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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

シラクーザ王国編

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89.センパイの教え

 ギホンの街の屋敷。

 そこを訪ねたおれは応接間に通された。

 しばらく待ってると、フィオナとマリがやってきた。

「「カケルさん!」」

 二人が一斉に駆け寄ってきた。おれは立ち上がって迎える。

「よかった、カケルさんが来てくれて」

 フィオナが心の底からほっとした、って顔で言ってきた。

「どうした」

「なんかどうしたらのいいのかわからなくて。こんなに大きなお屋敷なんてはじめてだから……、それに用意されたドレスも豪華すぎて」

「召使いっていう人達が色々してくれようとして……」

 マリも言ってきた。姉同様困ってるが、おれを見てほっとしてる。

「召使いはともかく、服は残念だったな」

 二人は今までの格好のままだ。

「こんな街でも姫様に用意する服はさぞ良いものだったんだろうに」

「そうなんですよ。だから余計に恐ろしくて着れません。これちょっと汚したらうちの店の売り上げ何日分とか。もし破いたりしたら今月の売り上げ吹っ飛ぶんじゃないかとか考えちゃって」

「なるほどな」

「ご飯もね、何を食べたいのって聞いてきたのはいいけど、わからないからあるものでいいよっていったら、何十品ももってきちゃってびっくりした」

「王族の食事だな、そりゃ。何十品もあって、食べたいものをちょっとずつ摘まむんだ」

「なんですかそれ! 王族の人ってみんなそういう食事をしてるんですか?」

「それは……怖いです」

「まあまあ。それに慣れるか、しっかりと命令して好きな風にやり方を変えてもらうかだな。女王になればわがまま放題いえるぞ? 倹約したいから全機おれに続け! とかさ」

「えええええ、そんな事もできちゃうんですか」

「王様だからな。国民全員一ヶ月銀貨一枚生活だ! なんてお触れも出せる」

「銀貨一枚か……なんとかなりそう」

「ならないならない」

「えー、なりますよ。ねえマリ」

「うん、頑張れば」

「そりゃ相当頑張ればな」

 姉妹と世間話をした。

 食堂の看板娘だったフィオナはさすがに社交的で、戸惑うこともあったけど、おれと話してる内に緊張とかそういうのがほぐれてきた感じだ。

 一方でマリは話しこそするけど顔が晴れない。

「どうしたマリ、具合でも悪いのか?」

「ううん、何でもないです」

「なんでもないって顔じゃないな。心配ごとがあるなら言ってみろ、おれがなんとかしてやる」

「カケルさんにご迷惑――」

「言ってみろ」

 強く言った。

 ここで遠慮されるのがかえって迷惑だ。

 しばらく見つめてやると、マリは覚悟して、おずおずと切り出した。

「王様の世界が……怖くて」

「好き勝手にやって良いんだぞ。なんだったら庶民派の女王をやってもいいし」

「でも、さっき……」

「さっき?」

 首をかしげて聞き返す。

 マリはうつむいて答えない。

 横のフィオナを見た。姉の方は苦笑いした。

「なんかおじいさんみたいな人がやってきて、わたし達に王族らしく振る舞うようにとかなんとか、そういうのをいっぱい言ってきたの」

「ああ、責務とかそういう類のものか」

 フィオナが頷く。

 なるほど、もうそういうのが始まったのか。

 それは予想してたが、もっと後の事だと思ってた。

 戦況が進んで、優勢になってから調子にのってそうなるもんだと思ってたが――意外と早かったな。

