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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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7-24 邪神の暴走

7-24 邪神の暴走



「ぬおおぉぉぉぉぉぉっ、なんじゃ、なにがあったんじゃーーーっ!」


 自称魔導学者がその光景を見て驚愕の声を上げた。


 どうやら周囲に漂う冥界の魔力に分解されるのを嫌った邪壊思念が安全な場所を求めてサンチスと呼ばれた男の体内に逃げ込んだようだ。


 これってひょっとして意志とか持っているのだろうか?

 一瞬そう考えたが虫だって生き延びるためにいろいろやるのだ、この程度は驚くにはあたらない。


「ふははははっ、素晴らしいぞ、サンチス。素晴らしい成果だ! これぞ魔導の極み、実に興味深い。今度はこれも研究するとしよう。ほひぇひぇひぇ」


 本気で喜んでるなこの爺さん。

 完全にイカレテいるよ。


「ぜんぜざまー」


 ブクブクと肥大しつつある肉塊が声を上げた。

 その声を聴いて喜色満面のイカレ魔導学者。


「おお、サンチス分かるのか?

 そうかそうか、なぜかは分からんがお前は超人類になったのだ。

 そう、邪神の力を使える人類だ。

 素晴らしい。

 素晴らしいのだ!」


 いや、単に邪妖精になっただけだと思うんだが…


「ぜんぜざまー」


「よしよし分かっているぞ。研究を進めるのだな。任せておけ、お前がおればいろいろはかどるに違いない」


 多分何もわかってないだろう。


 サンチスの身体はぼこぼこと泡立つように膨らんで大きくなっていく。

 なんだっけ? こんな肉の塊みたいな化け物あったよな。


 今のとこ大きさは3mぐらい。

 高くもった饅頭に触手とか甲殻類の足とか生やして甲羅を背負わせたような形。


 その邪妖精サンチスが、やつら風に言うと邪神サンチスがイカレ魔導学者に触手を伸ばす。


「よし、いいぞ、そのまま儂を連れて」


「何やってんだこの馬鹿!」


 あわや爺さんがつかまりそうになった時に横から声が響いてジジイの首に鞭が巻き付き、思いきり引き倒し、引きずっていく。


「ぐえーーーっ」


 首に巻き付けた鞭で思いきり引っ張るとかスゲーな。


「げへげへ、何をするんじゃマリリン。さすがに死ぬかと思ったぞ」


「死んじまえこの役立たず。本当に失敗ばかりじゃないか。本当に計画が台無しだ。

 あれを止める方法は?」


 それはかなりスタイルのいい美女だった。

 胸とかお尻とかパツンパツンでタイトなきわどい服に身を包んでいる。

 一言で言うとやたら美人の痴女?


