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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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261.存在の意味

 一人になったあと、壺から手を出した。
 メリッサの777倍回復力でほとんど治っていたけど、光がまとわりついていた。
 その光が俺の手を侵食し、メリッサの回復力で治って、また侵食――のくり返しをしている。

(大丈夫か)
「問題ない。徐々に収まってきてる」
(そうか。それにしてもよく顔に出さなかったものだな。相当のものだっただろう)
「顔にでるようならこのやり方を選んでない」
(うむ、そこで顔に出るようではただの間抜けだからな)

 しばらく自分の手を見つめる。
 壺から抜いたせいで、薪を抜かれたたき火のように徐々に小さくなって消えていく。

(例の蛇と同じだな)
「ああ、同質の力だ」
(どう思う?)
「それはこっちの台詞だ」
(うむ?)
「世界最大の宗教と悪名高い魔剣。昔お前と何かがあって、お前かお前の関係者を排除するための儀式って可能性は?」
(ソロン教、もしくはソロン。そういう名前の連中と関わった記憶は無いな)
「今でもか?」
(今でもだ……タニア)

 エレノアは幽霊メイドを召喚した。

『カケル様!』

 呼び出されたタニアは俺に抱きついた。
 過去から戻ってきてから、彼女は前にも増してこんな風にストレートに愛情表現をぶつけるようになった。

 俺たちが戻った後の話は詳しく聞いてないが、死んで屋敷に地縛霊になるまでエレノアがある程度サポートしたらしい。

 そんなタニアに触れるキスをして、エレノアが聞いた。

(貴様の記憶には?)
『ソロン教ですか? ないです。宗教と関わった記憶もないです』
(だ、そうだ)
「オルティアにも聞いてみたいな、それとオリビア」
(それがいいだろう)

 エレノアが頷き、俺はタニアにもう一度キスをして、頬を撫でてやってから、剣に戻した。
 一度手を喰われたから、オーラの迷彩に破綻がないことをちゃんと確認する。
 そうしているうちに、表からメリッサが入って来た。
 一般信徒に囲まれて入ってくる聖女メリッサ。
 彼女はそこにいる信徒達に何か話しかけてから、信徒の一人に手をかざした。

 手がぼわ、と光ったあと、信徒は信じられないって感じの顔で立ち上がった。

「腹が! ずっと痛かった腹が!」

 例の奇跡(、、)をやったようだ。
 苦難――というより痛苦を代わりに引き受けるメリッサ。
 聖女という肩書きは伊達じゃなく、まわりの信徒がますます心酔する様な表情になって、ひざまづいてメリッサを称え、祈りを捧げた。

(何処へいってもこんな感じだろうな)
「あいつの性格だとそうだな」
(教皇にしようとする勢力がいるのもうなずける。信徒レベルでは普通になってほしいのだろうな)
「ああ」

 うなずいた俺は横をちらっと見た、エレノアの意識も同じ方角に向けられているのが分かった。
 教会の隅っこに二人の男がいた。
 大半の信徒がメリッサのそばに集まっている中、その二人だけ離れてる上に、明かに敵意を剥き出しにしてメリッサを見ている。

「まだ人心を買収しに来たぞ」
「やらせておけ」

 二人は押し殺した声で会話していた。
 メリッサの出現で騒がしい中普通は到底聞こえない様な声だが、777倍になった聴力が一字一句漏らさず捕らえている。

「しかし、あれでは遠からず信徒達がヤツだけを信奉するようになる。そうなればいかにスレオニン様といえど教皇の座は……」
「なら今のうちに消せばいい」
「どうやって? お前は知らないがヤツは本物の不死身だぞ。俺はこの目で見た――」
「トロクロス」

 男の一人が静かにつぶやいた。
 短い何かの固有名詞、それはもう片方の男を黙らせる程の効果があった。

(どうせ貴様は覚えていないだろう。不死の戦士トロクロス。我のおもちゃだったひとりだ)

 エレノアが先に説明してきた。
 まだ何もいってないだろうが……覚えちゃいないけど。

 男達の会話は続く。

「トロクロスは最後、五体を引き裂かれて、それぞれ世界の果てに捨てられて絶命した。ヤツの能力は間近で見た事がある。クビを落とされても死なないが、クビそのものが生えてくるわけではない」
「なるほど! トロクロスと同じようにすれば」
「ああ」
「いやしかし。ヤツは魔剣使いと繋がってる。この街によく来るのはそのためだ」

 俺の事も知ってるのか。

「知ってるか? 魔剣使いは大の女好きだということを」
「へえ? ならどうとでもなりそうじゃないか」

 男達はそのまま「作戦」の打ち合わせをしつつ、ちやほやされているメリッサに憎しみの視線を投げかけてから、教会を出て行った。

     ☆

 次の日、屋敷でくつろいでいた。
 ただくつろいでるだけじゃなく、俺のそばにオリビアがいた。

 チビドラゴンから人の姿になったオリビアは俺にひっついて、腕を組んだまま一緒にソファーに座っていた。

「こんな感じで、なにもしなかったら結構長い時間いられるよ」
「何もしなければ?」
「うん! あっ、もちろん歩いたり話したりはできるよ。人の子の相手はムリってだけで」
「俺の相手?」
「人の子の相手」

