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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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287.すごい女達(sideキャロライン)

 キャロラインが目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。

「――ひぃ!」

 長年住み慣れた自分の部屋、本来なら心安まるパーソナルスペース。
 しかし、キャロラインは悲鳴を上げた。
 顔を青ざめて、周りを見回して必死に何かを探した。

「神様! 神様どこ!?」

 探しているのは彼女が神様と呼ぶカケルの事。
 いつここに帰ってきたんだろうか、眠りにつく直前までは、確かにカケルの腕の中にいたはずなのに。
 彼女はすっかりパニックになって、必死にカケルを呼んだ。

「神様!! 何処にいるの神様!! いやああああ!!」

 悲鳴を上げると、それを聞きつけたもの達がやってきた。
 ドタドタドタという音の後に、ドアがパン! と乱暴に開け放たれる。

「どうしたんですかキャロライン様!」
「何かありましたか?」

 入って来たのは二人の若い修道女。

「ひぃ!」

 修道女の出現に、キャロラインはますますパニックになった。
 さらわれかけた事が彼女のトラウマになって、今やカケル以外のあらゆる人間に恐怖を覚える様になってしまった。

「大丈夫ですよキャロライン様。私たちはここの修道女です」
「バカ、彼女に何をいっても意味ないでしょ。聞こえないんだから」
「あっ、そっか……」

 キャロラインは彼女達の声は聞こえない。より正確には声としては聞こえてるけど、脳がそれを声と認識出来ない。
 カケルがくじ引きのアイテム「下位互換」を与えたから聞こえる様に出来るのだが、姿を見ただけでもパニックになるほど怯えているキャロラインが、声を聞こえる様に周波数を合わせられるはずがない。

「神様! お願い返事をして神様!」

 結果、彼女はよりパニックになってカケルを呼び続けた。

「ソロン様の声が聞こえなくて怯えてるのかな」
「何があったのかな、でも聞こえないって、今までもいつも聞こえてた訳じゃないよね」
「だね。パニックになってるし、一人にしてあげましょう」
「ちょっと待って」

 修道女の一人はキャロラインの部屋にある机、その上に置かれてるペンと紙を使って何かを書いた。
 簡単なメモ書きにしたものをキャロラインに渡す。

「『安心して、外にいるから何かあったら呼んで』、なるほど、文字にすれば読める訳ね」
「落ち着いたときにめを通せばいい、って狙いもね」

 修道女二人は部屋から出て行った。

 最悪の状況から少し改善された事で、キャロラインは少しだけ落ち着いた。
 もらったメモに目を通す余裕も出来て、部屋の中を見回して、わめかない程度になった。

「神様……何処に行ったんだろう……」

 つぶやくキャロライン、恐怖が過ぎ去った後に残ったのは、かつてない程の心細さだった。

 この日を境に、カケルは現われなくなった。

     ☆

 カケルが現われなくなって早一週間。
 初日こそパニックに陥ってしまったキャロラインだが、そこは慣れ親しんだ教会、実質上の我が家。
 次に日はすっかり落ち着いて、部屋を出てそれまでと同じ日常を送れるようになった。

 この日も部屋を出て、カケルの事を思いながら、神像の前で祈りを捧げようとした。
 いつもの様にひざまずき、手を合わせようとすると、横から一人の女がやってきた。

「あっ、ちょっと待ってくださいキャロライン様」

 修道女の若い女は何か言ったが、もちろんキャロラインは聞いてなかった。
 キャロラインを押しとどめて、彼女が跪こうとした所をホウキではいて、更に軽く絞った雑巾で拭いた。
 キャロラインが跪こうとした所をサッと掃除したのだ。

