7-02 地下には変な物がいっぱいある
7-02 地下には変な物がいっぱいある
その後俺たちはさらに下の階層のバックヤードに降りる。
《しかしここの迷宮は攻略できないでありますな》
モース君が俺の肩につかまってぶら下がりながらそんなことをいう。
もちろんここは攻略などされてはまずいのだが、どういう意味だろう。
《だって迷宮のコアは普通は最下層にあるでありますよ。
でもこの迷宮のコアは第四層の、どことも通じていないエリアに隠されているであります。
みんな四層攻略を頑張っているでありますが、五層の階段を見つけたらあとはみむきもしないと思うでありますよ?》
おお、なるほど。
言われてみればその通りだ。
この迷宮は最下層にはお宝しかないのだ。魔物も出ないし。
おまけに中央シャフトのエレベーターを使わないとここまでこれないしね。
『ちーん』
うん、エレベーターはどこでも同じだな。
この八階層は上の七階層展示場の奈落として機能している階層だ。
部隊のセリに当たるエレベーターにディスプレイされているもの以外は倉庫にしまわれている。
これまでゆっくり調べる機会がなかったからほとんど手つかずなんだよね。
「倉庫は微妙に作りかけっぽいのが多いですね」
うん、というか整備でばらしたりとか、磨くのにばらしたりとか。そういうのは既に長い年月に負けて壊れている。
期待できるのは倉庫の中でパッケージされているものたちだ。
かなり数がおおいな。いいのがあればいいけど。
「でもこれって一回パッケージを開けるともう戻せないんじゃないか?」
「あー、そうですね。そうなると保護はされないんだ」
耐劣化パッケージというか、梱包されている状態だとどれだけ放置されても大丈夫になっているらしい。
「でも出したからと言ってすぐに壊れたりはしないだろう。当分大丈夫だよ」
ものがものだから100年とか、200年とかはたぶん大丈夫。
以前に俺たちが持ち出して使っている魔動車(社用)もまだ全然しっかりしている。
「でも置いておいても意味なくないですか?。エレベーターってディアさんしか使えないんですよね。
脇にある通路は細いですし、
収納ってあまり一般的じゃないんですよね?」
「あー、そういえばそうだった」
さすが地球人。
価値観がね。この世界の人たちとちょっと違う。
確かに流歌と翔子君の言うとおりだ。
ここで見つかっても外に出すには俺がエレベーターを使うしかない…いや、そもそも大物は収納にしまわないと迷宮の入り口をくぐれない。
つまりこのお宝は現状ではガラクタと変わらないわけだ。
もしここまで来た冒険者がいればご褒美は必要だろうと思っていたが、ただの嫌味にしかならないかもしれない…
「勇者ちゃんたちの収納ってこういうのはいらないのか?」
「ええっと、入るとは思います。一応無限収納とか言われてますから。
でも実際はそんなには入らないんです…」
無限じゃない無限収納。
「えへへ、まあ、そうですね。でも時間停止機能とかはあって劣化はしないんですよ。それにそれなりに大きいですし…でも…」
あまり大きくて重いものをしまうと重圧があるそうな。
限定された時間ならいいけれど、ずっとはかなり疲れるらしい。常時魔力も消費するらしく、消費量は入っているものの質量によるようだ。そのせいで疲れるのかな。
「なら、とりあえず俺が預かるか」
「「え?」」
「ディアさんって何者です?」
勇者ちゃん二人はちょっとびっくりしている。
勇者ちゃんは確かにいろいろなスキルを持っているけど、それは別に神様がくれたすごいやつ。というのではなくて、あふれる魔力やポテンシャルでスキルが形になりやすいためだからな。
普通よりはよいものも取れるけど規格外というわけでもない。
一方でうちの女たちは気にも留めない。
信頼というやつだろう。
《たんに気にしても仕方がないと思っているのだと思うであります。そもそも気にする気自体がない?》
うん、たぶんそれが正解だろうな。
「まあ、いいや、とりあえず今回使うもの以外で使えそうなやつは俺がしまっておくよ」
フラグメントの中に放り込んでおけば痛むこともないだろう。
どうせポコポコ外に出せる物じゃないからな。
というわけで使えるのが見つかるまで一つずつチェックだ。
◆・◆・◆
「あっはっははははっ。なにこれ?」
「あーぶだーくしょーーーん!」
いや、なんというか、空飛ぶ円盤だな。
アダムスキー型とかいうやつ。
「飛んできていきなり人間を光の柱で連れ去るみたいな?」
「そんな怖いものなんですか?」
「いやいや、これじゃなくてね、私のもといた世界にはそういうのがあるのよ。
んで連れ去られると体の一部を切り取られたり、内臓を抜き取られたり、
あと、種族の繁栄のためとかで初めて会った男と子作りさせられたりね」
「!」
家の女性陣、マジで慄いている。
けど現実じゃないから。
それに一部エロ漫画の設定みたいなの入っているから。
にしても勇者ちゃん二人のテンションたけー。
ツボに入ったか?
んで次!
「ひゃーっ、今度はこれ?」
「ネコ〇ス? ネコ〇スなの?」
「いや、むしろモ〇ラ」
いや、ちげーだろ。
でっかいパッケージを解いたら出てきたのは列車の車両のような乗り物だった。
ただ正面に顔がある。結構つぶらなかわいいやつ。
ボディーはフレキシブルで蛇腹のようにグネグネ曲がるようだ。で、窓が並んでいる。
中を見たら観光バスみたいに椅子が並んでいた。
そして車輪がない。
代わりに足がいっぱい生えている。
昆虫の腹足みたいな感じだ。
これがわしゃわしゃと動いて前に進むんだよね。
大昔の人は何を考えてこんなものを作ったんだか…
まさか古代の魔法文明にトト〇とかゴ〇ラvsモ〇ラとかないよね。
「ねえねえディアさん、これ外に出して動かしてみたいです」
まあ、地球人じゃね。気持ちは分かる。
「ディアちゃん、私も興味あるかな」
ブルータス。お前もか。
いや、ルトナだけどな。
「わかった、じゃあこれは一応確保な」
さて次は。
「ねえねえ。ピーナッツがあるよ」
「むしろ箱舟じゃないかな?」
今度はちょっとはまともそうだ。
ちょっとSF的な乗り物だな。
形はピーナッツの上側を三分の一ぐらいでスパッと切った形。
後ろ側のふくらみがちょっと大きい。
そこに船楼が付いている。未来的な流線型のデザインだ。
前側のふくらみにはリングが付いている。
そしてタイヤがない。
足もない。
「これどうやって走るんだ?」
「船みたいな形ですからね、海用でしょうか」
「あー、船舶か。うんうん、ありそうだ」
何もここは自動車売り場というわけではないだろう。
事実まだまともな自動車は一台も見ていない。
盲点だったな。
《精神的な陥穽というやつですな》
信じられん、モース君が難しいことを言った。
俺はモース君の知性は軍曹レベルかと思ってた。
ガ〇プラガ〇プラみたいな?
うん、これも精神の陥穽というやつだな。
「ディアちゃん、とりあえずこれで試運転してみようよ」
「そうです、こんなに面白そうなことやらないなんてありません」
ルトナはともかくサリアよ、お前は確か総司令官じゃなかったのか?




