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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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267.下位互換

 魔法のある世界では奇跡はより身近なものだ。

 魔法という力があるからこそ、通常の(、、、)超常現象は魔法で起こしたと説明がつく。
 それが大半の人間に分かる。一般人でも魔法が使えるから、魔法かどうかなのは常に衆目の元に晒される。

 だから、そうでないものは。
 魔法ではない、魔力を伴わないものは奇跡と見なされる。

 メリッサがそうで――いまの(、、、)キャロラインもそうだ。

 エレノアよりも弱い人間達は力を感じ取る事ができなくて、結果だけを目にする。
 そして、それを神の奇跡だと認識するのだった。

     ☆

 アイノンの街、キャロラインの自室。
 教会の奥にあるこじんまりとした小さな空間が彼女の部屋だ。

 調度品らしいものはほとんどなく、椅子とか机とか、ベッドとかその上にある枕や布団とか。
 ボロくはないけど、古い。
 全てがあきらかに使い古されているものだ。

 その部屋に連れてこられた俺、迷彩オーラを解いてひかり共々姿を見せた。

「神様!」
「神はもういい。俺は結城カケル」
「ユウキ……カケル?」
「ああ、どっちでもいい、好きに呼んでくれて」
「……神様じゃ、だめ?」


 上目遣いで俺を見つめてくるキャロライン。
 おねだりをする様な目だ。

(すっかり神認定されてしまったな。どうするのだ?)

 にやにやしてるエレノアの刀身にデコピンをする。

「わかった、それでいい」
「ありがとう神様!」
「よかったねおねーちゃん」

 ひかりが笑顔で話しかけるが、キャロラインは首をかしげた。

「やっぱりひかりの言葉は分からないのか」
「ごめんなさい」
「いやお前のせいじゃない……ふむ」

 俺は考えた、本当に俺の言葉だけしか分からないのか、と。
 それを確認したくて、異次元倉庫からワープの羽根を取り出した。

「つかまれキャロライン。ひかりもだ」
「え? はい」
「うん!」

 異なる反応をする二人を連れて、ワープの羽根で飛んだ。
 飛んだ先はキャロラインの部屋とは似ても似つかない、豪華で広大な部屋だった。
 メルクーリの王宮の一室、そこにいるのは姫ドレスを纏っているヘレネー。

 この世界には存在しないワープに目を丸くするキャロライン。

「カケル様? どうかされましたか?」

 一方、こっちに気づいて――ワープを既に知ってて、いきなりの出現にも動じないヘレネー。
 彼女はいつにもまして高貴なオーラを纏っている。
 まわりにメイドがいて、ヘレネーの身支度を手伝っている。

