19.姫様(?)のお忍び汽車旅行(後編ー2)
オルティガ駅で一般のジジィと孫に変装した姫様と爺、そして彼らの一般の知人に変装した武装した護衛兵士たちを乗せ、列車はクラウドへと出発した。
一応緊急クエストで貸し切り状態ということにしたため途中の駅には止まらず、とはいえ錆びついた旧式蒸気機関車がクラウドまで直通運転するのは怪しまれそうなので偽装の為途中の大きな駅のラッシュ駅に一旦停車して何かしら貨物を受け取ってからクラウドに向かうことにした。
この事は客車に乗っている姫様に話し、了承を取った。
そして列車は黄金色の耕原を駆け、森を抜けてラッシュ駅に到着した。
丁度良いことにクラウドまで石材を運ぶクエストがあった為、それを受けて貨車が連結されるまで待つことにした。
俺はここまで何も起きなかった事に安堵し、このままクラウド駅まで無事に着けるよう願った。
・・・・・・だが、俺はこの後起きる事を全く想像していなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
J-7が旅の安全を願っている丁度その頃、ラッシュ駅構内には幾人かの不審な人影がいた。
それらは傍から見ればただ、列車の到着を待つNPCのように見える。
しかし、それらの人影の正体は・・・・・・
かつてこの世界でVRMMOとしてのサービスが開始される前の歴史において、ギア・ギヤを建国する前の機械人族によって滅ぼされた極悪非道の悪逆国家『ゴモドラ』の残党であった。
機械人族によって祖国を滅ぼされた後、その非人道的な思想や行動を改めることなく各地をさまよい、再びゴモドラ帝国再興の為あちこちで騒動を起こしてはプレイヤー達や同盟軍に鎮圧されている。
つい最近も、バージョン1.5の時にも大規模なテロ行動を起こし構成員を鎮圧・投獄されたばかりである。
(独裁国家ゴモドラ帝国については、以前書いた年表を参考にしてください)
彼らは、自分達と敵対しているオルティガ国の姫君が少数の護衛と共に国を離れるという情報を手に入れ、彼女を人質として拉致するため各地に分散、このラッシュ駅にも彼女の姿を捉えるため潜伏していた
しかし、ラッシュ駅は前に起きた事件以降警備を大幅に強化している。
駅構内には常に衛兵隊員が監視・見回りを行い、天井面及び壁面に設置型、空中には浮遊型の監視ドローンが配備されていた。
その為大人数を送り込むことが出来ず、構内の構成員は6人程度で目を光らせていた。
その内の一人は、今駅に入ってきたJ-7の列車を見ていた。
構成員は遠くから客車の窓を睨み付ける。 座っている箇所からは客車の中は見えない、かと言って中を見る為に近づいては怪しまれる。 構成員は、途中で衛兵と目が合いそうになると帽子を目深に被り手にした新聞に目を落としながら列車の監視を続けた。
そうしていると、その列車の最後尾に貨車が連結されたのが見えた。 貨車には何の変哲もない石材が積まれている。
只の貨物連結待ちか、構成員はその光景からそう結論付けると列車から目をそらし別の監視を続ける。
・・・と思ったその時!
「おい見ろ!幼女だぜ!」
「ウヒョーーーッ!こいつはたまんねぇぜ!」
「幼女たんかわいいでゴザル、ハァハァ・・・」
突然聞こえた声の方向に構成員が思わず振り向くと、さっきまで監視していた列車の客車の近くに醜い風貌の冒険者数名の姿が見えた。 なにやら騒ぎ立てており、それにつられてその周りにも野次馬が出始める。 構成員は好機と踏み切り、新聞を懐にしまい野次馬に混ざって客車の近くまで接近し、中を見る。
するとそこには、数人の乗客の中に少女が混じっており、黒ずくめのローブをまとった人物に顔を隠される前のその一瞬見えた顔は・・・
作戦会議で見たターゲットの姫君の顔によく似ていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
突然客車の前で騒ぎ始めたキモオタ集団に嫌悪感を覚えつつ、早く出発の合図が来ないかと車掌車を見ていたその時!
