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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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279.世界の女王

「出来れば全ての子供達に文字の読み書きを、それに簡単な算術を教えたいのです」

 女王リカを前に、シビルは緊張した様子でいった。
 声がわずかに上ずっていて、顔も強ばっている。
 対するリカは威厳バリバリ、威圧感も全開って感じの女王スタイルだ。

「なぜ?」
「え?」
「何故それをもくろむの?」
「お、恐れながら。陛下は農村の現状をご存じでしょうか。何かお触れを出したいいけど、それを数少ない読み書きが出来る者が解説しなければならない。ひどいところではそういう者が一人も居なくて、旅人を待たねば何も伝わらない事もよくある」
「それは良くない事?」

 聞き返すリカ、その顔はすっとぼけているように見えた。

「国の命令が行き届きません。緊急性をようするものもさることながら、そもそも読める人間が少ないということはお触れそのものは伝言ゲームになってしまいます。人から人への口伝では少しずつ意味が変わってしまいます」

 シビルは教育の、文字の読み書きを普及させなければならない理由を熱く語った。
 最初は緊張していたのが、次第にその緊張がほぐれ、リカ相手にぐいぐいと押していくかのような口調になる。

(よほどの熱意だな)
『そうでもなきゃやってられないだろ。私財をなげうって、自分も実際に駆けずり回って』
(勉強って、大事だもんね)

 力説は一時間近くにも及んだ。
 その間、耳を傾けていたリカが静かに口を開く。

「そなたの言いたい事はおおよそ理解した。しかし困難がある」
「な、なんでしょうか」
「人と、箱」

 リカは優雅な手つきで、ピースサインの如く二本指を出した。

「そなたが私財をなげうったのは子供達に勉強をさせるための場所を確保すること。そして自身も奔走しなければならなかったのは他に教えられる人間があまりにも少なかったこと」
「はい……」
「それを解決するのは容易なことではない」
「へ、陛下のお力であれば!」

 詰め寄るシビル、しかしリカは動じない。

「王は神ではない。各地の貴族に命じてやらせるにしても限界がある」
「………………貴顕の方々は知識を手放さないでしょう」
「そう、貴族ほど知識を財産とみる傾向がある」

 リカの答えにシュンとなるシビル。
 カランバの女王に直訴してもダメなのか、という落胆がありありと見えた。

「ユウキ卿」
「ん?」
「卿はどう思う?」
「貴族の連中の事か? かなり無理矢理に命令すればどうにかなるんじゃないのか?」
「うむ、相当の横車を押し通す覚悟がいる。他にやりようがあればいいのだが」
「そういえば……」

 俺はあるものを思い出した。
 封建時代の学校、といえば日本人の俺はアレを思い出す。

「寺子屋ってのがあったな」
「寺子屋?」
「ああ。ちょうど彼女が言ったような子どもに読み書きを教える施設だ。元は寺を場所に使って、経典を読める僧侶がおしえたから寺子屋って名前になったんだ」
「経典と僧侶」
「こっちだとソロン教の教会か?」
「そういえば、ソロン教はあらゆるところに教会を建てていたな。近年は聖女メリッサのおかげでそれが更に拡大していってる」
「教会……」

 唖然とした顔でつぶやくシビル。
 その発想がまったくなかったって顔だ。
 寺子屋と同じように、教会をそれに使えれば人と場所の両方をまとめて解決出来る。

「しかし教会は更に難しいだろう。神の声でもなければ動かないだろう」
「はい……」

 またまたシュンとなるシビル。
 俺は口を挟むべきか迷った。

 リカの意図が今ひとつ読めない。
 キャロラインを経由すれば「神の声」をねつ造する事は出来るが、それを俺の口からシビルに確約するのはおかしい。
 かといってやるだけなら最初からリカが俺に頼めばいいだけ、こんな風にシビルを連れてこさせる必要はない。