「だから、女王様でも国のしきたりとかに従わなきゃいけないのかな、って」

「ふむ。よし、今からカランバに行こう」

「「え?」」

 姉妹は声を揃えた。

 苦笑いも落ち込みもふっとんだ、こいつ何を言い出すんだって顔だ。

 そんな二人の肩に触れて、ワープした。

 くじ引きのアイテム、ワープの羽根。おれが行ったことのある場所ならどこでも一瞬で行ける。

 飛んできたのは、カランバの王都・メテオラ、王宮にある女王の私室。

 そこにちゃんとリカがいた。

「リカ」

「カケル!」

 リカが立ち上がって、おれの元に駆け寄ってきたが、一緒に連れてきた二人をみて足が止った。

 二人がいなかったら勢いのまま抱きついてきただろう。

「そっちの二人は?」

「フィオナとマリ、姉妹だ。こっちはリカ・カランバ。カランバ王国の女王だ」

 双方を簡単に紹介した。

「え、え、えええええ?」

「カランバの女王様? それにここって?」

 フィオナとマリがものすごく驚いた。

 一方のリカは落ち着いてる。

「カケルとワープするのは初めてなの? その二人」

「……そういえばそうかもしれない」

 まあ、それはそれとして。

 おれはリカに言った。

「前にした話、コモトリアの話」

「あれね。じゃあこの二人が王族の血筋」

「そうだ。で、一戦勝った直後に早速どこぞのじいさんがしゃしゃり出てきて、しきたりだの責務だの言い出した」

「ああ」

 リカはにこりと微笑んだ。

 話を聞いてすぐに理解したみたいだ。

 なんでおれが二人をここに連れてきたのか、自分に何を求められてるのか。

 リカはかつて縛られてて、今は自由にやってる。

 それのセンパイとしてのアドバイスをしてやれというおれの無言のメッセージを理解したのだ。

「しばらく預けてく、いいか?」

「うん、まかせて。その代わりお願いを一つ聞いて?」

「なんだ、言ってみろ」

「カケルのために用意したハーレム、カケルがあまり来ないからみんなさみしがってるの。話してる間に可愛がってあげて?」

 おれは一瞬キョトンとなった。

 おれがあまり来ない事はない。むしろちょこちょこ来てる。

 リカがおれのために作ったハーレム、集めた女の子達もちょこちょこあって、可愛がってやってる。

 なのにリカはそう言った。どういう意味だ?

 疑問に思ったが、すぐに理解した。

 フィオナとマリが驚いて、リカを見つめてるのが見えたから。

 リカはおれに言ってるんじゃなくて、フィオナとマリにいったのだ。

 女王はこんなに好き勝手にやってる、男のためにハーレムを用意してやれるくらい好きにやってるぞ、というメッセージだ。

 やっぱりリカは賢い、出会った時からずっとこんな感じで賢い。

 無言のメッセージに、無言のメッセージを返してきた。

「ああ、そうさせてもらう」

 あとでリカの事も可愛がってやろう。そう思って、おれは席を外したのだった。

     ☆

 夜、ギホンの屋敷の応接間。

 ワープでフィオナとマリを連れて帰った。

「ありがとうございます、カケルさん」

 フィオナがお礼をいってきた。

「結構話が長かったな、何を話してたんだ?」

「えっと……最初の半分くらいはほとんどカケルさんのノロケ話でした」

「七割くらいだったよお姉ちゃん」

「うんそれくらいあるかも」

「おいおい」

 そういいながらも、おれは呆れてはなかった。

 リカは賢い女だ、おれの意図を理解して、遠回しに裏の意味をもったやりとりをして遠ざける程の女だ。

 そんなリカがただ時間だけを使ってノロケる訳がない。

(緊張をほぐすためだろうな)

