挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

ミウ編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

246/288

245.ミウのわがまま

 ミウに「人形使い」のスキルを与えて、一晩が経った。

 リカとデルフィナを送り返した後も、コーラリアは屋敷に残って、ミウのそばで見習いとして働き回っていた。
 前の日に比べて徐々に慣れてきた感じはするが、それでもまだまだ、ミウの働きっぷりに圧倒され、引っ張り回されてる感じだ。

 俺は朝からリビングでくつろいで、その様子を見守っていた。

 今、そのミウとコーラリアがリビングにいる。
 ミウのアドバイスで、コーラリアが調度品の掃除をしている。

 少し教えただけですぐに覚えて、コツまで理解するコーラリアの姿を見ていた。

「リカとデルフィナが気に入るのも分かる」
(ほう?)

 二人に向けた台詞ではない、エレノアに話しかけたものだ。
 ミウとコーラリアの邪魔にならないと、ほとんどささやきで話しかけた。

「ミウに振り回されてるけど、性格は素直の上に物覚えもいい」
(セレーネ姫と似ているな)
「セレーネは一点突破の才能だが、コーラリアは文官タイプでまんべんなく覚えがいい。違いはそこだけだな」
(リカ女王の秘蔵っ子なら、いずれ貴様の毒牙にもかかるのだろうな)

 エレノアは楽しげに言った。この物言いが実にエレノアらしい。

「ああ、楽しみだ」
(いつ毒牙にかける)
「リカたち次第だ、あっちにも理想のプランがあるんだろ。それにあわせるさ」
(二人の命がないまま無理矢理あの娘を手籠めにするのも悪くないだろう? 罪悪感を感じさせるまま貴様のものにする)
「楽しんでるなお前」
(いやいや。そんな後ろめたさの後赦しを得て、更に貴様に惚れ込みでもすればその落差でよりメロメロというものだ)
「なるほど、それもいいかもしれないな」
(だろう?)
「そういう話をする時ににやにやするのをやめればな」

 過去の世界でエレノアと顔をつきあわせて、肌まで重ねたせいか。
 もとは頭の中でエレノアの声が聞こえるだけだったのが、最近は完全に脳裏にエレノアの顔が浮かんで会話をする様になった。
 今のやりとりも、楽しんでる語気に合わせて、脳内でエレノアがにやにやしているのが再生される。

 楽しんでるが、悪意は感じられない。
 俺の気のせいかもしれないが、あれ(、、)以来エレノアは前にも増して丸くなった気がする。

 いや、オンオフの落差が激しくなった、っていうべきか。

 戦っている時――魔剣エレノアとしての存在感を求められる時は以前よりも強い力を発揮し、威圧感や存在感も増した。

 しかしこういう日常のシーンでは毒は残っているがかなり穏やかになってる。
 イタズラや意地悪の範疇に収まっている。

 その落差の大きさも魅力的だ。この状態のエレノアをもう一度抱いてみたい、という気分にさせられる。

(しかしめずらしいな)
「うん?」
(ミウが手を動かさずにいる姿はほとんど初めてなのではないか? 貴様にモフられている以外では)
「ああ」

 エレノアの言うとおり、ミウは今ほとんど手を動かしていない。
 隣からコーラリアにアドバイスするだけにとどまっていて、全部をコーラリアにやらせている。

「あれは俺に見せてるんだ」
(やはりそうか)
「お前も気づいたか」
(我をもうろく婆扱いするな。あの小娘の動きと表情を全て貴様に見える様にさりげなく位置調整しているのだろう?)
「ああ、コーラリアが俺にアピール出来る様にしてる」
(商人の才覚もあるのかもしれんな。商品を見せるのが実に上手い)
「かもしれないな」

 俺のメイドになって長いミウは、当然のように俺の女達の性質を知り尽くしている。
 リカの「薔薇の園」、俺に差し出すために作ったハーレムの事も知っていて、コーラリアがそれの候補だと言うことも理解している。
 それを分かってるから、コーラリアの働きを俺に見える様に仕向けてるんだ。

 ミウの気遣いを無駄にするのもなんだし、俺はくつろぎつつもコーラリアの働きを見守った。

 ガチャ、ドアが開く。
 リビングの外からミウが(、、、)トレイを持って入って来た。
 トレイの上に茶と茶菓子が一式載せられてて、それを持って俺のそばに来た。
 テーブルの上にあるさめたティーカップと、新しいティーカップを替える。

「新しいお茶ですご主人様」
「『人形使い』はもう慣れたか?」
「なんとか……もっともっと上手く使いこなしたいです」
「今でも上手く使いこなしてるだろ?」

 そう言って、コーラリアを指導するミウとお茶を交換したミウに見た。

 見た目ではどっちがオリジナルで、どっちがスキル「人形使い」で操縦している人形なのか区別がつかなかった。
 それくらい人形の動きが完全に人間っぽく、ミウっぽくなってる。

