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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

コモトリア王国編

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78.カケルの偽物

 この日は久々にプロス亭に来た。

「いらっしゃいませ! あっ、カケルさん!」

 ズキンとエプロンをした若い女の子、この店の看板娘のフィオナが駆け寄ってきた。

「お久しぶりです。もう、最近なかなか来てくれないから、うちに飽きたのかと思っちゃいました」

 フィオナは冗談めかして行ってきた。この手の看板娘らしく、彼女は適度な冗談で和ませる術をよく心得ている。

 だからおれも冗談でかえした。

「子供ができるとなかなか外食しにくくなるものさ」

(ひかりのせいにするでない!)

 冗談なのに脳内でエレノアに怒られた。おれの事をよく親ばかって言うけど、こいつはおれなんかよりも親ばかだと思う。

 この世界じゃ魔剣の姿から人間の姿になれないから、それが目立たないだけで。

「あはは、そんな事を言ったらひかりちゃんがかわいそうですよ。今日はひかりちゃん、一緒じゃないんですか?」

「遊びにいった。なんか願いが叶う花? みたいなのがあるから、それを探しに森の方に」

「あら、ひかりちゃん一人でいかせたんですね」

「いいや? ちゃんと何人かつけたぞ」

「クスッ、そうですもんね。ひかりちゃん可愛いから、何かあったら大変ですもんね」

「ああ」

(なにが『ああ』、だ。ナナ・カノーに奴隷兵200人全員を護衛につけておいてよく言う)

 それくらい当たり前だろ。

「ごめんなさい、立ち話になっちゃいましたね。こっちの席にどうぞ」

 フィオナは明るい笑顔でおれを席に案内した。

 この店の名産、山ウシの焼きめしと、おすすめの料理をいくつか注文した。

 しばらく待ってると、料理が次々と運ばれてくる。

 それを一口摘まんで、口の中に放り込む。

「うん?」

「どうしました?」

「なんか、いつもの味付けと変わってないか?」

「うふふ、気づいちゃいました?」

「その言い方、なんか変えたのか?」

「はい、変えました。といってもカケルさんにだけですけど」

「おれにだけ?」

 どういう事だ?

 不思議がってると、フィオナはちょんちょん、と厨房の方をさした。

 そっちを見ると、顔を出してるマリと目が合った。

 マリはすぐに顔を真っ赤にして、厨房の中に引っ込んだ。

「どうしたんだあれ」

「カケルさんの料理だけ、マリが作ったんですよ」

「へえ」

 更に料理を摘まんで口の中に放り込む。名物の焼きめしもレンゲですくって一口食べてみた。

「うまいじゃないか」

「それをあとであの子に言ってあげて下さい。きっと喜びますから」

「ああ、言っとく」

「お願いしますね」

 フィオナはそう言って、他の客によばれていった。

 しばらくの間、一人でマリが作ってくれた料理を楽しんだ。

「おい! 客だぞ!」

 ふと、店の入り口から野太い声がした。

 声の方向を見ると、ごついスキンヘッドの男がにやついた顔で立っていた。

 マントをつけたそいつはどういうわけか、腰に下げてるものをちらちらと見せびらかすようにしている。

(あれは……)

「お前だな」

(違うわ! われではない! われの偽物だ)

 ちょっと怒ったエレノア。そう、男の腰に下げられてるのはエレノアとまったく同じ見た目をした、最近はやってる魔剣レプリカだった。

 古いバージョンなのか、オーラを出せる新製品なのかはわからない、だけど外見はそっくりだ。

 その男にフィオナが慌てて駆け寄る。

「いらっしゃいませ、お客様お一人様ですか」

「おう」

「ごめんなさい、今ちょっと満席で……相席でもよろしいですか」

「ああん? 冗談だろお前、これが見えないのか?」

 男は魔剣レプリカをちらつかせた。

「それは……魔剣――」

「そう、あの魔剣エレノアだ。偽物じゃないぞ」

 男は柄に手をかけた。次の瞬間、剣から黒いオーラが出た。

(新型だったな)

