挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

カランバ王国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

51/288

50.かごの鳥を解き放つ

 カランバ王国の首都、メテオラにむかう馬車の中。

 おれとオルティアが向かい合って座ってて、ひかりがチビドラゴンを膝の上に抱いている。

 オルティアに聞かれたから、色々説明してる。

 能力倍率の貸し出し、ワープ、魔法コテージ。

 くじ引きで引き当てたアイテム・スキルを大体説明した。

「そう」

「反応が薄いな。もっと驚かれるのかと思った。特にワープなんか、他じゃかなり驚かれたんだがな」

 誰に聞いてもそんなのははじめて、ワープの魔法とかアイテムとかは存在しないはずだって言ってた。

「もしかして、ワープって他にもあるのか」

「ううん、ないと思う」

「じゃあなんで驚かないんだ?」

「結構驚いてる」

 しれっと行った。驚いてる用には見えない。

 もっとこう、わかりやすく驚かせられないものか。

 そう思って、なんとなく馬車の中を見回して、ひかりをみた。

「ひかり、剣になってくれるか?」

「わかった」

 ひかりは即答して魔剣の姿になった。

 エレノアとひかり、二振りの魔剣をオルティアの前に突きつける。

「見ての通り、ひかりも魔剣だ」

「あら」

「おれと、このエレノアの娘でもある」

「へえ」

「……驚かないのか」

「驚いてるわ、とても」

「……全然そうは見えない」

 切り札でも全然驚いてる様にみえないオルティア。ちょっとだけ悔しくなってきた。

 その後魔法の玉の黒と白も使って見せたけど、やっぱり驚かないから、おれはあきらめた。

「みゅー」

 チビドラゴンが啼いて、剣にひかりに体をこすりつけた。

 切なそうな、悲しそうな顔をしている。

 魔剣の姿のひかりをみて、おれをみる。

 まるで、ひかりはどこに行ったの? って言ってる様な顔だ。

 ドラゴンだけど、捨てられた子犬のような目。

 かわいそうになったから、ひかりにいった。

「ひかり、元に戻っていいぞ」

(うん!)

 ひかりが人間の姿に戻った。チビドラゴンはすぐにひかりに飛びついた。

「あはは、おーちゃんくすぐったいよ」

 じゃれ合うひかりとチビドラゴン。

 それを温かく見守りながら、馬車は進んでいく。

     ☆

 王都メテオラ。

 馬車から降りて、目の前にある王城の中に入る。

 まずは女王に謁見する。と言うことでここにやってきたおれはいったん別の部屋で待たされた。

 しばらくして女官がやってきて、準備が整ったって言ったから、それについていった。

 魔剣を両方とも腰に下げて、オルティアと一緒にあるく。案内の女官から謁見の時の礼儀作法や注意事項について色々聞かされた。

 適当に聞き流した。これからあう女王がどんな人なのかの方が気になった。

 やたら天井が高くて、やたら長くて、やたらじゅうたんがふかふかな廊下。

 しばらく歩いてると、でっかい門の前にきた。

 門の前に衛兵が二人立っていた。

「謁見の間、御前である」

「武器の類はここで預かる」

 といって、二人とも手を伸ばしてきた。

 暗殺者対策の当たり前な事だけど。

「……魔剣エレノアだぞ、いいのか」

「関係ない」

 衛兵の一人が言った、何故か冷笑を浮かべている。

「本物の魔剣エレノアは人間にもてるはずがない」

「最近はファッション目的で流行ってるらしいな」

 衛兵の二人はあざ笑うように言った。

 おれは無言でエレノアを渡した。痛い目を見てもらおう。

 衛兵はエレノアを受け取った。最初はにやにやと値踏みするような目でエレノアを見ていたが、次第にエレノアの体から発する黒いオーラに包まれ、顔が強ばって、目が血走っていく。