 エレノアが言う、おれもそう思う。

「ちなみにどんなノロケだったんだ?」

「えっと……自分は最初どこに行くのにも監視がついたけど、カケルさんのおかげでそれがとかれて、とか」

「あの頃の話か」

 頷くおれ、そして確信する。

 その話から入ったリカはやっぱりただノロケただけじゃない。

「うん、あの頃のリカはひどかった。こんな目をしてた」

 おれは無表情の顔を作って、頑張ってレイプ目になった。

「何をしても意味ないから、何もしないでいよう、って感じだったな」

 言うと、姉妹が頷いた。

「聞きました。それで勇気出してみたけど、結局ダメで」

「でもカケルさんがいてくれたから、力になってくれたから何とかなった」

「カケルさんにものすごく感謝してるって。ハーレムも今はまだ小さいけど、カケルさんにふさわしい女の子をどんどん見つけて、どんどん増やしていきたいって」

「うん。なんか大臣の人から遠回りにやめろって言われてるけど、それも無視してるって
「そうか」

 姉妹の話を聞いて、リカがうまく話の中に必要なものを折り込んでくれたことを確信する。

 そのまま二人から話をきいた。

 話が盛り上がってきたところでドアが開いた。

 初老くらいの男が現われた。

 姉妹の表情が強ばった。

「もどられましたかフィオナ様、マリ様。どこに行ってらっしゃったんですか?」

「おれと一緒にいた」

 座ったまま男を見た。

「ユウキ男爵……困りますぞ、いくら男爵であろうと、お二人を勝手に連れ出すのは困ります。そもそも――」

「わたし達が頼んだんです」

 マリが男の話に割り込んだ。

 彼女を見た。語気の割には自分で手をぎゅっとつかんで、震えを止めている様子。

 勇気を振り絞って反論した、って感じだ。

 虚を突かれる男、マリは更にたたみかける。

「わたし達が男爵にお願いして、どこかに連れてってもらうのはいけない事?」

「そ、そうは申しておりません。わたしはただ勝手に――」

「勝手にしたらダメなの?」

 今度はフィオナが口を開いた。

 マリをみて、「うんわたしも」と小さくガッツポーズしてからの発言だ。

「何をするにしてもいわないとダメなの? 許可をわざわざ取れって事なのかな」

「許可――そうではありません」

「じゃあなんですか?」

「その……お二人とも大事な御方です、何か危険がおこる可能性も――」

「カケルさんのそば以上に安全な場所ってどこ?」

「そんなのないですよね」

 姉妹がタッグになってたたみかける。

 いいぞ、っておれは思った。

 もし突っ込もうとしたらいくらでも突っ込める、穴だらけの理論だ。

 だがそれでいい、むしろそれがいい。

 おれがさせたかったのは、女王としてわがままをいうことだ。

 だから穴だらけの理論を押し通すのはむしろ良いこと。

「つまりわたし達は囚人にならないとダメですか? あなたにずっと監視される囚人」

「いえいえ、そんな事は……」

 男はたじたじになった。

 姉妹の鋭い()撃にまともな反論はできない様子。

 ここまで来ればもう大丈夫。

 結局、男はやり込められて、スコスコと部屋から退散するしかなかった。

 ドアが閉まった後、フィオナとマリを褒める。

「すごいな、お前達」

「えっと、今のはわたし達じゃないんです」

「うん?」

「リカ様が、帰った後きっとこういうことがあるから、こう言えばいいよって教えてくれたものなんです。本当に大丈夫かなって怖かったですけど、上手くいきました」

「あー、なるほどなるほど」

 うん、それなら納得だ。

 その辺の事をリカはだれよりもよく知っている。

 籠の鳥として捕らわれていたリカだからこそ、予想もできて、解決の策も授けられた。

 リカがすごいと思う一方で、ちょっと残念だった。

 今のが二人のオリジナルだったら良いのに、って思った。

「それで……カケルさん」

 マリがもじもじしながらおれをみた。

「どうした」

「その……改めてお願いがあるんですけど」

 フィオナももじもじしだした。

「なんだ、言ってみろ」

 頷くおれ。

 が、姉妹はなかなか言い出せなかった。

 もじもじして、口籠もって。

 しばらくそうしてから、二人でアイコンタクトをかわして、「せーの」ってかけ声して。

「「わたし達を女王にしてください。二人とも、女王に」」

 と、言った。

「二人とも?」

「はい、二人一緒に」

「一つの国に女王が二人……ダメでしょうか」

 二人はいう、まっすぐおれを見つめて。

 それは――わがままだった。

 おれが期待した、わがままだった。

 おれは嬉しくなった。

「いいだろう」

 おれはにやりとして、言った。

「二人まとめて女王にしてやる」

 と、宣言した。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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