「いたぞ!ターゲットだ!捕まえろ!!」
突然野次馬の中にいた一人が大声でそう叫び、ナイフを抜いて後ろからキモオタ集団に切りつける。
即効性の毒でも塗られていたのか、斬られたキモオタ集団は地面に倒れて口から血反吐と一緒に泡を吐いていた。
粘って立っていたデブを回し蹴りで弾き飛ばすとその不審者はそのまま客車に肉薄する、だが!
パリン! ドシュッ!
客車の中で護衛が放った大型ボウガンの矢が窓ガラスを突き破り不審者の右肩に命中、反対方向に吹き飛ぶ。
「これはマズいな!」
この一連の流れで駅構内がパニック状態に陥る一拍前に、俺は車掌の合図も待たず、信号も赤だったが、乗客の正体を知っていたので安全のためにアンクル・パフを急発車させた。
ポ、ポ、ポ、ポ、ポォーーーッ!!
ピィーーーーッ!ピピピィーーーーーッ!ピピィーーーーーッ!!
急発進の為ホームのお客さんに注意を促す汽笛を連呼すると、それと同時に駅員が笛を鳴らして危険を意味する赤旗を俺に向けて振ってくる。
だが止まるわけにはいかない、一国の姫様の命がかかっているからだ。
仕方なくそのまま進み、信号の下を通って駅を出たが、タイミングが悪かったらしく丁度駅から本線に入ろうとしていた貨物列車の前に出てしまった!
Booooooooooooooooooo!!Boooooooooooooooooo!!Booooooooooooooooooooooooooo!!!
警笛を鳴らされるがこちらは悪党に追われている為、まるで映画のワンシーンのように貨物列車の前をすり抜けるしかなかった。
「テメー死にてぇのかバカ野郎!」
急ブレーキを掛けた貨物列車の運転手に怒鳴られるが、そこに駅から放たれた炎系の魔法弾が運悪く貨物列車の運転室に直撃してしまう。
ドゴオォォォォン!
炎を直に喰らった貨物列車の運転手が悲鳴を上げながら地面に落ちると、エンジンに誘爆したのか貨物列車機関車の運転室周りが爆発した。
奇しくもバージョン2.0に入ってから何度目かの災難に見舞われたラッシュ駅から脱出したが、まだ油断はできない。
俺は石炭を窯にくべて少しでもスピードアップを図る。
列車がラッシュ駅の機関車車庫団地を抜け道沿いに線路との間に柵が設けられている箇所に出ると、早くも追跡者らしき武装した集団が馬に乗って柵を飛び越え襲ってきた。
「ターゲットはあの列車の中だ!なんとしても捕らえろ!」
やはり狙いは乗っている姫様のようだ。
俺が加勢するためいつものように機関室の屋根に登るよりも早く、客車の中の護衛兵が窓を開けてそこから大型矢や魔法弾で襲撃者達を迎撃している。
他二人の護衛兵も客車の進行方向側通路側出入り口から外に出て、懐から何やら光る玉を手に取るとそれを列車の外側に投げる。
すると、光の玉の中からまるで召喚獣のように動物が現れる。
剣を装備した方は馬に、柄の長い斧を装備した方は飛竜に騎乗して敵を迎え討ちに行く。
俺が固定銃座を展開して、少し遅れて車掌車の車掌も屋根に上がって両腕に小型盾とサブマシンガンを二丁持ちして援護を始める。
列車上で迎撃態勢が整い、皆で追跡者達を迎え討つ。
このゲームを始めてから何度か対人戦を経験していた俺は慣れたように、しかし今回は外で騎乗して戦っている味方に誤射しないように敵の体を撃ち抜いてゆく。
敵は全て主要な村・町や道路がある内陸側から攻めてきており、一応警戒はしているが、湾側から来る気配は今の所なかった。
だがその分、敵の数はかなりの数が来ていた。
地理的にオルティガから後ろの地域は初心者エリアであることに加え、農村部が多く田舎的であることも踏まえても、かなり異常な数である。
戦闘開始から数分経ち、本来戦闘向きではない車掌や護衛兵もダメージを食らい俺も何度か被弾したが、重症を負った者は客車内にいる姫が魔法で回復してくれたので致命的な劣勢にはなっていなかった。
楽観的に考えればサニーヒルズに着く前に敵を全滅出来るだろう。
回復薬をチビチビ飲みながら俺はそう思っていた。
その矢先、突然!