 話の内容からするとイカレ魔導学者の仲間。

 多分委員会のメンバー。


 その美女に爺は食って掛かった。


「なーぜそんなことをする。あれは素晴らしいものだ」


 どつき漫才が始まった。


「あー、制御できない兵器は兵器じゃない。ただの失敗作だよ」


「何と、あれは失敗作だったのか?」


「全然いうこと聞いてないだろうが。とにかくあれを止めろ」


「わははははっ、それは無理というものじゃ。下の階にある瘴気発生装置を破壊せんと際限なく再生するんじゃ。

 すごいじゃろ」


「すごいよ、すごい馬鹿だよあんたは」


「何と無礼な儂は天才じゃぞ。儂こそが真の天才、ローディヌス・アーカイブスじゃぞ」


 ジジイが切れて女につかみかかった。

 不意を突かれたのか倒れこむ二人。


 しかし二人とも邪神サンチスから意識がそれている。


「ぜんぜざまー…ぼんなー…」


 マリリンと呼ばれた女が出てきてから邪神サンチスは他のすべてを無視して、ぶっちゃけ攻撃する俺すら無視してそのマリリンという女に全神経を集中していた。


 そして女に向かってとびかかる。


「え?」


 今や五mほどにも成長した波打つ肉と海産物の塊が女に向けてなだれ落ちる。


 女はとっさに教授を突き飛ばし、その反動で邪妖精の下から飛びのいた。

 反動で教授の方は邪妖精の下敷きになる。


「ああ、クソ」


 それは何に対する悪態だったろうか。


 だがイカレ魔導学者もそのままでは終わらないらしい。

 その残された手がしっかりと女の服をつかんでいた。

 教授が引きずり込まれるのと同時に女も引き寄せられて。


「はなせ、この!」


 ついに魔導学者に見切りをつけたのか女は手に持っていた鞭で教授の腕を粉砕して脱出を図る。

 だが手遅れだった。


 邪妖精はその体から何本もの触手を伸ばし、女の足をつかんで引きずり寄せる。

 そしてそのまま下半身を取り込んでしまった。


「いやー、いやー、何やって、どこにさわって…放せ、放せ…うぐっ…かはっ」


 下半身だけ邪妖精の中に飲み込まれた女がビクンと痙攣した。


「ぜんぜざまー…ぜんぜざまー…へへへっ」


「あっ、いだ…裂ける…やめで…」


 女の上でぶよんぶよんとうごめく邪妖精。

 教授は溶けてしまったが女はいきなり取り込まれたりしなかったらしい。


「あがががががかがっ…きぼち悪い…おなかのなかが…」




「あー、これを一体どうせよと?」


 俺はちょっと呆然自失。カオスだ。

 まあ、あの女も仲間みたいだし、助けようとかは思わないけど…そうだ、この隙に下の階層でさっき言ってた瘴気発生装置とか言うのをどうにかするべきか?


 とはいっても下への洞窟は邪神でふさがっているからほかの洞窟に行かないと…


「これから目を放すのは不安ではあるが、まあ、仕方がないか…」


 俺は空中に浮きあがって全速で一番近くにあるはずの下への洞窟にとんだ。


 途中大男と子供みたいな二人組が邪神の方に走っていったが…これも仲間っぽいな。

 腐臭がすごい。

 できれば倒したいのだが…それをやっていると時間が…


「やはり今は邪神を優先すべきか」


 その二人はそのまま邪神サンチスに攻撃をかけ、戦闘を始めた。どうやら女を助けるつもりらしい。


「ふーん、仲間は助けるんだ…」


 ほんと何考えてんのかね。


■ ■ ■


 下の階層もひどいものだった。

 邪壊思念…やつらの言うところの瘴気が充満していてひどいにおいだ。


 瘴気は一つの出口に向かって流れている。

 あそこが邪妖精のいる場所だろうね。


 だが仕事自体は簡単だった。

 階層の中央付近にそれはあったのだ。


 まあ、スライムというかヘドロというか。

 その中で人の顔が浮いたり沈んだりしている。

 その顔には見覚えがあった。


「あれ、こいつって…そうだ、ジュレミーだっけか、ナイナガウルとか言う冒険者の片割れ」


 地上でからんできたやつらの一人だ。

 あれっ切り見かけないと思ったらこんなところでやられていたのか…


 どういう経緯かやつらに目をつけられたらしい。

 そして。


「これが瘴気発生装置とかいうやつだな」


 ジュレミーはまだ死んではいなかった。

 死なせてもらえずに苦しみ続け、世界への怨嗟を吐き出し続けている。

 無限に瘴気を生み出す装置。


 俺は神杖を鎌にして一閃、彼の頭部を真っ二つにした。

 同時に神杖に吸い込まれる彼の魂。


 邪神化していないから簡単だ。

 ただ…


「あれだけ魂が傷ついてしまうと再生は難しいかもしれないな」


 彼は多くの歪みを生み出した。


 元をたどればあの再生委員会とかいうのが悪いのだ。

 だが邪壊思念を生産していたのは彼である。


 罪や善悪ではないのだ。作用があれば反作用がある。という法則の問題なのだ。

 彼は世界の歪みの修正に資することになるだろう。もちろん救急搬送で修復をされた後ではあるのだが、完全には治るまい。耐えきれずに崩れる公算が高いと思う。


「まあ、もともとの素養というのもあるからな、自業自得の部分もある」


 ここら辺の機微を見通すには俺はまだまだ未熟だ。


「さて」


 俺は再び神杖を立てて力を開放した。

 周囲に清浄な力がゆっくりと広がっていく。渦を巻き、瘴気を浄化していく。あっという間だ。

 ここにあるのは単純な穢れであり、邪妖精のように確立していないからね。


 この階層の穢れはわずかな時間で解消された。


 さて、上はどうなったか…


 俺は再び上の階層に向けて飛び立った。


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