「ぐ、ぐがががが」

「ど、どうした!」

「ぐぎがあああーー!」

 衛兵は正気を失って、エレノアを振り回しはじめた。

 いきなりの豹変に、もう一人の衛兵が慌て出す。

「な、なんだこれは」

「だからエレノア」

「え」

 おれは冷ややかな目をしながら言った。

「魔剣エレノア、人間が持つと取り込まれて正気をなくすんだろ?」

 衛兵はおれと同僚を交互にみた。顔がみるみるうちに恐怖に染まる。

「ほ、本物だったのか」

「おれはそう言ったぞ」

 衛兵がエレノアをもったまま暴れる。騒ぎを聞きつけて人が集まってくる。

 魔剣を持って黒いオーラを纏って暴れ回るその姿に、王宮の人々は怯え、おののいた。

 何人かの衛兵が暴れてるヤツを取り押さえようとするが、逆にエレノアに斬られ、負傷者が続出した。

 騒ぎが大きくなる、エレノアの名前とともに恐怖が伝染する。

「そろそろ止めなさい。これ以上暴れると謁見が中止になりかねないわよ」

 オルティアが先生口調で言った。

「そうだな」

 頷き、衛兵に向かっていく。斬りつけてくるエレノアをひかりでうけとめ、はじいて、当て身をみぞおちにいれた。

 一撃で衛兵を沈めて、エレノアを回収する。

 まわりの野次馬によく見える様にエレノアとひかり、二本の魔剣を腰にさす。

 ざわめきの中、暴走して気絶した衛兵が運ばれていく。

(貴様! 我をいい様につかいおって)

「ひかりを使う訳にはいかないだろ?」

(だからといって)

「それにお前を偽物扱いされるのはちょっと気にくわなかった。お前は魔剣エレノア。ひかりの母親、本物のエレノアだ。お前を偽物扱いするヤツは許せない」

(……)

「これからも似たような事があるかも知れない。先に謝っとく」

(ふ、ふん。すきにしろ)

 衛兵が暴れたせいで、おれはまわりから怯えられながら、謁見の間に入った。

 中はかなり広くて、格式張ってる。

 赤絨毯と階段のようなものがあって、その上に玉座がある。玉座には一人の少女が座っている
 みた感じ十代で、物静かで、寡黙な感じの少女。

 それが豪華なドレスを着てて玉座に座ってる。彼女が女王リカ・カランバで間違いないだろう。

 その近くに三人の男がいる――こいつらはどうでもいいと思った。

 おれは女王を見つめたまま、前もって教わって作法に則って一礼した。

「三等男爵結城カケル、お目通りが叶い光栄至極に存じます」

「……」

 女王は何も言わなかった、代わりにそばにいる男達が口を開いた。

「よくぞ参られた、ユウキ男爵、そして大賢者オルティアよ」

「女王陛下は大層お喜びだ」

「しかしユウキ男爵、話に聞いていたよりもお若い」

 女王はぼうっとおれを見ている、喋る気配はない。

 代わりに男達がぺらぺら喋りだした。

「大賢者オルティア様が推挙なさった方だ、間違いないでしょうな」

「しかし我が国に未だなんの功績も立てていない事も事実」

「これからの活躍を期待しておりますぞ」

 その後男達にいろいろ言われて、おれは結局一度も女王の声を聞けないまま、謁見が終わったのだった。

     ☆

「オロス、スクネリス、ラロウカ。あの三人の宦官が実権を全て握っている」

 馬車の中、宿に戻る途中。

 フードをかぶったままのオルティアがおれに言った。

「実権を?」

「先王が崩御した後、王女であるリカを女王に立てたのがあの三人。聡明と評判の王太子を政争で自害においやり、リカを女王として祭り上げた。以来、あの三人がずっとこの国の実権を握っている。ただし官位はたいしたことない、カケルの方がよほど上よ」

(まあ、宦官と男爵ではな)

