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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

くじ引きの異世界編

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3.屋敷購入

 宿屋の部屋に入ったおれは、とりあえず金勘定をする事にした。
 備え付けのテーブルの上に布袋を置いて、ドバッと中の金を全部出した。
 全部が同じもので、偉そうな王様の横顔が彫られた銀貨だ。
 数えると、その数99枚。
 宿に入ったときに一枚とられたから、あの山ウシ一頭で丁度百枚って事になる。

「それはそれでわかりやすいけど、これ一枚でどれくらいの価値なんだ?」

 おれは銀貨を摘まんでまじまじと見て、それから部屋の中を見回した。
 変哲のない、普通に寝泊まり出来る程度の宿だ。
 これが日本だったら一晩5千円から1万円の間ってところか。
 つまり銀貨一枚でそれくらいで、山ウシ一頭で50万から100万位の儲けって事になる。

「この計算があたってる前提だけど……おいしいな。いやあたってなくても純粋に一頭分で宿を100日も泊まれるんだから、やっぱり普通においしいな」

 おれは山ウシを狩った時の事を思い出す。
 あの程度の労力でこんなに儲かるんならもっとやるべきだろう。
 明日もう一度狩りに行ってみよう。
 おれはそう思って、早々と眠りについた。

     ☆

 次の日、同じように街を出て、山ウシが生息する草原にやってきた。
 出会った一頭目には先客がいた。どこかの傭兵か何かの集団か、全員が同じ鎧と同じ武器を持って、山ウシをたこ殴りにしていた。
 それをちょっと観察した……まあ昨日みたいに向こうがダメだったら出て行こうかって思いもあった。

 だけど、そうはならなかった。
 一時間くらいかけて、二人くらいの軽傷者を出したけど、その集団は山ウシを狩ることが出来た。
 山ウシを運んで、街に戻る彼らの後ろ姿を見送る。
 一頭100万だとして、一人頭10万。
 これでも美味しい部類だけど、負傷する(軽傷だったけど一週間くらいは休養した方がいいってレベルだった)危険性も考えると――。

「普通は相応の稼ぎ、って感じなんだな」

 おれは草原をぶらついた。山ウシと遭遇する様に祈りながらぶらついた。
 30分位して、ようやく出会った。
 山ウシはおれを見るなり血走った目で、鼻息を荒くする。
 そのまま、突進してくる。

「ふっ!」

 おれは避けず、飛び込んできた山ウシに向かったパンチをたたき込んだ。
 カウンターパンチ、眉間にジャストミートして、山ウシは吹っ飛んだ。
 地面に転がって、ビクン、ビクン。
 何回かけいれんした後、動かなくなった。

「いっちょ上がり、っと」

 山ウシを担いで、街に戻って換金した。
 そしてまた草原に戻ってきて、ぶらついた。

 山ウシと遭遇、倒して、戻って、換金。
 戻って、ぶらついて、山ウシを探す。

 倒して換金、倒して換金。
 それをひたすら繰り返そうとしたけど……この日は5頭しか狩れなかった。
 ぶっちゃけ倒すよりも、探して歩き回るのと、運ぶ時間の方がずっと長い。
 それを最後に、換金する店の人に言ったら。

「普通の奴らは一回に一頭狩るだけだから、そんなぼやきを初めて聞いた」

 と半分呆れ気味に言われた。
 微妙に納得した。
 怪我したりそもそも倒せなくて逃げ出す可能性があるんなら、遭遇までの時間と運ぶ時間なんて考えないもんな。
 まあ、それもおれには関係ないことだ。

 とりあえずこの日の稼ぎは銀貨550枚だった。
 店の人は約束通り一割上乗せで払ってくれたからこうなった。
 これと昨日の稼ぎを合わせて、649枚。
 最大限好意的に解釈して、649万相当の額だ。

     ☆

「ここか」

 夕方、メモ片手にその店にやってきた。
 家を買いたい、と言うことを山ウシの店の人に言ったら、この店を紹介してくれたのだ。
 扉を開けて、中に入る。
 意外に清潔に保っている店の中に、出っ腹の中年男がいた。
 男はおれを見るなり立ち上がって、商売用の笑顔を作って出迎えた。

