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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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273.企みとご褒美

 アイノンの街、俺は迷彩オーラを纏ったまま、キャロラインのそばにいた。

 アイノンは今慌ただしく動いてる。
 オリクト由来の魔法、クローマを使って、カイコにいろんな色の糸を吐かせられる事を知ってから、街の養蚕に携わる人間が一斉に動き出した。

 クローマで付与できる魔力をより分ける、魔力ではかせられる糸の色の違いを分けたり、色の濃さを調整するテストをやったり。
 街は、誰の目から見ても分かるくらい盛大に盛り上がっていた。

 その間、キャロラインは教会で祈りを捧げ続けるだけ。
 誰が話しかけてきても反応しない、ただただ、次の神のお告げを待っているかのように祈りを捧げていた。

 そんな彼女の姿を見て、さて次の行動に移るか、って考えていたその時。

「キャロライン様!」

 教会に一人の男が慌てて駆け込んできた。

 三十代にさしかかろうという男は信徒達が祈るために座る長ベンチの一脚を蹴っ飛ばすくらい慌てて、キャロラインの前にやってきた。

「大変ですキャロライン様!」
「……」
「キャロライン様?」

 必死な男とは裏腹に、キャロラインは目を閉じたまま、祈りを捧げるポーズのまま動かない。

「無駄ですよ、キャロライン様は祈りを捧げてます」
「こうなったらもう、神様のお告げ以外聞こえないでしょう」

 まわりで同じように祈りをささげていた別の信徒が答えた。
 キャロラインに与えてやった「下位互換」。それで音を聞く周波数を合わせる現象を多くの信徒が把握しているみたいだな。

「そ、それはまずい、キャロ――」

 男はキャロラインの肩をつかもうとした。
 声が届かないのなら肩を揺らして、って事だったんだろうが。

「何をする無礼者!」
「キャロライン様の祈りを妨げるなんて許せない」

 予想したのか、それとも単に早く反応したのか。
 まわりの信徒が男を取り押さえた。

 怒りの表情がありありと見て取れる。
 キャロラインに無礼を働く不届き者め、って表情だ。

「離してくれ! こんなことをしてる場合じゃないんだ。女王が、女王の使者が来たんだ!」

 なに?
(ほう?)

 俺とエレノアが同時に反応した。
 男がいう女王とは間違いなくリカの事だろう。

 カランバ王国領、アイノン。そこの住民がいう女王はリカ以外にない。

「どういう事なの?」
「だから――」

 男が説明するよりも早く、教会の扉が再び開かれた。
 ドアが開かれ、逆光の中を、兵士に守られた中年の男が進んできた。
 身なりがよく、それなりの地位にいる人間に見える。

(ほう、こやつか。くくく、貴様はどうせ覚えてないから先に言ってやろう。『五爵』の時の男だ)

 うん?
 ああ、オルティアが軽いのりで全部の国から爵位をもらってきたあのときの事か。
 って事は、こいつはあの時にリカの使者できたヤツか。
 いわれて顔をよく見る、やっぱり顔に見覚えはない。

(ないのではない、覚えてないだけだろうが)

 エレノアは容赦なく突っ込んできた。

 その男はゆっくりと進み、キャロラインの前に立った。
 仰々しく、あごを突き出した姿勢のまま、キャロラインを見下ろしながらいう。

「リカ・カランバ女王陛下のお言葉である、謹んで拝聴せよ」

 そう言うと、まわりの信徒が一斉にひざまずいた。
 キャロラインだけ何も聞こえなかったかのように、反応することすらなく祈り続けた。

 それを見て、男が眉をひそめた。

「無礼であるぞ」
「あの! キャロライン様は今お祈りを捧げておられます」
「神様の声以外聞こえないんです」

 まわりの信徒が慌てて弁明する。

「ふん、まあよい」

 男は鼻を慣らして、冷笑した。
 そんな態度を取ってられるのも今のうちだ、って顔をしてる。
 どういうことだ? って訝しんでると。

「新種の絹糸製造法の発見、対義である。その功績を称え、アイノンのキャロラインに一等男爵の位を授ける」

 まわりがざわついた。
 驚き、喜び。
 それらの感情がない交ぜになって、教会内が一気に喧噪に包まれた。
 なのだが、当のキャロラインは無反応だった。

 声が聞こえてない――言葉を理解できていないから、当然今起きている事の大きさも分からない。
 結果、彼女はずっと祈りを捧げたまま反応しない。

 男の顔がみるみる内に強ばっていった。

 最初は「そんな態度をしてられるのも今のうちだ」で、リカの言葉を伝えた直後は「どうだ恐れ入ったか」で、次第に「何故無反応でいられる」と。
 驚きと怒り、それが半々入り交じった表情になった。

「無礼であるぞ!」

 さっきと同じ言葉を、今度は怒鳴りながらキャロラインにぶつけた。
 当然信徒達が取りなしに入る、中に一部、身を挺してキャロラインを守ろうとする信徒も出てきた。
 さらには。