がシャーン!!
バリバリバリ・・・!
カランカランカラン・・・!
上り方面の線路のポイントの本線から外れて森の中へ向かう線路の方向から、物音を立てて沢山の木片が線路の上にばら撒かれる。
その内のいくつかが下りの線路の片側に乗り、アンクル・パフの車輪に踏まれ、バキバキ!バリバリ!と音を立てて折れるが、幸いにも機関車と列車が脱線することはなかった。
それと同時に森の線路から大きな物体が上り線を逆走する形で入ってくる。
それは機関車と同じサイズの台形で、色はオレンジに近い砂漠色をしており、車体の緩衝器より少し上の部分にガトリングガンのような形状の小さな機銃が二つ付いていて、そして台形の頂点面には長方形の箱が取り付けられ、その箱がゆっくり逆時計回りに回転すると戦車のような太い砲身が姿を現した。
「装甲列車だと!?」
装甲列車の存在自体はこのゲームでは珍しくない。 駅の中にいるか線路を走っていると、戦車や装甲車のような重厚そうな見た目に機銃やキャノンなど銃火器で武装した装甲列車が停車もしくは通過していることがある。 それらはある時はホームで弾薬の積み込みを行っていたり、全体が損傷して煙を上げた状態で駅に入ってきたり、NPC衛兵隊が所有している物もあり、逃走する犯罪者に向かって砲撃をする、など様々な場面を見たことがあった。
そして今、目の前に出てきた車両はやはり敵勢力の物で、その証拠に二つの機銃が仰角を上に上げると空を飛んでいる竜騎兵に向かって攻撃を行った。
バババババババババババババババ!!
機銃から放たれた無数の銃弾が竜騎士を襲う!
竜騎士は地上の敵に向かって斧を振り下ろす動作をしていたが、攻撃に気づくと動作を中断して回避行動を取りギリギリで避けれたが、二つの火線は執拗に追いかける。
俺は敵の装甲列車に攻撃を仕掛ける。
地上で戦う装甲戦闘車両は、どれも全面を装甲で覆われているが、動力となるエンジンはほぼ後方に配置される。 それはエンジンが装甲の外側にあったり、排気・排熱口があったりして基本的に防御が薄いことが多い。
だが目の前の車両は、出現した時に砲身が進行方向に向いていた為、こちらからは後面を見ているのだが、搭載された武装以外はエンジンらしきパーツも、排気口も見えなかった。
唯一それらしきものは細長いのぞき窓のスリットだけで、俺はそこに銃弾を叩き込んだ。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
固定銃座から放たれた弾丸はスリットの付近に直撃こそしたが、スリットの幅が銃口より小さいのか、もしくはその周りの装甲に弾かれて、効いている様子はなかった。
それでも攻撃を続けていると、敵装甲列車の砲塔がこちらに砲身を向けた、その次の瞬間!
ズガアアアアアアアアン!!
轟音が響いて一瞬の閃光が見えると、その後の光景が俺にはスローモーションのように感じた。
閃光が収まると砲身からは大きな砲弾が発射され、それがゆっくり回転しながらこちらに向かってくる。
そしてその砲弾は狙いをそれて、俺のすぐ横を通り過ぎていき、スローが解ける。
ドガガアアアアァァァァン!!!
砲弾が通り過ぎた後の重い風圧を感じると同時に俺の後方で、砲弾が列車が通過した退避線に立っていた古い給水塔に直撃した。
ギギィ~~~ゴゴゴゴゴ・・・・・・!