「そうみたいだ」

「はあ……」

 フィオナはおれの方をみた。

 おれはかたをすくめて、二人で苦笑いした。

「何を隠そう、このおれがあの魔剣使い、五爵のカケルだ」

「おおぅ」

 思わず声が出た、男に睨まれた。

「なんだおまえは、文句あるのか?」

「いえいえ、ないですないです」

 あまりの展開に、ついちょっと敬語気味でごまかした。

(これは傑作だ、ついに貴様の偽物まで現われたか)

「びっくりだぞ」

 ビックリすぎて、一周回って面白くなってきた。

 おれは頬杖をついて、成り行きを静観した。

「このおれ様がこんな店にわざわざ来てやったんだ、席の一つくらいとっとと用意しろ」

「えっと……」

 フィオナが困った表情をする。

 恫喝されてるのに怖がってないが、どうしたもんかと困ってる顔だ。

「ああフィオナちゃん、こっち食い終わったからおあいそ」

 客の一人が助け船をだした。

 フィオナは慌てて礼を言って、会計をして、テーブルを片付けた。

 男がそこにどかっと座る。

「えっと、何にしますか?」

「うまいもんだ、とにかくうまいもん持ってこい」

「わかりました」

 フィオナは応じて、厨房に戻っていく。

 途中でおれの横を通って。

「すごいですねカケルさん、偽物ですよ」

 と耳打ちしてきた。

 フィオナも完全に楽しんでるみたいだ。

 にしても……おれの偽物か。

 おれは改めてそいつを観察した。

 腰に魔剣レプリカを差してる以外、おれと似てるところがまったくなかった。

 何をもっておれだと言い張るのか、ちょっと興味をもった。

 おれは立ち上がって、そいつに近づいていった。

「ども」

「ああん、なんだお前は」

「すいません、実はおれ、カケルさんの大ファンなんですよ」

「ほう」

 男はあきらかに上機嫌になった。

「カケルさんのいろんな噂を聞いてるですけど、あったことがなくて。まさかここで会えるとは思わなかったです」

「ふっ、その幸運に感謝するんだな」

「ところで、本当にカケルさんなんですか?」

「これが目に入らないか」

 偽カケルは魔剣レプリカをちらつかせた。

「いえ、それはおれも持ってるんですよ」

 そういって、おれは本物ののエレノアを持った。

 力を込めて、黒いオーラを出す。

 オーラにちょっと触れた偽カケルはぶるっと体を震わせた。

「ほら、最近これが流行ってるじゃないですか。おれもカケルさんのファンだから早速買ったんですよ。結構みんな持ってますよ」

「むっ」

「他になんか証拠ってないですか?」

「もちろんあるぜ」

 男は得意げな顔に戻って、言った。

「ほれ」

 男はマントを見せた。

 マントの背中の方に、五芒星をかたどったマークが描かれていた。

「おれ様の事を知ってるだろ? 五大国全部から爵位をもらってる五爵様だ。この家紋がその証拠だ」

「おー」

 ちょっと面白かった。

(貴様に家紋があったのか)

