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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メリッサ編

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256.聖女の奇跡

 ネクタルというはじめての街にメリッサと一緒にやってきた。
 初めての街だが、オリクトの谷の近くにあるっていうから、まずはワープの羽根でオリクトの谷に飛んで、一目散に逃げ出す谷の主を尻目にここにやってきた。

 中規模以上都未満。
 ネクタルに足を踏み入れた俺が感じたイメージだった。

「賑わってるな」
「酒造りで有名な街なの。あっちこっちに酒蔵があるし、各地から蒸留職人が集まってきてるからね」
「蒸留職人?」

 聞き慣れない言葉でメリッサに聞き返した。
 厳密にいえば聞き慣れない言葉の組み合わせだ。

「蒸留って知らない? 液体を蒸発させて雑分を取り除く技術だけどね、それの魔法の使い手がここに集まってるんだ」
「蒸留魔法なんてあるのか」
「正確には炎の魔法と氷の魔法の組み合わせだけどね」
「なるほど」

 正体を知ればがっくり来る話だ。
 俺はてっきり一発で蒸留する便利な魔法があるのかっておもったんだがそうじゃないみたいだ。

「そうバカにするものじゃないよ? そういう魔法が出来るまでは道具でやってたんだけど、どんなにいい道具だろうとお酒に道具の匂いとか味とかが移っちゃうの。でも魔法なら、物質を介さないで魔法で熱して冷やすから、雑味のない蒸留酒ができるんだ」
「ほう? そう聞くとすごいな」

 もっと説明されると今度は感心した。
 普通の蒸留でどれくらい道具の匂いが移るのかわからんが、魔法でやればゼロってのは分かる話だ。

「その魔法のバランスが難しくてさ、一人前の蒸留職人になるまでに10年以上の修行は必要なんだって」
「職人ってのはどこも同じなんだな」
「だね」

 メリッサとそんな事を歩きながら街の中を歩く。
 酒蔵の街だけあって、街中は酒屋とか酒場とか普通の街よりも多くて、それにつける肴の美味しそうな匂いが街を充満している。
 当然、活気もある。
 うまい酒にうまい飯、この二つが揃ってる街はそれだけで元気になる。

「で、目的地は?」
「ここからちょっと歩くところにある宿屋」
「宿屋? ソロンの教会じゃないのか?」
「ここはまだ布教中だからね」

 メリッサは微苦笑した。
 ここにメリッサときたのは、ソロン教の正式な仕事があるという話だった。
 メリッサがあっちこっちの村で村人の依頼を聞いて解決してるのは知ってたが、そういえばソロン教聖女としての正式な顔は知らないなって思って、一緒についてきたのだ。

 だから教会とかあるものだと思ってた。

「あたしの働き次第でソロンの教えに帰依する人が増えたらいいな」
「そうか。で、具体的には何をするんだ?」
「奇跡を起こすの」

 メリッサが平然と放った言葉は、他の人間が言ったら死ぬほどうさんくさい一言だった。

     ☆

 ネクタルの街北部、祭りとかそういうイベントの時に使われる大広場があった。
 そこに高台が築かれてて、まわりに住民がぞろぞろ集まってきている。

 高台は一番上をのぞいて布で覆われている、中で何が行われてるか分からないようになってる。
 メリッサはその中にいた。他にソロン教の関係者もいて、今準備をしている。

 俺とエレノアは離れたところで様子を見守った。

「奇跡って何をするつもりなんだ?」
(さあなあ、皆目見当もつかん)
「神の奇跡はペテンか魔法使いだっけ」
(正確には奇術師だな。魔法は魔力の流れでバレバレだ、それを使って何かを起こしたところで奇跡にはならん)
「俺の感覚からすれば魔法も奇跡に使えるんだけどな」
(だろうな)

 長くいるせいで、俺の女の中でほぼ唯一俺が現代人――別の世界から来た人間であることを理解しているエレノア。
 あっちの世界のことも俺と繋がっていることである程度は理解してて、俺が言った様な感覚も理解している。

(また首でも切るつもりなのではないか? 一芸に長けた聖女様だからな)

 メリッサが不死の聖女として名をはせた七日間の処刑か。
 元々はただの信徒だったのが、殉教するときに七回首を切られても死なないことで生還してきた。その事が大々的に喧伝されて、今となっては有名な「不死の聖女」だ。
 それをもう一回やるのか?

