挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

コモトリア王国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

76/288

75.豪商の貌(かお)

 ワープの羽でデルフィナの商会にきた。

 今日はおれの屋敷に来る日で、それを迎えに来た。

 デルフィナの私室にまず飛んで、いないから廊下に出た。

 デルフィナの部下の男がいた。顔見知りの男はおれを見て頭を下げた。

「デルフィナはどこだ?」

「賓客室にございます。アイギナ王国の王太子殿下がお見えになっておりますので」

「へえ」

「ご案内いたします」

「いやいい。賓客室ってあのやたら豪華で上客をもてなすために使う部屋だろ? 自分で行ける」

 そういって男をおいて歩き出した。

 デルフィナの商会にすっかり慣れた、向こうもおれの事に慣れてる。

 廊下を歩くと、そこで働いてる様々な人間がおれをみては立ち止まり、深々と頭を下げてくる。

 しばらくすると、頭を下げない相手とでくわした。

 豪華な扉の部屋――賓客室から丁度出てきた渋い顔の中年。

 服装からしてどこかの王族らしきそれはきっと、さっき聞いたアイギナ王国の王太子とやらだろう。

 王太子はおれをちらっとみたが、まるで目に入らないかのように身を翻して歩き出した。

 なんだか疲れた顔をしてたのが気になりつつ、おれは賓客室の中に入る。

「カケル様。いらしてたのですか」

「今来たばかりだ。もう少し遅い方がよかったか」

「いいえ、丁度話が終わったところですので」

「今のがアイギナの王太子とやらか?」

「ええ」

「なんか疲れた顔をしてたけど」

「そうでしょうね」

 デルフィナはくすりと笑った。

 上品な仕草で口を押さえて笑う。その辺の貴婦人よりも気品があって、妖艶な雰囲気を放っている。

「わたくしに要求したことをことごとくはねのけられましたもの、疲れもしますね」

「要求?」

 デルフィナの向かいに座った。

 王太子とやらが使ったであろうカップをよこにどけた。

「わたくし、町を買いましたの」

「……へえ?」

「アイギナ統治下にあるマロネイという町なのですけれど、ここ数年は財政難で、中央からの援助に頼りっきりの町でしたの。そこにわたくしが入って、今までの赤字とこれからの支援をたてに、役人などを全てわたくしの手のものに入れ替えるという条件をつきつけましたわ」

「なるほど、実質買い取ったってことか」

「ええ、そして統治していた貴族も放逐させたわ。それがどうやら長年その地を代々受けついだ貴族様らしく、この事を国に泣きついて、それで王太子がやってきてなんとかならないかと、ね」

「なるほど」

 話は大体わかった。それであの疲れた顔をしてたのか。

「しかしなんでまた町を買ったんだ? 経済で侵略して国つくって女王にでもなるのか」

「まさか。マロネイに価値があったと言うだけのことですわ」

 デルフィナは真顔で――薄い笑みを浮かべた真顔になった。

 商人としての何かを語るとき、彼女はいつもこんな顔をする。

 ちょっとどきっとした。商人としたの顔だが――それはとんでもなく美しかった。

「あの町は今でこそ行政のせいで赤字を垂れ流しているけれど、まわりに希少な資源が未だに埋まってますので。調べさせた結果枯渇している訳ではなく、まともに賃金も出せないから発掘できないだけ。その資源だけでも金をだす価値はありますわ。ハイリスク、超ハイリターンですの」

「なるほど」

 おれは感心した、さすがデルフィナだ。

 商人としての彼女はものすごくシビアで、そこが素敵なところでもある。

 マロネイの話を聞く。

 総合すると「大量の呼び水が必要なポンプ」らしく、その呼び水を用意できる人間が限られると言う話だ。

 まあ、もうかるのならそれでいい。

「そういえば」

 デルフィナの表情が変わった。

 さっきとは違うタイプの笑顔、冗談とかをいえる、雑談の時の顔だ。

「プロポーズされましたわ」

「プッ」

 おれは吹き出した。

「プロポーズって、さっきのあいつにか」

「ええ。わたくしが女なので、手に入れたらすべて帳消し、とでも思ったのでしょうね」

「ふーん」

「怖い顔。もちろん断りましたわ」

 別に怖い顔なんてしてないけど。

「断ったのか」

「ええ。お忘れですか? わたくしはわたくしを丸ごと買い上げられる男に嫁ぐときめてますの」

「そうだったな」

 そんな話があるのを思いだした。

 一国に匹敵する豪商デルフィナ。

 若くて美しい彼女にもちろん言い寄る人間もおおい、しかし彼女の条件は「財力をもって自分を丸ごと買い上げられる人間」だ。

 つまりM&Aだ。

 財閥の女CEOと結婚する条件がその財閥をM&Aするという話だ。

「今のお前の資産は?」

「メルクーリの国家予算一年分とほぼ同じですわ」

「そりゃ大変だ、買うの」

「お買い上げをいつまでもお待ちしてますわ」

 艶然と微笑むデルフィナ。今度は女の顔になった。

「なるべくはやくなんとかしよう。うかうかしてると、逆にお前に買われそうだからな」

 マロネイのことをおもいだし、冗談めかしていった。

「それはなかなか難しいですわね」

 デルフィナの表情がまた変わった。

 最初の商人としての顔だ。

「それも考えた事があるのですが、なかなかに難しいですわ。カケル様の評価額が高すぎますもの」

「そうか?」

「ざっと計算して、わたくしの五倍」

「それはたかすぎねえか?」

「いいえ」

 デルフィナは首を振った。

 表情はそのまま。

 おれが好きな――一番好きなデルフィナの表情。

 豪商デルフィナの、薄く笑ったあの表情で言った。

「魔剣使い、五爵様、そのネームバリュー。あなたを金で買おうとした場合、政治力で介入してくるリカ・カランバ、ヘレネー・テレシア・メルクーリ、アウラ・トリデカ・コモトリアの女王と王女達を黙らせる政治力。さらにあなたをのぞく地上最強の武力をもつナナ・カノーが狂犬化した場合それをとめる軍事力。それらをすべて加味して金銭に換算したら必要な経費はわたくしのざっと五倍という事になりますわ」

 真顔で最後まで言い切ったデルフィナ。

 豪商・デルフィナとしての評価らしい。

 おれはまだデルフィナを買えない。

 デルフィナもおれを買えない。

 面白い。

「……」

 気づくとまたデルフィナの表情が変わっていた。

 今日はじめて見る表情、ちょっと拗ねたような表情だ。

「どうした」

「いいえ、なんでも」

「なんでもって事はないだろ」

「何でもありませんわ」

 そういってとうとう顔をぷいと背けてしまった。

 なんだろう。

 デルフィナがそらした視線を何となく追いかけると、テーブルの上のカップにいきついた。

 さっきおれがどかした、王太子のカップ。

 それを見て拗ねてる。

 もしかして。

「デルフィナ、一つ確認なんだが」

「なんですの?」

「おれはまだお前を買えないが、予約は生きてるんだよな」

「予約?」

「交渉権っていってもいい。おれが放棄するまでお前を買う第一優先権はおれにあるんだよな」

 デルフィナはしばらくのあいだきょとんとして、それから表情を変えていった。

 その顔は、今日初めて見る顔。

「も、もちろんですわ」

 はじめて彼女と契約を結んだときと同じ顔だった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