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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

魔剣ひかり編

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43.赤色の巨龍

 夜、寝室。

 一人で寝ていたらドアが開いて、女が入ってきた。

 聞き覚えのある足音。目を開くと、想像したとおりヘレネーだった。

 ヘレネーは薄着でベッドの前に立ち止まって、おれをじっと見つめている。

「カケル様」

「ん、なんだ」

「お情けをいただきに参りました」

 お情け――可愛がってほしいって事か。

「わたくしもひかり様の様な子供を産みたい。カケル様のお子を産みたいです」

「おれの子供を?」

「はい、ひかり様の様な可愛らしい子供を」

 はっきりと頷くヘレネー。

「なにとぞ」

 ヘレネーに懇願される。

 鬼気迫る程真剣なヘレネーを見たのははじめてかもしれない。

「わかった」

 断る理由がないし、お願いする姿が可愛かった。

 だからおれは一晩かけて、ヘレネーを徹底的に可愛がった。

 朝になって、ヘレネーが俺に言った。

「もしも……カケル様のお子供を無事うめたら」

「うめたら?」

「一緒に……親子でここに住ませてもらってもいいですか」

 一瞬、キョトンとなった、そのあと吹き出した。

 そんな当たり前の事をお願いしてくるヘレネーがものすごく可愛かった。

 だから夜が明けたのに、もっと可愛がってやった。

     ☆

 朝、日課の仕事を終わらせた後、ロイゼーンの街を適当にぶらついているた。

 あっちこっち回る適当な散歩だ。

 ふと、街の入り口の方がなんか騒いでるのを見つける。

 なんだろうと思って近づくと、傷ついてぼろぼろの兵士が倒れてるのが見えた。

 街の人はそれを遠巻きに見ている。

 この街の兵士がやってきて、傷ついた兵士を抱き起こした。

「どうした、何があった」

「レ……レッドドラゴンが出た」

「なに!?」

 兵士が声を上げた。それを聞いた町の人のざわざわも大きくなった。

 動揺して、怯えて、よく見ると慌てた様子でどこかに駆け出す人もいる。

 そういう人間は「レッドドラゴンが出たぞ」と叫んで走って、そこから更に恐怖が広がる。

「早く……逃げろ……」

 そう言いのこして、兵士は息絶えた。

     ☆

 ラマンリ商会、デルフィナの部屋。

 わからない事はとりあえず彼女に聞くことにしてるおれはワープでやって来て、さっき見たことをそのまま話した。

 デルフィナの顔色が変わる。静かだが、深刻な顔になる。

「少々お待ちを」

 そう言っておれを待たせて、デルフィナは部下を呼んだ。入って来た男に耳打ちした。

 部下は血相を変えて部屋から飛び出した。

 さっきからずっとこの調子だ。街の人もデルフィナも、耳打ちされた彼女の部下も。

 全員、「レッドドラゴン」って単語に反応してる。

「レッドドラゴンってのはなんなんだ」

「ドラゴンの……余命幾ばくもないドラゴンの一種です」

 死にかけって事か? だったらなんでみんなそんなに怯えてるんだ?

 おれの疑問を察して、デルフィナは静かな口調で説明をはじめた。

「ドラゴンというのはきわめて力が強く、また知性も高い生き物です。どちらにおいても人間のそれを遙かに上回ります」

 それはいい? という顔をしてくるデルフィナ。

 ドラゴンならそうなんだろうなと、おれは頷きかえした。

「誇り高く、常にドラゴンたらんと矜恃を持って行動します。生まれてから死ぬまでずっと」

「……で?」

「そのドラゴンの末路はいくつかございます。より力が強く、知性が高いドラゴンほど、寿命がつきそうになった時、力……そして体そのものが爆発的に増大します。ロウソクの最後のきらめきと考えていただければ」