「さすがだ」
「ああ、俗世の地位になど興味ないのだろうな」

 と、ますますキャロライン――神の子に心酔するものも出てきた。
 状況を見て、大事にはならないだろうと。
 そう判断した俺は、ワープの羽根を取り出してメテオラに飛んだ。

     ☆

 メテオラの宮殿、リカの部屋に飛んだ俺はメイドと出くわした。

「カケル様!」

 ベッドメイクをしていたメイドはいきなり現われた俺を見て驚かなかったが、代わりに緊張してびしっ! と背筋を伸ばして「気をつけ!」のポーズになった。

「ティア、リカはどこだ」
「女王様は執政室にいらっしゃいます」
「そうか、ありがとう」
「いえ!」

 恐縮するメイドを置いて、俺はリカの部屋を出て見慣れた廊下を歩いた。

(今のメイド、知りあいか?)
「チェインバーメイドの一人だ。リカのハーレムで何回か見かけた」
(名前は?)
「ん? リカが呼んでるのを聞いたから間違いないぞ」
(そういうことではないのだがな)
「だったらなんだ?」

 聞くが、エレノアは答えなかった。
 なんなんだ? って思ってる内に執政室に辿り着いた。

 ノックして、ドアを開けて中に入る。

「リカ」
「カケル!」

 リカは椅子から立ち上がって、ぐるっと机を回って俺の前にやってきた。

「来ると思ってた」
「ああ。なんであんな事を?」
「ふふ、その前に当ててみましょうか。彼女、受けなかったでしょう」
「受けなかったというか、聞こえてもなかったな」

 それを聞いたリカはますますニコニコした。

「なんであんな事をしたんだ?」
「女王として、領内で起こったことは把握してるもの。この先アイノンの有り様を大きく変える神託があったのならなおさらのこと」

 リカはニコニコしたままだが、どことなく他人ごとの様にいった。
 把握どころかそれを見ていた、いやがっつり関わっていたんだ。
 それでも、リカは一歩引いた「把握」と表現した。

「その中心人物を顕揚するのは当たり前の事じゃない?」
「で、本当のところは?」
「箔付け」
「箔付け?」
「カケルはあの子を持ち上げよう(、、、、、、)としてるのよね」
「ああ、持ち上げようとしてる」
「それなら多少箔を付けた方がいいんじゃない? 神のお告げだけじゃなくて、俗世の権威にも認められたというのは重要なものよ」
「なるほど」
「それに、どうせ受けないしね。俗世の権威すらも無視する神の子、ますます株があがったんじゃないの?」

 さっきの事を思い出す。
 確かにキャロラインを更に心酔する様になったもの達が出ていた。

「そこまで読んでたのか」
「さすがだな、そこまで読んでたのか」
「カケルが気に入った子だからね」
「理由になってるんだかなってないんだか……」

「それよりカケル、彼女とはもう?」
「……まだだ」

 一瞬なんの事なのか分からなかったけど、すぐにリカが「薔薇の園の(ぬし)」って呼ばれている事を思い出す。
 女王ながら、女ばかりを集めた自分のハーレム「薔薇の園」をつくって、それを丸ごと俺のものにする女だ。
 そのリカがいう「彼女とは」の意味は一つしかない。

「どうして?」
「そのうちな、まだ途中だから」
「そっか。じゃあこっちが先でいい?」
「いいぞ」

 即答して、リカの腰に手を回して抱き寄せて、濃厚なキスをする。
 キスをしつつ、寝室はメイドのティアがしっかりベッドメイクをしていたな、と思いだして部屋に飛ぼうとする。

「待ってカケル」

 ワープの羽根で飛ぼうとしたら、リカに止められた。

「そうじゃなくて、カケルに愛して欲しい子がいるの」
「お前に『よくやった』っていってるつもりなんだが」
「だから、それをその子にも。いい子で、大変だった子なの」
「そいつにも爵位をやればいいだろ?」
「いい子なの。だからそんなありきたりな褒美ですませたくないの。できればカケルにも可愛がってもらえるしあわせを、ね」

 俺の腕の中で見あげてくるリカ。
 楚々とした、懇願する瞳を向けてくる。

「爵位よりも俺に可愛がってもらえるのが上か」
「当たり前じゃない」
「そうか、なら」

 ワープの羽根を取り出して、リカの寝室に飛んで彼女をベッドの上に押し倒した。

「カケル!?」
「それなら褒美はお前が先だ」

 もう一度キスをして、目をまっすぐ見つめた。

「キャロラインのこと、その子を思ったこと。その両方のご褒美で、お前が先だ」

 目をまっすぐのぞき込んで。

「いいな」

 といった。
 リカは少し驚き、やがてはにかんだ様子で俺の首に腕を回した。

「ありがとう、大好き、カケル」

 いじらしくなったリカを、その夜一晩かけて。
 じっくり、丁寧に可愛がってやった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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