挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

ミウ編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

245/288

244.一番大事なお仕事(ミウ・コーラリアside)

 カケルがデルフィナを連れて去った後、残されたコーラリアは改めてミウと向き合った。

「よろしくお願いします、ミウさん」
「そんな、私なんて呼び捨てでいいです」
「それはダメです。私はラマンリ様からミウさんをよく見て勉強しなさいって言われました。ミウさんは私の先生です」
「先生!? わ、私そんなにすごい人じゃないです」

 ミウはあたふたした。控えめな性格の彼女は、そんな立場に持ち上げられる事に慣れていない。

「それに私は奴隷ですから。女王様とデルフィナ様からお名前をいただいてるコーラリア様そんな風に呼ばれる様な人じゃないです」
「私も奴隷だったんだ」
「え?」

 更に驚くミウ。目を見開かせてコーラリアを凝視する。

「1クレ奴隷……って分かるかな」
「はい、何回も売られた奴隷の事ですよね」

 頷くコーラリア。
 彼女はかつて、別の商人に買われてその屋敷で働いていた奴隷だ。
 その商人が破産して、法的にもっとも安値の1クレ奴隷になったところ、彼女がほしいリカとデルフィナの目に止まった。
 今でこそ二人から名字をもらっているが、彼女もまた奴隷時代が長くその時の気分が抜けていない。

「私その1クレ奴隷だったんです、だから全然、様とかで呼ばれる様な人じゃないんだ。それに」
「それに?」
「同じ奴隷なら主の偉さで立場の上下が決まることもあるよね。私はリカ様とデルフィナ様の奴隷、ミウさんはカケル様の奴隷。ミウさんの方が立場が上ですよね」
「あぅ……」

 その事を否定出来ないミウだった。
 自分はともかく、自分達の主の事を持ち出されては否定出来ないのがミウである。
 彼女はカケルを尊敬し、心底敬愛している。
 例えどんな事情でどんな話の流れだろうと、カケルを否定する事を彼女は出来ない。

 それが、自分をへりくだる性格と矛盾を引き起こしていた。

 ミウは性格上ひたすらへりくだるだけだが、コーラリアは違う。
 リカとデルフィナの英才教育によって、彼女は場をわきまえた振る舞いが出来る。
 方便も使い分ける事ができる。

「……それじゃ、お互い呼び捨てでどうですか? 同じ奴隷同士ですし」
「は、はい! それなら」
「よろしく、ミウ」
「よろしくお願いします、こ、コーラリア」

 それでもまだ少しつっかえるミウ。
 コーラリアは少し疑問に思った。

 デルフィナに言われた事、ここにつれて来られたこと。

 ミウに何を学べばいいというのだろうか。
 大恩あるデルフィアを否定する訳ではないが、コーラリアは少しだけ、ここに来た事に疑問を持ち始めた。

     ☆

 ミウの仕事は、メイドとしてはきわめてオーソドックスなものだった。
 屋敷の清掃、布ものの洗濯、食事の用意。
 どれ一つとっても変哲のないものだ。

 それを手伝ったコーラリアの疑問はますます深まる。
 それを一つ一つ丁寧にやって、かつ(普段は)一人で回しているのはすごいといえばすごいが、この屋敷はそれほど住人はいなく、その気になれば自分でも出来るとコーラリアは思う。

 ならば、なぜ?

「あ」

 洗濯物を干していた途中で急に屋敷の方を見て、動きが止まったミウ。

「どうしたのミウ」
「お客様です」
「お客様?」
「出迎えます」

 ミウが手元の仕事を置いて、屋敷の中に戻っていく。
 玄関に戻ってくると、ノッカーを叩いてる音が聞こえてきた。

 ミウは重厚な扉を開けた。そこに一人、身なりのいい糸目の男が立っていた。

「失礼。わたくしイオセフ・ミキス。ユウキ様にお目通りをお願いしたく参上いたしました」

 人のよさそうな笑顔を浮かべて、慇懃な態度をする男。

「こちらがアイギナ王国、総理王大臣殿下の紹介状でございます」

 といって、仰々しい印章で封をしている封筒を差し出した。
 アイギナ王国の総理王大臣といえば、現在は第一王女セレーネが兼任している王国のトップだ。

 リカのそばにいるのでコーラリアは知っている、セレーネもカケルの女の一人なのだと。
 そのセレーネに紹介状を書いて貰ってまでやってきた客だ、ただ者ではないとコーラリアは思った。
 しかしカケルはいない、さてどうする。

