人の実情
「別に、お兄さん達の為じゃないよ。僕の恩人の為、そして…この村の皆の為だよ」
体を寄せ合う人達をバックに振り返りながら言う小柄な少年、テシナの言葉にはどこか重みを感じる。
「皆の為?」
「…それはカザト様に何かして欲しい、ということですか?」
状況が飲み込めない風人に代わり、プラシアが横から応答した。
「話がはやくて助かるよ、獣人のお姉さん」
「…急がないといけないのはそちらですよね?それに人間だからと言って不利な立場にいるのはあなたも同じですよね?テシナさん」
冷静に敵意を交わす二人の間に入ったのは風人だった。
「まあ待てプラシア。話くらい聞いたって良いだろ?」
「お兄さんの言う通りではあるね。お兄さん達と喧嘩したいわけじゃないし」
攻撃的な姿勢を向けていたテシナは背中を見せて奥へ歩き出した。
「村長がこの協会の司祭様を正当な理由なく監獄してしまったんだ。お兄さん達には司祭様を助け出して欲しい」
「…それは本当にその司祭様は何も悪いことはしていないのか?」
「当然だよ。ザーズ神に誓って」
「ザーズ神?」
惚けた風人の反応に、テシナは神に祈ろうと合わせようとした手を止め目を見開いた。
「え?知らないの、お兄さん」
「…も、もう!!やだなカザト様は。お教えしたじゃないですか」
プラシアが必死に取り繕うも、風人は首を傾げていた。そんな二人に呆れてため息をつくテシナは、
「三大宗教の中でも庶民層によく広まっている宗教なんだけど、ザーズ神すら知らないなんてお兄さんどんな田舎から来たの?」
と説明して首にさげていたネックレスを見せる。その先には短剣の形をしたロケットが付いていた。一番にシエルが食い付くように見る。
「わーピカピカだー」
「これがザーズ教の証だよ」
「そ、そうですよ。忘れちゃったんですか?」
「あ、ああ…そう、だったな」
風人の声は先細りになっていた。それにも気にせずテシナは話を進める。
「とにかく、司祭様は無実の罪で囚われているんだ。でも僕らでは兵士達には勝てっこない」
「だからカザト様に戦ってもらおう、と?」
「もちろんタダとは言わないよ。お兄さん達も長旅で疲れてるでしょ?少しだけど、ベッドと食事を提供する。それ以上欲しい物があるなら村長の物を盗っても構わない。どうせ重税で買った物だろうし」
「どうしますか?カザト様?」
プラシアとテシナは揃って風人を見る。シエルもつられて見るが状況をよく分かっていなさそうだった。
「分かった。引き受けるよ」
風人は頭を重そうに縦に振る。テシナの顔が緩んだ。
「良かった。流石司祭様の神託だ。間違いはなかったんだ」
「神託?神託ってなんだ?」
「ああ、話してなかったね。司祭様は神託と言って神様からお告げを聞くことができるんだ。それで、獣の耳を持つ美人を嫁にすべし、との神託が村長に出たんだ」
神託の内容に風人とプラシアは息を飲んだ。
今回の懺悔
シ「月1投稿とは言ってましたがあまりにもギリギリですねー」
風「しょうがないことだよ。作者だって忙しいんだから」
シ「タイトルも懺悔に変わってるし」
改めて…
次回予告
風「さて、そんなことより今回の話しよう」
シ「私の出番が少なかったー」
風「それもしょうがなくないか?本編のシエルはアレだし」
シ「アレな私の出番考える時間もないのー?」
風「そうそう…ってそんなことはないと思うよ、うん」
次回 巻き込まれる運命
シ「このコーナーが無くなる日も近いー?」
風「そんなことはない!!絶対!!」




