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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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282.薔薇と百合

 メテオラの宮殿、薔薇の園。

 薔薇の園は二つの意味を持っている。
 一つはよく知られている、女王リカのハーレムの別名。

 そしてもう一つは、その別名の由来となった、文字通りの薔薇の園。
 庭を丸ごとガラスで囲んだ庭、巨大なビニールハウスのその中に、色とりどりな薔薇が咲き誇っている。

 その庭のまん中の涼亭に腰を下ろす俺、その俺に体を寄せるリカ。
 女王の凜然とした空気はなく、あでやかな女の空気を纏って体を寄せてきている。

 二人とも服は着ている、ぱっと見カップルのイチャイチャだ。

「悪かった、いきなり連れ込んで部屋を借りて」
「大丈夫。言ったでしょ、ここはカケルのハーレムだから。でもびっくりした」

 リカはニコニコ、楽しげな表情を浮かべる。

「そっとのぞいたらびっくりした。カケルの姿が見えないものだからものすごい光景だった。全員が透明人間にもてあそばれてるみたいで」
「神の恩寵、って建前だからな」
「落ち着いたら楽しく見えてきたけどね」
「シュールな光景だっただろうな」

 俺は俺自身が見えるから、普通に修道女達を抱いている風に見えるけど、他の人間からすれば違ったんだろうな。
 まさにリカが言ったような透明人間のイタズラ、想像しただけでもかなりシュールだって分かる。

「あんな風に神の子のお告げを信じていれば、法王になることも不可能じゃないね」
「実際どうなるんだろうな。かなりいけると思うけど」
「そうね……」

 リカは少し考えて、右手を挙げた。
 二本指を立ててぐいっとすると、薔薇の園に若い少女が入って来た。

「お呼びですか、お姉様」
「お姉様?」
「彼女は少し立場が違うの。アリス、カケルに自己紹介を」
「はい。お初にお目にかかりますカケル様。アリス・アンニスと申します」
「アリスか」
(ほう)
「どうしたエレノア、急に声をだして」

 聞くと、エレノア呆れた声で答えた。

(知っている、どうせ貴様は覚えていないだろうさ)
「覚えてない?」

 俺はアリスをみた。
 ウェーブのかかった栗色の髪、幼げならがも硬質な、という形容がしっくりくる美貌。
 間違いなく美少女、一度あったら忘れないくらいの美少女だ。

「あったことなんかないぞ」
(アンニス)
「アンニス?」
(それ、やっぱり覚えていないではないか)

 どういう事だ? ってエレノアの言葉に首をかしげていると。

「テリオス、アンニス、ゲート。アイギナの三公摂政を起こした三家の名前だよ」
「そういえばそうだったか」

 って事は男の名前、だったら覚えてるはずもない。

「……アンニスってことは?」
「ええ、アンニス公爵が助けを求めてきたときに、色々便宜を図る代わりにアリスをもらったの」
「なるほど」

 人質ってわけか。

 改めてアリスをみる。
 コーラリアと本質が近い、リカの好きそうなタイプの子だ。

 彼女もまた薔薇の一輪なんだって理解する。

「アリス、調べさせたもの。カケルに報告して」
「わかりました。ご報告しますカケル様」

 アリスは俺を見て、わざわざ立ち位置を微妙に調整してまっすぐ俺をむいた。
 真面目な子だなって思った。

「我が国内での、ソロン教の信徒の、次期法王候補に対する支持率を調査いたしました」
「そんな事を調べさせてたのか」
「必要になるかも知れないっておもってね」
「トップは神の子キャロライン、支持率は五割強。次いで不死の聖女メリッサ、支持率は二割弱。その次が――」

 アリスの報告に耳を傾けた。
 キャロラインが圧倒的に優勢、その次にメリッサ追走。他に何人かいるが、ほとんど泡沫と言っていいレベルだ。

「キャロラインの支持率は世帯を持つ者が群を抜いて高く、逆に独身――それも男性ならメリッサは四割強まで上昇します」
「学校に助けられるのは子どもを持つ親だからな」
「他の四カ国は?」

