挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

285/288

284.閉じた世界の中で

 キャロラインは未だに怯えて、俺の腕の中でブルブル震えている。

(休ませた方がよさそうだな)
「そうだな、教会……いや屋敷に連れて行こう」
(うむ、自信持って安全と言える場所がよかろう)

 エレノアと同意見だった。
 キャロラインを狙ったヤツが気になる、割と楽しい意味で気になる。
 それはこの襲撃で嗅ぎ取った、危険な香りによるものだ。

 俺とエレノアが楽しい分、キャロラインにとっては恐怖になる。
 教会はもちろんつれて帰れない、確実に安全な場所がいい。

 俺の屋敷、それもナナをつけよう。
 武力的な意味でも、忠誠心的な意味でも。

 ナナのいるところが一番安全だろう。

(でもおとーさんのそばが一番安全だよね)
「そうだな。ひかりはよく分かっててえらいぞー」
(えへへー)

 ひかりの可愛らしい笑い声を聞きながら、ワープの羽根を取り出して屋敷に飛んだ。
 屋敷の寝室、ここにナナを呼ぼう。

 ナナを呼ぶために、まずはミウを呼んだ。

「お呼びですかご主人様」
「ああ、悪いけどナナに――」
「きゃあああ!」

 いきなりキャロラインが悲鳴を上げた。
 それまで俺の腕の中でブルブル震えていただけなのが、ミウの姿を見た途端悲鳴を上げて、更に震えるようになった。

「どうしたキャロライン!」
「いや……こっち来ないで……」
「え、ええ?」

 キャロラインの怯えと、はっきりとした拒絶にミウは困惑した。
 ミウが何もしてないのは分かる、だから困惑するのはよく分かる。

 分からないのは、何故キャロラインがミウを見て怯えるかだ。

「どうかしたんですか」
「いやああああ!」

 騒ぎを聞きつけて部屋に入って来たコーラリア、こっちにもキャロラインは怯えた。

「ご、ごめんなさい! 私……え?」

 コーラリアも困惑する、キャロラインはますます怯えて俺にしがみついてくる。

(もしや……)
「なんだ?」
(目に見えている者、全てに怯えているのではないか?」)
「目に見える者?」
(推測だがな。あらゆる存在に無差別に怯えている、そのように見えるのだ)
「さらわれたショックからか……?」
(おそらくな。屋敷ではなく人気の無いところに飛んだ方が良くないか?)
「そうだな……いや」

 俺は少し考えて、別の手段を使うことにした。
 やった事はないが、多分いける。

 それ(、、)をイメージして、エレノアからオーラを引き出した。
 オーラでキャロラインの全身を包む。

(迷彩オーラか? そんな事をしても――)
「逆だ。周りから見えなくするんじゃない、周りが見えなくなるようにしたんだ」
(――ふむ?)

 戸惑うエレノア、それをひとまずおいといて、キャロラインに話しかけた。

「キャロライン、目を開けてみろ」
「え?」
「まだ怖いか?」
「……あっ、神様以外いなくなった」
「そうか」
「神様……」

 キャロラインは俺を呼んで、更にぎゅってしがみついてきた。

 キャロラインにオーラを纏って、俺より下の力の人間を見えなくする。
 即興でいつもの迷彩オーラと逆の効果になるようにしてみたけど、どうやら上手くいったみたいだ。

     ☆

 俺は怯えるキャロラインを腕の中に抱いて、次々とワープの羽根で飛んだ。

 ヘレネーの所。
 リカの所。
 アウラの所。
 フィオナとマリの所。
 セレーネの所。
 そして、デルフィナの所。

 俺の女達の所に飛んで、政と財、両方のトップから教会の動きを探ってもらう様に頼んだ。

 そうした後、屋敷に戻ってくる。
 屋敷の中庭、彼女を腕の中に抱いたままくつろぐ。

 あれほど怯えていたのに、キャロラインはすっかりと落ち着いていた。
 俺の事しか見えない世界に今いるはずだ。普通ならそれが逆に怖いはず。

 物語でよくある、自分一人、自分達数人以外誰もいなくなった世界。
 普通ならパニックになるはずが、キャロラインはそんな世界で安心しきった顔をしている。

(くくく、よくよく不思議な娘だ)
「精神構造がふつうとは違うんだろうな」
(貴様が未だに抱かない理由もわかろうというものだ)
「うん?」
(なんだ、気づいていなかったのか?)