古い給水塔は支柱が中ほどから折れ、金切り音を立てて傾く。 その重心の重みに耐えきれず、根本から線路の方に倒れてくるが、ギリギリのところで回避出来た。
だが、それで安心することは出来ない。
モンスターの攻撃や木の矢、銃弾くらいなら何ともないアンクル・パフでも、あの砲弾の一撃を受けては無事ではないだろう事は簡単に想像出来る。
そこで俺は賭けに出た。
今でも装甲列車の主砲はこちらを向いている。
その発射口はこちらの機関砲の2連装並べた口径よりも大きく空いている。
それを逆に考えればそこの部分は装甲は当然無く、しっかり狙えば機関砲の弾2発あの穴の中に入れることも可能ではある。
俺の狙いは敵主砲砲身の中に銃弾を撃ち込んで、発射前の砲弾にダメージを与えて砲身内で爆発させようというものだ。
上手くいくかは分からない、だがやらねばこちらの列車が要人ごと粉砕されることは分かりきっていた。
その作戦を考えつくとその後の行動は速い。
俺は機銃を精密射撃可能な同時発射モードに切り替え、敵車両主砲砲身内を狙って銃弾を撃ち込んだ。
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!
二つの銃身から弾が同時に発射され、砲の発射口めがけて飛んでゆく。
弾丸は思ったよりは入らなかったが、それでも一部は砲身の縁に当たって砲口を歪ませていく。
これでも砲の命中率は下がるのだが、作戦的には砲弾を砲の中で暴発させねば意味がない。
と思っていると、敵車両砲身の奥から、カコン・・・と次の砲弾が装填された音が聞こえた気がした。
俺は更に意識を集中させ、砲口の中心を狙って発射する。
集中して撃ち込んだおかげかさっきよりも弾は砲口の中に入ってゆき、狭い空間をシュッ!・・・と銃弾が通り抜ける音と、キン!キン!カン!・・・と砲の奥に当たる音が聞こえた。
・・・・・・と思った、次の瞬間!
バガガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
凄まじい爆音と閃光が同時に俺に向かって襲い掛かった!
俺は思わず目を瞑ったが、姿勢とトリガーを引く指はそのまま動かさなかった。
そして、一刻おいて俺は目を開ける。
目の前はさっき見えていたはずの敵装甲列車の代わりに機関車の物ではない火薬の臭いがする大量の煙が見えた。
足元の感触と実際にそれを見て、まだ足場の機関車が健在であることを確認する。
後ろを見ると、前から流れる煙の切れ目の先に列車とその上に乗る人影と低空飛行する竜騎士の姿が見えた、その後ろの景色が流れていることから、列車はまだ動いていることを確認した。
そして再び前を見ると辺りに充満している煙が徐々に晴れて行き・・・・・・
・・・煙が晴れると、敵の装甲列車の姿が見えた。
だが、先程までとその形は少し違った。
こちらに向いていた砲身は先の方から大きく裂けて、花の花弁のようになっていた。
その花の中央と車体各所の隙間からは、黒い煙を上げている。
そのことからどうやら俺の作戦は成功したようだ。
だが、敵車両は今だ健在しておりこちらと並走を続けていた。
敵はしばらく沈黙していたが、やがて再び行動を始めた。
砲身が大破した際に同時に沈黙していた二つの機銃が動き始め、上空を向いていた仰角を下に降ろしそして向きを変えると二つとも俺の方に向いて・・・・・・
ババババババババババババ!!!
俺に向かって銃弾の雨を撃ち込んできた!
