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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

カランバ王国編

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57.女王の責務(side リカ)

 暗くてじめじめとした牢屋の中。

 カランバ王国を一時期牛耳っていた三宦官の一人、オロスの前に一人の男が現われた。

 男は黒装束を着て、看守を眠らせて、ここまで忍び込んだ。

「待ってたぞ。さあ、早くここから出すんだ」

「……」

「どうした、助けに来たのだろう。だったら早く――」

「言付けだ。お前は用済みだ。と」

「なっ――」

 オロスが驚愕する。

 助けにきたと思ったものがまさかの暗殺者だった。

「待て、それは話が――約束が違う」

「安心しろ」

 暗殺者が静かに言った。

 底冷えのする様な声で、無慈悲に宣言して。

「ラロウカもスクリネスも、一足先におくった」

「なっ――、ま、待て! 考え直すんだ」

「……」

 命乞いするオロス、しかし暗殺者はまったく心が動かない。

 投獄し処分を待っていた三人の宦官が、同じ日のうちに「謎の病死」をとげてしまうのだった。

     ☆

 首都メテオラ、王城の中。

 わたし、リカ・カランバは大臣達を集めて協議していた。

「サリラの現状ですが」

 大臣の一人、一番年上のアケロンが言う。

「戦況はまずまずとの報告。オシフ将軍は数日中にも奪われたサリラを奪還できるでしょう」

「それでコモトリアとの戦争が終わるのでしょうか」

「そうですな、そこまで行けば停戦の申し出をしてもよろしいでしょう。もともとサリラは我が国の領土、それが開戦の奇襲で奪われたのです」

「たしか、国境の要衝……と聞きました」

 ここ最近必死に詰め込んだ知識を頭の中から引っ張り出す。

 サリラ。元々カランバの領土で、守りやすくせめにくい所にある。

 宦官達から権力を取り戻したわたしが最初にすると決めた仕事は、ちょっと前にはじめてしまったコモトリアとの戦争を終結させること。

「はい、停戦するにしてもここは奪い返してからでないとなりませんな。そこをコモトリアにとられてままでは停戦しても喉先に剣を突きつけられたようなものです」

 アケロンがいう、わたしは無言でうなずいた。

 彼の言うとおり、サリラはそれくらい重要な土地。

 要衝という言葉を聞いてどれほどのものなのか調べてみたけど、王国の歴史でたびたびその話が出てきた。

 軍事の事はまだよく分からない、だけど歴史はそこが大事だと言ってる。

 だから奪い返さなければ、とわたしも思った。

「戦況が順調なら、それでいいわ」

「恐れながら申し上げます」

 アケロンの代わりに、今度はスタティスが口を開いた。

 内政に詳しい中年の男で、顔つきがちょっと神経質そうな人。

「なに?」

「戦費の件について。国庫がそこをつきようとしております、数日中にケリがつけば良いのですが、それ以上戦が伸びますと破綻する恐れがございます」

「そんなにひどいの? 開戦した時、オロス達は五年でも十年でも戦えると言ってたけど?」

 さすがにもう彼らの言うことは信じてないけど、それにしても差が開きすぎてる。

「その件についてご報告が二つ。一つは、それに関連してオロスら三人経由で金が流れた痕跡がございます。おそらくは戦にかこつけて私腹を肥やしていたのでしょう」

「もう一つは?」

 腹立たしさを抑えてきいた。

「オロス、ラロウカ、スクネリスの三人が昨晩死にました」

「死んだ? 昨日? 三人とも?」

「はい」

 スタティスが静かにうなずく。

「一体どういう事?」

「調査中です、ですが……」

「偶然じゃないわね」

 さすがにそれくらいはわたしにもわかる。牢屋に捕らえたあの三人が同じ日に死んでしまうなんておかしいことくらいわかる。

 同時にもう一つの事もわかる、今はそれを気にしてる場合じゃないって事。

