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巻き込まれる運命

 テシナに提供された教会の客室で腰をかけた風人は深くため息をついた。


 「ふぅ、ああは言うけどどこまで信じて良いんだろうな」

 「ザーズ教、と言ってましたけど」

 「やっぱりないよな。プラシアが教えてくれた中には」

 「はい、村に伝わる書物にはそのような宗教は書かれていません」


 いつの間にか、風人の膝にはシエルの頭が置かれていた。それを羨ましそうに見ながら、プラシアは隣に座り答える。


 「ですがそこで違えてしまってはカザト様のように疑われてしまいます」

 「全然気付けなかった。ありがとなプラシア」

 「…でしたら、お礼を下さいませんか?」


 プラシアが体をもじもじと動かしながら控え目に問う。


 「私も…カザト様の膝を枕させて下さい!!」

 「ダメーっ!!お膝は私のー!!」

 「いっつも一人占めしてズルいです!!」


 猫同士目を見開いて睨み合う二人に挟まれて、風人は何もできなかった。



 風人達を客間に案内した後、いつの間にか夜も更けた大聖堂にて、


 「…テシナ君、本当にこれで良かったの?」


 一人、ザーズ教のシンボルである剣の十字架に跪いて祈るテシナに、彼の親ほどの年齢の女性が話しかける。


 「これで良いんです」


 月光が窓から差し込み、立ち上がるテシナを聖人のように見せたが、


 「全ては神のお告げ通り、ですから」


 彼の目だけは対称的に光が失われていて、女性の心配は余計に増すばかりであった。



 「さて、これからどうしましょうか?」

 「…いや、プラシアさん」

 「何か言いましたか?」

 「い、いいえ」


 シエルが決して譲らなかった風人の膝枕の代わりに風人を膝枕させて、プラシアは満足そうな顔をしている。風人としても幸せな心地だが彼女の胸の圧迫感により話し辛かった。


 「まさか、プラシアを誘拐した元凶がここの領主とは。どうりで兵士に絡まれたわけだ」


 「まあ、一番近い村だから当然と言えば当然か?」と軽く笑うが、プラシアの表情は雲っていた。


 「私、助かって…カザト様に助けられて良かったのでしょうか?」

 「プラシア…」

 「だって、私があのまま捕まっていればこの教会の方達もカザト様も危ない目に合わずに済んだかも知れないんですよ、それを私なんかの為に…え?」


 自虐的に主張するプラシアの手を強く握る。風人の思惑通りプラシアの口が止まった。


 「そんなこと言わないでー」

 「うん、シエルの言う通りだ。気に病まなくて大丈夫。プラシアももう家族も同然なんだ。家族はなんとしても守るよ」

 「私はー?」

 「勿論シエルも」

 「えへへー家族ー」


 シエルが嬉しそうに笑いながら、頭を風人に擦り付ける。


 「それに、宗教迫害なんてする領主どうせプラシアを手に入れてもろくなことしてなかったろ?歪んでるんだよ、きっと」



 ワインを含み、肘を付く身なりの良い青年は部下の報告に顔を歪める。


 「何っ!?例の女を取り逃しただと!?あの盗賊共どういうつもりだ!!あの女は俺の物だぞ!!」

 「お、恐れながら申し上げますと、女と一緒にいたのは盗賊ではなく青年と少女でした。おそらく何か不備があったのかと…」

 「そんなことはどうでも良い!!」

 「ひぃ!?」


 青年のあまりの剣幕に部下は地面を這いずり壁へともたれかかる。


 「なんとしてもすぐに捕らえろ!!兵士でも平民でも使っ…なんならあいつ(・・・)を使え、そうすれば反抗的な平民共も協力するさ」

 「は、はい!!」

 「それでも歯向かう者は…」


 歪んだ顔が笑みを取り戻そうとも、


 「殺せ」


 心の歪曲まで直ることはなかった。

シ「さて、本編終わったねー」

プ「そうですね…」

シ、プ「すぅ…」

シ「ご主人様の膝は私のー!!」

プ「カザト様の膝は私のものです!!」

シ「ずぅーと私のだったからこれからも私のなのー!!」

プ「そんなのズルです!!今まではシエルさんが独占されたんですから、これからは私だって良いじゃないですか!?」

?「…元々私のものなんだけど!?」

次回 反旗

プ「何か今私達じゃない声がしませんでした!?」

シ「そうー?でも一つ言えることはー」

プ「なんですか?」

シ「…あなたのものでもなかったよねー?」

?「ぐふっ!?」

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