5-31 迷宮探索③ 二層にはあいつらがいる
5-31 迷宮探索③ 二層にはあいつらがいる
第二層への階段はこの迷宮にいくつかあるらしい。
しかもこの迷宮は今も成長を続けていて広がり続けている。そのために階段の位置は少しずつ動いているのだという。さすが不思議空間だな。
だが一つだけ変わらない階段がある。
それが迷宮中央に存在する現在は『迷宮御柱山』と呼ばれる巨大な岩山の内部に存在する螺旋階段だ。
この御柱は直径が300mもあり、一枚岩で出来ていると言われていて、下から上にほぼまっすぐに伸びている岩山だ。
際限なく伸びるエアーズロックみたいな物だ。
この迷宮はフィールド型なので上には空があり、これが何処まで伸びているのか分からないのだそうだ。
「今までも何人もの冒険者がこの登頂に挑戦したんだけどねえ、誰も成功していないのさ」
と言う事だった。
この御柱山、はっきり言うと昔つかったエレベーターシャフトだったりする。
あれが変容したもののようだ。
だから当然中心にはエレベーターが存在するはずなのだが、それはまだ見つかっていない。
螺旋階段の入り口は三方向にあり。そのどれもが正しく第二層に通じている。
洞窟のような螺旋階段をだいたい2時間ぐらい歩き続けると平らな踊り場に出て、そこが第二層。
この一層と二層の距離も当てにならない。
そとに出るとそこにはやはり御柱山があり、見上げれば果てしなく伸びているように見える。
このフィールドは20km強の広さのはずだが高さは現在のところ測定不能。
まあ例えば10Kmぐらいだったとしても垂直の岩山を10,000mもロッククライミングできるやつがいるとは思えないからどうでもいいっちゃどうでもいいのだ。
ただありがたいことにこの螺旋階段のある洞窟、つまり御柱山の内部は安全地帯で魔物がよってこないようになっている。
ここは迷宮攻略の重要な拠点である。
「ただね、この御柱山の階段は第四階層までしか通じてないんだよ…」
「第四階層は全体がものすごい広さの洞窟迷路で、そのどこかにある階段を見つけないといけないと言われているですけど、まだ見つかっていないんです。
40kmの広さの大迷宮ですからね…」
なぜ40kmと言えるかというと迷宮の階層構造からの推測になる。
一階層が10km、二階層が20km、三階層が30kmなので四階層は40kmであろう。と言う話だ。
しかも少しずつ広がり続けていてしかも構造が変化する。
「これ攻略するのってムリだよね?」
闘滅のメンバーのいう事はごもっとも。ただ彼女たちは商会に雇われている専属冒険者なので基本てきに一階層でしか仕事をしない。
「いやいや、たまには二階層に来て狩りとかするんだぜ、やっぱり自分を鍛えないとな。それにここは良い稼ぎになるんだ」
そう指し示された二階層は湿原ステージだと言われている。
「まあ、綺麗…」
クレオがそんな感想を漏らした。
確かにそこは美しく、そして水がたくさんあり、森がたくさんあるステージだった。
分かりやすくいうとジュラ紀の森という感じ。
「ねえ、ルトナ。ここってひょっとして大食らいとか出ない?」
ここでの稼ぎってひょっとして。
「あっ、よくわかったね。ここは大食らいとか衝撃亜竜とかいるよ。ほらあの煙。グラトンの胃袋の加工施設だよ」
ルトナに指さす方向には森の中から一筋の煙が立ち上っていた。
グラトンは空間拡張型の収納バックの素材だ。
空間的に広がる第二胃袋を持っていて、それを内張に使うことでバッグの収納力が空間的に拡張される。だがそれはグラトンが死んでから時間を追う事に収縮して機能が下がっていく。最低でも6時間以内に納品・加工しないと十全な性能を持ったバッグは作れない。
だがここはフィールド型の迷宮で直径で20㎞ぐらいの幅しかない。今のところ。
真ん中に施設を置けば片道10km。6時間あれば十分に移動ができる。
「じゃあ、ここで収納バックが量産…」
「は、できないよ、グラトンの他にも結構強力な魔物がいてね、例えばここのインパクトサウラは積極的に人間を襲うから…だから結構大変みたい。
グラトン自体もそんなに弱い魔物ではないしね」
ルトナはあれにはあまり興味がないらしい。
お金になるならないと言うよりも戦いの相手として魅力がないのだとおもう。それにフフルが着いているルトナならここで狩るよりも外の世界で狩った方が効率が良い。
だが普通の冒険者には魅力的な稼ぎだろう。
時にそのフフルだが現在は別行動中。
フェルトとともに先行してこの第二層で遊んでいるはずだ。
直に合流できるだろう。
「さて、では今回の探索はこの辺りでいったん終了かな? お互いに実力も分かったしね」
ミルトカさん達は『あははー』と渇いた笑いを浮かべている。
学園の生との護衛クエストも一階層なら十分に務まるぐらいの実力はあるとおもう。これなら推薦して問題ないだろう。
「ボスはこれからどうするんだい」
闘滅のメンバーは俺をボスと呼ぶようになった。
まあ、商会のリーダーも俺がいれば俺になるから間違いではない。雇い主と言うわけだ。
「俺はここからさらに下に行くよ、三階層も四階層ものぞいておきたいからね」
「あー、あたいらは…」
ミルトカさん達は悩んでいる様だ。
冒険者として雇い主をほったらかしにして帰るというのが引っかかっているのだろう。
「それは気にしなくて良いよ。君たちを雇っているのは一階層での素材収集のためだから。俺達の護衛は君らの仕事じゃない。
学園の子供達の護衛は手伝って欲しいが、これも別の仕事だよ、報酬は学園から別にでる。一階層だけで二階層以降は実力不相応でことわってくれてまったくかまわないよ」
俺の言葉に彼らはほっとしたようだ。
俺は彼女たちに少し酒代を渡して先に帰した。
当然ルトナやクレオもかえって…いたりはしないのだよ。この戦闘狂達は。
「さっ、どんどん行こう。どんどん戦おう」
「この階層の魔物も切ってみたいです」
なんと自分に正直な女達だ。
できれば早めに四階層に行きたいのだけど…仕方がないかな。この階層で少しならしてみるか。