「はい、どうぞ。今日も頑張ってくださいねキャロライン様」

 修道女はそう言い残して立ち去った。
 無論キャロラインの耳には聞こえていない、が、目にはうつった。
 キャロラインは修道女の不思議な行動に首を傾げた。

     ☆

 一日中祈りを捧げても、キャロラインの前にカケルが現われる事はなかった。

「神様……」

 切なげにつぶやく、ほかの人間の言葉は彼女には届かないが、逆は違う。
 キャロラインの言葉は普通にほかの信徒達には聞こえるのだ。

 男達が教会学校に出かけて、ほとんどが修道女だけになっている教会の中。
 同じように祈りを捧げていた年かさの修道女たちが彼女を慰めた。

「大丈夫ですよキャロライン様。きっとまたソロン様はお声をかけて下さいますよ」
「そうそう、今はきっと、私たちの学校の成果を見守って下さっている所なんですよ」

 年かさの修道女達の言葉ももちろん聞こえず、キャロラインは少し離れた所でせわしなく動いてる若い修道女達を見た。

「皆さんお疲れ様です、お水を持ってきました」
「それ冷たいタオルです、これで膝を冷やして下さいね」

 彼女は水やタオルを配ったり、ほかの信徒達を慮ったりとあれこれ動き回っている。

「はい、キャロライン様もどうぞ」

 一人がキャロラインの所に来て、水の入ったコップを渡した。

「どうぞ――あっそっか、話しかけても分からないんでしたっけね」

 若い修道女は水を飲むジェスチャーをしたので、キャロラインは受け取った水を飲んだ。
 水は体に染みこんできた、ただの水のはずがやけに体に染みこんでくる。

「うふふ、不思議そうな顔をしてますね。ちょみっとひと味加えました。説明しても分かりませんので言いませんけど」

 イタズラっぽい笑みを作って、若い修道女はほかの者にも水を配ってまわった。
 キャロラインは、彼女たちの姿を見つめ続けた。

     ☆

 キャロラインの生活に少し変化が起きた。
 教会で寝て起きて、祈りを捧げる日常は変わらない。
 それ以外にやることが一つ増えた。

 目で修道女の姿を追った。
 特定の誰か、という訳ではない。
 教会にいる一部の若い修道女の姿を目で追うようになった。

 今も、訪ねて来た信徒に手紙の代筆をしている修道女を見つめている。
 ここ数日、やけに目を惹く修道女達がいる。
 ほかの人間達と何かが違う、何が? って言われると語彙力の低いキャロラインはそれを上手く表現できないが、はっきりと何か違うと感じた。

 気が利いて、動きが洗練していて、所作にどことなく気品を感じる若い修道女達。

 キャロラインは彼女達を目で追うようになった。
 彼女がそうした理由はもう一つある。

 キャロラインが気になってる若い修道女、必ず一人はキャロラインの視界に入って来てる。
 部屋に籠もっている時でさえ、窓を見れば外に一人がいる。

 向こうはキャロラインを見ていない、それぞれの生活を営んでいる。
 にもかかわらず必ずいる。

 だからキャロラインは彼女達を見た。目を追いかけて観察した。

「すごく……」

 キャロラインはその女達を表現しようと頑張った。

「綺麗で、すごくて、……すごい女の人たち」

 人間と没交渉で、鍛えてこなかった少ない語彙力を振り絞った。

 目でおってるうちに、キャロラインは彼女達の事が気になった。
 同時に、みんな(、、、)そうなのかとも思った。

 ほかの信徒達の行動も見た。
 けれどキャロラインが「すごい」と思うのは一部の人間、数にして二十くらいだった。

 次第に顔も覚えた。
 名前は分からないけど顔は覚えた。

 顔を覚えると、その行動にもっともっと惹かれるようになった。
 二十人は似ているようで、微妙に違う。
 すごさもそれぞれ違う。

「どうしてなんだろう……あっ」

 自分で考えて分からなかったキャロラインはふと気づいた。
 分からないなら聞けばいいんだと。

「神様の声聞こえなくなってしまうけど……しょうがない」

 彼女は『下位互換』を使って、普通の人間の声も聞こえるようにしてから、「すごい」女の人をさがそうと部屋をでた。
 普通の人間なら今このタイミングでしない。
 なぜなら彼女がそれに気づいた時は夜中だったからだ。

 聞きたい事に気づいても夜中なら次の日の朝まで待つのが常識だが、他人と関わってこなかったキャロラインにはそんな発想はなかった。
 だから、偶然見かけた。

 部屋を出て「すごい」女を捜したキャロラインは、教会の外で目撃する。

 女の一人が、カケルと向き合って話している所を。

『神様……?』

 驚くキャロライン。
 しかし驚きは意外と軽かった。
 これが数日前、彼女が教会に戻された直後だったら、一にも二にもなくカケルの前に飛び出していったんだが、そうはならなかった。

 カケルへの依存は少しだけど薄れ、「すごい」女の存在が判断の天秤に乗る程度に大きくなった。

 飛び出す代わりに、彼女は気になった、ものすごく気になった。
 カケルと「すごい」女の会話が。

 カケルの声を聞こうとすると、女の声が聞こえない。
 女の声を聞こうとすると、今度はカケルの声が聞こえない。

 どっちか片方しか聞こえなくて、会話の内容が分からない。
 でも気になる、何を話してるのか気になる。

 キャロラインは生まれて初めて頑張った。
 興味を外側に向けて、二人の会話を同時に聞き取れるように頑張った。
 そして。

「はっ、ニキ・セフィリス以下第一小隊、引き続き神の子の身辺護衛に当たるであります!」
「頼む。全てが終わったら全員たっぷり可愛がってやる」
「はっ――いいえ。はい!」

 聞こえたせいで、ますます困惑するキャロライン。

 一瞬にして二つの顔を見せたニキ。
 彼女の顔は覚えた。しかし今の顔は知らない。
 今までで一番かっこいい顔と、一番綺麗な顔。
 それを一瞬のうちに切り替えてしたニキに、キャロラインはますます困惑して、ますます興味をもった。

     ☆

 キャロラインの心の動きは、9割近くカケルの予想通りだった。
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【タイトル】
虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした

【あらすじ】
風間シンジは異世界に召喚されて、女神の頼みで世界を救ったが、世界全体が彼を利用するだけして、虐げていた。
そんな世界のために頑張るのが馬鹿らしくなったシンジ。彼は最低限の義理を果たした後異世界を見捨てて、チートの力をもったまま現実世界に戻ってきた。
シンジがいなくなった後の異世界が自滅していく中、彼は現実世界でチートを使って気ままに生きていく。
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