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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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276.本気のマッチポンプ

「う……ん」

 すやすやと寝息を立てていたキャロラインが目を覚ました。
 まぶたを開けてぼんやりと天井を見あげた――のも一瞬だけ。
 彼女は弾かれた様にパッと起き上がった。

「神様!」

 切羽詰まった声で叫んで、周りを見回した。

「心配するな、ここにいる」
「ああっ、よかった……」

 俺の姿を見つけ、あからさまにホッとするキャロライン。

「よく眠れたか」
「う、うん」
「そうか。これからはちゃんと普通に寝ろ」
「でも神様のお声が――」
「寝てても起きたときにまた来るから心配するな。それよりも体を大事にしろ」
「うん」

 まっすぐと俺をみつめるキャロライン。
 余計な事をまったく言わない、こっちが話しかけるのを待っている――様に見えるが。
 見つめてくる目力が強くて、俺は無言で急かされている様な気分になった。

(犬が飼い主に散歩をせがんでいるかのようだな)

 エレノアのつぶやきに妙に納得した。
 ちゃんとしつけをしたいうことをよく聞く犬でも、飼い主がリードを持って現われたら期待に胸を膨らませてあらぶって、時には吠えたりもする。
 今のキャロラインの目力はそれに似通ったものを感じさせる。

 つい、期待に応えてやりたくなる。

「伝えて欲しい話がある。礼拝堂にみんなを集めて待ってろ」
「うん!」

 キャロラインはますます期待する眼差しになって、部屋から飛び出していった。

 神託を下すため、俺は迷彩オーラで姿を隠してから、遅れて部屋を出た。

 キャロラインが目覚めた事と、これから神のお告げが来るという話はすぐに広まって、礼拝堂に人が集まった。
 ただ待っているだけじゃなく、これから来る、という事もあって昨日以上に人が集まった。

 俺は昨日と同じポジションで祈りを捧げるキャロラインの前に立って少し待って、人が大方集まったのを確認してから口を開いた。

『キャロライン』
「神様!」

 周りがざわつく、普通の声じゃかき消され、埋もれてしまうくらいのざわめき。
 が、()の声しか聞こえないキャロラインには関係なかった。

 俺はそんなキャロラインにシビルの事を話して、教会で保護、援助する様に言った。
 私財をなげうって寒村の子供達に教育を受けさせる女の話は共感を呼び、尊敬を集め。
 それを神が気にかけた事と相まって、教会はすぐさま、彼女の保護に動き出したのだった。

     ☆

 翌日。
 朝食の後、しばらくリビングでくつろいだ。

 ミウを捕まえてモフモフして、エネルギーチャージをしていた。

「おとーさん」

 リビングの外からひかりとチビドラゴン・オリビアが入って来た。

「どうしたひかり」
「おとーさんは今日もいそがしい?」
「今日もキャロラインのところに飛ぶ予定だ。昨日から動いてるから、その結果が出たのか見に行くつもりだ」
「そうなんだ。ひかりも一緒にいっていい?」
「もちろんいいぞ」

 俺はそばにやってきたひかりの頭を撫でた。

「事態が動き出したなら力を振るう必要も出てくるかもしれん。そうなった時にひかりがいると心強い」
「本当?」
「ああ本当だ」
(我だけで充分だろうが)
「お前だけじゃいくら強くなろうと99%止まりだ。ひかりがいて、二人揃って初めて100%になる」
「うん! ひかり、おとーさんの為にがんばるね」
「ああ」

 俺はますますひかりの頭を撫でた
 愛娘はものすごく可愛くて、今日はもうなでなでだけをしていたい位可愛かった。

(ふっ……ひかりが娘でよかったな)
「当然だ、万が一ひかりが娘でがっかりって言うようなやつがいたらたた斬って――」
(そうじゃない……娘じゃなかったら今ので落とされかねんかったぞ)
「ん? 何をぶつぶつ言ってる」