「強くなるのか」

「はい。ここからが肝心なところなのですが、そうなったドラゴンからは知性も理性も消滅します」

「むっ」

 何となく読めてきた。

「力が知性を飲み込んで、ただただ暴威をまき散らすだけの存在。その時に体が発する色からレッドドラゴン、と呼ばれています」

「ただでさえ強いドラゴンが十倍の力で暴走してるのか。そりゃみんな怯えるわけだ」

「そうなる可能性のドラゴンは基本知性が高く、プライドも高いため、大半は人知れずどこかに隠れてひっそりと最後を迎えるか、そうなる前に自分で決着をつけるかのどちらかです。醜悪なる自分を見ていられない、晩節を汚したくない、といった考えから」

「なるほど」

「ですが、ごくまれに生に執着するものも出てきます」

「そういうドラゴンが破壊の権化――レッドドラゴンになりはてる、そういうことか」

「その通りでございます」

 大体の話はわかった。

「先ほど使いのものを走らせました。間もなく、現状がわかるかと思います」

「現状?」

「レッドドラゴンがあらわれて被害が出ない事はあり得ません。それは歴史が――」

 デルフィナがそう言ったそばから、さっきの部下が飛び込んできた。

 ノックする余裕もかなぐり捨てて、とにかく報告に戻ってきた。

「デルフィナ様!」

「うん」

「ロドスが……」

「ロドス?」

 デルフィナに聞く。

「人口およそ十万人の、商業都市ですわ」

 結構でっかい都市だな。っていうかおれが知ってるこの世界の中で一番でっかいのか?

