挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

カランバ王国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

60/288

59.いい女達

 砦の中に入ると、兵士達が歓呼でおれを出迎えた。

 さっき駆けつけたときはお通夜みたいに空気が冷え切ってたのに、今は沸騰してる。

 まるで英雄を出迎えるかのようだ。

 ほとんど(、、、、)の兵がそうだった。

 そんな歓呼の中、おれはエリアの前に立つ。

「これからの話をしよう」

「承知いたしました。こちらへ」

「イオは一緒に来い、ナナは連れてきた兵の事を頼む」

「はい!」

「承知」

 二人にそれぞれそういって、エリアの後についていく。

 兵士達が自然と道を空ける。

 ちょっと歩いて、一番大きい、指揮官用のテントにやってきた。

 中にはいって、早速エリアに言う。

「おれがリカから言われてきた事は一つ、サリラを奪還すること」

「はい」

 頷くエリア、しかし眉をひそめる。

「同じ命を、我々も女王陛下よりうけて出陣いたしました。しかし――」

「ちがう、そうじゃない」

 おれはエリアの言葉を止めた。

 エリアはキョトンとなった。

「お前らのは出陣前だろ? だったら当たり前。でもおれのはお前らが負けた知らせが届いたあと言われたものだ。その差はわかるか?」

「……」

「この状況下でもまだ『勝って来い』って意味だ」

 厳密にはリカが「勝ってこい」じゃなくて、おれが「勝ってくる」って言った方が正しいけど、リカが望んでることにした。

「この状況から押し返せ、と」

「そのためにおれが来た」

「それができるとお考えですか」

「おれは難しい事はわからない」

 かちゃ、と魔剣で音を立てていった。

「目標達成するまで目の前の敵をひたすら斬るだけだ」

「……」

「で、お前はどうする」

 そう言って、エリアを見つめながら、エレノアの柄に手をかけた。

 暗に、従わなければ切り捨てて代わりに兵を掌握する、という脅しだ。

 リカのために、サリラをなんとしても取り戻す。そのためにはこの砦にいる兵力を掌握する必要がある。

 つまり、このエリアという副官は最悪邪魔になり得る。

 エリアが「何がなんでも撤退」と主張すればかなり面倒臭いことになるのだ。

 女だしなるべくそうしたくないが、最悪の場合は……。

 エリアはおれをまっすぐ見つめた。

 今まであってきた女の中でも上位に入る、まっすぐな視線。

 おれをしばらくの間見つめてから。

「男爵様の身を危険にさらしてしまいますが」

「うん? どういうことだ」

「策が一つだけあります、しかしそれには男爵様の――」

「そんなことか」

 おれは笑って、エリアの言葉を遮った。

「思う存分やってくれ」

 おれは笑った。楽しくて笑った。

 こっちが受け入れるかどうかで、その結果斬るかどうかで思っていたのに、エリアは既に一つ先の事を考えてた。

 サリラを奪還するための事をもう考えてた。

 いい女だ、おれはそう思った。

     ☆

 その夜、おれとナナ、イオ、そして人間の姿に戻ったひかりが四人で魔法コテージの中にいた。

 部屋が一つついて、キッチンがついた。

 それだけの殺風景な部屋だけど、自由に持ち運べるし、テントよりもかなり快適だ。

 その中で、ナナとイオに作戦を説明した。エリアから聞いた作戦だ。

「副官殿が率いる本隊はそのまま撤退。それを追いかけて所、手薄になったサリラを主が寡兵を率いて急襲、ということか」

「そういうことだな。今撤退すれば間違いなく追撃が来る、って話だ」

「確かに! そのためにここを包囲してますもんね」

「追撃すればするほど、向こうはカランバの領土を侵食できるわけだしな」

「承知した、微力ながら主のお側で――」

「いや、ナナには違う所で戦ってもらう。おれと違う所だ」

 ナナは一瞬キョトンとした。

「それは……どのような?」

「本隊のしんがりだ。敵をおびき出すための撤退だけど、撤退には違いない。損害を押さえるためにも、策を悟られないためにも、ちゃんとした殿が必要だ」

「なるほど! さすがカケルさん」

 イオが尊敬の眼差しを向けてきた。

(ほとんどあのエリアという娘から聞いた話を伝えただけだろうに)

 あたまの中で茶々を入れてくるエレノア。

「あっ、でもそれってすごく危ないんじゃないですか。わたしはよく知らないですけど、しんがりっていうのはものすごく危ないものだって」

 たしかにその通りだ。

 全軍が撤退する中、任せられたものだけは撤退できず、その場で踏みとどまらなきゃ行けない部隊だ。

 更に言えば勝ち戦で乗りに乗ってる敵軍を防ぐわけだから、危険度は普段の戦闘よりも遙かに高い。

 だからこそ――。

「主に感謝する」

「うん?」

「私のような者には、そうやって信頼して任せて頂けるのが何よりの誉れ」

 先に言われた。

 殿に必要なのは力、そして心。

 敵を防ぐ事ができる力と、踏みとどまって戦い続ける心。

 その両方が必要だ。

 おれはナナが適任だと思った。

 かつては勝利の女神、白亜の聖女と呼ばれたナナが一番相応しいと思った。

 それを彼女に言いたかったけど、先にわかられて、言われてしまった。

 普通ならちょっと悔しいところだけど、嬉しかった。

「お前はいい女だ」

「滅相もない」

「いや、いい女だ」

 まっすぐナナを、真顔で見つめる。

「頼む」

 と、改めて言った。

「承知」

「カケルさん! わたしもしんがりの方に加わらせてください!」

 イオが言ってきた。

 拳を握って、決意を固めた表情で。

「わたしにも、カケルさんの役に立たせてください!」

「……危険だぞ」

「お願いします!」

「お前もいい女だな」

 そう言うと、イオの表情が明るくなった。

 そしてナナと見つめあって、うなずき合う。

 表情が引き締まる、明日からの戦いに向けて気合を入れる。

 本当、二人ともいい女だ。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