挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

281/288

280.寺子屋システム

「あっ……昨日の場所……」

 ワープで飛んだ先で、シビルは周りをきょろきょろして、驚いた目をした。
 飛んできたのはメテオラに彼女を連れて行く前の薄汚れた裏路地。
 まったく同じところだ。

「あなたは……一体……」
「そんな事は気にするな。それよりも教会に行け。理想を叶えるんだろ」
「は、はい!」

 シビルはいったん駆け出したが、足を止めて、おれの方に向き直り。

「あの、ありがとうございました!」

 両手を揃えて、腰が直角になるくらい深々と頭を下げた。
 そんな彼女を見送った。

(よかったのか、このままで)
「うん?」
(抱かなくてよかったのかと聞いている。貴様の好みなのだろう?)
「そのうちな。今は理想に燃えてる、それどころじゃないだろうさ」
(そうか)
「それよりも先回りだ。まずはキャロラインに話をする」

 迷彩オーラを纏って姿を消して、ワープの羽根で教会に飛んだ。
 飛んできた教会の中は心なしか空気が重い。
 キャロライン以外、他の信徒達は浮かない顔をしていた。

(シビルを見つけられなかったからだろう)

 だろうな。
 そういうことなら、と信徒達は放っておいて、キャロラインに話しかけた。

『キャロライン』
「神様!」

 キャロラインの反応に信徒達がざわめく。

『もうすぐシビルが戻ってくる、彼女の話を聞いてやれ』
「分かった。戻ってくるんだね」

 信徒達が更にざわついた。
 直後、教会の扉が開かれる。

 逆光の中、肩で息をするシビルの姿がそこにあった。

 俺に言われたキャロラインは立ち上がって、シビルに向かって行った。

「あなた……神の子……様」
「話を聞かせて」

 前置きも何もない、話のテンポもへったくれもない。
 キャロラインは単刀直入に、俺に言われた通りシビルに「話を聞いた」。

 シビルは息を切らせたまま語る。
 子供達に教育をさせたいこと、それには協力が必要な事を力説した。

 キャロラインはほとんど無表情でそれを聞いた。

(子どもの教育などどうでもいいのだろうな)

 エレノアはくつくつと笑った。
 一方で他の信徒達はいやそうな顔をしていた。

 俺たちに何の関係がある、って顔だ。

 キャロラインは終始黙って、相づちすら打たないで話を最後まで聞いた。

「あ、あの……」
「終わった?」
「え?」
「話は終わった?」
「う、うん……」
「そう」

 キャロラインは身を翻して、彼女の定位置に戻ってきた。

「あの……神の子様?」
「……」

 驚くシビルをまったく無視して、キャロラインは元の場所に戻ってきた。

(話を聞けとしか言ってないからな)

 エレノアの指摘に俺はなるほどと思った。
 ここでキャロラインの判断でシビルの案に乗ってくれたよかったんだが、仕方ない。

『キャロライン』
「はい、神様」
『話は聞いた。彼女の力になってやれ』
「分かった。どうすればいいの?」
『俺の言葉を他のみんなにも聞こえるように復唱しろ。まずは――』

 俺は寺小屋のシステムをかみ砕いて、キャロラインの口を使って信徒達に広めた。
 教会を使って子供達に読み書きを教える。
 教会のないところにも出向いてそれを教える。
 といった、基本的な事を話した。

 すると、信徒達からいろんな声が上がった。

「教会で子供達に教えるのはいいけど、教会のない村でやるのは……」
「先立つものが」
「しかし神のお告げだ、どうにかしなければ」

『安心しろキャロライン、近いうちにカランバの貴族から寄付があるはずだ』
「貴族から寄付があるんだね」

 信徒達がざわつく。それなら何とかなる、という声があっちこっちから上がった。
 チラっとシビルをみる。
 話が進んで発起人なのにほとんど蚊帳の外に置かれたシビルだが、状況を理解してるからか、瞳と表情は期待に満ち満ちている。

 これでお告げの部分はもう大丈夫だな。
 後は(貴族)が寄付をよこして、教会のネットワークに任せていい。
 お告げはこのあたりで――と思っていたその時。

「ここにいたのか」

 ならず者が三人、我が物顔で教会に入ってきた。

 教会の中にいるほとんどの人間――信徒達は「何事?」って顔をしたが、シビルだけ表情を強ばらせた。

「探したぜ、シビルさんよ、教会に逃げ込んでも無駄だぜ」
「そろそろさあ、遊びはやめようよ」
「そういうことをされると困る人がいるの。何度も言ったよね」

 諭すような言い方だが、実際のところそれが脅迫である事が誰の目にもあきらかだった。
 シビルは怯えて、体が震えながらも。

「だ、ダメです。子供達に――」
「ああん?」

 男の一人がすぐ近くの椅子を蹴り上げて、古典的な脅しをかけた。
 びくっと身がすくむシビル。

 俺は無言でエレノアの黒雷を放った。
 黒い雷が三人の男におちて、一瞬で丸焦げする。

 いきなりの出来事にシビルを含め、信徒達は全員ぽかーんとなった。

 反応したのは一人だけ。

「今の……神様だ」

 キャロラインだ。
 迷彩オーラを纏っている俺の声を聞こえてしまう特殊体質の女。

「神様だって?」
「って事はこれ――神罰か」
「そういえば普通の雷と違ったわ」

 信徒達が更にざわつく。
 狙い通りだ。
 エレノアで切り捨てるのではなく雷をうったのは、その方が神罰らしく見えるからだ。
 案の定、信徒達はそれを神罰だと認識した。

     ☆

 それから話が急速に進んだ。
 アイノンの街を中心に、神の子が聞いたお告げで、ソロンの教会は子供達に読み書きを教え始めた。
 一部の勢力――既得権益を握ってる富裕層は抵抗したが、神のお告げを元に動く信徒達は止められなかった。

 搦め手で教会上層部から圧力をかけようとしたが、今までに教会のなかったところにも読み書きを教えに行った結果、教わった子どものみならず、教育を受けることで将来に希望を持った親共々、一家が入信するケースが多く発生したため、これまでソロンの教えが行き届かなかったところにもものすごい勢いで広まっていった。
 そのせいで、教会上層部はそれを止める大義名分を更に失い、そうしている間にキャロラインやアイノンとは関係のない他の街の教会も同じような事をし出した。

 教会をもちいた教会学校――寺小屋のシステムが、ものすごい勢いでこの世界に広まっていった。


 そんな中。
 法王が、静かにその生涯を終えて。
 次期法王の座を巡る動きが慌ただしくなりだした。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