 エレノアは呆れたように言った。

(蹴り姫の直後だから、余計に無理なのだろうよ)
「……ああ」

 そこまで言われてようやく気づいた。
 今まで自分でも気づいていなかった、無意識で避けていたのだ。

 修道女達は抱いたのに、こんな風に慕ってくるキャロラインは抱かない。
 それは、彼女が俺に依存しすぎているからだった。

 好意を向けられるのは嬉しいが、依存しすぎてそれが全部、というのは嬉しくない。

 蹴り姫――セレーネ。
 だめっ子から一変していい女(、、、)になったセレーネを見た後では、いい意味でも悪い意味でもキャロラインを抱けない。

 抱きたくない――まだ(、、)抱きたくない。

 俺自身気づいていなかったそれを、エレノアはピタリと言い当てていた。

(すっかりグルメになったものだ)
「かもしれん」
(見た目は申し分ないのだがな)
「それはそうだ」
(今抱いてしまうのはどうだ? イオなんかも貴様に抱かれてから成長しはじめたようなものだ。この娘もそうかもしれんぞ)
「そうだなあ」

 俺は迷った、エレノアのいうことも一理ある。
 俺に依存しすぎる点を除けば、キャロラインは誰もが振り返るほどの美少女だ。
 深入りする前なら抱いてたかもしれない。

「あの、ご主人様」
「うん?」

 顔を上げる、ミウが目の前にいた。
 視界の隅っこ、屋敷の二階、窓の向こうにもミウの姿が見える。

 どっちも自然な動き、人形使いを完全に使いこなしてるな、と。
 成長した彼女に嬉しくなった。同時にキャロラインをますます――いや、これはよそう。

「どうした」
「ご主人様に見て欲しいものがあるんですけど」
「おう、なんだ」

 頷いて、ミウを促した。
 ふと、腕の中にいたキャロラインが顔を上げた。

 すっかり落ち着いた顔が、目がみるみるうちに見開かれて。

「きゃああああ!」

 と、また悲鳴を上げた。

「待てキャロライン、ミウは――」

 瞬間、体が動いた。
 弁明も疑問も確認も。
 間にあるべきはずの手順をいくつもすっ飛ばして体が動いた。

 何故そうなったのかは、勘が働いた、としかいい様がない。

 俺はエレノアを抜いて――。

     ☆

 まるで母に抱かれているかのような、落ち着いた時間だった。

 地上でもっとも安心出来る場所、キャロラインはカケルの腕に守られて、落ち着きを取り戻した。

 カケルしか見えない世界、それは夢の様な世界だった。
 ノイズがなくて、カケルだけがいた。

 そんな世界にキャロラインは安堵した。

 不意に気配を感じて顔を上げると、そこに見知らぬ者がいた。
 メイド服を纏う、ケモミミの少女。

 ノイズ。

 カケルしか見えなくなった世界に、突然割り込んできたノイズ。
 キャロラインは怯えた、またさらわれるかもしれないという恐怖に怯えた。

 悲鳴を上げた、恐怖に駆られて悲鳴を上げた。

 次の瞬間、カケルは魔剣を抜いて相手に振り下ろした。

 ガキーン!

 耳をつんざく金属音、飛び散る火花。
 嗤うカケルの顔。

 他人とのやりとりをしてこなかったから、キャロラインは知らない。
 今見えている男の表情は、一般的には「悪人面」と分類されるもの。

 しかし、それはキャロラインに安心感を与えた。

 手傷を負った獣人の少女は姿がぼやけて、また見えなくなった。
 カケルはキャロラインを抱いて、剣を振り回していたが。

 再びカケルしか見えなくなった世界で、キャロラインは安心して彼にしがみつくのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