「金は……どうにかならないの?」

「数日中にケリが――」

「長引いた時の事を考えて」

「御意」

 スタティスが一礼して、言った。

「と言ってもやれる事は限られてます。貴族から集めるか、商人から集めるか、民から集めるか。そのどれかです」

「どれが一番いいの?」

 わからないからストレートに聞いた。

「民から」

「民から? それはどうして? 民から搾取することは国家滅亡の遠因になりかねないのに?」

 これも最近勉強した歴史によくあった話。

 暴政を敷いて、民から搾取して国が滅んだ話はよくある。

 だからスタティスが上げた三つのうち、民だけはないと思っていたのに。

「貴族からとっても、商人からとっても、連中はとられた分を取り戻すため民から吸い上げようとするだけ。連中が損をしたままで終わるわけが訳がない」

「あっ……」

「そしてそうなった時、連中は余分に、ついでに、つまみ食い感覚で民からむしります。貴族どもは税を、商人どもは商品の値段をつりあげますな。国に100差し出すのなら、民から120くらい吸い上げないと損だ、と思う人種ですな」

「……その20を彼らの手に渡すくらいなら、民に恨まれても直接100を国がとった方がいい、と?」

 なんとなくスタティスの言いたいことはわかった。

 実際彼は静かにうなずいた。

 そして、わたしをみる。

 さあどうするのか、と言う目で。

 こまる、迷う。

 困ったけど、選択肢はまったくないのと同じ。

「直接徴収しよう」

 こっちの方が、結果的に民にかかる負担は少ないみたい。

 その結果王家は恨まれる……苦渋の決断だ。

「御意」

「さすが女王陛下、賢明なるご判断に感服いたしました」

 アケロンが言う。

「お世辞はいいわ、それよりも戦争を早く終わらせるようにして」

「もちろんです。いやしかし、オシフ将軍も歴戦の強者、近いうちに朗報が――」

 アケロンの言葉の途中で、パン、と部屋のドアが開かれた。

 一人の男が入ってくる、血相を変えた顔でアケロンのそばにかけよって、耳打ちする。

 アケロンの顔色が変わった、一瞬で真っ青になった。

「どうしたの?」

「……」

「アケロン」

 強めに名前を呼ぶ。

「オシフ将軍……戦死いたしました」

「……え?」

「サリラから敵総司令官が逃げだそうとしたのをみつけて、兵を率いて追撃したところ、伏兵に――」

「なんて事……」

「これにより前線は混乱、潰走状態に陥っている模様」

「目的を見失った馬鹿め、敵の大将などいくらでも逃がせばいいのに、この戦はあくまでサリラを取り戻すために続けてるのだぞ」

 スタティスが吐き捨てる様に言う。

「……功績が、更なる功績がほしかったのでしょうな」

 アケロンはそう言って、頭を抱えた。

 わたしもそうしたくなってきた。

 民に嫌われる覚悟までしたのに、これじゃ……。

 どうしよう、どうすればいいの?

「陛下」

 アケロンが言った。

「もうサリラの奪回と言ってられる状況ではございません。今すぐコモトリアに使者をおくり、停戦を申し出るのです」

「このタイミングで停戦できるの?」

「それなりの賠償金と、領土の割譲を申し出れば」

 泣きたくなった。

 それなりというのが、絶対にそれなりってレベルじゃないとわかるから。

 負けてるときに差し出すものなんて、それなりですむはずがない。

 アケロンをみた、スタティスをみた。

 二人とも、わたしに決断を迫るって目をしてる。

 もうそうするしかない、今ならまだ傷が最小限ですむ、そんな目だ。

 賠償金と、領土の割譲。

 わたしは――。

「なんだ、ここにいたのか」

 開け放ったドアから彼がはいってきた。

 自然体で、気軽に。腰に二振りの魔剣を下げて入ってきた。

「カケル!」

 カケルなら……カケルならきっと――。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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