5-37 迷宮探索⑨ 戦闘 艶~ゾ…ゾイ…モース君
5-37 迷宮探索⑨ 戦闘 艶~ゾ…ゾイ…モース君
さてさて、ほかの戦局はというとあとはお姫様のところか。
確か艶とか言ったな。本人は日本風のお姫様なんだが着ている服は普通にこの世界風。女性らしいものだが戦闘服だな。ドレスに鎧をくっつけたような服だ。ドレスアーマーというやつだ。
アーサーは普通に鎧に剣だ。
男はどうでもいいや。
というか強そうな騎士という以外に特筆すべきものがない。
最後の一人はメイドさんだ。
裾の長いクラッシックスタイルのメイド服をヘッドドレスやフリルでかわいくした服だ。
どうも彼女はサポートタイプらしい。
あまり強い感じはしないがアーサーや艶の回復や補助の魔法を使っている。
この世界の仕様上、触媒となるものは不可欠でかわいいメイドさんがでっかい魔法の杖を持って魔法を使っているのは何か冗談めいている。
その前でアーサーが前衛として立ち回り…と思いきや、前衛を務めているのはゴーレムだった。
細かい装甲を組み合わせた見事な鎧。片手に巨大な剣。片手に盾。八本の足で縦横に動いて敵⑨ 敵⑩と切り結んでいる。
そう、八本足。下半身は蜘蛛型だった。
下半身が蜘蛛のゴーレムとか、蛇のゴーレムとかロマンがあるよね…というか。これはもうゴーレムじゃなくてロボだろ。ロボ。
これは艶さんが持っていた収納から出てきたものだ。
つまり彼女はこのロボのほかに高性能の収納の魔導具をもっているということだ。
しかも彼女は同時に無数にのたうち回る蔓状の何かを操っている。
魔物の中にはフェルトのように人間になつくものもいるが、これは違う。違うと思う。
もっと実体のないもの。でも精霊とは違う。
魔法生物…みたいな何かだろう。
この蔓とロボを操って艶は一人で二人の敵を翻弄していた。なかなか見事だ。
で、アーサーが何をやっているかというと艶の護衛だな。
敵が色気を出して艶のほうにちょっかいを出そうとした場合、彼の出番となる。
彼は艶とメイドさんの盾役なのだ。
最初敵二人は艶と互角の戦闘をしていた。
だが俺が霧を作り出したことで戦局は一気に傾いた。
「畜生! 力が出ねえ」
「なぜだ、力が抜けていく…」
「どういうことだアリス。アーリス!」
「くそ、援護しやがれ、ぶち犯すぞ!」
アリスと呼ばれた少女はすでに立ち直っていた。惚けていたのは一瞬だ。
そしていまは俺をにらんでいる。
当然援護する気などないようだ。
足元を高速で動き回る蔓は二人の足を取り、バランスを崩したところにロボの剣がおそってくる。
邪壊思念による強化がうまく機能しなくなればあとはじり貧だった。
「ぎゃあぁぁぁっ」
バランスを崩したところでロボの盾が襲い掛かる。
ロボは巨大なので片手サイズの盾もかなり大きい。その盾で殴られればハンマーで殴られたようなものだ。
敵⑨はおもちゃのように宙を飛び、落ちて動かなくなった。
敵⑩は逃げ出した。
追撃するロボ。
肉薄しその大きな剣をふるう。
ロボはスピードも速かった。
あっという間に追いつき、その剣は敵⑩を捕らえる。
その剣の振りぬかれる先にはアリスがたたずんでいた。
敵⑩は最後にアリスに、小さな少女に助けを求めたのだ。
だがそれはより悲惨な最後の伏線だった。
アリスは小さな盾を構える。
そして彼女はロボの剣をがっしりと受け止めた。
敵⑩ごと。
アリスの構えた盾にたたきつけられる形で剣を受けることになった敵⑩。結果はグシャ…
逆に言うとアリスはロボの巨大な剣を片手の盾で受け止めて見せたのだ。
すごい力だ。
これで敵はアリスを除くと4人だけになった。
◆・◆・◆
モース君の方も終わりが近づいていた。
彼らの敗因は魔法使いが少なかったことだろう。
いや、魔法使いがいたからと言って、それで勝てるとは言わないのだが、魔法使いがいないと攻撃手段がほとんどない。
