謝罪
「何事だ!?」
身なりの良い男は慌ただしくなる屋敷内を見て側近に問いただす。
「先日の村への侵入者が現れまして、確保に手こずっている次第で…」
「庶民風情に何を手こずっている!?さっさと増員して引っ捕らえろ!!どんな手段を使っても!!」
その小柄な側近も最近変えたばかりで叱責に頭を抱えて怯える。「ちっ、どいつもこいつも…」と言いかけた時、
「…今、どんな手段でもって言った?」
「誰だ!?勝手に俺の屋敷に上がり込んで!!」
コツ…コツ…と、どこからか聞こえる足音と共に現れる少年。
「お前、あの協会の小僧!?ふ、ふん。あの老いぼれでも助けに来たか?」
「そうだよ。でも力ずくじゃない」
「何?」
予想通りと言わんばかりにニヤリと笑う。
「交渉しない?村長さんにも悪い話じゃないと思うよ」
「ふん、庶民と握手などしない」
差し出された小さな手を、村長アズベルトがどんな思いを持って払い退けたか。それは本人以外知る由もない。
「だが話とやらは聞いてやっても良い」
◆
突如発生した煙幕が晴れる頃には、風人は兵士達に両手を後ろで縛られていた。地面に押さえつけられるのに抗って見る世界には、テシナと、
「何でだよ!?テシナ!!」
「ごめんね、お兄さん。でもお兄さんのおかげで作戦は順調だよ」
捕らえられたプラシアがいた。協会でよく一緒にいた女性がプラシアの両手を後ろで抑え、テシナの隣についてきている。プラシアは俯いたまま、何も言おうとはしない。
「これからお姉さんと引き換えに司祭様を村長から返してもらう」
「そんなことできるわけ…」
「できるよ。お兄さんが大事にしているお姉さんがいれば、お兄さんを簡単に止めることができる。それだけで十分な交渉材料だよ。それに知ってるよ?このお姉さんが村長の結婚相手として神託で選ばれた人だってことを」
「っ!?」
風人の驚く顔にテシナは子供っぽくも邪悪な笑みを浮かべる。
「お姉さんを差し出せば村長は喜び、司祭様も無罪放免。神託の通りに収まるべきところに収まっただけだよ」
「その通り、お前のやっていたことは神に対する立派な反逆行為だ」
テシナが来たのと反対の通りから身なりの良い男が風人達のいる広場に馬車に乗って入って来た。馬車から降りる村長の後ろからは側近が痩せこけた司祭を連れていた。
「さあ、その娘を渡して貰おうか」
「行くよ、マリアさん」
「…ええ」
テシナが隣にいる女性──マリアに目配せをすると、マリアはぎこちなく頷き村長の方へと向かう。一歩、一歩と近付く度に風人は前に出よう、プラシアを助けようとするが取り押さえられていて動けない。悔しそうに歯軋りする風人をテシナはふと一瞥して、
「ごめんね、お兄さん。人間は皆自分勝手な生き物なんだ。自分の都合の良いようにしか動けない」
笑いもせず、どこか悲しげな表情でそんな言葉を口にした。風人は遂に抵抗を止めた。
ただプラシアが遠ざかって行くのを、ただ村長がプラシアを奪うのを、ただ自分が何もできないのを、傍観するしかなかった。
「約束が違うじゃないか!?」
そう聞こえたのもまだ遠い所の話のように思えた。
次回予告
シ「プラシアバイバイ記念、壮行か──」
プ「まだまだ!!速いですよ!!」
シ「えーこれでフェードアウトじゃないのー?」
プ「…しちゃうかもですね」
次回 理由
シ「えー悲しいよー」
プ「えっ(まさか寂しがってくれるなんて…そうですよね。もう長い付き合いですもんね)」
シ「プラシアがいなくなって一人勝ちなんてー」
プ「私の感動返してください!!」
シ「(2017年からの)長い付き合いだからねー」
プ「リアルな数字もNGです」




