挑戦の話だね。そうだね、やるべきだろうね。
あれは基本的に下っ端は自由参加。上を目指してない奴は出てこない。だけど羅漢は2年に一回は参加しないといけない決まりだから去年参加していないルトナは今年は参加しないといけないのだ。
参加するならついでに獣王に喧嘩売ればいい。
きっといい線行くだろう。
認められれば獣王登極もありだろうね。史上最年少だ。
「面白そうね、今年は私も行こうかな? ディアちゃんも行くんでしょ」
「勿論、登極挑戦があるというので参加要請が来ています。
羅漢筆頭も一応二年に一回でいいはずなんですけど、大概挑戦者がいるので出ないわけにもいかないんですよね」
「まあ、偉くなるとそんなものさ」
シャイガ父さんが簡単に言ってくれる。
あそこはバトルよりも宴会が面倒くさいんだよ。
おまけに今年は面白そうだというので早々に獣王が全員参加を表明しているし、それに合わせて会場の設立とかも、気の早いのがポチポチ。まだ先なんだけどね。
「よし、じゃあそれに合わせてうちの魔動車が戻ってくるようにスケジュール汲もうか。お酒とか食べ物とかいっぱい持って行きたいし」
「そうだな。それがいい」
盛り上がる二人。まあ、いいでしょ。
「じゃあ俺は明日には向こうに帰るから…」
「「ちょっと待ちなさい」」
「せっかく来たんだから持って行ってほしいものがあるのよ」
「そうだぞ、実家に来てお土産も持って帰らないってのはよくないぞ。
それにお前ももう複数の女を抱えているんだ。
こういうところでも恥ずかしくないようにしないとな」
だからハーレムなどいらんというのだが…
結局準備に時間がかかるからというので三日ほど待たされることになった。
なったのだが二日目にルトナから緊急の連絡が入った。
なにがあったんだ?




