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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

ミウ編

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248.セレーネのお願い

 アイギナ王国、首都レティム。

 セレーネの呼び出しに応じた俺は「夏の宮殿」と呼ばれるここにやってきて、長くて荘厳な雰囲気漂う廊下をある男に案内されていた。

 アブラアム。
 アイギナ王国侯爵、王師アブラアム。

 かつてはセレーネの教育係であり、メリナの変の際「理は相手にある」と一度は敵対した男だ。
 メリナを片付けた後、セレーネの元に戻った。

「セレーネとは上手くやれてるか」
「はい。王女殿下は以前とはまるで別人で、いささか戸惑っておりますが」
「そうか」
「しかし好ましい変化でもあります。全てはユウキ侯爵のおかげです」
「俺は好きなようなやっただけだ」

 セレーネはいい女になる可能性があった、だから手を貸した。
 実際、前のわがままセレーネを一度は見限るところまで行ってる。
 今のセレーネがあるのはタイミングがよかっただけだ。

「……」

 案内をするアブラアムが黙った、逡巡してる気配が伝わってくる。

「セレーネの変化に戸惑ってるか」
「正直を言えば」

 頷くアブラアム。

「一度は反旗を翻した私です、それをなんのおとがめもなしにというのは」
「それが今のセレーネだ」

 俺は即答した。

「よくは知らんが、王師ってのは王族の教育係で、それに相応しい人間が選ばれるんだろう?」
「名誉職という側面も強いです」

 アブラアムの謙遜だ、もちろん真に受けない。

「それだけの能力があれば今のセレーネからすれば尊敬にたる相手だ」
「正直今の王女殿下は恐ろしいです。何を進言しても理にさえかなえば受け入れてくださる。あまりにも純粋、あまりにも無色にして透明。詭弁を弄せば私でも国を乗っ取れてしまえるのではないかと危惧するほどに」

 なるほど。
 確かに今のセレーネはそういうところがある。
 自分の能力が低いことを自覚して、臣下をはじめ様々な人間のアドバイスをよく聞くようになってる。
 聞き過ぎるくらい聞いてる。

 それをアブラアムが心配してるって訳だ。

「安心しろ、そうはならん」
「何故でしょう」

 横からうかがうような目を向けてくるアブラアム。
 俺はにやりと口の端をゆがめて、答えた。

「セレーネは俺の女だ。俺の女を言いくるめて悪さするヤツを俺が許すと思うか?」
「……なるほど」

 眉をひそめるアブラアム、納得したんだかしてないんだか。
 まあ、どっちでもいい。
 こいつが納得するかどうかはどうでもいい事だ。

 セレーネは俺の女、俺の女に悪さをするヤツは全員排除する。
 宣言した通りの事をするだけだ。

 そうしてる内に部屋についた。
 謁見の間ではない、夏の宮殿31ある内の部屋の一つ。
 中に入るとセレーネがいた。

「ショウ!」

 俺を見たセレーネは、彼女特有の呼び方をしながら小走りでやってきた。

「ありがとうショウ、来てくれて」
「いい女にしてたか?」
「それは分からないけど、先生達の言うとおり勉強してる」
「そうか」

 先生達、というのは俺の他の女達の事だ。
 ヘレネー、リカ、デルフィナ、ナナ、オルティア……。

 様々な女達を投入して、セレーネにものを教えてる。
 世界一豪華な家庭教師陣だ。

「で、俺を呼んだのは何でだ?」
「うん。実はショウにお願いしたいことがあるんだ。アブラアム、なんだっけ」

 セレーネは悪びれもなくアブラアムに聞いた。

「へえ」
(ふむ、着々と王者の風格が出ているではないか)

 今まで黙っていたエレノアも感心した。
 トップに立つ者のタイプとして、自身は無能で何も出来なくても、適切に部下に仕事を振り分ける事さえ出来ればいいというのがある。
 セレーネはそのタイプに近づきつつあるみたいだ。

 アブラアムはまた困った顔をした。
 昔も今もセレーネが「知らない」という一点においては同じだが、その内容が大きく変化している。
 その事に困惑してるのがありありと見えた。

 俺がその事に気づいたアブラアムはごほんと咳払いして、説明をはじめた。

「三公摂政が終った後、公爵様がたから権力を返上していただけました。表向きは何もかも上手く収まったのですが、政治において公爵達が政争にまけた、と見る向きも少なくありません」
「実際そうだしな。まあセレーネがそうするわけには行かないだろうが」