大量の弾丸が俺に向かって飛んできて、鋼の身体に、カンカンカンカン!・・・と音を立てて直撃する。
この身体が生身の人間であったら、間違いなく文字通りのハチの巣になっていたことだろう。
そしてその言葉の通り、この金属の身体もその猛攻には耐え切れず、HPがこのゲーム初めてから、初めてどんどん減って行くのを見た。
俺は銃弾の猛攻から隠れる為に、固定した銃座はそのまま、機関室の中に隠れた。
機関室の中に入ると俺は回復薬を一気飲みしてHPを回復すると、窓から外の前方の様子を見る。
敵装甲列車の機銃は俺が視界から消えてもさっきまで執拗に狙っていた飛竜騎士ではなく、砲身を破壊した俺自身を最優先して機銃弾をアンクル・パフめがけて乱射している。
撃たれた弾がアンクル・パフの車体や機関室の外壁に当たって非常ベルのような音を出している。
大砲で撃たれるよりはマシだが、ボイラーを貫通する危険は高い。
そして窓の外を見ていると俺はもう一つ重大なことに気付く。
列車が走っている線路が緩やかなカーブを終えて直線に入っている、その直線の遥か遠くの方には駅のプラットホームが見えていた。
この辺りはサニーヒルズ駅からアンクル・パフの最高速度で約5分で差し掛かる場所で、つまりここから後5分でサニーヒルズに到着してしまう事を意味していた。
それが分かると俺は仕方なく機関車の速度を、人が歩くよりも遅いスピードまで下げた。
急に速度を下げたため衝撃が列車全体にガクンと伝わった。
そしてその為か、客車内にいる姫が通路側の扉を開けて抗議してきた。
「おい機関士!なぜ汽車の速度を下げたのじゃ!」
「このまま最大速度で進むと5分でサニーヒルズに着いてしまいます、そうなってしまったら多くの民間人を戦闘に巻き込む事になります!危険ですので中に入ってて下さい!」
俺はそんな姫に向かって速度を落とした理由とそれをしなかった時の弊害を言って姫自身の安全を促した
襲撃してきている敵はいまだ殲滅出来ておらず、このままサニーヒルズに入ると多数の民間人を戦闘に巻き込む事になり、2次被害が発生する事は俺でも想像出来た。
俺に促され車内戻った姫はいまいましげな声を上げそれはドアの開いた隙間から俺の耳にも聞こえた。
「ええい!忌々しい!こうなったらわらわの最大級の魔法で敵共を蹴散らして・・・!」
「ひ、姫様!そのような事をされては敵に我々の位置がバレてしまいますぞ!」
「今更それがどうしたというのじゃ!他に手立てもなかろう!」
はっきり言って俺は姫のその行動が一番手っ取り早いと思った。
だが、爺の様子からして、その『最大級の魔法』は、無断で使用したら後々問題になる大規模破壊兵器のような物なのだろうと俺は認識した。
だが車掌と護衛兵達は疲弊して押されつつあり、俺も敵車両にマークされ迂闊に動けない。
どうしたものかと思ったその時!
俺は思い出した。
さっきまですっかり忘れていたが、BBのメンバーに救援を求める事を思いついた。
つい先日俺はBBに入団し、その報酬としてチーム客車を貰い、今でもの列車の最後尾に連結していた。
とはいえ、その客車にはチームメンバー以外には当たり判定がなく、見た目的に紛らわしいため普段は非表示にしていた。
俺はチャットを開き、チームメンバー全員に向けてメッセージを送る。
【現在、敵部隊と交戦中。 至急救援を求む。】
内容を簡潔にそう書いて送信すると、俺は非表示にしてあるチーム客車を表示させた。
石材を積んだ無蓋貨車の後ろにまるで幽霊のようにボヤ~ッとチーム客車が現れる。
形は普通の大型客車で、車体カラーはBBのチームカラーのメカニカルブルーで塗られ、車体側面前方/後方側に赤い通行止めマークの手前に黒で『BB』と描かれたチームエンブレムが貼ってある。
そのチーム客車からメッセージ発信から10秒立たずに早速キャット☆アイ出て来て、いつもの調子で話しかけてきた。
「何か異常なことが起こっているッ!大丈夫ですかJ-7ティ!どうして脱出するのですか?」
「よかった、味方の増援みたいだ」
「チィッ、敵の増援か!?」
キャット☆アイが出てくると味方からは歓声が、敵からは舌打ち交じりの嘆息が聞こえる。
それに続いて姫様も声を上げる。
「ええい爺の言う通りここで雑魚共相手に地形を変えてしまう程の魔法を撃てば後で面倒な事になってしまう・・・!良いか者ども!魔法を撃つ事が出来んわらわの代わりに、さっさと奴らを片付けてしまえ!」
「ありゃ?オルティガ姫様がいるのかニャ?」
キャット☆アイは声がした客車の中を覗くと、変装を見破って姫様だと言い当てた。
「え?知っているの?」
「うん。まあ、重要NPCはゲーム進めて行けば嫌でも覚えるから」
「なら話が速い、敵の狙いはその姫様だ。守ってやってくれ」
「フーム、装備からして敵はゴモドラ残党・・・」
「え?それも知っているの?俺知らねえ・・・」
「知りたきゃ後でお姉サンが優しく教えて、あ・げ・る・ニャ♡」
キャット☆アイがそう言いながら胸を強調するセクシーポーズを俺に見せていると、
「死ねぇ!」 ボシュッ!
