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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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238.魔王との逢瀬

 次元の裂け目から飛び出すと、そこは雲の上だった。
 最初は放物線を描いていたのが、徐々に速度をつけて落下する。

「我を離せ、今なら――」

 まだそんな事をいうエレノアにテコピンした。
 ちゃんとした肉体があるから、魔剣の姿の時とは違った感触で面白い。
 エレノアは赤くなったおでこをさすりながら、キョトンと俺を見つめ返す。

「いいから俺から離れるな。お前の力もうほとんどないんだろ」
「うっ……」
「だからそのままにしてろ」
「……」

 エレノアは黙った。納得したのか、それとも諦めたのか。
 まあどっちでもいい、今は着陸が先だ。

 地面がグングン近づいてくる、速度もグングンあがる。
 オリビアの背中から跳び降りたときよりも十倍は高い高度からの落下は信じられないくらい速度が上がっていた。

 次元の裂け目から抜け出した時のダメージが残ってる、普通に着陸すると危険だ。
 少し考えて、持ってるエレノア――エレノアが出した魔剣を逆手に持ち替えた。
 ほとんど鉄の塊であるそいつを構えつつ、地面に到達する直前に思いっきり投げつけた。

 地面に、剣をやり投げの要領で投げつけた。
 全力で投げつけられた剣は地面に爆発を起こした。
 爆風が拡散し、俺たちの落下速度の大半をかき消していった。

 爆風の中ストン、と着地する。
 そのままエレノアをだいてごろんと倒れる。

 つかれて、いつになく。
 次元の裂け目を脱出するのに、未だかつてないくらいつかれた。

 エレノアをだいて空を見上げる。
 白い雲はゆっくりと流れていく中、エレノアは身じろぎ一つせず、俺の腕の中で大人しくしていた。

 しばらくして、そっと一言。

「守られたのは生まれて初めてのことだ……」
「そうなのか?」
「我が誰かに守られる様な女に見えるか?」
「見えないな。ついでに言うとお前誰かを守ったこともないだろ」
「正解だ。うむ、守るのも守られるのも、今までの我には無縁のことだ」

 エレノアはそこで一旦言葉を切った。
 気配から、言葉を選んでいるように感じたから、俺はまった。

「……悪くない」
「そうか」
「貴様に守られて胸が弾んだよ。締め付けられるようで、全身が何かに押しつぶされそうで……ああ」

 エレノアは自嘲気味にわらった。

「これが女のときめきというものなのだな」

 自分でそこに辿り着いたエレノア。
 知識では知ってる、故に初体験したそれでもすぐに辿り着いたんだろう。

「悪くない。人間になった気分だ」
「そうか」
「だが、我は守られたくない」

 語気が一変する。それまで感慨深そうに語っていたのが、いきなり何かを主張するような強い語気に変わった。
 そんな語気で言い放ちつつ、腕の中から抜け出して、俺の上に馬乗りになった。

 視界のほとんどを占めていた白い雲が秀麗な顔に入れ替わった。
 エレノアの端正な顔が、強烈な意思の籠もった表情で俺を見下ろしてくる。

「守られるのはまっぴらごめんだ」
「だと思った」
「何?」

 訝しむエレノア。
 俺は隣に突き刺さっている魔剣を取った。
 地面に寝そべった――エレノアにマウント取られた姿勢のままそれを投げる。

 真上に――空に向けて投げつけた。
 打ち上げ花火のように、うなりを上げて飛んでいく魔剣。やがてそれは崩壊を起こし、空中で朽ちてなくなった。
 エレノアが出した分身は、俺の全力に耐えきれず崩壊した。
 通常の剣でもそうだ。俺の全力を受け止めきれる武器はこの世界で二振りだけ。

 その片方が目の前のエレノアだ。

「あっちのお前もいつも言ってる、我を全力で使えってな。お前から『守り』って概念を感じたことは一度もない。ひかりの事もそうだ。お前は愛娘を守るところか、魔剣とはこうあるべしってあれこれ教え込んでる」
「当然だ、それが我なのだからな」

 エレノアの強気はそこまでだった。
 言葉が途切れた瞬間、彼女の瞳に迷いと、わずかな怯えが生まれた。

「男は……か弱い女が好きなのだろう?」
「お前にか弱いのは似合わない」
「えっ……?」
「守る必要はない、守られる必要もない。恐怖と殺戮の象徴、地上最凶の魔剣エレノア。そういうお前が一番美しい」
「本気で言っているのか?」
「嘘に見えるか?」

 エレノアはじっと俺の目をのぞき込んだ。
 目と目が見つめ合って、しばし。
 エレノアはゆっくりと首を振った。

「もう少し早く……貴様と会いたかったよ」
「だからきたんじゃないのか? 数百年後から、お前に会いに」
「そうか……数百年待てば貴様と巡り会える訳か。ふふ、そうだな、そのためにきたのだろうな貴様は。貴様が来なければ、我は自分ごとこの地上の全てを消し去っていたところだ」
「そうなってたかもな」

 肉体を手に入れた直後のエレノアはまがまがしかった。
 世の全てを憎み、破滅を押しつけずにはいられないってのが強く伝わってきた。
 多分、止めていなきゃ世界そのものを壊すまであばれ回ったんだろうな。

 それに比べて、今のエレノアは毒気が抜けたようにしおらしい。

「なあ、き、貴様は……」
「うん?」

 いきなり口籠もってどうした。
 エレノアは俺に馬乗りになったまま、顔を赤らめて何か言いにくそうにしている。

「こ、この肉体(なり)をどう思う。童女すぎて面白みに欠けるのならどうにかして――ひゃっ!」

 話すごとに声が小さくなっていくエレノアの手首を掴んで、体を入れ替えた。
 馬乗りにされていたのを逆に組み敷いた。
 そして――キスをする。

 組み敷いて唇で塞ぐ。

 エレノアは驚いて目を見開いた……のも一瞬だけ。
 すぐに目を閉じて、キスを受け入れた。

 キスをやめる、少し距離を取ってエレノアを見つめる。
 目を開けたエレノアは俺をじっと見つめた後、そっと目を閉じた。

 青空のした、俺はエレノアをだいて、女にした。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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