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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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275.殺意のゆりかご

 アイノンの教会は、以前にも増して人の出入りが多くなった。
 理由は視覚的にもわかりやすい。ソロン教の偶像を前に祈りを捧げ続けているキャロライン、そのまわりに他の人間が集まっている。

 神託の巫女、それを崇める一般の人々。
 その構図がはっきりとできあがっていた。

 シビルの事をキャロラインに伝えるために、迷彩オーラで身を隠し、キャロラインの前に立った。
 前と同じように語りかけようとした、が。

(どうした)

 黙ったまま口を開かない俺をエレノアが訝しむ。
 俺はキャロラインを見た、その顔をじっと見つめた

 まぶたを閉じ、祈りを捧げるキャロラインの顔に濃い疲労の色が出てる。
 何日も徹夜して疲れ果てたかのように、目の下に濃いクマが出来ている。

 俺が見てるもの、感じた事をエレノアは少し遅れて気づいた。

(寝不足のようだな)
『そうみたいだ……キャロライン』
「神様!」

 キャロラインが目を開いて、余転びを露わにした。
 同時にまわりが沸いた。
 神託がきた、と歓声が沸き上がった。

 シビルの事を話すつもりだったが、それよりも彼女の状態が気になった。

『お前、寝てないのか?』
「はい」
『なんで?』
「神様の声を聞き逃したくないから」

 キャロラインは笑みを浮かべた。
 疲労が色濃く出ているその顔で、しかし晴れやかな笑みを浮かべて。

「神様の声を聞きたいから」
(貴様を待っていたという訳か)
『キャロライン……』
「はい!」
『今すぐ寝ろ』
「寝る、ですか?」
『ああ、今すぐ寝ろ……命令だ』
「分かりました。寝ます」

 頷くキャロライン。
 すぐさま人群れの中から二人の中年女が飛び出した。
 二人は心配と安堵、それがない交ぜになった表情でキャロラインに駆け寄った。

「さあさあ、神様もそう言ってることですし」
「すこし寝ましょうキャロライン様」

(ふむ、この二人は彼女の身を案じている様だな。それに引き換え……くく)

 のどを鳴らして笑うエレノア。
 キャロラインを奥の部屋に連れて行こうとする二人の女をのぞいて、ここに集まったアイノンの住民達の顔に失望の色があった。
 軽くイラッとした。
 自分達の事しか考えてない、あれだけはっきりと体調の悪そうなキャロラインの事なんか考えてもいない連中にイラッとした。

 そいつらを無視して、一緒に奥の部屋に向かった。
 教会の奥にある寝室、前にも来たキャロラインの部屋。
 そこに連れ込まれて、ベッドに寝かされる。

「ゆっくり休んで下さい」
「何かあったらすぐに呼んで下さいね」

 二人の女性はそう言って部屋を出た。
 残されたキャロラインはベッドの上で寝そべっていたが――目をあけた。

 パチパチと瞬きをして天井を見あげてはまた閉じて、すぐにまた開けて天井を見あげる。

『どうした?』

 たまらず声を出して彼女に聞いた。

「眠れないんです」
『眠れない?』
「うん……神様の事を考えちゃうんです……」
『……少し待ってろ』

 そう言ってワープの羽根を取り出して、屋敷に飛んだ。
 別館の訓練場で奴隷兵達が訓練している。俺は迷彩オーラを解いて近づいた。

「ニキ」
「閣下! どうしたでありますか」
「眠りの魔法を使えるヤツはいるか?」
「8小隊のアカシアが使えるであります」
「呼んでこい」
「はっ!」

 かかとを揃えて敬礼してから、呼びに走るニキ。
 彼女が連れて来た奴隷兵に命令して俺に眠りの魔法をかけてもらった。

 当然きくはずはないが、これでいい。
 ニキとアカシアの二人に礼を言って、再びワープの羽根で教会の奥の部屋に飛んだ。

「神様?」

 キャロラインが起き上がってこっちを見た。
 迷彩オーラを纏わなかったから姿が見えたのだ。

「そのままにしてろ、今から眠りの魔法をかける。それでしばらく寝てろ」
「はい、分かりました……あの」
「うん?」
「おきた後も、いてくれますか?」
「……ああ」

 頷く、キャロラインは嬉しそうに微笑んだ。
 そんな彼女に今し方覚えてきた眠りの魔法をかけてやった。

 効果はばっちり、疲れ果てても不眠症のようになっていたキャロラインはすぐさま寝息を立てはじめた。

(くくく、これではまるで恋する乙女だ)
「本人はそう思ってないけどな」
(恋心に自覚してないだけだ)
「そうだな」

 わかりやすすぎるからな。
 それは別にいいんだが、このままじゃそのうち体を壊しかねない。
 なんとかしてやらないとな。

 俺はここに残ることにした。
 残って、どうするべきかを考えつつ、約束通りおきるまでいてやることにした。

 ふと、部屋の外が騒がしくなった。
 部屋の壁をすり抜けてくる騒音に、寝ているキャロラインが苦しそうに眉をひそめた。

「……」

 部屋を静かに出て、騒音の元に向かった。
 さっきまでキャロラインがいた場所に戻ってくると、騒がしくしてる現場と出くわした。

 神託目当てに集まってきていた連中が、キャロラインがいなくなったことで騒ぎ出していた。
 雑音の中から個別に声を拾って内容を聞き分ける、三人目のあたりでやめた。
 全部が全部、今日も神託なかったとか、休んでる場合じゃないだろとか。
 そういうぼやきでしかない内容だ。

(くくく、相変わらず群衆はわがままだな)

 楽しげに話すエレノア、台詞にはトゲがあった。
 不快になったのは俺も一緒だ。

「黙れ」

 俺は一言、そうとだけ言った。
 叫んだわけでも、ましてや大声をだした訳でもない。
 しかしその声は教会内に通った、そして。

「「「……」」」

 それまで騒いでいた連中が、水を打ったかのように静まりかえった。

(くくく、ご大層な殺気だ)

 ますます楽しげになるエレノア。
 殺気、いや威嚇というべきか。

 俺は言葉と共に、「それ以上騒いだら殺す」と、殺気を連中に向けてはなった。
 効果は抜群だった、それまで騒いでた連中が一人残らず顔面蒼白になって、ガクガクと震えだした。

 一言も発せない、逃げ出す事すら出来ないくらい、徹底的に威圧してやった。
 そいつらを放っておいて、きびすを返してキャロライン部屋にもどる。
 殺気は放ったまま、威嚇してやったまま。
 キャロラインを中心に、半径100メートルを徹底的に威圧した。

 ベッドの上で安らかに寝ているキャロライン。
 日がおち、また次の日が昇ってくるまで。

 殺気の威嚇で彼女に添い寝をしてやったのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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