「うおッ危ねッ! 野郎☆オブ☆クラッシャー!」
敵が魔法弾を撃ち込んでくるが、キャット☆アイは余裕でそれを躱すと即座に反撃、客車の屋根から勢いよく飛び出しそのまま相手を爪手甲でバラバラに一閃する。
そこに敵装甲列車から機銃弾が飛んでくるが、それもバック転しながら避けた。
「ありゃりゃ、装甲列車まで持ち出したのかニャ。 アレの相手はブラッドいないとキツイにゃー」
そう言いながらもキャット☆アイは空中で回転しながら爆乳の谷間からナイフよりも細長い針を一本取り出すと、それを装甲列車に向かって投げる。
投げた針は装甲列車の覗き窓の中に綺麗に入り、中から「グハァッ!?」という敵乗員の悲鳴が聞こえた
俺はその隙に再び屋根に上がり、銃座に着く。
今度は危険な敵機銃を部位破壊する為、そこに銃弾を撃ち込む。
だが、左側の機銃が即座に反応してこちらを向くと、単基でもおびただしい数の銃弾を撃ち返してくる。
「ウオワッ! やはり無理か・・・!」
俺は思わずまた機関室に引っ込むと、機銃座に着くのは諦め、小石を投げて味方の援護を行うことにした
ケチらずに拳銃の一つでも買って置くんだったな。
そうしている内に、チーム客車から再び味方が出て来る。
耳の長いエルフ族の男性で闇のように深い黒髪に、黒を基調とした夜間迷彩のような服を着ており、武器は対戦車ライフルのような見た目で、ロンメルが持っていた物よりも更に狙撃に特化したような形をしていた。
その名前は『レンジャー_666』と表示されていた。
レンジャー_666はチーム客車の後ろ側から屋根に登り、スキルで土嚢を設置すると姿勢を低くし双眼鏡で森の奥を偵察する。
それからすぐに何かを発見したのか、双眼鏡を下ろすと胸ポケットから無線機のような物を取り出し報告する。
その声はボイスチャットを通じてこちらにも (ここにいるチームメンバー全員に)聞こえた。
《森の奥に、敵兵員輸送車両と思わしき物を発見、直ちに破壊する》
なんだって、そんな物まで潜んでいたのか。
確かに兵員輸送車を使えばそこを拠点に戦力を次々投入可能だ、移動する列車にむかって継続して攻撃出来るのも無理はない。
レンジャー_666は無線機をしまうとライフルを構え、レバーを操作して薬室内の発射される前の銃弾を排出すると、懐のアイテムパックから出した通常の弾より大きく赤い色の銃弾を手動で装填する。
狙撃姿勢を取り、ライフルの下部に装着されたバイポッドと呼ばれる2脚の支柱を土嚢の上に置き銃身を安定させ、トリガーを引く。
すると、俺がいる位置から遠い場所にいるのか、もしくは銃の構造に消音機構が組み込まれているのか、大型のライフルが放つような大きな発射音は聞こえず、弓の達人が一本の矢を集中して放った時の一瞬空気を切り裂くようなーーー
シッ
という音が聞こえた次の瞬間。
ドッガアアアアアアアァァァァン!!
