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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

コモトリア王国編

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77.幽霊と魔剣と新たな軍勢

 夜、何となく気配を感じて、イオとデルフィナの間から体を起こした。

 神経を研ぎ澄ませて窓の外をじっと見つめる。

 空気の流れにおかしなところはない、777倍であがった視力も聴力も何もおかしいものは捕らえてない。

 が、何かがおかしい。

 何かが――いる。

「カケル様……わたくしを……もっと」

「カケルさんだーいすき」

 二人を置いて、ベッドを降りた。

 上着を羽織って、エレノアを持って部屋を出る。

「……上か」

(感じたか)

「知ってたのか?」

(むしろ我の得意分野であるな)

 エレノアが平然と話した。

 得意分野ってなんのことだ?

 不思議に思ったまま屋敷をいったん出て、ぐっと足に力を入れてジャンプする。

 屋根の上に飛んだ。そこにタニアの姿があった。

 半透明の体で、時には淡い光すら放つメイドの格好をした幽霊。

 かつてこの屋敷で地縛霊になっていたところをおれが解放し、現在はエレノアと屋敷の両方に取り憑いてるメイド幽霊。

 名前はタニア・チチアキス。そのタニアの前にこれまたメイドの格好をした女がいた。

 歳は二十代ってところか。可愛らしいタニアと正反対で、こっちはキリッとした、いかにも「できるメイド」な見た目だ。

 ただし体が透けてて、ちょっと空中に浮いてるところは一緒だ。

「そっちも幽霊か……ああ、お前の得意分野ってそういうことか」

(うむ、伊達に数百年も死霊の軍勢を率いてはおらぬ)

 エレノアがちょっと得意げに言う。魔剣として、こういうのを察知する能力が高いんだろう。

 タニアともう一人の幽霊はおれ達に気づいていない。

 何か話してるみたいだから、じっと耳を澄ませた。

(じゃあペギーちゃんはまだ働きたいんだね)

(はい……それなのに病気で……無念です)

(このまま成仏した方がいいと思うな。幽霊はなりたてはいいけど、時間が経ってくるといろいろ頭がおかしくなって、次第に自分を保てなくなるんだよ」)

 タニアが言う。正気を失った彼女がいうと妙な説得力がある。

(でも……)

(未練があるのもわかるけどね)

(どうにかなりませんか、センパイ)

(うーん)

 タニアが首をひねった。

 色々気になる事ができたので、おれは話に割って入ることにした。

「よう」

(あっ、カケルだ。ごめんなさい、うるさかった?)

「いやうるさくはなかった。それよりもそっちは」

(紹介するね。ペギー・アディスちゃん。最近死んだ出来たてほやほやの幽霊だよ)

 どんな幽霊だ。

(セ、センパイ……この人は?)

(あたしのご主人様。この屋敷の人。カケルっていうの)

(ご主人様?)

「こういうことだ」

 エレノアを掲げて、念じる。するとタニアはエレノアに吸い込まれた。

(わっ)

 ペギーが驚いたところで更に念じる。タニアがまだ現われた。

「こういうことだ」

(幽霊にこんなことができるんですか?)

(カケルは特別だよ、だって今持ってるそれって魔剣エレノアだもん)

(魔剣――えええええ! 魔剣エレノア!?)

 一瞬だけ間が開いて、それから絶叫した。

(ほ、本物なんですか)

「持ってみるか?」

(やめておけ、霊だけの存在で我に触れれば、ヘタすれば消滅しかねん)

 頭の中でエレノアが結構マジトーンで忠告してきたから、突き出しかけた剣を引っ込めた。

 ペギーはおれを見つめた。

 何か期待するような目でじっとおれを見つめた。

 なんだろう、その目は。

(ねえカケル)

 タニアが横から聞いてきた。慎重に、機嫌を伺うような口調で。

(その魔剣って、まだ幽霊入りますか?)

「うん? キャパが余ってるかってことか? どうなんだエレノア」

(死霊の軍勢を忘れたか)

 エレノアらしい答え方だった。

「どうやら入るらしい、それもまだ結構――ああ」

 そういうことか、とおれは気づく。

 ペギーの方を見た。

 期待する目、最初の頃にタニアに持ちかけてた相談。

 そういうことなのだ。

(カケル)

 お願いしてくるタニア。おれは少し考えた。

 頭の中にある光景を思い浮かべる。

「お前、戦えるか。何か戦闘で使える能力は?」

(えっと……)

 ペギーは申し訳なさそうにうつむいた。

(生きてた頃は炎の魔法が使えましたけど、今は……)

 そう言って手をかざして、炎の玉を出した。

 しかしその玉は彼女の身体と同じように薄く透けていて、天井を音もなくすり抜けた。

(こんな感じで、使えるけど使えなくて)

「そうか。おまえの名前はペギー・アディスだっけ。ペギー・アディスに炎の魔力を貸し出し」

『ペギー・アディスに炎の魔力を貸し出します。残り29秒』

「もう一度魔法を撃ってみろ。ああ、今度は屋根の方じゃなくて、おれの方に打て」

(えっ?)

 戸惑うペギー。

(やってみて)

 タニアが笑顔で励ますように言った。

 経験があるから、タニアはこの後の事が想像できてワクワクしてるかんじだ。

(じゃ、じゃあ……えい)

 手をかざして、炎の魔法を撃った。

 777倍の能力貸し出しでブーストされた魔力は、おれの体よりも巨大な炎の玉になった。

(えっ、だ、だめ――)

 その大きさに慌てた様子で、ペギーは慌てて魔法を取り消そうとしたが、上手くいかず炎の玉はおれめがけて飛んできた。

 エレノアを振って、切り払う。

 巨大な炎の玉は魔剣に払われ、はじけて四散する。

(え……すごい……)

「ふむ、魔力を貸し出せば戦う事はできるんだな」

(ねえねえ、カケルカケル)

「なんだ」

(わたし、最近自分の魔力が前よりも上がった気がするんだ)

「へえ」

 このタイミングでそれを言ってくるタニア。

 幽霊でも成長するからって言いたいんだろう。

「よし、わかった。タニアの紹介ってことで、お前をおれのところで働かせてやる」

(あっ……はい!)

「いったんエレノアに取り込むぞ」

 そう言ってエレノアを掲げて、タニアの時と同じ要領で念じた。

 ペギーがいったん消えて、また現われた。

 何となく雰囲気が変わった。エレノアの中から召還したペギーはちょっとだけ雰囲気が違っていた。

 それを自分でも感じてるのか、ペギーは自分の手をまじまじと見つめてる。

(ようこそ、ペギーちゃん)

(はい! センパイ)

 こうして、エレノアの中にいる幽霊が二人になった。

(貴様、死霊の軍勢を再現する気か)

「まあな、いやか?」

(女の幽霊なら文句はない)

 エレノアは即答した。

 女なら文句はない? 男をいれるのはだめ――。

 そこまで思いかけて、はっとするおれ。

 ああ、そうだな、それはダメだ。

 今更エレノアの中に幽霊とは言え、男を入れるのはダメだ。

「安心しろ、男は入れない」

(……ふん)

 鼻を鳴らすエレノア、まんざらでもない様子だった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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