15. ラッシュ駅戦後状況ー2
「J-7!あんた、無事だったのね!」
「良かった、君のことを心配していたんだよ」
「・・・であります」
ジルとバロンとロンメルが俺の姿を見つけて駆け寄って来た。
3人は俺にこの駅で起きた事件とその顛末を教えてくれた。
ここに来る路線の途中で俺とキャット☆アイが倒した主犯格の10人の他に、俺が想像した以上の数の強盗団が駅を占拠し、そしてバロン達含むプレイヤー達とNPC衛兵達の活躍により、鎮圧することに成功した。 戦闘の中で死亡判定が出た犯罪者は牢屋の中にリスポーンし、それ以外の気絶や瀕死の犯罪者も全員拘束された。 バロン達は衛兵から事情聴取を受け、それが終わり事件解決からいまだ騒ぎが収まらず多くのプレイヤー達でごった返す駅構内にいると、俺の姿を見かけて近づいてきたらしい。
俺は俺がチャットした時には用事があったのに何故騒ぎに巻き込まれたのか聞くと、初心者の俺が何をするのか気になって、予定を変更して来てしまったようだ。 俺は何の用事があったのか聞かれ、さっき終わったそれを伝えた。
「・・・なんでそういうことを早く言わなかったの!?」
「すまない、犯罪者相手とはいえ対人戦は嫌うかもしれないと思って、予定が空いてこちらに合流した時に改めて説明するつもりだったのだが。 それに時間が経過して視界の聞かない夜に戦闘を仕掛けるのは不利だと思ったし、問題を早期に解決したいという思いもあったから、それで・・・」
「なんという気遣い・・・、でも僕達は対人戦は慣れているよ。 別に積極的に戦っているわけではないけど、このゲームでは悪質なプレイヤーが他のプレイヤーを襲うことが初期のころからよくあったからね」
「自分も任務の途中で悪意ある者たちに妨害を受けたことがあります」
「それに君の目的は私利私欲ではない立派なものだから、そういうことなら僕達は喜んで力を貸すよ」
「だから今度からは目的をちゃんと言いなさいよ!」
「・・・そうか・・・分かった、ありがとう」
バロン達にそう言われ、次から気を付けるようにする上で礼を言うと・・・。
ふぁん、ふぁん。
と、警笛を鳴らしながら2番ホームに、四隅に黄色と黒の警戒色を付けた保線車両と思わしき機関車が俺の機関車の横に到着した。
その機関車から、レイニーとクラウドの駅員二人が降りて来た。
俺は彼女にクエストのことも含めて話かけた
「レイニー、何故ラッシュ駅に?」
「ああ、J-7!無事だったんだね。 あたしはここの被害を調べにきたんだよ、もちろんあんたの安否を確かめるためにもね」
「そうか、それで依頼のことなんだが・・・」
「うん・・・もしかして強盗にやられちまったのかい?」
「いや、荷物は無事だ、問題は・・・」
俺はレイニーに激しく損傷した護送貨車を見せた。
「あー、これは・・・また派手にやったねぇ」
「すまない、詳しく言うと片側の扉と鍵は賊にやられて、屋根の大穴は俺が車内の敵と素早く中に入るために空けちまった。 これは借り物だから、報酬から修理費減額かな?」
「ん~、そうなるね。 でも積荷の貴重品の金塊は全部無事だし、貨車の修理費はかなり安いからあまり問題はないね」
「そうか、分かった。 だが、次からはこういうことにならないように気を付けるよ」
「フフ、あんたのそういう真面目なとこ、いいね」
レイニーとそんな会話をしながら、俺は金塊輸送の依頼者の到着を待った。
そして依頼者に金塊を渡し、破損した貨車の修理分を差し引いてもまだ高い報酬を受け取りクエストを完了するとバロン達と別れ、貨車をクラウド駅の修理工場へと運ぶため、レイニーの乗ってきた保線車両と重連する形で駅に向かった。