 それが今ひとつ読めなくて、俺は黙ってもうしばらく成り行きを見守った。

「手は、ないわけでもない」
「どんな手ですか!?」

 シビルは体を乗り出して、リカに食いついた。

「神の子、その噂を聞いてる?」
「い、いえ……」
「ソロン教に突如降臨した少女。本物の神の子で、神の声が聞こえる、いや、神とやりとりが出来るだとか」
「そ、そんな人が!?」
「なかなか気難しくて話を聞いてもらうのも一苦労だけれど、神にそなたの声が届ければ、あるいは」
「そ、その神の子は?」
「アイノンにいる、キャロライン」
「えええええ!?」

 悲鳴のような声を上げるシビル。

「アイノンって……じゃあ私を助けたのって……」
「つながりがもう出来ていたの?」
「つ、つながりって程のものじゃ。ただ命を助けてもらっただけで」
「十分ではないか」
「アイノン……神の子……」

 つぶやくシビルの目の色が変わっていた。
 何が何でも話を聞いてもらう、って決意の目だ。

     ☆

 その後シビルはまた倒れた。
 疲労がまた残っていたらしく、リカに熱弁を振るったせいで体力を消耗して、それで力尽きた。

 彼女をひとまず休ませることにして、俺は、リカと二人っきりになった。
 謁見の間、玉座に座るリカ。
 その表情と口調は、シビルを相手にするときに比べて大分女らしく戻った。

「どういうつもりだ?」
「カケルが神の子をここに連れてきたときに思ったわ。これは使えるって」
「教育を全国に広げるのにか」
「世界よ」

 リカは躊躇なく言いきった。

「彼女と話したことは嘘じゃない。知識が一部の人間に占有されている事に頭を悩ませてたの。近年は商活動が盛んになって、文書の読み書きの需要が高まっている。でもそれは貴族と商人に寡占されている。大半の人間は覚える手立てすらない」
「だからソロン教か」
「そう、文字の読み書きをエサにすれば信者は今までとは比べ物にならないペースで増える。そしてソロン教からすればそこにデメリットはない。なのに未だにそうしない、それどころか聖女に肉体労働をさせている」
(肉体労働とは言いも言ったりだな)
「だから巻き込む事にしたの。どう考えても教育の機会増やした方が、結果的に国力が高まる。民を無学という牢獄から救い出すことが出来る」
「そうか」
「と、ここまでが女王としての私」
「ん?」

 どういう事だ、と改めて見ると、玉座の上のリカは艶然と微笑んでいた。

「私思ったの、カケルのいう『いい女』はある程度の教育を受けないと頭角を現わさないって。シビルを使ってソロン教を巻き込んで全世界に教育を広めていけば、カケルが気に入る『いい女』をもっと発掘出来る。というのが、『薔薇の園の主』の私」

 恐れ入った、まったくもって恐れ入った。
 俺の女の中で一番積極的に他の女を俺にあてがいたがるリカ。
 女王のハーレムといって国中からいい女を集めて、実質俺のハーレムになってる薔薇の園から更に拡大して、全世界にそれを広げようとしている。

 そのスケールに恐れ入った。

(さしずめカケル教の神の子だな)

 からかうエレノア、しかしその通りだ。
 リカのやってる事はもうそれくらいの事だ。

「これを神の子にさせれば、信徒大幅増で彼女の次期法王間違いなし――ってカケル?」

 驚くリカ、俺が無言で近づき、彼女を抱き上げたからだ。
 女王を玉座から抱き上げ、ゆっくりと扉に向かい、広い廊下に出る。
 兵士も使用人も止めなかった。リカ自身がかくそうとしないので、王宮にいる人間は誰が本当の支配者なのかよく知っている。

 彼女を抱いたまま廊下を進んでいく。
 俺が何をしたいのか、リカはすぐに察した。

「ねえカケル。最近よくやってくれてる子がいるの、無愛想だけど能力は高くて、実は民思いのいいことだから、カケルに――」
「今日はお前だけど」
「――え?」
「世界規模の女王。今日はお前だけ欲しい」

 目をまっすぐのぞき込んで言う。

「カケル……」

 濡れた目、熱い吐息、むせかえる様な甘い匂い。
 俺は彼女を寝室に連れて、オリビアのときと同じように負担をかけず、時間をかけてじっくりと可愛がった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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