 777倍の聴覚で心音を確認してようやく、どっちがミウなのか分か――。

「どっちも人形だと?」
「え?」
「ミウ、ここにいるお前たちは両方人形なのか?」

 驚いてミウに聞いた。
 耳を澄ませて、神経を集中させて見て分かった。
 この部屋で心音がするのは俺とコーラリアの二人だけ。

 コーラリアを指導してるミウも、今俺のそばで茶を交換してるミウも。
 どっちも心音がしない人形だ。

「はい、ご主人様がいいっておっしゃったので、早速もう一体人形を作ってもらいました」
「一晩でか?」
「デルフィナ様すごいです」
「いやそうじゃなくて」

 ミウを凝視した。
 一晩でか? というのはミウに対してだ。

 人形使いのスキルを俺がお試しで使ったからよく分かる、あれを複数同時にそうするのはそれなりに骨が折れる。
 なのに、たった一晩でミウは二体を完璧に人と同じ動きで操作できるようになった。

「よく二体も操作できたな」
「昨夜練習しました。あの……」
「うん?」
「ダメだった、ですか?」

 ミウはまるでしかられた子供の様に、上目遣いでおそるおそる俺を見る。

「デルフィナ様にもっと人形をお願いしましたけど、ダメなら取り消してもらいます」
「もっと人形を? 何体だ?」
「その……あの……」

 ミウは俺の顔色をうかがいながら答えた。

「あと二体、です」
「全部で四体か」
「はい。本物のわたし合わせて、五人になればいいなって」
「もう四体も動かせるのか?」
「それはまだです……でも頑張って、すぐに出来る様にします」
「……何でだ?」
「え?」
「ミウはそのスキルをものすごい勢いでマスターしようとしてるな、何でだ?」
「えっと……ご主人様からいただいたものですから」
「それだけか?」

 聞くと、ミウは困った様に眉をひそめた。

「それだけ、ですけど……」

 困惑するミウ。
 俺たちのやりとりに気付いて、コーラリアはチラチラこっちを見てくるが、向こうのミウにたしなめられて仕事に戻った。

 俺はこっちのミウを更に見つめて、言う。

「俺の経験上、急いで何かを上達したがる人間は何か強い理由があるものだ。セレーネとかな」
「強い理由」
「譲れない何か、って言い換えてもいい」
「譲れない何か……あっ」

 急に「ハッ」って顔をしたミウ。
 今まで自分でも気づいてなかったものが、言われてようやく気づいたって感じだ。

「気づいてなかったのか。で、それはなんだ」
「……」
「ミウ?」

 黙り込んでしまったミウ――かと思いきや、こっちのミウと向こうのミウが同時に倒れた。
 文字通り、糸の切れた人形のように倒れてしまった。

「ミウ? どうしたのミウ?」

 コーラリアも驚いてる、動かなくなった人形のミウの肩を揺らす。

「カケル様!」
「問題ない、これは人形だ。お前はそのままでいろ」
「は、はい」

 戸惑うコーラリアを置いてリビングを飛び出す。
 聴覚を最大にする、屋敷の奥にミウの音が聞こえる。

 早足で向かっていく、するとかつてタニアがいた、普段使われない部屋の前にミウがへたり込んでいるのが見えた。

 そばに掃除道具が転がっている、人形二体を操縦しつつ今まで掃除もしていたようだ。
 ますますすごいって思った。

 そんなミウは、地面にへたり込んだまま顔を押さえている。
 顔がいつになく赤い。

「ミウ、どうしたんだ?」
「ご主人様――ごめんなさい」

 ミウに声を掛けると、彼女は起き上がって逃げだそうとした。
 もちろん逃がさない、手を掴んで抱き寄せる。

 ダンスをする様な体勢で、抱き寄せて密着し、ミウの真っ赤になった顔をのぞき込む。

「逃げるなミウ」
「はぅ……」
「何かに気づいたんだろ?」
「はい……でも、こんなのダメです」
「何がためなんだ? 言ってみろ」

 ミウはプルプル首を振った、うつむき加減の顔、まなじりにほんのりと涙がにじんでいる。

「ミウ」

 俺は優しく、しかし有無を言わさない口調で名前を呼ぶ。

「言ってみろ。ダメな事かどうかはご主人様の俺が判断する」
「はぅ……わかりました」

 ミウは観念した。さっきまで隙あらば逃げだそうとして体が強ばっていたのが、今は完全に脱力している。

「わたしがもっと人形を多く使える様になれば、メイドはいらなくなります」
「うん?」
「ご主人様のメイドが……増えなくも大丈夫、って、思った、です……」

 最後は消え入りそうな声だった、まるで罪を告解、懺悔するような口調だった。

 つまり、ミウが「人形使い」を少しでも早くマスターしたいのは。
 俺のメイドである事を独占したい気持ちの表れだったのか。

(面白いな、ハーレムの後輩に惜しげもなく指導する一方で、メイドという立場を独占したいとは)

 エレノアは楽しげに笑う。
 俺は――。

「ミウ」
「は、はい!」
「五人――四体の人形、いけそうか」
「――はい! が、頑張ります」
「将来的に五人では足りなくなるかも知れないぞ。その時はどうするんだ?」
「もっと頑張ります!」
「よし、なら頑張れ」

 そんなミウが可愛くて、そのまま膝の裏に手を回して抱き上げた。
 お姫様抱っこで、寝室に向かっていく。

「テストだミウ。今からミウを可愛がる、その間も人形で屋敷の仕事をしてみろ」
「――はい!」

 俺の言葉から自分のわがまま(、、、、)が許されたと理解したミウ。
 彼女は笑顔と、決意の表情をない交ぜにして。

 俺は、そんなミウが可愛くて、一直線に寝室に連れ込んでベッドの上に押し倒したのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