修理工場まで貨車を運ぶと、修理作業のため工場に残るレイニーと別れ、自分の列車を車庫に入れると、俺は自室のベットで横になり、ログアウトした。
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・・・所変わって。
いまだに喧噪の中にありつつ、徐々にいつも通りの光景へと変わりゆくラッシュ駅を上からの視点でモニター越しに見ている人々がいた。
ここは『運営ルーム』
VRMMOゲーム「SoFO」の世界を管理し、ゲーム世界をより良くするため日々頑張っている運営のメンバーたちが様々な作業をしている場所。
そこの会議室にあたる部屋では、運営メンバーの内、『ゲームマスター』と呼ばれる最高位の人々が月に1、2回ほど行われる話し合いをするため集められていたが、開始直後にラッシュ駅に異常事態が発生したため全員が中央のモニターに注目していた。
発生から数時間後、終息を確信したためか、メンバーの一人が口を開く。
「いや~、一時はどうなるかと思ったけど、何事もなく収まってよかったね」
「当たり前だ。 あれ以上ひどくなったら、我々が動く事態になっていたぞ」
穏やかな表情で口を開いた者にもう一人が鋭い目付きで反応する。
「で、事件は無事に終わった。 その次は?」
と3人目が疑問を呈する。
「その次?」
「あれだろ、占拠された駅を奪還するため懸命に貢献したみんなに報酬を与えるべきだろ」
はてなを浮かべた4人目に5人目が解説する。
「そうですね~、まずお金は確定として、あとは消費アイテムか素材でしょうか?」
「あの「J-7」というプレイヤーには特に良いものをやるべきだろう、彼は初心者にしては初めての対人戦で4人も主犯を倒したしな」
ふんわりした雰囲気の6人目が全貢献プレイヤーへのプレゼントを考え、7人目が特定のプレイヤーへの特別報酬を提案する。
「ああ彼ね、ちなみにどんなプレイヤーなんだ?」
「来歴な、ちょっと待てよ・・・えーっと、バージョン2.0開始の日に初めてログインしてるな。 それからはモンスター狩りよりも鉄道での輸送クエストを中心に活躍しているようだ」
「レベル的にも能力スキル的にもクラウド~ラッシュエリアのモンスターなら楽に勝てるのに、行動範囲拡大クエストを受けず、開始直後より高性能の列車が増えているのに自分はまだ初期の車両使っている、まあ変わり者というか他とは少し違う奴だな」
「だが、輸送分野への貢献は全プレイヤーの中でも高い部類なのは確かだ。そのおかげか、あの周辺のNPCたちはサービス開始時よりも豊かになっているし、それに鉄道事故を一度も起こしてない優秀なヤツだからな」
「では彼には駅舎解放の分に加えて主犯を倒した分を賞金首撃破として送って、それからまだ行動範囲拡大をしてないからそれも報酬にしようか。 行ける範囲は、彼の操縦技術の腕なら、エル・グランテとサキュバスの集落まで伸ばしてもいいかな」
他のメンバーの意見を聞いて、今まで喋らなかったリーダーの7人目が口を開く。
「「「意義なし」」」
「いいんじゃない?」
「OKですよ~」
「彼の実力ならそれくらいがいいだろう」
他のメンバーの承諾が取れると、7人目は後ろ斜め上を向いた。
「議長もそれでよろしいですね?」
7人目が『議長』と呼んだ8人目、他のメンバーよりも高い所に座っている人物。
見た目は平均20代の7人のメンバーよりも明らかに幼い少女は、一言も発さず、ただコクンと頷いた。
「それでは、議長の許可が下りたので、そろそろ本題に入りましょうか」
7人目はそう言って、本題の会議を始めた。
ゲームマスターたちの談義はまだ終わりそうにない。
それでも、定時頃には終わった。
次回はキャラ紹介などをやるつもりです。