「ようこそサマラス商会へ。何か手伝える事があるでしょうか」
「家を買いたい」

 おれはストレートに切り出した。

「お任せ下さい。住むためのものでしょうか? それとも商売用に使われるものでしょうか」
「住むためだ――」

 瞬間、頭の中に日本の住宅事情がよぎった。
 おれは要望に夢を乗せて、いった。

「広くて、庭がついてるのがいい」
「左様でございますか。して、ご予算は」
「これ」

 テーブルの上に銀貨がずっしり詰まった袋を置いた。

「銀貨650枚だ」

 一枚足りないけど。

「左様でございますか」

 男の顔が曇った。
 やっぱり少なかったんだろうか。いや、少ないんだろう。
 650万相当って考えたけど、昨夜の計算じゃ、下手したらその半分くらいの価値って可能性もある。
 そうなったら300万くらいだ。
 その程度の金額で広くて庭付きの家を買いたいなんて――うん、おれが店の人なら「何言ってんだこいつは」ってなってる。
 そう考えると男は表情がちょっと曇っただけで、立派な商売人かもしれない。

「無理なのか?」
「広さにもよりますが、通常の一軒家は相場で銀貨2000枚程度となります」
「2千枚……2千万……そんなものかやっぱり」
「更にお客様が望む広くて庭付きの物件ですと……この街でなら倍近くはいたしますな」
「4000……」

 山ウシ40頭分か……、問題はないけど、時間はかかるし、何より一気に数が増えてちょっと萎えてくる。
 一日5頭狩っても一週間以上。いや遭遇が悪かったら一ヶ月以上かかる可能性も出てくる。
 それはだるい、かったるすぎる。
 仕方ないから、ちょっと条件を緩めようかな、と思ったその時。

「失礼ですが、お客様は腕に自信がおありで?」
「腕? 力って事か? まあ……それなりに。なんでそんな事を?」
「この袋――失礼」

 男はおれが置いた袋をくるり、とテーブルの上に半回転させた。
 そこに見覚えのあるマークがある。

「山ウシを扱っているアンドレウ商会の紋章。これを使うって事は、お客様は山ウシ狩りと推測いたしました」
「なるほど」

 おれはマークを見た。あの店――アンドレウ商会って言うのか――の看板にもあったマークだ。
 男の推測は納得出来たし、多分おれも今度からそう言う目でこの袋と、それを持つ人間を観察する事になるだろうなと思った。

「であれば……おすすめはできませんが、一つだけ心当たりがございます」
「どういうの?」
「街南東にある屋敷でございまして……この街の住人ならこれだけでピンとくるのですが。そこに誰も住んでいない屋敷がございます。別名、幽霊屋敷」

 男は苦い顔をしていった。

「幽霊屋敷」
「はい、かつては豪商が住んでいた屋敷でございますが、今は出るともっぱらの噂で、誰も住みたがらないのです。実際には何組かのお客様が入居しましたが……みな……」
「なるほど」
「屋敷そのものはこしらえが大変良くて、広さも申し分ありません。それさえなければ……通常ならば5千枚以上はする物件ですが」
「曰く付きで、誰も住みたがらない、と」
「と言うより住めない、と言った方が正しいかと」
「幽霊屋敷か……」

 おれは考えた。
 心霊現象は怖くない方だ。ホラーとか見ても特に何も感じないタイプだ。
 ぶっちゃけ事故物件で安く住める所とかでも全然平気。

 心配なのは、本当に「出る」場合だ。
 ここは日本じゃない、そして男の口ぶりだ。
 もしかして、本当に出るかも知れない。

 幽霊が出たら……倒せるんだろうな。
 悩みながら、一応聞いてみた。

「ちなみに値段は?」
「けちがつきすぎてましてな、こちらとしても手放せるのなら……100枚で」
「買った!」

 おれは即答した。
 5000枚以上のものが100枚。
 98%オフ!
 安すぎて、買わない理由がどこにもない。

「本当によろしいのでしょうか」
「ああ。幽霊なんか出たらぶっ飛ばすから」

 興奮して、そんな事も言ってみた。

「かしこまりました」

 男は一瞬迷ったが、すぐに商人の顔になった。
 こうして、おれは家を――屋敷を手に入れた。
 幽霊が出たらぶっ飛ばしてやる、そんな気持ちと共に。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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