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いきすぎた健康は異世界チート。行きつく先は・・・  作者: ぼん@ぼおやっじ


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5-27 怪しいヤツ。どっちのことだ?

5-27 怪しいヤツ。どっちのことだ?



「へへっ、どうよオレの剣、そしてオレのスキル。オレに気づくヤツなんていねえし、この剣で貫けないものなんてないぜ」


 へへって…何処のチンピラだろう。

 なんかやたら軽いんだよな…軽薄という意味で。


 だが確かにさっきまで俺は人の気配に気がつかなかった。

 俺には魔力視がある。まあ、常時全周囲警戒をしているわけではないのだが、それでも現在は戦闘中だ。

 当然警戒している時間だった。

 なのに剣で刺されるまでまったく気が付かなかった。


「な…ど…」


 むむ、声が出ない、剣が肺と気管を傷つけている所為だ。おかげでかなり痛い。


(痛覚情報は遮断…感覚が鈍くなるから魔力知覚を最大限に…)


「ふへへっ、もう声も出ないか…冥土にみやげに教えてやるよ。オレは『世界再生委員会』のサイゾウ様だ…俺に殺せないヤツなんているはずがねえ」


「ぜ…が…」


 喋りづらいな。

 声帯による発生じゃなくて周囲の空気を振動させるか…


「おおっと、そこよ、世界再生委員会ってのはな、この世界のありようを憂う、有志の集まりさ、世界を正しく再生させるための活動をしている正義の味方というわけだな…

 世界中の国は俺達の指導の下でこそ、正しい運営がかなうって言うな?

 スゲエだろ?」


「ふむ、まあ俺には関係のないことだな…」


「なっ、てめえ!」


 俺の声が普通に聞こえた所為でサイゾウを名乗る男は目を向いた。

 俺はじぶんの胸からとび出した剣の先を握ると流体金属を変形させて刃をがっちりと挟み込む。


「なっ」


 飛び退こうとしたサイゾウは剣を握っていたが故に果たせず多々良をふんでしまう。

 すかさずにその場を杖で一薙ぎする。真後ろだが杖を握っていなくてもそのぐらいことはできる。


「畜生!」


 サイゾウは剣を手放して飛び退くしかなかったようだ。

 俺は左手を元に戻しつつ、実体化した魔力である装備をうごめかせて剣を抜く、そして杖は自然に右手に、剣は左手に宙を飛んで収まっていく。

 ここでやっとサイゾウの姿を確認できた。

 着ているのはゲームのような忍者装束だ。名前を意識しているのだろうか?

 ただ頭髪はまっ赤で目が青いから微妙に似合っていない。

 外人が忍者イベントでコスプレしているみたいだ。


「アンデットか…いや、それにしちゃ…」


 ああ、そう見えるか。

 あんでっと…否定(アン)(デット)…字面だけ見ると間違いでもないような気がする。死なないという意味では。だが死に損ないみたいな意味だと違ってくるし、死んでも死んでないだとへんだな…


 冥府に所属する()()()()者達と、この世に残された()()()()者達ではまったく違うが確かに見た目は似ているからな…


「いやあ、アンデットぽくねえな…ひょっとして新しい勇者か? 御劔に入った新人かよ…めったに死なないヤツとかいるからあ…だが、実力はそれほどでもないとみた。

 艶なんぞに味方したおのれの不明を恨むんだな、寸刻みにして!! あぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


「はい、ナ~イス」


 どうもこいつは精霊は見えないらしい。モース君が剣で足をプスって刺したのだ。


「剣が勝手に…そんな、あっちは……畜生…なかなかやっかいなスキルを持っているみたいだな…」


 俺の手にも剣があるが見た目だけだよ。流体金属を同じ形にしただけだ。

 こいつには精霊か見えていないから剣が勝手に飛んで自分の足をさしたように見えただろう。

 だが現実が見えていたら…


 可愛い三頭身の直立歩行の象さん(ぬいぐるみチック)がトテトテと走っていって剣をぷすっ!

