宣戦と休戦
「なんだ、これ!?」
剣を交えていた二人の間に割って入るように突き刺さる巨大な矢に風人は声を上げて驚く。グリオスは俯き、口を開いた。
「…これはガルダ王国の軍事部で開発されていた魔法を組み込める床弩の矢だ」
「王国の!?これもお前が!?」
再び身構える風人にグリオスは首を横に振る。先程までの荒々しい態度とは一変、冷静──と言うより大人しい雰囲気だった。
「違う。昨日今日連絡して軍を派遣できる距離に、王都はない。それにこの床弩が完成していること自体、俺には知らされてなかった」
矢から発生した魔力の線がうねり合わさり、一つの輪となった。
『グリオスよ、見ているな?私は悲しい。優秀なお前がまさか暗殺者と内通するなど。誰が分かっただろうか。だが起きてしまったものは仕方ない。この矢を宣戦布告とさせてもらう。せいぜいその利口な頭で言い逃れできるよう、生き残るのだな』
魔法でできた輪の中で身なりの良い男がペラペラと話している映像が流れている間、剣の柄を持つグリオスの手が力み、体は僅かに震えていた。しかし、
(ん?これって…)
風人はグリオスとは異なり、首を傾げていた。それを状況が呑み込めていないものだと思ったグリオスは矢の飛んで来た方向に向き、風人に背中を見せた。
「この大陸最強の軍に殺戮されたくなければ、ここから立ち去れ」
長剣を勢い良く振り抜くと、月明かりで刃が光った。
「お前はどうするつもりだ?」
「…まだ、これが俺への王の素質を試す試験、という可能性がある。ならば立ち向かうのみ。お前の首など些末なことだからな」
「…一つ良いか?」
「駄目だ。すぐに立ち去れと言っている」
「そう言われてもな、俺も後悔したくないんだけど」
風人の言葉など耳にも入らない様子で離れていってしまった。
「お前も死にたくはないだろ?」
それでも轟音を立てて後を追いかけ、当然のように追い越した。
「聞いてくれても良いんじゃないか?」
自慢気に腕を組み、それに乗って問い直す。差し出した手は、若干の迷いを含みながらも、確かに掴まれた。
シ「逃げなくて良かったのー?」
風「いや、もうこれ以上逃げちゃいけないかなって…」(更新日から目を逸らしつつ)
シ「あーお察しって奴だねー」
次回 暴け暴れて
シ「そいえば前回の次回タイトル発表も忘れてたねー」
風「ねー」
シ「私っぽく言っても許されませんよー」(真顔)