 リカがアリスに聞く。

「調査に出した者がまだ戻りきってません。もう数日待ってくれれば」
「……その調査、どれくらい結果に結びつく?」
「どういう事なのカケル」
「メリッサを誘いに来たヤツは『法王になられませ』って言った。出れば絶対に選ばれる自信があるように聞こえた」
(男の名前は記憶に残らないのにそこは覚えているのか)

 エレノアが呆れ混じりに言った。
 メリッサの事だからな。

「そんな事があったんだ?」
「ああ」
「ちょっと調べとく」
「頼む」

 リカにちゅっ、と触れるだけのキスをする。
 それを見たアリスが頬を染めて、びくっと体をすくませた。
 怯えているのか? 今のを見て。

「ということよ。アリス、すぐにその事を調べさせて」
「……」
「アリス?」

 首をかしげるリカ。
 命令を受けたアリスはそれを実行する為に動こうとせず、下唇を噛んで、スカートの裾をぎゅっと握り締めている。
 やがて、アリスは思い切った表情で。

「お姉様! わ、私にも、カケル様にお情けを!」
(くくく、こういう(、、、、)必死な顔で貴様に抱いて欲しいとせがむ娘は初めてだ)

 俺もだ。
 ありったけの勇気をだして、というのなら今までにもいたけど、アリスのはそうじゃない。

 義務でしなきゃいけないから、勇気を振り絞って頼んだ。

 それをリカはただしく理解していた。

「だめ」
「ど、どうして……?」
「今のアリスをカケルの前に出すわけには行かない」
「……私じゃダメですか」
「ええ、今のアリスじゃだめ」

「……わかりました」

 アリスは肩を落として、とぼとぼとビニールハウスから出て行った。

     ☆

 薔薇の園を離れ、とぼとぼと離れていくアリス。

「こんなことじゃ……」

 拒絶されたことを、彼女は落胆と、もっと大きい怯えを感じていた。

 対外的に薔薇の園はリカのハーレムだが、リカは女達には宣言している。
 このハーレムの主は魔剣使い、結城カケル。
 ここを作ったのはカケルの為の女を集める為だと。

 正妻が妾を管理するのは決して珍しいことではない。アリスはすぐにそれを受け入れた。
 そして、自分が一番しなきゃいけないことも理解している。

 カケルに抱かれること。
 なんと言われようと、自分がここに人質で来たのは確かだ――とアリスは思っている。
 だからリカがさせようとしてる、カケルに抱かれるのが一番重要な仕事だと思っていた。

 それは正しい、他の女達を見ていても、リカが積極的にカケルに女を献上して、その歓心を買おうと振る舞っているのは間違いない。
 カケルを満足させればリカも喜ぶ、という図式は疑う余地もなく正しい。

 だからアリスは切り出した、自分を抱いて欲しいと。
 それをリカは拒んだ。

 何故、そして、どうしよう。

 この二つの思いがアリスの中でぐるぐる回った。

「アリス」
「え……お、お姉様」

 呼ばれて振り向いたアリスが盛大に驚いた。
 リカが、薔薇の園をでて追いかけてきたのだ。

「な、何かご命令ですか」
「言葉が足りなかった」
「え?」
「意地悪じゃない。もったいないの」
「もったい、ない?」
「好きじゃないまま、義務感でカケルに抱かれるのはもったいないと言う意味よ。アリスはまだカケルの事を好きじゃないんでしょ」
「そ、それは……」
「いいの。私から言うことは一つだけ」

 リカは手を伸ばして、アリスの頬に触れた。

「無理することはない、カケルを見ていなさい。そうすれば自然とカケルの事を好きになる。その時になったらカケルに抱かれなさい。最上のしあわせがそこで待っているわ」
「さ、最上の……」
「アリスにはしあわせになってもらわなきゃね」
「……」
「それじゃ。調査、頼んだわよ」

 リカはそう言って、軽やかに身を翻して薔薇の園に戻って聞く。

 ついさっきまで触れられていた、まだ感触が残っている頬に触れるアリス。

「お姉、様……」

 つぶやく唇、朱に染まる頬。
 見つめるのは、薔薇の園の()

 リカは知らなかった。
 よかれと思って、ちゃんと言葉にしなければと思って追いついてアリスにかけたその言葉が。

「お姉様……」

 アリスの切ない吐息を産み出し、カケルへほんの少し遠ざけてしまったことを。
 リカはこの時気づいていなかった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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