 うん、見えている方がより非現実的だ。ファンタジーだ。


「さて。いろいろ知らない単語がたくさんでてきたんだが…知ってることを話すつもりはないかな?」


 世界再生委員会とか、艶とか、御劔とかね…

 色々喋って欲しいんだよね。


 俺が一歩近づくとサイゾウを名乗る男は懐から…多分収納だろうけど、短剣をスッと抜いて自分に振り下ろした。


 別にいいのだ、死んだところで逃げられやしない。こいつの抱える歪みは今まで観た中でも最大級だ。地獄に送った上で喋らせれば…


「なに?」


 ナイフが男の腹に刺さったとたん魔法陣が展開して男の体が薄れだした。

 空気の檻を構築して拘束しようとするがそれすらも意味がなくサイゾウはスッと消えてしまった。


 また姿を消したのかと思ったが固定された大気に干渉されないというのはおかしい。感覚を広げてみる。


「魔力は…反応がない。エネルギー輻射もない…赤外線も反応無し…人のいた形跡はまったくない…おっ、空間密度に揺らぎがある」


 だがそれも観測している内に薄れて消えてしまった。


《空間転移でありますな…あのナイフが転移のアイテムなのだと思います》


「だとしたらぶっさした対象にの魔力を吸い上げて起動し、しかも刺さった対象を転移させるアイテムなのかな…やだねえ…使いたくはないよ」


《まったくでありますな…まあ吾輩の場合刺さるかどうかという問題もありますが》


 精霊だしね。

 まあ逃げてしまったものは仕方ない。

 取りあえず警戒の方法は分かったからよしとしよう。


 さて、あとはこいつらの始末か…

 ひょっしてあいつこいつらを助けに来たのかな…もう少し喋らせてやればよかったかな…


 ◆・◆・◆


「ひいいいっ、助けてくれ…オレは頼まれただけで…」


 何をだよ。誰にだよ。

 一番若いヤツは錯乱している。

 どうもこの界隈のボスのようだがどうにもヘタレている。二代目とかかな…


「さ…三代目」


 三代目だそうだ。三代目は少しは優秀になる様なことを聞いたがどうもそういうわけでもないらしい。

 老害オースティンは完全に目を回している。一番厳つい男はなんとか踏み止まっているが片言を話すのがやっと。

 三代目(こいつ)がしゃべれるのは、こいつが優れていると言うわけではなく、小悪党だから大きな影響を受けないと言うだけだ。

 抱えた邪壊思念が大きければ大きいほど地獄の炎は熱くなる。


「お前うるさい」


 俺は意味もなく言葉をまき散らす厳ついヤツを杖で殴って気絶させた。


「ひいいいっ。助けて助けて…なんでも言うとおりにします…攫った女達も返します…だから命ばかりは…」


 三代目は面白いことを言った。


「よしよし、ちゃんと質問に答えられたら命は取らずにおいてやる」


 俺は杖でこづき回しながら質問を繰り返し話を聞いた。

 ここは人身売買組織の一面を持っていたらしい。

 人身売買は大罪だ。

 たから形としては借金返すために働きに出るという形を取るらしい。


 さりげなく近づいて援助をし、足りない分として少しずつ借金をさせていく。

 にっちもさっちもいかなくなったところで働きに出るように説得して仕事を世話する。


 ここまではまともだがここからが犯罪。


 この界隈に連れ込んだ時点でお仕事を教え込む。

 取りあえずは初級から、男に犯されながら泣き叫ぶ練習。

 抵抗しなくなるまで練習を続けたらあとはいっそ死んだ方がましな職場に永久就職。


 先代と老害オースティンで組んで始めた事業で、今まで行方不明になった女は数十人。

 三代目はその先代が死んであとを継がされたヘタレと言う事のようだ。


《これでは邪界思念もたまろうというものでありますな》


「やれやれ、地獄送りですっきりしたかったんだけどなあ…こいつらを締め上げると少しは女の人を救出できるかも…と思うと簡単には殺せないか…」


 取りあえずマチルダさんに引き渡すか…


 俺は左手を蛇に変形させ、枝分かれさせ、こいつらに噛みつかせる。

 バキッとか、メキッと顔とがしたがまあどうでもいいや。


 魔力視で周囲を見たらおくに抜け道を発見。 

 これを分解の魔法で崩し再構築でただの壁へと作りなおす。

 のびて転がっている奴らはそのまま、ただし入り口は半分固めて開かないようにしておく。


 これで官憲がやって来るまで問題ないだろう。

 悪党って本当にろくでもない事にとを広げるよ。


 ◆・◆・◆


 そのときマチルダ・キハール伯爵は城のバルコニーで優雅にお酒をたしなんでいた。

 今日の月は一段と美しい。


 そして旧知の子供に会えたのも嬉しかった。

 ぶっちゃけてしまうとディアにあえたのが楽しかったのだ。

 少し癒された気になる。


 なんとなれば帝国からの留学生のことも気になるのだ。

 勇者と呼ばれる異世界人たち。

 異世界人が降り立つ確率が一番高いのが聖国と呼ばれる小さな国の遺跡だった。

 この遺跡のせいで聖国は自分達こそ神に選ばれた民族だと主張し、民族浄化などと称して獣人や妖精族を迫害している。

 近くにある教国の『人間至上主義』が非常に悪い影響をもたらしている。

 それが近くの帝国に広がると化学反応を起こしてまたひどいことになる。

 強い選民思想に変容するのだ。


 帝国は貴族がえらく平民は下等。奴隷はただの家畜という考え方の国だ。

 実力主義ならまだ救いはあるが、完全に血統主義。

 そうなると収拾が付かない。

 できれば関わりたくはないのだが、この逢魔時が始まる時期に異世界からきた勇者の要請を無視するのはリスクが高い。


「できれば勇者にまともな価値観をすり込みたいものね」


 勇者達が帝国の選民思想に染まるのはあまりよろしくない気がする。

 聖国の人族至上主義も同様だ。


 そういう悩ましい事ごとが、弟子であり、友人の息子であるディアやルトナに会うと癒される気がするのだ。

 わずかばかりの安寧。


 だがその安寧は空から舞い降りてきた奇怪な人物によって断ち切られた。

 表情の全く無い黒曜石のような頭。背中に広がる大きな翼。圧倒的な存在感。

 これは神か…または神と等しきか…と恐れおののいていたら聞いたことのない声で、つまり機械音声のような声で「やあ、お邪魔します」と気さくに話しかけられた。


 ずっこそうになり、少し空気が緩んだところでぶら下げられていた三人の男達を引き渡され、その犯罪を聞かされた。

 その頃には城につとめる騎士や魔法使いも集まってきていて、なぜか怪人物に襲いかかろうとするのでこれを止めるのも一苦労。

 勝てるようには思えなかった。


 結局手足を砕かれ、まともに動けず、しかも恐怖に震える三人を受け取り、すぐに調査を命じた。

 攫われた女の子達は少しでも救出しないといけない。

 それにこの三人を締め上げれば、証拠品を押さえれば、また数年前にあったような人身売買組織の壊滅につなげられるかも知れない。

 それはすばらしいことだ。


 でも少しだけ思ってしまうのだ。

 年を取った所為だろうか…


「誰か代わってくれないかしら…」


 と。

またお会いできて嬉しいです。


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