(どうする、止めるか?)
「メリッサがやろうとしてることだ、最後までやらせる」
(即答か、貴様らしい)

 エレノアは呆れながらも、好意的な感じの声を頭に響かせた。

 俺はそのまま待った、事が始まるのを。
 しばらくして、高台の上にメリッサが現われた。

 ソロン教の正装をまとい、神々しい空気を醸し出している。

 彼女が現われると集まったもの達がざわざわし出した。

「おい、本当に奇跡が起きるのか?」
「俺を信じろ」
「でも……そりゃ俺だってこの足が治れば嬉しいけど……」

 すぐ近くにいる男の二人組の会話が聞こえてきた。

(奇跡とやらが見えてきたな)
「ああ、ケガを治す。よくある手段だ」
(問題はそれを聖女様がどうやるかって事だ。あやつ、他人のケガを治せたのか?)
「え? ――まさか!」

 エレノアの言葉で俺はある可能性に気づいた。

「待てメリッサ! 今すぐやめろ!」

 大声で叫ぶ、しかし時既に遅かった。

 高台の上にいるメリッサは手を広げた、同時に、彼女の身体からまばゆい、神々しい光が放たれた。
 光は広場を包み込んだ。

 ざわつく声も多いが、それ以上にあっちこっちから嬉しさの籠もった悲鳴と歓喜の声があがった。

「手が、手が動くぞ」
「目がはっきりと見える!」
「あれほどあった頭痛が嘘のようになくなった」

 どれもこれも、ケガや病が治ったことを喜ぶ声だった。
 それ自体は良いこと、いいことだ。
 だが。

「うっ……わああああああ”あ”あ”――」

 高台の上でメリッサが聞いた事もないような悲痛な絶叫をした後、そのまま倒れた。
 彼女は信徒達に運ばれ、高台から下ろされる。
 入れ替わりに一人、もっと身なりのいい年かさの男が高台にあがった。

「鎮まれ皆の者よ! 皆の苦痛はご覧の通り、メリッサ様が引き受けてくださった」

 やっぱりそういうことか。
 自己犠牲の聖人が引き起こす――奇跡。

 ここに集まったもの達の病気やケガ、全てを引き受けたメリッサ。
 俺は、自分が歯ぎしりしてるのがわかった。

     ☆

「待て! ここは聖女様の――」
「どけ」

 そうとだけ言って、俺を止めようとする男を押しのける。
 部屋の中に入るとその光景に目を疑った。

 そこにいたのはメリッサ――である確信が持てなかった。
 一言で言えば肉の塊。
 手足が折れて肉がただれて、刺傷刀傷凍傷火傷――。

 あらゆる傷が現われてぐちゃぐちゃになっている。

「ぁ……ぅ……」

(聖女様だな)
「……ああ」

 こんな状態になっても生きてるのはメリッサである証拠だ。

「おい! ここはメリッサ様の――」

 俺を怒鳴りつけようとする男を裏拳で吹っ飛ばした。

(どうする)
「これを使う」

 異次元倉庫を開いて、くじ引きで引いた魔法の玉(白)をメリッサに使った。
 一言で言えば回復魔法、これまでどんなケガでも回復させてきたくじ引きのアイテムだ。

 それは白い――癒やしの光を放ってメリッサを包む、が。

(効かぬか)
「いや効いてる」
(む? 確かに、わずかに治っているように見える)
「一個がダメならありったけをぶち込むまでだ」

 異次元倉庫からストックしてる分全部を取り出した。
 それをまとめてメリッサに使う。
 ぞろぞろと入って来て、また俺を止めようとしてるソロンの関係者は揃って黙り込んだ。メリッサを癒やしてるのが分かったからだ。

 くじ引きのアイテム、魔法の玉(白)が合計二十個。
 全部メリッサに使ったが――それでも焼け石に水だった。

 あきらかに少しずつ治ってる、だけど今もまだ「肉塊」のままだ。
 このペースだと100……いや200個は必要だ。

(引いてくるしかないな。手持ちは何枚あるのだ? いやデルフィナのところに行って散財しろ)
「……」
(おい聞いてるのか?)

 エレノアの叱責の声が脳裏に響く。それが俺の思考をより加速させ、より冷静にした。

「……メリッサに自然回復力を貸しだし」
『メリッサに自然回復力を貸し出します、残り59分59秒』

 くじ引きスキルの一つ、俺の777倍の倍率を任意に貸し出す能力だ。
 魔法の玉じゃ回復が追いつかなかったけど、それで思い出した。
 メリッサは自前の回復力がある。

 不死の聖女メリッサ、彼女が持ってる能力は二つ。
 不死身とも言えるタフな体と、それを支える異常な回復力だ。
 その回復力を更に777倍にした。

 効果はあった。「肉塊」だったメリッサがびっくりする位の速さで、動画の早送りみたいにみるみる内に治っていく。

「おぉ……」
「いつもは三日はかかるメリッサ様が」
「一瞬で治ったぞ」
「信じられん、なにをやったのだ……?」

 ソロンの奴らは感嘆の声を上げる。……いつもは三日かよ。

(怖い顔をする)
「問い質す必要があるからな」
(そうだな。もし聖女様の意思ではないのなら……)
「止める」
(本人の趣味(、、)なら……)
「口は挟まない」
(くくく、それでこそ貴様だ)

 エレノアは楽しげに笑ったのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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