 頷くアブラアム、その横でセレーネが首をかしげた。

「なんであたしはダメなの? 教えてショウ」

 素直に、そして無邪気に質問するセレーネ。純粋に理由が知りたいように聞こえる。

「三公摂政は正当なもんなんだろ? でお前が返り咲いたのも正当な理由でだ。正当と正当、そこに勝ち負けをつけない方が全部上手く収まるんだ」
「へえ、なるほど」
「ですが下の者はそうは捕らえません。公爵達はセレーネ殿下との政争に敗れた、近くお取り潰しもある、という噂まででている始末。無論否定し、そのような事はないという事を行動でも示してみせているのですが……」
「誰かが水に落ちた犬でも打ったか」

 アブラアムは更に頷く、セレーネはほえ……と感心する。

「すごいねショウ、それ聞いただけでわかっちゃうんだ」
「まあな。ついでにいうとそいつらの狙いも分かるぞ」
「それ聞いた、なんだっけアブラアム」

 聞いたのにすぐに忘れて、そしてあっけらかんとアブラアムに聞くセレーネ。

「殿下に取り入るためです」
「そうそう、そうだった。ごめんねアブラアム、ありがとう」

 その直後に謝罪と謝礼を同時に使うセレーネにアブラアムはまたしても困惑した。
 いい加減慣れろ、と思った。

「つまりあいつらはもう負けたヤツだ、しかも流れ的にセレーネお前の怒りを買ってるって思われてる。実際最初にやられたときは怒っただろ?」
「もう、あの頃の事は思い出させないで」

 セレーネは唇を尖らせて拗ね顔になった。

「で、お前の敵で落ち目だから、そいつらを叩いて『やってやりましたよ王女様』って尻尾を振ってくる連中が出てきたってことだ」
「すごいショウ、ショウの説明で全部分かった」
「アブラアムだって同じ説明しただろうに」
「アブラアムの説明はかたくてわかりにくいの……ごめんねアブラアム、悪いって意味じゃないんだよ。ただ難しいだけで」
「いえ」
「で、具体的に誰が何をしたんだ?」

 話を戻して、アブラアムに聞く。

「メリナ公爵の領地にいる役人が公爵閣下の使用人を駆逐したようです。貴族にはそのくらいに応じて持てる使用人の数が法的に定められております。もっとも有名無実化しておりますが」
「そりゃな、エライって思ってる人間があの手この手で奴隷やら使用人やら増やすだろうさ。数が多い方が見栄張れるんだろう」

 頷くアブラアム。

 大体の話は分かった。
 つまり今まで公爵である故に見逃してもらってた超法規的な処置が、今に来て思いっきり厳格に執行された訳だ。
 しかも狙い撃ちされて。

「粛清を行うと混乱する、少なくとも三人の公爵が存命中はしてはならない」

 セレーネがいう、雰囲気のある口調で。

(くく、アブラアムの言葉そのままだな)
 だろうな。

「でもしてしまった以上、それもまた理があるから王国はおおっぴらに手出し出来ない」
「そこで俺って訳だ。王国の中枢じゃない、だけどセレーネの意思を汲んでるのがはっきりしてる人間のお出ましって訳だな」
「うん」
「公爵の元から追い出された使用人は別の奴隷商人の元に運ばれてます。このまま行けば全員が10クレの奴隷として売られてしまいます」
「メンツも丸つぶれだな」

 自分の使用人が無理矢理取り上げられて全員10クレの捨て値で売られる……うーん、エグいな、プライド高い貴族に効くぞ。

「お願いショウ、何とかして」
「引き受けた」
「本当!? いいのショウ」
「そのかわり今夜は付き合え」

 そう言ってセレーネを抱き寄せた。耳元で「いい女になったな」とささやく。
 セレーネは俺の腕の中で恥ずかしそうに頬を染めて、うつむいてしまう。

「だめショウ、アブラアムがみてる」
「もういないぞ」
「え? 本当だもういない」

 いつの間にかアブラアムはいなくなってた。
 こうなるって分かってたなあいつ。

 まあ、いいさ。
 なんの問題もない。

 進言を受け入れ、ベストな手段をとれるほど成長したセレーネ。
 そのセレーネを俺が可愛がる分には、なんの問題もないさ。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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