森の奥で爆発音と赤い閃光が起き、木の葉の影から空に向かって、燃料容器が爆発した時のような黒い煙の塊が尾を引いて昇っていった。
丁度そのタイミングでチーム客車からブラッドが現れた。
「J-7、無事か?」
「ブラッド~、J-7の援護に向かって欲しいニャ~!」
キャット☆アイからそう言われると、ブラッドは客車の最後尾から、その3メートルの巨体に見合わない高速移動ですぐにアンクル・パフの運転室の中に入った。
「状況は?」
ブラッドに聞かれると俺は運転窓を指さし、一緒に外を見る。
「敵装甲列車に集中攻撃を受けている、あれの機銃は俺の防御力では一たまりもない」
「ふむ・・・主砲が、ひしゃげているな。 お前がやったのか?」
「うん、あたしが来たときはすでにその状態だったにゃ」
「俺が隠れていても執拗に攻撃してきて、凄く揺れるし第一アンクル・パフの車体が持つとも思えん。 それに村まであと3分て所まで来てしまっている」
「よし、では早急に片づけよう。 俺が奴の注意を引いて装甲をこじ開ける、J-7はその隙に弱点を攻撃しろ」
「了解、よろしく頼む」
ブラッドは俺から石ころを数個受け取るとそのまま運転室から線路に降り装甲列車に向かって石を投げつける。
カン!カン!キン!カン!
攻撃に気付いたのか装甲列車は二つの機銃を向けるとブラッドに斉射する。
バババババババババババババババ!
だがブラッドはスピードだけでなく、俺よりも硬い防御も備えており、壁役らしく銃弾を受け止めて弾きながら前に進む。
俺はその隙に銃座に戻り、攻撃の合図を待つ。
「装甲の厚い敵の対処は、貝類と同じだ。 装甲の隙間から、こじ開ける!」
ブラッドが装備している巨大な大剣の刃先からビームが発現すると、それを装甲列車の砲塔と車体の間の隙間へ後ろから前にかけて斬り通す。
ブォン! ビィーーーーーーーーーッ! ピィン!
大剣が装甲列車の間を斬り抜けると、ブラッドは大ジャンプで再び後ろ側に着く。
そして今度は剣のミネ側を構え、横スィングで砲塔を叩く。
ガゴコォン!
すると、まるでダルマ落としのように砲塔が装甲列車の車体から吹き飛び、俺のいる位置から車内が丸見えになった。
俺は砲塔結合部の丸い円の中に、発射されずに残った主砲の弾を見つけ、それに向かって銃弾を叩き込んだ。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!
固定銃座から連続で発射される機銃弾は、こちらに向かって銃を構えた敵車乗員の身体の左半身をちぎりながら飛び、数発が砲弾への弾着が確認された、次の瞬間!
ドギャガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
カッと閃光が出ると、あっという間に車内が見えなくなる程の激しい炎が砲塔結合部から噴き出した!
先程煙を出した隙間や覗き窓、砲弾の爆発から少し遅れて爆発四散した機銃砲塔からもまるで手持ち花火のように、穴の開いた水風船のように火花が噴出してくる。
さらにその次の瞬間には!
バギャギャゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
さらに大きな爆発と閃光が発生し、俺が防御姿勢をとるとなにやら金属片が次々と俺の身体に当たり、アンクル・パフにも大きな物体が当たったのかこれまでにないくらい大きく揺れて俺は機関室の屋根の上から振り落とされ、幸運にも炭水車の石炭の上に落ち、閃光が収まると、敵装甲列車がいた所には残骸と大小に燻る炎と巨大な黒い焦げ跡のみが残っていた。
そういった事が発生した少しの間沈黙が戦場で発生したが、ゴモドラ残党軍・残存兵力が捨て身の特攻を行い、それをこちらが迎撃、一人残らず殲滅し戦闘が終了した。
襲撃してきた全ての兵士と兵力が湧く移動拠点、主力の装甲列車を破壊し、こちらは多少の負傷者が出たが死人はなく、護衛対象も無事だ。
我々の勝利だ。