 聴力も777倍で普段は何かを聞き逃すことはないけど、エレノアの声だけは聴力に影響されなくて、こいつのつぶやきだけ時々聞き取れなくなる事がある。
 まあ、エレノアが聞き取れない様につぶやいた言葉ならば別に問題ない。

 こいつはこいつでいい女だ。必要な言葉なら耳に届くまで何度も言うだろうさ。

「えへへ……」

 俺はニコニコするひかりを、出発するまでなで続けるのだった。

     ☆

『失踪?』

 アイノンの教会に飛んで、昨日と同じように信徒に囲まれる中キャロラインから報告を受けた。

「うん。えっと……」

 キャロラインは何かを探すかのように視線をさまよわせてから、一人の男に視線を止めた。
 見られた男は困った様にキャロラインをみる。
 キャロラインはきょとんと首をかしげたが。

『そのまま話していいと伝えろ、聞いている』
「神様が話して大丈夫だって」

 キャロラインにそう言われて、男は報告を始めた。

「昨日、シビルさんが回ってる村に全部人を向かわせましたけど、三日前にアンフィを出たっきり消息不明です。いつもならコザに向かうというのですが、コザの人間もシビルさんが来てないことを不思議に思ってました」
『アンフィとコザの間は調べたのか?』
「アンフィとコザの間は調べたの?」
「今調べてます」

 俺は少し考えた。
 アクシデントだ、だがアクシデント自体解決すれば良いだけの話。
 問題は一つだけ。
 シビルが実はもう死んでるって事だけだ。

 アクシデントを利用してキャロラインの株を上げたい、だから彼女を連れていって、信徒達の目の前でアクシデントを解決したい。
 大抵の事は解決出来る、不可能なことと言えばもう死んでるって場合だけだ。

 万が一もう死んでてそれでキャロラインを連れていったら彼女の株が大暴落する。それなら連れて行かない方がいいだろう。

 失踪して三日。
 この時間の長さをどう見るか、だ。

     ☆

 アンフィとコザの間、キエイの山道。

 大量の信徒に守られて山道を進むキャロライン、その姿はメリッサのものとよく似ている。
 上位の聖職者を一般信徒が守る、しかも強い信頼と尊敬の籠もった目と表情で、何がなんでも絶対に守る――って空気を出しながらの進軍。
 そういう意味では、キャロラインは順調にメリッサと同じ道を歩んでいるにみえる。

 その一行の遙か前を俺は進んでいた。
 考えた結果、キャロラインと信徒達を来させるようにした。
 そのかわり俺が先行して、万が一シビルが最悪の状態――つまり死んでいた場合オーラで隠蔽する事にした。

(死んではいないはずだ)
「根拠は?」

 ほとんど断言する様な口調のエレノアに聞き返す。

(この話を持ちだしたのがリカだからだ。あの女がこのような凡ミスをするとはおもえん)
「リカへの評価が高いな」
(そういうことではない。そうとは言わなかったが、貴様に与えた女の情報。ならば相手は眉目秀麗のはずだ)
「いい女はそれだけじゃないぞ」
(彼女にも女のプライドがあろう)
「ふむ?」

 ここで言うプライドがどういうものなのか判断が難しかった。

(言い換えよう、貴様に抱かれる為に献上した女のはずだ)
「それはそうだ」

 あのときリカは何もいわなかったが、最近の彼女がやってる事を考えればそうだと思う。
 むしろそうじゃない事を俺に話を持ちかけたりしない。

(ならば死なせるような事はない、最低限何か手を打っているはずだ)
「なるほどな」

 エレノアの言葉に納得しつつ、五感をフルに働かせて探る。
 それらしき痕跡を、どんな小さな手かがりも見逃さないように山道を観察する。

 すると、山道の横から微かな声が聞こえた。
 耳をすませる、人の声だ。

 声の方を向く、山の道、土の壁が続いていた。
 が。

「ここだけ新しいな」
(うむ。それに上をみろ)
(あっ、壁が崩れてるよ)