ある種のエネルギー生命体である精霊と戦うためには魔法の力が必要なのだ。
実体のない相手だから物理攻撃は効かないのだ。
だから何であれ、エネルギー的なダメージをたたき出す攻撃が必要になる。
邪壊思念の力で邪気をまとっていた内はよかった。あの状態ならばすべての攻撃がエネルギー的なものになる。
だが浄化の霧でそれが無意味になった後はモース君にまったくダメージを与えられなくなっていた。
いや、ダメージは与えられるのだ。多少は。だがモース君の回復はそれを上回っていただけで。
自分が戦うと考えた場合これほど嫌な敵はないだろう。
ゲームをしていた時、ボス戦などでダメージがなかなか入らないのにボスがどんどん再生すると泣きたくなってくるあれだよ。
そんな感じだからモース君の方は調子に乗ってブイブイ言わせている。
モース君の体というか形はもともと俺のイメージからできている。
だが俺のイメージが優先するというわけではない。あくまでも形をつくるのはモース君だ。そこに俺のイメージとか知識とかが入ってくるわけだ。
戦闘中モース君の形が少しずつ変わっていく。
揺らめく青い炎のような、水の揺らぎのような姿は変わらず基本だが、いつの間にか背中に旋回砲塔がついている。
腰の上あたりかな。二連装、六砲身のバルカン砲だ。
脇に回り込もうとする敵に対して機敏に向きを変え、ズガガガガガガッ!と斉射をかましている。
当たらないのは狙いをつける感覚がよくわからないのだろう。
たぶんまだ自分の戦闘スタイルを模索しているんだ。
だったら反対側ががら空きになりそうなものだが、これも問題ない。ゾウさんの鼻はよく動く。
大体八時方向から四時方向までを鼻でカバーしている。
回り込む敵に対して鼻がさっと振られ、そこから陽炎のような揺らめきが打ち出されている。
加熱水蒸気である。
水というのは100度になれば蒸発してしまうわけだがそれはなくなるのではなく水蒸気に変化するだけだ。
そして水蒸気には100度などという制限はない。
もちろんモース君は水と土の精霊なので気体である水蒸気は管轄外だ。制御できない。
だが液体であれば制御できるのだ。
例えば気圧の高い密閉空間であれば水は100度を超えることができる。
液体の状態で300度まで熱した水をそのあとで開放してやればそれは300度の水蒸気になり、その…6000倍だかの膨張率で膨らんで一気に噴き出すことになる。
俺も好んで使う『わりかし安全な火炎放射器』だ。
バルカン砲で使われている氷の弾丸はもっと単純で、水の状態を操れるモース君ならば分子同士を固定して氷のように固めてしまうこともできる。
これは分子が固定して動かない水なので液体といえる。
このようにモース君の攻撃は俺が今までやってきたあれやこれやを取り込んでモース君があそ…研究した結果なのだ。
「んだらごぁあ!」
おっ、一人が加熱水蒸気をかいくぐってモース君に肉薄した。
これで邪気を乗せた斬撃を…
バコン!
「ぎゃーーーーっ」
ハイモース君に蹴っ飛ばされて終わりだった。
モース君は相変わらず揺らめく水のようなからだだが、その足とか、鼻とか、装甲版が取り付けられている。
これも水を固定したもので、これなら敵の剣ともまともに打ち合えるようだ。
『すごいぞモース君。戦闘の中で進歩するなんて。えらい』
《いやー、それほどでもあるであります》
照れたモース君の振り回した鼻で二人目がふっとんだ。エネルギー質量が桁外れだからトラックにはねられたようなものだな。
しかし形に合わせて重量感が増した。
どすんっどすんっ。
プァオォォォォォォォォォッ。
ズガガガガガガッ!
メカだなメカ。ロボだよ。ゾ〇ドだよ。
ぱちゅん。
あっ、三人目も蹴っ飛ばされてぱちゅんしちゃった。
これで残ったのはあと一人。敵①だけだ。
さてそいつがどうしているかというと…




