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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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260.超ダメージと超再生

 久しぶりに徒歩でロイゼーンの街に出た。
 これと言った特色の無い街だが、最近は賑わってきている。

 店に並ぶ品物も、旅人風の通行人も増えている。

「メルクーリは商売が楽でいいな」
「本当だよなあ、金が軽くてその上偽物を掴まされる心配もねえ。もういっそメルクーリだけで商売しようかな俺」

 すれ違った荷馬車に乗る行商人風の男の言葉が耳に入ってきた。
 なるほど、賑わってきてるのはメルクーリが発行した新しい通貨のおかげか。

 イリスからチラチラと話は聞いてたけど、実際に見たのは初めてだ。

(我の経験上)
「うん?」
(景気がいいと人々は家からでるものだ。王侯貴族はともかく、民は金を使うにも外に出なければならんからな)
「なるほど。よく見れば大抵表情も明るいな」
(確か貴様の初仕事だったか?)
「お前と出会う前だな」

 もうずっと昔から一緒にいた(ある意味間違いじゃない)様な気がするけど、この世界に来て間もない頃はエレノアなしで色々やってた。
 硬貨の事件と山ウシ狩りなんかがそうだ。

(ふむ、我の知らない貴様か)
「うん?」
(さぞや情けないものだろうと思ってな)

 エレノアはさも楽しげに、聞き慣れたからかい口調で言ってきた。
 肉体がない分、こいつは口頭でのじゃれ合いを好む。

「その情けない男にやられたのは何処のだれだ?」
(一般論だが道具は使い手が重要だ。か弱い相手にさびついてる道具ではな)
「道具をサビらせる様なヤツがいるのか、ダメだなそいつは」
(ついでに孕ませたりするような輩だ)
「それはすごい、さぞかし可愛い娘だろう」
(トンビが鷹を産んだな)

 エレノアととりとめのないやりとりを交わしつつ街中を歩く。
 その間、ずっと視線を感じる。
 街の住民からずっと見られてる。
 街外れの元幽霊屋敷に住んでる有名な貴族だから、街に出るとこうやって注目されるようになった。

(やはり変装が必要だな)
「そうだな」

 俺は歩きながらエレノアのオーラを発動する。
 目立たないように少しずつ出して、体を覆っていく。
 徐々に変わる間違い探しのように、外見を変化させていく。

 動き続けていることもあって、誰もそれに気づかない。
 むしろ視線が徐々に減った。
 爵位を持つ貴族様から誰も知らない青年に変わったから、誰にも注目されなくなった。
 完全に変化した直後、ある建物の前に立ち止まった。

 教会。
 大抵の街に最低一つはある、ソロン教の教会だ。
 中から祈りを捧げる声が聞こえる。

 扉を押して、中に入った。

「あれ」

 大勢の信徒らしきものが祈りを捧げている中、それを見守っていた若い女がこっちをみた。
 修道服をまとった若い女は近づいてきて、向こうから話しかけてきた。

「初めての肩ですよね、入信希望なんですか?」
「初めてって分かるのか?」

 ちらっと他の信徒をみる。
 何か共通した特徴でもあるのかって見たけど、そんなものはまったく無かった。

「ここにいらっしゃった方の顔を全部覚えているんです」
「へえ」

 当たり前の様に言い放つ女に感心した、記憶力がいいんだな。

「私はメリル・オナシスって言います」
「ショウだ」
「ショウさんですね。入信希望でいらっしゃいますか?」
「ああ。前にメリッサ様に命を助けてもらって」
「そうだったんですか!」

 メリルの表情が綻んだ。
 一番ありそうで不自然じゃない理由をてっちあげた。この理由にしたのは、メリッサの人助けに俺も実際に関わってることが多いから、いくらでもそれっぽいこじつけが出来るからなんだが。

「私と同じですね!」

 何かでっち上げるまでもなく、メリルはそれを信じて、仲間意識まで持ったようだ。

「リントスの街って分かりますか?」
「聞いた事あるようなない様な」
「あはは、小さい街ですからね。私その街に住んでたんですけど、ある時樹霊の被害が出たんですよ。それでみんな途方に暮れてた時にメリッサ様がやってきてくださって、退治してくれたんです」
「へえ」
(貴様と聖女様の出会いだな)

 うん? 聖女様との出会いって……あああのときか。
 固有名詞は覚えてないけど、メリッサとの出会いはよく覚えてる、その時にやった事もだ。

 なるほど、あの時の街の住民か。

「あの後ソロン教に入信して、この街に着たんです」
「なんでこの街にきたんだ?」
「ここによくメリッサ様が来られると聞きましたから。ここならお会いできるかもって」

 メリルはそう言って頬を赤らめた。
 なるほど、これはソロンというよりメリッサ個人を信奉してるパターンだ。
 メリッサはよく俺のところに来る。他の女達とは違って、俺の屋敷にきたあとはこの街にあるソロン教の施設にも顔を出していたみたいだ。
 それ目当て、って事か。