 言われて頭上に目を向けた。
 ひかりの言うとおり、山が一部崩落してるのが見えた。

「つまり、壁が崩落してこの中に閉じ込め――」
(上から来るぞ!)
「――ッ!」

 エレノアの声に反応して、魔剣を抜いて振り抜いた。
 頭上に弧を描く一撃。
 何かが飛んできた、自由落下じゃないスピードで飛んできたから、反射的に魔剣で反撃した。
 飛んできたものの中に土砂もあった。その中に「敵」が身を潜みつつ襲ってきたのだ。

 エレノアの斬撃は問題なく土砂を避けてそいつを両断した。
 ほとんど悲鳴を上げることなく両断されたそれは、マウンテンゴリラよりも一回り大きい猿だった。

「なんだこいつは」
(さあな)
(モズモンキー。人や動物を襲って、生き埋めにして食糧として保存する魔物だよ)
「知ってるのかひかり!」

 これにはさすがに驚いたが。

(えへへ、いまおーちゃんに教えてもらったの)
「おーちゃん……オリビアか」
(うん! かこ(、、)から戻ってから、おーちゃんといつも一緒にいれるようになったんだ)
(今やひかりの眷属だからな)

 エレノアが補足説明して、俺はそれに納得した。

「なるほど。また一つ分かったな。つまりシビルはこの中で生きたまま、鮮度を保ったまま保存されてて、俺たちも同じようにするために襲ってきたって訳か」
(そのようだな。そして我も一つわかったぞ)
「なんだ?」
(貴様がそいつを反射的に倒したせいで、キャロラインの株を上げることが出来なくなったとな)
「むっ」

 思わず眉をひそめた、頭の中でエレノアの「くくく」という笑い声が聞こえた。
 そういえばそうだ。
 いきなりの事でつい倒したけど、それじゃダメだったんだ。

 いや俺が倒すのはいい。
 たがそれはキャロラインがいる時じゃないと。
 彼女がいて、理想はこのモズモンキーとやらが彼女を襲って、俺が迷彩オーラで隠れたまま神の守護(、、、、)って感じで倒す。

 それがベストだ。
 だが……。

「くそ、周りに似たような気配がない」
(モズモンキーは単独行動を好むって。だから食糧を大量に保存するんだって)
「むぅ……」

 思わず呻いた。
 このままでも問題が無いといえばない。
 後でキャロライン達が通りかかったときに「神託」でこの壁を掘れって言えばいい。
 それはそれでいい、いいんだが。

「こいつの存在を知ってしまった後じゃもったいないオバケが出そうだ」
(仕方がなかろう。過ぎたことだ、妥協しろ)
「そうだな……」
(ねえねえおとーさん。おーちゃんが力になりたいっていってるよ)
「オリビアが?」
(うん!)

 オリビアが力になりたい……?
 どういう事なんだろうか、今ひとつよく分からなかった。

 分からなかった、が。
 オリビアだ、あのオリビアだ。
 なら。

「わかった、全部任せる」
(うん!)

 ひかりが嬉しそうに言った後、俺はまた反応しそうになった。
 魔剣ひかり、その刀身からものすごい力が空に向かってとんでいった。
 心の準備が出来ていてもつい身構えてしまう、それほどの力だ。

 それが何だ、と思っている内に後方から声と足音が聞こえた。
 キャロライン一行だ。

 俺はとっさにモズモンキーの死体ごと、自分を迷彩オーラで隠した。

 群衆の声が徐々に近づいてきて、やがて俺たちの前を通り過ぎた。
 俺は姿を隠したまま動かない。
 こっちからは動かない、オリビア待ちだ。

(……上だ)

