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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

ミウ編

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251.たった一つの例外

 首都レティム、夏の宮殿。

 かつての王が寵姫のために作った綺麗な庭にセレーネがいた。
 ワープの羽根で飛んできた俺にまったく気づかず、セレーネは剣を構えて型の練習をしている。

 あたりから音が消えている。
 気温がそこだけ数度下がったかってくらい、耳鳴りがするくらい静まりかえっている。
 時間さえも静止した様な場所で、セレーネだけが剣を振るっている。

 彼女の動きに音はなかった。
 力強くはない、早くもない、そして音もない。

 完全にして完璧な型を、彼女は身につけ、それで剣を振るっていた。

(末恐ろしいな、あのわがまま娘だったとはとても思えん)

 エレノアもかなりの高評価だった。
 俺も同感だ。

 そのままセレーネの稽古が終わるのをじっと見守った。

「ふう……えっ!? しょ、ショウいつからそこにいたの?」
「ちょっと前からだ」
「やだ恥ずかしい! あたしの練習をずっとみてたの?」
「みてた。いい感じだったぞ」
「ほ、本当? ありがとうショウ!」

 恥ずかしいといって顔を押さえていやいやをし出したセレーネだが、俺がほめただけで笑顔で完全に上書きした。

 一回へし折って以来、セレーネはとことん素直だ。
 アブラアムでさえ心配になるくらい素直だ。

 それも可愛いと俺は思った。

「そだ。ありがとうねショウ。メリナ公爵のこと。大変だった?」
「そうでもない。教えられた場所にいって連中を助け出しただけだ。あのあとどうなった」
「うん! あー……えっと」

 勢いよくこたえたのだが、セレーネの勢いがみるみる内にしぼんでいく。

「ごめんショウ、聞いたけど忘れちゃった。アブラアム呼んでいい」
「ああ」

 俺は頷き、セレーネは遠くで待機してるメイドに手を振った。
 ついでに何かのジェスチャーをすると、メイドはこっちに来ることなくそのまま立ち去った。

 それでしばらく待ってると、アブラアムがやってきた。

「お呼びでしょうか殿下」
「うん。ショウがメリナ公爵の事を聞きたいんだって。話してあげて」
「御意」

 アブラアムは静かにうなずき、俺を剥いた。

「侯爵様のおかげで、メリナ公の使用人は解放されました。半数ほど元に戻ったそうです」
「半数?」
「どうやら一部はメリナ公を自ら見限ったとか。落ち目の貴族についていっても益はないと判断されたのでしょう」
「ふーん」

 そんな事になってたのか。

「それと似たような話でございますが――」

 アブラアムはセレーネに向き直って報告した。

「同じく三公摂政に関わったアンニス公爵の元で使用人の反乱が起こったそうです。一部の使用人が公爵の財産を略奪し、そのまま脱走したとか」
「えええ!? だ、大丈夫なの?」
「表向きには。アンニス公にとっても都合の悪い話ですから、しばらくすれば『なかったこと』になるかと」

 臭い物に蓋か。
(貴族らしい手口だ)

「じゃあ大丈夫なの?」
「はい、しばらくはこういった話が続きましょうが、王国が追求しない方針だと分かれば自然と鎮まります」
「うんわかった、じゃあそっちは今まで通り全部アブラアムに任せる。とにかく安定するのを最優先。それができるんならアブラアムの好きにしていいから」
「御意」

(くく、この娘はこういうタイプの為政者になったか)

 楽しげなエレノア、俺も見てて楽しい。
 方針だけ示してあとは全部部下に丸投げ。
 悪い意味じゃない、いい意味での丸投げ。
 セレーネはますます、いい女になってるみたいだ。

「でも使用人の反乱って怖いね。どうしたらそれ防げるのかな」
「簡単な話だ、使用人を減らせばいい」
「減らす?」
「そうだ。増やしすぎるから氾濫するヤツも紛れ込むんだ。俺みたいに信頼出来るメイドを一人にすればそんな事もおきない」
「そっか……」
「セレーネだって、部下がアブラアム一人なら反乱の心配はしないだろ」
「――っ! うん、そだね!」

 ハッとして、笑顔を浮かべるセレーネ。
 一方でアブラアムは困り切った顔をした。

「そだね、じゃありません。殿下、それは違います。侯爵様も変な事を吹き込まないで下さい」
「え? でもショウが言ったことだよ?」
「それは侯爵様だからです。一人の部下でもまわせるのは侯爵様だけなのです。殿下に侯爵様と同じ事ができるとお思いですか?」
「それは無理!」

 セレーネはきっぱりと言い放った。そこできっぱり言い切っちゃうのもどうかって思うんだが。

「申し訳ありません、言い過ぎです。罰はいかようにも」
「ううん、アブラアムの言うとおり。あたしはショウじゃないから無理なのはその通りだもん」
「はっ……」
「でもさ、それじゃあたしはどうすればいいの? やっぱり反乱はまずいって思うんだ……前やられたし」
「信賞必罰がよろしいかと」
「信賞必罰?」
「はい、しかも厳密に。功績を立てたものに恩賞を、罪を犯したものには罰を。それをきっちり、一つの例外もなく行うのです」
「それをやればいいの?」
「はい、そうすれば臣下は殿下についていきます、恐れながらもついていくかと」
「そっか……じゃあそうしよう」
「……一つアドバイスしてやる」

 セレーネとアブラアムの言うことを黙って聞いていた俺は口を挟んだ。
 前と違って他人の意見を受け入れるようになったセレーネ、それはいいことだが、信賞必罰をする時に不安材料になり得る。

 だから俺は口を挟んだ、それを消そうとした。

「なに?」

 セレーネはわくわくした目で俺を見た。

「例外を一つだけつけたほうがいい、がっちがっちなのはまずい。お前も緊張しっぱなしだとつかれやすいだろ」
「うん、そだね。例外ってどんな?」

 聞くセレーネ、その横でアブラアムが訝しげな目をしていた。
 心配するな、悪いようにはしない。

「俺の言葉だ」
「ショウの?」
「そうだ、俺が許せっていったヤツは許す、罰しろって言ったやつは罰する」
「ふむふむ、ショウの言葉が例外だね」
「そうだ。逆に――」

 俺はまっすぐ、セレーネを見つめていった。

「俺以外の誰が言ってきても無視していい。アブラアムがいった『功績を立てたものに恩賞を、罪を犯したものには罰を』を実行しろ」
「わかった、そうする!」

 俺の言葉になんら疑いを持たず、受け入れるセレーネ。
 やっぱり言って良かった。

 この先信賞必罰を推敲する上で、いやでも「例外」を求める連中が出るだろう。
 それを今のセレーネは受け入れかねない、自分の無力さを痛感し、他人の言葉を受け入れはじめたセレーネならそうなりかねない。

 そうならないために、俺の言葉を打ち込んだ。
 セレーネにとって「絶対」である俺の言葉を。

 例外を求められても、「例外はショウだけ」と彼女ははねのけることが出来る。
 そのための例外だ。

 セレーネはそこまで理解してない、しかしアブラアムは理解した。

「さすがですね」
「え? 何?」
「侯爵様はさすがって申し上げたのです」
「うん! だってショウだもん」

 アブラアムにそう言われたセレーネは、この日一番の可愛い笑顔をした。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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