 いまから(まつりごと)のために誰かとあうのか、と思った。

「ちょっと協力してほしいことがある。手間は取らせない」
「なんなりと」

 ほんのわずかな逡巡も見せることなく頷くヘレネー。
 まわりのメイド達も空気を読んで、一歩引いて手を止めた。

「キャロライン。彼女の言葉はわかるか?」
「えっと……」
「初めまして。『神の子』キャロライン様ですね。ヘレネー・テレシア・メルクーリともうします」

 さすがヘレネー、どうやらキャロラインの事を知ってたみたいだ。

「えっと……ごめん神様……」
「いいんだ。悪いなヘレネー」
「いいえ……さすがカケル様ですわ」

 何かに気づいたヘレネーに別れを告げ、今度はリカのところに飛んできた。
 カランバの後宮、リカのハーレム、薔薇園。

 リカはそこで、可愛らしい少女の髪を梳いていた。
 美しく輝いているブロンドのロングヘアーを更に美しく見せるためにすいている。

「カケル!」

 俺に気づいたリカは手を止めて、立ち上がってこっちに駆けよってきた。

「どうしたの? 今日は来るって聞いてなかったけど」
「わるいな、ちょっと協力してほしい事がある」
「この子の事?」

 リカはキャロラインを見た。

「キャロラインっていう名前だ。知ってるか?」
「あの?」
「あの」
「リカ・カランバよ。よろしくね」

 リカは手を差し出して握手を求めた。キャロラインはそれに握りかえしたが。

「ごめんなさい神様……」
「そうか。気にするな」
「びっくり、カケルは話が出来るの?」
「むしろそんなに有名な話なのか?」
「そりゃね」
「そうか」

 ヘレネーもすぐに『神の子』って言葉が出てくるあたり、有名人なんだなというのが何となく分かった。

「悪いな、また来る」
「ええ、待ってるわ」

 にこやかに送り出してくるリカ、どこか残念そうな表情を浮かべる金髪の少女。
 二人に別れを告げ、次の場所に飛んだ。

 アウラ、フィオナ、そして魔剣クシフォスを持つセレーネ。
 いろんな場所に飛んで、いろんな相手と引き合わせたが、キャロラインは誰の言葉も分からなかった。

 俺だけ、俺の言葉だけを理解できた。

 一周してキャロラインの部屋に戻ってきた。

「ごめんなさい神様……」

 俺の意図はわかってないだろうが、それでも俺が何かをしようとして、自分がそれに答えられなかったと認識したキャロライン。
 見ていて可哀想になるくらい肩を落として、ただでさえ小さいからだが小さく見えてしまう。

「気にするな、お前のせいじゃない」
「うん……」

 キャロラインを慰めつつ、考える。
 俺以外の言葉が分からないってのがほぼほぼ確定したが、それそれでいい。
 あっちこっちで言われた『神の子』という呼び名。

 神の声が聞こえる、神の言葉しか理解できないから、神の子。
 そんなキャロラインが俺の言葉だけを理解できるのはむしろ色々とやりようがあるって思えた。
 彼女を法皇にするために、メリッサの代わりにそうするためにやれることが山ほどある。
 それをいったんまとめよう。それにアドバイスも聞きたい。
 さしあたってはオルティアとデルフィナ、それにヘレネーだな。
 このあたりから話を聞こうと思った。

「あの……神様」
「うん?」
「私、神様とお話出来るだけでしあわせだから」
「……」

 キャロラインの言葉、当たり前だけど額面通りには受け取らなかった。
 それを口にしたとき、彼女の顔はひどく切なく見えた。

 一言で言えば、強がり。

 私大丈夫です、って強がってるのがありありと分かってしまう。

「だって、これは神様から授かった力だから」
「授かった力?」
「うん。いつかこの力が世界を救って、人々をしあわせにする力だって、前に神様が」

 そんな事をいわれてたのか。

 そして……力、か。

「……」
「どうしたの神様?」
「他の人と話したくないか?」
「ううん、しなくても大丈夫――」
「大丈夫かどうかじゃない。したいのか、したくないのか。どっちだ?」
「……え?」

 きょとんとするキャロライン、彼女はすぐに。

「したい、けど……」

 ともらした。

(会話慣れしてないから韜晦もしらんのだな)

 俺もそう思う。
 というかキャロラインの感情は基本ダダ漏れなんだ。
 何かを投げかければ反応が返ってくる。
 普段会話し慣れてない分、会話の時の反応がストレートなんだ。

 そんな彼女は「したい」と答えた。

「ならさせてやる」
「え? ひ、筆談ですか?」
「いや」

 首を振る、手を伸ばして、異次元倉庫を開く。
 そこから取り出した、くじ引き特賞。

 スキル――『下位互換』。

 それをキャロラインに使った。
 ひかりがキャロラインを包み、体の中に溶け込んでいく。

「な、何があったの神様」
「聞きたいって意識してみろ」
「え?」
「ひかり」
「うん!」

 ずっとそばにいて、大人しく事態の成り行きを見守っていたひかりをうながした。

「結城ひかりです」
「……?」
「聞きたいって意識してみろ」

 もう一度促す、彼女が「むむむ」って感じで眉間にしわを作ったのを確認してから、ひかりの背中をおす。

「結城ひかりです」
「あっ……」

 キャロラインの目が見開かれた。

「わ、分かる!」
「本当!? ひかりの言葉わかるの?」
「うん! わかるよ神様!」

 どうやら、効果はあったみたいだ。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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