「ロドスがどうしましたか」

「壊滅しました」

「壊滅?」

 おれがつぶやく。デルフィナの部下が言う。

「壊滅して、都市そのものはほぼ廃墟化したとのこと」

「住民は?」

「事前にレッドドラゴンが別の街を襲ったと言う情報を知っていましたので、住民はほぼ全員逃げおおせたとのこと。しかし街は……」

「無人の街にレッドドラゴン。復旧に十年はかかりそうですわね」

 デルフィナが言った。そんな規模の被害がでるのか。

「討伐は?」

「ヘレネー殿下とジジス将軍が数千の兵を率いて向かってます。また念の為に冒険者ギルド、不死の聖女メリッサにも救援要請を出したとのことです」

「ヘレネー殿下らしい、早い判断ですわね」

 ドラゴン一体に大げさな。

 この時のおれはそんな風に思っていた。

     ☆

「ヘレネー殿下!」

 兵の一人が天幕に飛び込んでくる。

「主力部隊が渓谷にてレッドドラゴン・オリビアとの交戦にはいりました。戦況は五分、ジジス様は可能なら増援をとの仰せです」

「ジジス将軍に2000の兵でようやく互角ですか。恐ろしいものですわね」

 少し考えて、横にいるフォティスに聞いた。

「動かせる兵は」

「殿下直属の親衛隊1000名ならばすぐにでも」

「すぐに投入して。レッドドラゴンとの戦いは長引かせてはいけない」

「はっ」

「指揮はあなたがとって」

「ですが、それでは殿下の身の周りの安全が」

「まずはオリビアを倒すのよ。廃墟になったロドスは見てきたよね。あの惨劇をそれ以上増やしてはいけない」

「――っ! 御意。直ちに増援に向かいます」

 わたくしの命令に従って、フォティスが天幕を飛びだそうとした、その時。

「ご、ご報告」

 今後は兵士が飛び込んできた。

 血相を変えて、慌てて。

 なんだかものすごく悪い予感がする。

「どうしましたか」

 冷静に、冷静に、と自分に言い聞かせながら、兵士に聞いた。

 だけど。

「ジジス様戦死! 討伐軍主力潰走してます」

「……」

 嘘。

 その言葉が真っ先に頭に浮かんだ。

 でも、真実だった。

 遠くからドラゴンの咆哮が聞こえた。

 断末魔の叫びじゃない、怒りを感じさせる咆哮。

 レッドドラゴン・オリビアが健在で、怒れているという証拠だ。

「何があったの? さっきまで互角という話だったのでは?」

「ドラゴンのブレスがジジス様、およびその周辺を焼き尽くしたとのこと。ジジスを失った前線は大混乱に陥ってます」

「……死傷者は」

「動けるものは三割……ですがすで潰走をはじめていましたので……」

 兵士は最後まで言わなかった。

 ほぼ全滅、言葉通りの方の全滅なのだとわかった。

 一瞬でこうなるとは……予想を遙かに上回る存在でした。

「オリビアは?」

「西の方向に向かってます」

「西……いけない、あっちにはレヤが」

「二万人おります。距離はありますが、一日もかからず到着するかと」

 苦虫をかみつぶした様な顔でフォティスが言った。

 わたくしは兵に命じた。

「すぐにレヤへ走って、住民を避難させて」

「はい!」

「フォティスは敗走兵をまとめて、可能な限り再編成して」

「殿下は」

「今ある兵を直卒して、オリビアを足止めする」

「危険すぎます!」

「兵が足りないの。少しでも士気を上げないと足止めすらできないわ。そして士気を上げる一番早い方法はわたくしがあそこに立つこと」

「ですが――」

「フォティス」

 名前を呼んで、まっすぐ見た。

 しばらく見つめると、向こうが折れた。

「承知いたしました。たたちに敗走している兵をまとめ、救援に向かいます」

「ええ」

 フォティスも飛び出した。

 わたくしは直属の兵を率いて、レッドドラゴン・オリビアを追いかけた。

「……カケル様」

 右手が、腹をぎゅって掴んでいた。

     ☆

「伝令! 百人隊長スピロス戦死!」

「直下の十人隊長――パンを百人隊長に昇格。そのまま食い止めるように伝えて」

「はい!」

 伝令の兵士が走って行った。

 目の前に……遠くに山の様な巨大な赤い竜が見える。

 実際に見るまで、これほど大きいものとは想像もしていなかった。

 ううん、想像していたのより遙かに大きい、と言った方が正しいかもしれない。文書に残っているかつてのレッドドラゴンよりもあきらかに一回り大きかった。

 記録が間違っているのか、オリビアが別格なのか。

「伝令! フォティス様負傷! 意識不明の重体です!」

「すぐに後送。兵はその場にいる最高位のものを一人昇格、その人に率いさせて」

 フォティスがまとめて来て、投入した兵達もバタバタ倒れた。

 それでも引けない、ここで引いたらレヤが……。

 せめてロドスのように、住民が避難するまでの時間を稼がねば。

 それをあざ笑うかのように、兵が次々と倒される。

 レッドドラゴン・オリビアが徐々に迫ってくる。

 暴威をまき散らしながら迫ってくる。

 限界、そう感じた。

 これ以上は防げない、これ以上いたらわたくしも――。

 だけど。

 今引いたらレヤの住民の、おそらくは半数はドラゴンの暴虐に巻き込まれる。

 逡巡。

「殿下! もう持ちません」

「……踏みとどまって」

 迷いの果てに、わたしはそう決めた。

 民に被害がでるのは断じてさけなければならない。

 わたくしと兵の数百。

 二万の民。

 おそらく、天秤は後者に傾くはず。

「なら、せめて殿下だけでもお逃げください。ここは我々が」

「ありがとう、でも遅かったようだわ」

 加速度的に減っていった兵の壁を突破して、レッドドラゴンが迫ってきた。

 大地を轟かすほどの咆哮。立っていられないほどの地響き。

 死が、目の前にやってきた。

 わたしの手が腹の辺りを触れた。

 せめて、という言葉が頭にうかんだ。

 三人家族の幸せな絵が脳裏に浮かび上がってきた。

 目を閉じた。せめて、それを抱いて死んでいけるように。



 その時、違う種類の轟音が轟く。



 天から黒い光が稲妻の如く落ちてきて、レッドドラゴンの猛進を止めた。

 直後に、一人の男が悠然と降りたち、黒い光のもとになったものを手に取った。

 右手に魔剣、左手にも魔剣。

「カケル様!」

 二振りの魔剣を携えた者は、わたくしの目には救世主の様に映った。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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