「あっごめんなさい、私のことばかり」
「いや構わない」
「それよりも入信ですよね」
「ああ。何か条件はあるのか? 寄付とか」
「あはは、そういうのはないですよ。寄付ももちろんしていただけると嬉しいですけど、用事のないときは教会に来て祈りを捧げればそれで充分です。信仰がそのままソロン様のお力になるのです」
「そうか」

 こっちはそれほど感情がこもってない。メリッサの話をしてる時の十分の一もない。
 ここまで来るといっそすがすがしい。

「あっ、そうだ。入信するときにちょっとテストを受けてもらいますけど」
「テスト? どっかでモンスターでも倒せばいいのか?」
(脳筋か貴様は)

 エレノアは呆れた声をだした。

「いえいえ、すごく簡単なことですよ。儀式……というか形だけのものですね」

 こちらです。とメリルは言って、俺を連れて教会の奥に入った。
 そこそこの広さの部屋に、ポリバケツ程度の大きさの壺があった。

「これは?」
「命の壺って言います。かつてソロン様が苦難の時に、壺から一日一つぶの豆を授かってそれで危機を乗り越えたとか」
「大分はしょったエピソードだな」
「え? あの……えっと……もっと詳しい話聞きたい、ですか?」

 指摘されたメリルは恥じらってうつむいた。
 口籠もってることから、あまり詳しくは覚えてないのがありありと見て取れる。

(聖女様の事なら生まれた時の産毛の本数まで知っていそうだがな)

 楽しげに笑うエレノア。
 それはそれオーバーだけど、言いたい事は分かる。

「いやいい。それよりもこれをどうするんだ?」
「あっ、はい。ここに手をいれてください」
「それで?」
「それだけです。邪悪なものは浄化するっていう力があって、悪しき者が紛れ込もうとしたら浄化するんです。あはは、ここだけの話、何も起こりませんよ」

 メリルはイタズラっぽく笑った。
 多分そういうもんなんだろう。
 俺は壺と向き直った。

 手を差し込むだけでいい、それだけでいい。
 だが、俺の手は止まった。

(もう気づくか)
 あまり前だ。

 メリルほど笑っていられなかった。
 命の壺、いざ触ろうとしたらいやな気配を感じた。

 いやな(、、、)、というよりはまずい(、、、)方がキッと正しい。
 それから感じる気配は、あのオピスと同じ質のものだった。

 魔剣の天敵であるオピス。
 ただの人間にはただの大蛇だが、エレノア・ひかりで斬った場合強さそのままに増殖してしまう。
 そのオピスと同じ気配。

 俺はこっそり、メリルに見えない様にオーラを伸ばして壺に入れた。
 それが喰われた。
 跡形もなく消滅させられ……喰われたのだ。

 手を入れたらどうなるか……。
(骨も残らんだろうな)

 やっぱりそうか。
 相性が悪すぎる。この壺に手を突っ込むというのは、ナナの全力の一撃をノーガードで受けるよりも危険だ。

「……どうしたんですか?」

 メリルがクビを傾げて見てくる。壺を前に止まった俺の事を訝しんでいる。

(どうする。出直すか?)

 そうだな。オピスと同質の力なら一回出直して対策を練った方がいいだろう。
 ごまかすための言葉を考えた出した、その時。

「おいめりる! ここにいたのか!」

 教会の外から慌てた様子で一人の男が入って来た。

「どうしたの?」
「メリッサ様! メリッサ様がおいでになったんだ!」
「えええええ!?」
「お前メリッサ様にあいたかったんだろ? 今なら出迎えで間近で見れるぞ」
「うん! あっ……」

 駆け出そうとしたメリルはハッとして、俺に振り向く。
 メリッサにすぐにでも会いに行きたいけど、俺をこのままにしておけないって顔だ。

「ああ、すぐにすます」

 メリルにそう言って、手を壺に伸ばす。

(正気か貴様)

 見てろ。
 手を壺の中に入れる直前、スキルを発動。

 メリッサに自然回復力を貸しだし。
『メリッサに自然回復力を貸し出します、残り59分59秒』

 メリッサから自然回復力をコピー。
『メリッサから自然回復力をコピーします』

 倍率貸しだし、そして能力のコピー。
 くじ引きで引いた二つの能力を同時に発動させた後、俺は手を壺の中に突っ込んだ。

 瞬間、激痛が走る。
 数千数万匹の虫に同時に噛まれるような、骨の髄まで来る程の痛み。
 ちらっと壺の中を見る。
 俺の手は超高速で、消滅と再生を繰り返していた。
 それが目を凝らさないと普通に見えるくらいの超高速。
 気を抜くと気を失いかねない程の激痛を一秒くらい耐えて、手を壺から出した。
 メリッサの777倍の回復量、当然、手は何事もなかったかのように元通りだ。

 それを確認したメリルは。

「ようこそソロン教へ」

 と、歓迎の言葉を掛けた直後、メリッサを見るために教会の外に飛び出していったのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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