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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

コモトリア王国編

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79.親子鷹

 プロス亭を出て、町を出て、森に向かった。

 途中ですれ違う可能性もあるから、ワープの羽じゃなくて歩きで向かう。

 のんびりと夕焼けの中を歩く。

(いい感じに貴様の名が売れてきたな)

「うん?」

(今までの噂に偽物のわれ、そしてとうとう偽物の貴様が現われた。順調に有名になっているという証左だ)

「はた迷惑な話だ」

(いずれはひかりの偽物もあらわれような)

「むっ」

 それは本気で腹がたつ。さっきプロス亭にいるときも言われたけど、本気で腹がたつ。

(だがどうしようもない)

 それはわかる。

(それにわれはきらいではない)

「なに?」

 頭の中にエレノアの愉快そうな笑い声が聞こえる。

(われがこの世界を実質支配したときなど、我の名だけで人間が震え上がったものよ。いいものだぞ? 悪名を極めた先の快感はな。エレノアとひかり、この名で再び世界を恐怖のどん底に突き落とすのも悪くない)

「あほか」

 エレノアをデコピンではじいた。

 キーン、キーンと、一回のデコピンで二回分の綺麗な音がした。追加攻撃100%の能力が発動した。

 エレノアと世間話をしながら森に向かった。

 森に入って、人の気配を探る。

 すぐにわかった。奥の方にものすごく大勢の人間の気配がした。

 それに向かっていくと、森の中の開けた場所にひかりとナナ、そして奴隷兵らの姿が見えた。

 全員で何かを探している。何をしてるんだろう、と思って、おれは立ち止まって様子見をした。

「ひかり様、第二小隊からです。これであっているだろうか」

 ナナが奴隷兵から受け取った物をひかりにみせた。

 雑草のような花だった。小さな蕾が七つついてる雑草のような花。

「一、二、三――七。うん! 七個ある。これであってるよー」

 ひかりはナナから受け取ったあと、それを探してきた奴隷兵のグループに向かっていって、パッと愛らしい仕草で頭を下げた。

「ありがとうございます、おねーちゃん」

 十ある奴隷小隊のうちの一つ、二十人の奴隷兵グループは困った顔をした。

(いい娘だな)

「当然だ」

 おれとエレノアは簡単なやりとりを交わした。

 微妙にエレノアが誇らしげだ。

「ひかり様、その花、あとどれくらい必要なのでしょうか」

「えっとね……おねーちゃんたちは何人いるの?」

「おねーちゃんたち、と言いますと」

 今度はナナが困った顔をした。

 普段とは違う彼女は見えてて楽しい。

「奴隷兵、のことでしょうか」

「うん!」

「それでしたら200ジャストですが」

「そんなにいるんだー……じゃあ難しいかな」

 ひかりは自分の手の中にある花をみて、言った。

「もしかして、奴隷兵のためにこれを?」

「うん!」

「主のためではなかったのか……」

 ナナが驚く、おれも驚いた。

 ひかりがなんても願いがかなうはなを探しに行くって言う話を聞いたとき、てっきりおれのプレゼントするものだと思ってからだ。

(くくく、残念だな親ばか)

「うるさい黙れ」

 ちょっとむっとした。

「おとーさん? ちがうよ。だっておとーさんはすごーーーーくすごいから、世界一すごいひとだから。お花がなくてもお願いは叶うもん」

 ひかりは天真爛漫な笑顔でいった。

「ふっ」

(これ見よがしに)

 エレノアがむっとしたみたいだ。

「お花をさがして、おねーちゃんたちに上げようとおもったんだ。ありがとう、おねーちゃんたち」

 ひかりがまた頭を下げた。

 全身で躍動的におじぎするひかりの姿は世界でいちばん愛らしかった。

「おねーちゃんたちが一緒にきてくれなかったら、わたし一人じゃさがせなかったから。ほんとうに、ありがとうございます」

 といって、また笑顔を見せた。

 その姿に、そこにいた奴隷兵も、あとから戻ってきた奴隷兵達もめろめろになった。

「第二小隊!」

 奴隷兵の一人、小隊長の女が叫んだ。

「花をさがすぞ! ノルマは一人一輪! 見つからないヤツは飯抜きだ」

「第八小隊! なんとしても探してきます!」

 奴隷兵が散っていった。一瞬でものすごくやる気になって、花を探し始めた。

「わわ、おーちゃんたちが怒った……怒った?」

 やる気を怒りに勘違いしかけたけど、途中であれ? と首をかしげるひかり。

(ふむ、奴隷兵どもの心をさくっと掌握したか)

「さすがひかりだ」

(われの娘だからな)