 おれはさっき見た女王の事を思い出した。

 表情が乏しく、まるで操り人形みたいだ。

 女王なのになんで? って思ってたけど、そういうことだったのか。

 実権を握られた飾り物の女王。

 その顔が頭から離れなかった。

     ☆

「わっ!」

 謁見の間にワープしたおれは盛大に驚いた。

 女王はさっきあったときと同じように玉座に座って、ぼうっとしてる。他に誰もいない。

 女王がおれをみる、こっちは盛大に驚いたのに、向こうの表情はほとんど変わらない。

「ユウキ男爵?」

 女王が口を開く。はじめて聞く声はかなり綺麗な声だった。

 感情がこもってないのが難点だ。

「お前一人だけか?」

 さっきと違って、おれは普通の口調で話しかけた。

 女王は静かにうなずく。

「まだ移動の時間じゃないから」

「移動の時間?」

「わたしの行動は管理されてる。今日は夕方までここにいて、日没したら居室に戻る、そうなっているわ」

「管理?」

 なんか変な言葉が出てきたぞ。

「というかずっとここに? どっか行かないのか」

「手続きを踏めば。でも記録にのこるから、後でオロス達に怒られる。勝手なことをされては困りますぞ、って」

「……」

 なんだそりゃ。

 オルティアの話を聞いて傀儡女王って言葉が頭に浮かんだけど、これって傀儡よりもひどくないか?

 まるで囚人じゃないか。

「どっかいこうか」

 女王は首を振った。

「無理、予定外の所に一歩でも踏み込んだらすぐに宦官とか女官とかがくっついてくるから」

「そんなもの、障害にもならない」

「……魔剣があるから?」

「魔剣でもいいんだけど」

 エレノアとひかりをふるって血路を開くのも一つの手だけど、そんな事をする必要はまったくない。

「もう一度聞く。どっかいこうか」

「……いけるの?」

 おれは頷いた。

 女王は考えた。大分考えた。

 考えた後、静かにうなずいた。

「よし、じゃあ行こう」

 おれは女王に近づいて、彼女を連れてワープした。

 謁見の間から一瞬で城の外に飛んだ。

 馬車が止まっているところ、大通りの行き止まり。

 それなりに通行人はいるけど、見えづらい場所だ。

 待ってるオルティアにただいまと言った。

「つれてきたのね」

「ああ。……知ってたな、あれを」

「ええ」

 オルティアは頷いた。

 いきなりの事で、女王は驚いた顔で当たりを見回す。

「ここは……どこ?」

「メテオラの城下町……でいいのか」

 オルティアに確認する、静かにうなずかれた。

「城下町……」

「ほら、あそこが王宮」

「うそ……今の一瞬で?」

「宦官とか女官とか、障害にもならなかっただろ?」

 女王はおれをじっと見つめ、しばらくしてからコクコクと頷いた。

 そして、街を見回す。

「王宮からでるの何年ぶりだろう」

「女王になってからずっとか」

「うん。むかしは母上に頼めば、城下町に来ることはできた。護衛はつくけど」

「うん?」

 おれは引っかかりを覚えた。

「城下町に来ることはできたって、もしかして、メテオラから出た事はないのか?」

「ない」

「一度も?」

「一度も」

「……出ようか」

「え?」

「メテオラの外へ、今やったのと同じように」

 女王は目を見開き、驚く。

 さっきより迷った。難しい顔で考え込んだ。

 王宮から外に出るのは経験がある、だけど都から出た事はない。

 だから迷ってるんだろう。怯えてる様にも見える。

 しばらくして、女王は首を振る。

「ううん、いい――」

「行くぞ」

 最後まで言わせることなく、おれは女王を連れてワープした。

 やってきたのは、山ウシの草原。

 都と正反対の場所の中で、おれが一番なじみの深い場所。

「こ、ここは?」

「草原」

「これが草原……」

 知識としては知ってたけど、見るのははじめてって口ぶりだ。

「すごい……」

 驚嘆する女王。

 出会った時の人形の様な顔とちがって、瞳が輝きだしていた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