 エレノアの楽しそうな声が聞こえた。

 もちろん家紋なんてない。何回か作る話をしてたけど、なんだかんだで後回しにしてた。

 ちなみに家紋を作れって言ってるのは主にナナだ。

 奴隷兵を率いる彼女は、旗印になるようなものがほしいらしい。

「すごいです、さすが五爵様です」

「ふっ。お前見込みがあるな」

「そうですか?」

「よし、そこにすわれ。せっかくだから、このおれ様が直々におれ様の事績を話して聞かせてやる」

「わーい」

「そもそもな、なんでおれ様が五大国から爵位をもらえたかというとな――」

 偽カケルは上機嫌で、自慢話をはじめた。

 そいつが話したものは全部おれが知らない事ばかりだ。

 要するに作り話で、よくもまあそんなに作れたと感心するものだ。

 相づちを打ちながら、そいつの話を聞いていると。

「あっ、カケルさん、やっと見つかりました」

 イオが現われて、おれの前に立った。

「カケルさん?」

 偽カケルが驚くのを無視して、イオはおれだけを見て、言った。

「探しました。えっと、カランバの女王様とコモトリアのお姫様から連絡です」

「リカとアウラか。どうしたって?」

「用件は同じです。今夜は時間ができたから、会いに来てくれると嬉しい、って」

「そうか。返事を返しておけ、屋敷の方に連れてくるから、準備しておけって」

「わかりました」

 イオは頷き、身を翻した。

 途中で偽カケルをちらっと見たが、首をかしげただけで、すぐに立ち去った。

 イオがさったあと、偽カケルはおれに言ってきた。

「ふ、ふっ、面白い冗談、いや演出だな」

「うん?」

「カランバの女王とか、コモトリアの王女とか。そんな作り話で人をだませると思ったか。あいにくだが――」

 若干震え声でいう偽カケル。

 突如歓声が上がった。

 店の外から聞こえてくる。

 どうしたんだろう、と思っていると、店の扉が開かれてヘレネーが入ってきた。

 姫ドレスの姿をしたヘレネーは上品な所作のままこっちに向かってくる。

「カケル様」

「おう、どうしたヘレネー」

「カケル様にちょっとご相談があります……けど、お邪魔でしたでしょうか」

 ヘレネーは偽カケルをちらっと見た。

 事情を知らない彼女は、偽カケルをおれの知りあいだと思ったんだろう。

 おれを上に立てるヘレネーは、おれの知りあいもたてる傾向がある。

 それを受けて、偽カケルは。

「ふ、ふっ、今度は偽ヘレネー様か。あいにくだがおれはそんなものには騙されんぞ」

 虚勢を張る偽カケル。さすがにちょっとかわいそうになってきた。

 おれは手を伸ばして、ヘレネーがつけてるティアラに魔法をかけた。

 王家の持ち物を判別する魔法。だれでも使える魔法で、おれも覚えたヤツだ。

 するとヘレネーのティアラから王家の紋章が浮かび上がった。

「なっ」

 偽カケルは絶句した。ヘレネーが本物の王女だとわかったからだ。

「カケル様? これは一体」

「か、カケル様?」

「はい。あなた、カケル様のお知り合いではなかったのですか」

 不思議そうな顔をするヘレネー。

 偽カケルはみるみるうちに、顔面蒼白になっていった。

 名乗った男の本物が実は目の前にいるってわかればそうもなる。

「そいつもカケルらしい」

「あら」

「しかもエレノアを持ってるらしい」

「あらあら」

「マントのそれは五爵様の家紋らしい」

「そんなものがあったのですね」

 ヘレネーはちょっと考えてから、ようやくピンときたようで。

「もしかして、カケル様の偽物……?」

 頷くと、ヘレネーの表情が変わった。

 静かな怒りを顔に浮かべた。

「王国法では貴族の名を騙ることはれっきとした犯罪。メルクーリ王国侯爵の名を騙ることは重罪よ」

「ひ、ひぃいいいい」

 偽カケルは椅子から落っこちて、尻餅をついた。

「だれか、このものを捕縛して」

「お、おたすけー」

 偽カケルは逃げ出した。

 外から入ってきたヘレネーの部下はそれを追いかけようとした。

「ほうっておけ、ヘレネー」

 おれは呼び止めた。

「ですが、あのものはカケル様の名を騙った――」

「別に良いさ、実害が出るわけじゃなし。それに、楽しみなんだ」

「楽しみ?」

 ヘレネーが驚く。

「エレノアの偽物もさ、最初に出てきたヤツと、あとから出てきたヤツで比べると進化しただろ?」

(我を引き合いにだすでない!)

「それと同じで、おれの偽物がどんな風に進化するのか楽しみだ」

「はあ……」

 よく分からないと言う顔をするヘレネー。

「それを一緒にみよう、待ってみようじゃないか」

「よく分かりませんが……カケル様がそうおっしゃるのなら」

 ヘレネーが納得した。

 さて、次に登場するおれの偽物はどういうのになるかな? 本気でちょっと楽しみだった。

(そのうちひかりの偽物も現われるかもな)

 そういうのは即死刑だ。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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