「わかりました、こちらへどうぞ」
「え?」

 驚くコーラリア、彼女をよそにミウは封筒を受け取らず、男を屋敷にあげた。
 そのまま男を応接間に――デルフィナの時とは違う応接間に案内した。

 そして「少々お待ちください」といって、応接間をでた。

「あげてよかったのミウ、カケル様はいないのに」
「ご主人様なら戻ってますです」
「え?」
「リカ様もデルフィナ様もご一緒ですよ」
「うそ、どうして分かるの?」
「屋敷の中に誰がいるのかすぐにわかります。ひかり様もお戻りになってオリビアちゃんと一緒にお風呂入ってます」

 歩きながら、あまりにも当たり前のように話すミウにコーラリアは驚いた。
 そんな事まで把握しているのかと戦慄すら覚える。

 いやしかし、メイドというのはそれが理想なのかも知れない。
 主の在不在のみならず、屋敷に誰がいるのかを把握出来るのは屋敷を預かるメイドとして基本だ。

 コーラリアは少しだけ、デルフィナのいう事がわかった気がした。

「でもそれだとますますあげてよかったの? だってカケル様と女王様とラマンリ様がいるって事は、つまりそういうことですよね」
「うん、でもちょっと危ない人だから」
「危ない人?」
「多分ご主人様の敵」
「敵!?」

 言い切ったミウ、コーラリアは更に驚愕する。
 あの人のよさそうな男が? しかもセレーネの紹介状まで持ってきた相手が敵?

 なんでそう判断したの? と聞こうとしたらもうカケルの部屋の前についていた。
 ミウは部屋の前に立ち止まって、ノックをする事なくつぶやいた。
 ものすごい小声で、隣にいるコーラリアでさえぎりぎりでしか聞き取れない様な小声で。

「お客様ですご主人様、さっきと違う方の部屋にご案内しました」

 そう言ってしばらくして、カケルが出てきた。

 カケルはすぐにドアを閉めて、ミウに聞く。

「あっちの部屋か」
「はい」
「分かった。よくやった」

 カケルはそう言ってミウをねぎらい、つかつかと歩いて行く。
 それを見送った後、コーラリアはミウに聞いた。

「ねえ、さっきのって何?ミウもカケル様も、違う部屋って強調してなかった?」
「ご主人様のお客さんが来たときに使う応接間が二つあります、敵さんとそうじゃない人とで分けてます」
「そういう風に分けてるの?」
「他の人に言わないでくださいね。本当はご主人様以外の人がしっちゃうとよくないから」
「う、うん。言わない」

 コーラリアは頷いた。
 理由は分かる、さっき入ったとき、前の応接間とまったく同じ作りである事を確認している。
 敵を案内する部屋も、そうじゃない相手を案内する部屋も作りは同じ。相手にそれを分からせない工夫だ。
 これをやってる事自体ばれると意味がなくなる。

 コーラリアは絶対に口外しない、と深く誓ったとともに。
 そんな事までやっていたのか、とミウを少しだけ見直していた。

     ☆

 ミウの仕事は終わらなかった。
 カケルと客に茶を出したあと、洗濯物干しの残りをやって、庭の手入れもした。
 更に別館というカケルの私兵が使っている建物の清掃もして、そのもの達の食事もつくった。

 庭の手入れをはじめた時点でコーラリアはミウを完全に認めていた。
 それは本来庭師の仕事であり、メイドがする事ではない。
 しかしミウは実に手慣れたようで庭を手入れしていた。
 貴族としての屋敷はもちろん、宮殿の庭にもひけを取らない位美しく保っていた庭はミウがやっていたのだ。

 そして私兵が使ってる建物にまで手を加えたときには戦慄すら覚えた。
 私兵ということもあって、そこはまるで兵舎の様な作りだ。
 200人もいるそこの清掃、さらには食事まで作った。
 それをほとんど一人でやってのけた。

 加速度的に増えていく仕事、手伝っただけのコーラリアでさえくたくたになったのだが、ミウはどこ吹く風で、涼しい顔でこなした。

 屋敷と別館。全部の仕事をミウは一人でこなした。

 コーラリアは驚愕、戦慄した。
 同時に納得もした、デルフィナが自分をここに置いた理由がようやく分かった。

 わかったが、出来る気はしない。
 こんな超人メイドと同じ事ができる気が全くしないコーラリアである。

 別館での仕事が終わって、完全に日が暮れた。
 屋敷に戻ってきたミウはおもむろにいった。

「お疲れ様コーラリア、コーラリアのお部屋に案内しますね」
「お仕事終わりなんですね」

 サスガに、って言葉を呑み込んだコーラリア。

「はい。あっ、私はまだいちばん大事な仕事が残ってますけど」
「え? そ、それもみせて」

 食いつくコーラリア。
 彼女は「ミウを見て勉強しろ」といわれてここにきているのだ。
 いちばん大事な仕事が残ってると聞いて、このまま休めるはずがない。

「見るんですか? コーラリア」
「うん! 見せて!」
「はい……」

 別にいいけど、って顔をするミウ。
 一番大事な仕事、それはなんだろうか。
 コーラリアはドキドキ半分、わくわく半分の気持ちでミウについていった。
 屋敷の中を進み、ミウの部屋にやってくる。
 部屋の中に入ったミウはまず着替えた。
 丸一日仕事をして汚れたメイド服を脱いで、綺麗なメイド服に着替えた。
 そのまま椅子に座り、ふかふかの尻尾にクシをとおしていく。
 尻尾をとかしていく、毛並みを整えていく。
 大事に、丁寧に。