「おれのむすめだからだ」

 そんな事を言い合いながら、おれはひかりのところに向かっていった。

     ☆

 ひかりとナナ、として奴隷兵たちと一緒に町に戻る。

 奴隷兵200人、きっちり全員、胸にあの花をさしている。

 あれから総出で探した結果、なんとか人数分を確保した。

 ちなみに第一小隊の隊長が「おねだり」をした結果、ひかりが一人一人、花を胸にさしてやった。

 それでますます、全員がひかりにでれでれになった。

「む、ここは」

「どうしたのおとーさん」

「マリの洞窟だ」

「マリのどうくつ?」

 ひかりが首をかしげた。

「そうか、ひかりはしらないのか」

 マリの洞窟、かつてエレノアが持っていた力、地獄の軍勢を封印しているところ。

 完全消滅はできなかったから、封印をして、ギルドから監視がつけられてる洞窟だ。

 その監視役の冒険者、顔見知りの若い男がおれのところに駆け寄って着た。

「ども! お久しぶりですカケルさん!」

「おう」

「今日はどうしたんですか? どこかに戦争に行った後ですか?」

 冒険者がおれの後ろを見ていった。

 200人の奴隷兵、そう見られても仕方ない。

「いや、そういうわけじゃ……」

「カケルさん?」

「ナナ」

 冒険者にではなく、ナナに話しかけた。

「はっ」

「訓練の度合いはどうなってる?」

「同数となら、持ちこたえる事ができる程度には」

「前回より良くなったか。よし、訓練していこう」

 今度は冒険者に向かって言う。

「わるいが、前と同じように封印を解いてくれないか。責任は全部――」

「わかりました!」

 冒険者が洞窟の方に掛けていった。責任は全部持つ、って言おうとしたけどその前に承諾された。

(あれも貴様のシンパだな)

「男相手はあまり嬉しくないけどな」

 おれは肩をすくめた。

     ☆

 おれは木に背をもたせかけて、ひかりと一緒に座って、奴隷兵が戦ってるのをみた。

 ナナの指揮で、奴隷兵が沸いて出てきた死霊の軍勢と戦っていた。

 一対一では負けている、徒党を組んで数で押してやっと互角、ナナの指揮を得て封印ポイントから沸くペースを上回る。

 そんな感じで戦っていた。

「きゃあああ!」

「くわっ」

「ベルナ! バシラ!」

「第一小隊下がれ! 主! 回復アイテムの使用を許可していただけるだろうか」

「魔法の玉か? あげた分は好きに使え」

「はっ! ありがとうございます」

 第一小隊がナナの指揮で後方に下がって、回復して一息つく。

 戦い続ける奴隷兵、ふと、倒れて消えていくスケルトンから一枚のくじ引き券が現われた。

 立ち上がって、向かっていって、拾い上げる。

 確認する、間違いなくあのくじ引き券だ。

「主?」

 不思議がるナナ。

「なんでもない。それよりもどんどん戦え。実戦に勝る訓練はないだろ」

「はっ」

 ナナは指揮に戻った。

「ナナ」

「はっ」

 呼び止めたナナ、振り向いておれを見る。

「奴隷の中で一番活躍したヤツをあとで教えろ、褒美をやる」

「承知」

 そう言って、今度こそ戻っていった。

 券が増えて、くじ引きでいいのが引けたらそいつにやってもいいと思った。

 実戦での訓練が続く。

 奴隷兵達は次第に疲弊していく。

 そろそろ一回止めて、体力の回復を待った方がいいかな、と思ったその時。

「きゃあああ!」

「な、なんだこいつは」

「でかい……それにこの寒気は……」

 奴隷兵がざわつく。

 どうしたんだろうと思って見ると、封印ポイントから角と牙が特徴の、凶暴そうな面構えをした巨人が出てきた。

 地獄の帝王サンドロス、エレノアがかつて率いてた地獄の軍勢の切り札、一体で戦況を変えられるってやつだ。

 そいつが出てきた、まさに戦況が変わった。

 初撃、横なぎの豪腕に奴隷兵が数十人まとめて吹っ飛ばされる。

 追撃、蹴りに数十人がまとめて蹴り上げられる。

 一瞬で奴隷兵が総崩れになった。

「ふっ!」

 ナナが飛びかかっていった。

 マントをなびかせ、一瞬で間合いを詰めて飛び込んでいった。

「ナナ様!」

 奴隷兵に安堵の声が聞こえた、次の瞬間。

「くっ!」

 ナナが豪腕に吹っ飛ばされる。

 吹っ飛ばされて、体勢を立て直してまた飛び込む。

 剣を振って、電光の網を作り出してめった斬りにする。

 サンドロスはそれを受け止め、反撃する。それを読んだナナが拳を踏み台にして、真っ向から頭を切り下ろす。

「互角だな」

(うむ。しかしヤツの体力は無尽蔵だぞ)

「長期戦じゃ不利か」

 互角に戦うナナだが、じり貧でもある。

 奴隷兵のうち、何人かがそれに気づいて、武器を持ってナナの加勢に向かう気配を見せた。

「やめろ」

 そいつらを呼び止める。

「しかし、それじゃナナ様が!」

「いいからやめろ。ナナ」

「はっ」

「下がれ」

「はっ!」

 ナナはサンドロスと撃ち合って、その勢いで命令通り下がった。

「うおおおおおおお!」

 天をあおいで咆哮するサンドロス。みた感じ、前と変わっていない。

「ひかり」

「うん!」

 ひかりは頷き、魔剣の姿に変身した。

 それをもって、エレノアと共に構えて、サンドロスに向かっていく。

 そいつは変わってない、でもおれはちがう。

 前はエレノアだけだった、今はひかりが加わった。

 負ける気がまったくしない。

「うおおおおおお!」

「はい、お疲れ」

 エレノアで豪腕を止め、ひかりで首をはねる、更にエレノアで縦に真っ二つにした。

 十字に切り裂かれたサンドロス、巨体が倒れ、薄まって消えていく。

 消えていったあとに残ったくじ引き券を拾い上げる。

 振り向くと、視線を集めているのわかる。

 奴隷兵達が、おれを熱い目で見つめていた。

 大半は尊敬だが、何人かは恋する少女の目をしていた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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