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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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266.カケルの奇跡

「神、か……」

 少女はすがる目でおれを見た。
 何でこっちの声が聞こえて、さっきの男の声やひかりの声が聞こえなかったんだ?
 まずはそれが気になった。

「その前に答えろ、ひかり――この子の声は聞こえないのか?」
「聞こえない訳じゃないの、何を言ってるのかわからないの」
「わからない?」
「声は聞こえるけど、その、風の音とかそういうのと同じように聞こえるの」
「……他の人間のもか?」
「うん、いままでは神の声しか聞こえなかったわ。だから」

 少女はまた俺を見つめて、更にすがるような目で見つめてきた。

「あなたが神ですか?」
「俺は――」
「キャロライン様ー」

 答えようとすると、遠くから呼ぶ声――多分少女を呼ぶ声が聞こえてきた。
 少女はこたえない、反応しない。多分これも聞こえてないんだろう。
 俺は少し考えて、迷彩オーラでひかりともども姿をけした。

 俺と話せる、という状況がどういう理屈で何を意味してるのか分かるまで、この事は隠しておこうと思った。

「神様!? 何処にいったの神様」

 慌ててまわりを見回して俺を探す少女。
 親に捨てられた子供の様な泣き出しそうな目をしている。

「キャロライン様。ここにいたんですね」

 教会の中に一人の中年の女が入って来た。
 洗い古しで色あせた地味な格好をした女は少女――キャロラインに話しかける。

「キャロライン様、ご飯が出来ました」
「どこ? 神様どこ?」
「お労しや……今日もお声をかけてもらえなかったのですね」

 女は悲しそうな表情でキャロラインを見た。
 可哀想なものをみる――という目じゃなくて、自分の事の様に悲しそうな目だ。

 そんな彼女の声かけにも、キャロラインは反応しない。

「キャロライン様」
「神様、お願いよ、もう一度私に姿を見せて」
「キャロライン様」

 女は強く呼んだが、キャロラインはやはり反応しない。
 手を掴むとようやくキャロラインはそっちをみて、女はキャロラインの手を取って手のひらを指でなぞった。

 文字を書いてるんだと分かったのは、さっきキャロラインが自分で「筆談なら」とひかりに言ってるのを思い出したからだ。

「ごはん……」
「そうです、ご飯ですキャロライン様。お腹いっぱい食べて元気にしてないと神様の声も聞こえませんよ」
「ごはん……」

 つぶやくキャロライン。
 なんというか。

「不便そうな体質だな。それで前に聞こえてたのが神の声、ってことか」
「ええ! 神様が話してくれた言葉、全て覚えてるわ」

「え?」
「キャロライン様?」

 俺と女が同時に驚きの声をあげた、女はキャロラインがいきなり会話っぽい台詞を吐いたことに驚いたが、俺は。

 迷彩オーラ中なのに、自分の声が彼女に聞こえたことに驚いていた。
 いままでそんなことは一度も無かった。

 この迷彩オーラはエレノアの力を使ってて、エレノアと同格以上でなければ姿も声も聞こえないものになってる。

 それをキャロラインが聞こえた。
 彼女は未だにきょろきょろしてる、しまいには空を見上げている。
 真横にいる俺の姿など見えていないのに。

「声は聞こえてるのか」
「神様!」

 大喜びで目を輝かせた。俺の声は聞こえるみたいだ。

「おとーさんの声が聞こえるの? すごーい」
「ひかりの声は? 娘の声は聞こえるのか?」
「娘? いいえ、神様の声しか聞こえないわ」

 ひかりの声は聞こえないのか。
 ますます不思議だった。
 同じ迷彩オーラを纏っているのに、俺の声だけ聞こえるとは。

「あの……キャロライン様。本当に神様の声がまた聞こえるようになったんですか?」

 呼びに来た女がおそるおそる聞いた。真横にいる、姿が見えてる女の声さえキャロラインには聞こえない。
 俺だけ、俺の声だけが聞こえるらしい。

 それが何なのか分からないが、これは使える。
 俺だけの声が聞こえる、神の声が聞こえる時と同じなら。
 この状況は利用できると思った。

 さて、どうする?

(我に任せろ)
 何かできるのか?
(うむ。神の奇跡っぽいのを起こしてみようではないか)
 できるのか?
(オルティアにやった事を転用すればな)

 どうやら当てはあるらしい。

(娘に何か種を植えさせろ。それを成長させる)

 なるほど、それは神の奇跡っぽい。

「キャロライン」
「神様!?」
「いまから俺の言った通りにしろ」
「はい!」

 満面の笑顔で頷いたキャロラインは、半信半疑の女を置いて、俺が言った言葉通りに動いた。

 いったん教会を出て。
 その辺から木の実を探してきて、道ばたに植えた。
 畑ではない、見るからに栄養分の少ない道路。
 そこに植えた。

「よし、それでいい」
(祈りを捧げさせろ、その方がそれっぽい)
「そうだな。キャロライン、祈れ」
「はい、神様!」

 キャロラインは手を合わせて、木の実を植えたところに向かって祈りを捧げた。
 教会の前でいきなり祈りだしたキャロライン、通行人の注目を集めた。

「またなにかやってるぜあいつ」
「ペテン師が気を引きたくてしかたがねえんだろ」

 大半が冷ややかで、嘲る視線をキャロラインに向けていた。

(つないでやったぞ、あとは貴様が力を送ればいい)

 分かった。
 俺は手を出して、こっちでも木の実に意識を向けた。
 そしてオルティアにするのと同じように――力を流し込む。

 街の人間が笑って見物する中、地面から芽が出た。
 小さな芽、新たな命の息吹を象徴するような芽。

「おいみろよ、あれ――」

 大半が笑っているなか、一人の男が木の芽に気づいた――直後。

 それ(、、)は爆発的に成長した。
 芽から木に、木から大樹に。
 数年、いや数十年分の記録写真をほんの一分間で早送りにした、そんな成長。

「きゃっ」

 キャロラインは尻餅をついた、捧げた祈りで成長した大樹に押しやられて尻餅をついた。

 そして、群衆は。

「「「………………」」」

 ほとんど全員がアホみたいに口を開けて、ぽかーんとしていた。
 植えた木が一瞬で大樹になった、それを見せつけられた群衆は言葉を失った。

「か、神だ、神の奇跡だ」

 誰かが我に返って、ひざまずいて大樹に向かって拝みはじめると、他の見物客も次々と膝を折って祈りだした。

 祈りは神の奇跡と――そしてキャロラインに向けられた。

「神様……神様はまだ私を見捨ててなかったんだわ」

 当のキャロラインは群衆の声など耳に入ってなくて、ただただ、神の奇跡に感動していた。

(よかったな神よ)

 からかい半分のエレノア。
 これでキャロラインを法皇にするための最初の一歩、彼女にとってのリスタートをきった。
面白かったらブクマ評価してくれるとすごく嬉しいです!
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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