「ね、ねえ。大事な仕事って……それ」
「うん。ご主人様にもふもふしてもらえるようにしておくの」
「もふもふ?」
「ご主人様、もふもふするのがお好きだから」
「それが一番大事なお仕事?」
「一番大事なお仕事ですよ」

 ミウは真顔で言った、冗談を言ってる訳でも、嘘を言ってるわけでもない。
 本当に大事なお仕事だと思っていってる顔だ。

 コーラリアは困った、本当にそうなのかと眉をひそめた。

「あっ、ご主人様がお呼びです」
「え? 私には聞こえないけど」
「耳はちょっといいんです」

 ミウはそう言った、なるほど獣人だからかとコーラリアは納得した。

 ミウはペースを上げた。急いで、しかし更に丁寧に。
 尻尾の毛並みを整えた。

 そして部屋を出た、コーラリアは一緒について行った。
 やってきたのはリビング、そこにカケルが一人でいた。

「お呼びですかご主人様」
「おう。大事な用があるんだ」
「はい」
「ここでちょっと待ってろ、すぐに戻る」
「わかりました」

 カケルはそう言って、再び一瞬で姿を消した。
 ワープの羽根、というアイテムを使ったらしいとさっき聞いた。

「いなくなった……もふもふじゃなかったの?」
「ちがったみたいですね」
「え? 毎日もふもふするんじゃないの? この時間に」
「毎日じゃありません。ご主人様の気分次第でしないときもあります」
「き、気分次第なの?」

 驚くコーラリア。
 あれほど仕事の出来るミウが「いちばん大事な仕事」というのだから、てっきり毎日するものだと思っていた。
 それがそうじゃないといわれては驚くのも当然である。

 しばらくしてカケルが戻ってきた。
 いなくなったときと同じ、いきなりの出現だ。
 いなくなったときと違って、カケルは人形を持っていた。
 等身大の人形だ、まるでマネキンのような人形はミウそっくりだ。

 顔も体も、着ている服もまったく同じ。
 関節とかを可動にするギミックだけが人形である事を示している。

「さっき作らせた。お前にそっくりだろ」
「はい、そっくりです」
「これをお前にやる」
「はい」
「ついでにこれもだ」

 カケルはそう言ったが、ミウに何かをさしだすといったそぶりは見当たらなかった。
 ついでに、というのが何なのかコーラリアには分からなかった。

 が。

「あっ」
「いけるか?」
「はい、これで……いいのかな」

 おそるおそるといった感じでつぶやくミウ。
 直後、人形が動いた。
 カケルが持ちかえってきた人形が動き出したのだ。
 まるで、人間のように。

「ちゃんと動きましたご主人様」
「人形使いのスキルだ、それをお前にやる」
「いいんですか? 私なんかに」
「いいんだ。理由もちゃんとあるぞ。取り合えずお茶をいれてくれ、人形の方で。できるだけ」
「やってみます」

 頷くミウ。カケルの命令に、ミウ本人ではなくミウの人形が動き出した。

 リビングを出て厨房に向かう、命令通りお茶をいれるようだ。

「で、ミウはこっち」

 手招きするカケル、ミウは近づく。
 そのままミウを抱き寄せると、彼女をもふもふし出した。
 直前に整えた毛並みにもふもふする。

「これでもふもふしてる時もミウは仕事出来るだろ?」
「――はい!」
「あっ……」

 本当だ、とコーラリアは思った。
 それは今日一日一緒にいたなかで、いちばん嬉しそうなミウの笑顔。
 もふもふというのが本当に大事なことなのだと一発で分かる笑顔だ。

「だからこのスキルはミウがいちばんふさわしい、だろ」
「ありがとうございますご主人様!」
「人形を複数操れそうになったらデルフィナにいうといい、話はつけてある、人形はいくらでもつくってやる。屋敷は今まで通り、いやこれからも全部ミウに任せる」
「はい!」
「もふもふは本人だけだからな、人形でごまかすなよ」
「もちろんです!」

 軽快なやりとりをしつつ、もふもふをする主従。

 いちばん大事な仕事、主が望む事をして喜ばせる仕事。
 それでいて、与えられた役目をきっちり果たす。

 ここに連れてこられた意味を、少しだけわかりはじめたコーラリアだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