 またもエレノアの声が聞こえた。
 モズモンキーの時よりも大分落ち着いた、だけど数段と深刻なトーンだ。

 上空から何かが飛んできた。エレノアを振り抜いてそれを打ち払った。

「うわ!」
「きゃあああ!」
「何事だ!」

 山が震える、群衆がどよめく。

 次の瞬間、一頭の竜が降り立ってきた。
 赤い目に黒いうろこ、まがまがしいオーラを纏う竜。

 邪竜。

 その二文字が俺の頭に浮かび上がった。

 見た目はまがまがしいが、それがオリビアであることがすぐに分かった。
 気配がオリビアとひかりを足して二で割ったようなものだったからだ。

「ど、ドラゴン!?」
「ひぃぃぃぃ!」
「な、なんでこんなところに!?」

 動揺して。早くも三分の一の信徒が逃げ出していた。
 ムリもない、それほどに今のオリビアは恐ろしい。
 ひかりの力で姿を変えたオリビア、「怖さ」にステータスを全振りしている見た目だ。

 そのオリビアの手――かぎ爪に一人の人間が捕まえられていた。
 見た事のない人間だ、俺はハッとして山の壁を見た。
 いつの間にかえぐられた様なそこは、さっきまで呻き声が聞こえていた場所だ。

(降り立った同時に掘り出したのだな)
(おーちゃん、悪者になるって)

 オリビアがにやりと笑った――と思った次の瞬間口から何かを吐いた。
 キャロラインがつれていた群衆がますます逃げ惑う。

 俺はそれをキャロラインの間に割ってはいって、エレノアで弾いた。

『くっ』

 重かった、ものすごく重かった。
 弾いたものが山壁をえぐって、家が丸ごと一棟入るくらいの穴を作ったのもその強さを物語っていた。

 オリビアの一撃は、レッドドラゴンだった時を彷彿させる程の威力だった。

 一方で、それを弾いたことで。

「キャ、キャロライン様の前で」
「奇跡、奇跡よ!」
「神の加護だ!」

 信徒達から歓呼が上がった。
 俺はすかさずキャロラインにいう。

『キャロライン』
「はい!」
『動く必要はない、そのまま立ってろ』
「はい!」

 大きく頷くキャロライン。
 ()とキャロラインのやりとりの内容なんて把握できていないが、それでもキャロラインの表情は信徒達に安心感を与えた。

 オリビアがぐるんと後ろを向いて、尻尾を振ってきた。
 屋敷の柱よりも太い尻尾が空からふってきて、キャロラインをそろう。
 それを魔剣で受け止める、衝撃波で山が崩れる。

 まったく手心を加えてない、おそらくオリビアの本気だ。
 オリビアは本気で襲ってきている。

『……いい女だ』

 俺は嬉しくなって、オリビアと戦った。
 オリビアの本気に、エレノアとひかり、魔剣母娘でのフルパワーで応じる。

 傍目には奇妙な戦いだ。
 邪竜がキャロラインを襲い、山が震え大地が変形するほどの攻撃は、しかし全てキャロラインに届かず、何か不思議な力でかきけされた。

 キャロラインが手を合わせて祈りだした、それを見て他の信徒も祈りだした。
 キャロラインは神に守られている、その認識が行き渡ったようだ。

 それを見て、オリビアの攻撃は更に熾烈を増した。
 やっぱりオリビアはいい女だ、ここで手を緩めるのではなく、更にわかりやすく、視覚的に強い攻撃を繰り出してきた。

 そしてそれを受ける俺も本気を出さなきゃいけなかった。ちょっとでも気を抜けばオリビアにやられかねかなった。

 オリビアは本気を出せば出すほど、その激しさでキャロラインの株があがる。
 それを知ってるから、オリビアは遠慮無く本気で襲ってきている。

 そして、だからこそ。

『つぎの一撃で決めるぞ。エレノア、ひかり』
(うむ)
(うん!)

 戦いを長引かせるわけにはいかなかった。
 力の昂ぶりを感じ取ったのか、オリビアは集団を丸呑みできるほどの口を開けてかみついてきた。

 それをエレノアとひかりで十字に切り裂く。

 キャロラインにかみつこうとした瞬間、邪竜の頭がばらばらに吹き飛び。
 一呼吸遅れて、信徒達から歓呼が上がった。

 俺は消える(ひかりの中にもどる)オリビアから、そっとシビルを受け止めたのだった。
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【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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