 二重の意味なんだろうな、と思いつつ、そこまで出来る様になったひかりをすごいと思った。

(当然だ、我の娘だからな)
「俺の娘だからな」
「人の子って本当にひかりが大好きなんだね」
「当然だ、世界でいちばんかわいいんだからな」
「じゃあ気をつけないといけないね」
「何を?」
「あたし、いろんな人の子の親子見てきたけど、時代とか国とか地域次第でいろんな理由が後付けであるけど、よく見たら大抵父親が臭くなった瞬間に嫌われてるんだ」
(くくく、加齢臭というヤツだな)
「……」
(むっ、こやつフリーズしおった)
「人の子? どうしたの人の子」

 エレノアの声もオリビアの声も聞こえなかった。
 俺の頭の中はそれ(、、)でいっぱいになった。

『おとーさんくさい! あっちいって!』

「うわああああああ!?」
「ひゃん!」

 絶叫した俺に驚いたのか小さな悲鳴が聞こえてきた。
 見ると、それはミウだった。
 いつの間に入って来たミウは腰が引けている。

「ごほん。ど、どうしたミウ」
「あっ、はい。ご主人様にお客様です」
「客?」
「はい、サラマス様です」
「へえ」

 サラマス。
 この街にあるサラマス商会の主で、俺がこの世界に来た直後の頃は結構世話になった。
 ミウを買ったのもサラマスのところだ。

 その後もちょこちょこ取引をしたりものを揃えてもらったりと、日常のさりげないところで繋がっている。
 そのサラマスが来たというのだ。

 俺は立ち上がり、オリビアを置いて部屋を出た。
 ミウに案内されて、応接間にやってきた。

 俺の屋敷には二つの応接間がある。ミウが来客の性質を見極めてそれとなく分類して案内する。
 分類の方法は簡単、俺の敵であるかどうかだ。

 そして今、俺が連れられてきたのは敵の方。
 サラマスは、俺の敵としてミウに認識されていた。

 俺は、にやりと口角を持ち上げた。

     ☆

 月明かりの下、男が二人、野原に止まってる馬車の中にいた。
 片方の男の手がぼわっと光って、そこから文字が浮かび上がった。

「どうだ」
「魔剣使いは用意した女に食いついたそうだ。いまやり疲れて(、、、、、)寝たところだ」
「サラマスめ、上手くやってくれたか」
「こっちはどうなってる」
「近くの村人を使って聖女サマを呼び出せた。モンスターに困ってる、でも金がないって言ったらすぐに食いついてきたよ。今こっちに向かってるところだ」
「ヤツが来れば……」
「用意した五人が首と両手両足を切りおとしてそのまま逃げる手はずになってる」
「体はいいのか?」
「残しておいた方が絶望的だろう? いなければいないでいるものとして祭り上げられる動きもある。体だけになっても生きていれば逆に聖遺物とかになって――」
「教皇にはならない、か。完璧じゃないか」

 二人の男は馬車の中でほくそ笑んだ。
 自分達の計画が順調に進み、成功はもはや約束されたも同然と確信している顔だ。

 しばらくして、遠くから明かりが徐々に近づいてきた。
 明かりは十近くあるたいまつだった。

 男達が待っているメリッサと、メリッサと親しい、ソロン教の力自慢の信徒達である。
 その一行が徐々に近づいてくる。

 二人は馬車の中からそれを見つめて、間違いなくメリッサがいることを確認してから、手をかざして合図を送った。

 月明かりの下、五つの影が四方から飛びかかった。
 音もなく、しかし風よりも早く。
 暗殺者の出で立ちの五人がメリッサ一行を奇襲した。

 ザシュザシュザシュ――と、刃が肉を裂く音が五つ同時にした。

「よし!」
「やったか!?」

 男達がそう言って馬車から顔を――そして身を乗り出した瞬間。
 ゴトンゴトンゴトン――と何かが地面におちる音が聞こえた。

「何の音だ?」
「それよりもヤツらは進んでるままだぞ、たいまつの数も減ってない」
「なに!?」

 驚愕する男、言われて指さし確認でたいまつの数を数えようとする。

「数える必要はない」
「なっ――」
「お、お前は――」

 いきなり目の前に一人の男が現われた。
 闇夜よりも更に深い闇をたたえている黒き剣士。
 まがまがしい程のオーラと、不吉の象徴である魔剣を携えている。

 魔剣使い、結城カケル。

 その出現は、あらゆる陰謀の失敗を意味していた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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