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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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235.最強vs最強

「見つけたぞ、魔剣の男」
「エレノア」

 俺の前に立つエレノアは生き生きしていた。
 人の姿のエレノアはくじ引き所で何度も見ているが、このエレノアはその時とはほぼ別人と言っていいくらい表情が違う。

 エレノアは基本シニカルな表情で、たまに皮肉っぽく笑ったり、まあひかりと接してるときはまなじりがあきらかに下がったりする。

 それに比べてこのエレノア、長い髪と黒いマントをなびかせるこのエレノアは生き生きしていた。
 口角は凶悪に片方もちあげられ、目つきも鋭くて、妖しい光を放っている。
 極悪人が裸足で逃げ出すほどの凶悪さに満ちた表情だが、その一方で生き生きしているように見えた。

「まさかそっちから襲ってくるとはな」
「ようやく体がなじんできたのでな。今日こそその二振り、渡してもらうぞ」
「悪いがわたさん、どっちもだ」
「なら力尽くで我のものにするまでよ!」

 カッ、と見開いたエレノアの目。右手を横一閃に振り向くと、死霊の軍勢が背後に現われた。

「ひかり!」
(うん!)

 あどけなく、しかし芯の通ったひかりの声。
 直後、こっちの後ろにドレイク兵が現われた。
 オーラでカモフラージュしていない、ひかりの竜が100匹。

「ほう、それがその魔剣の力か。やはり我と似ている、ますます気に入ったぞ」
(だっておかーさんのむすめだもん)

 まるでほめられたかのように嬉しそうに答えるひかり――当然向こうのエレノアには聞こえていない。

 死霊の軍勢が襲ってきた、それに触発されてドレイク兵も前に進んで迎え撃った。

 瞬間、エレノアの姿がきえた。
 蜃気楼の如く姿がぶれたあと、いきなり目の前に現われた。

 予想していた、剣を振って迎撃する。
 エレノアは剣を手刀で迎え撃った。
 ガキーン!
 金属音が弾き、山彦になって響き渡った。
 衝撃波がうまれ、間近で戦っていた死霊とドレイクをふっとばした。

「やるな、しかしこれならどうだ」
「むっ!」

 エレノアはすっ、と屈んだあと、横蹴りを放ってきた。
 とっさにガード出来たが、小柄の肉体から到底想像出来ないパワーでガードごと吹っ飛ばされた。

 二十メートルほど吹っ飛ばされて、空中で半回転して態勢を立て直す。

(くる!)

 脳内にエレノア警告が駆け抜けた。
 とっさに魔剣を360度全周囲に舞わせて、オーラも出してガードする。

 空から稲妻がふってきた。
 ただの稲妻ではなく、この世のありとあらゆる不吉さを孕んだ漆黒の稲妻だ。

 稲妻の衝撃は全身を突き抜けていった。体の芯を貫通していく重い重い一撃。

「くふっ」
(おとーさん! 口から血が!)
「大丈夫だ」
(まだやれるな?)
「もちろんだ」

 今度はこっちの番だ。
 魔剣を握り直し、オーラを纏って突進する。
 まずは無造作にひかりを振り下ろす。

「なんだそれは――むっ」

 あざ笑ってから何かを思い出したエレノアはとっさによけたが、もう遅かった。
 ひかりの一撃はエレノアの眼前に迫った。よけきれないエレノアは腕でガードした。

 漆黒のオーラがエレノアに付着した。
 俺はギアを一段階上げた、魔剣の二刀を舞うように乱舞した。
 ガガガガガガ――、魔剣がエレノアを斬りつけるたび、オーラが爆発して追加ダメージをあたえる。

「こざかしい技を! ふん!」

 エレノアは大ぶりの攻撃で俺を押しのけてから、気合一閃、漆黒のオーラを弾き飛ばした。
 この技を編み出してから初めて弾かれた。

(我と同質、そして純粋に我以上の力だからな)
「これは効かない、か」

 双方、再度突進して打ち合った。
 衝撃波が爆発する、まわりの地形をかえるほどの衝撃だ。
 全力をだして打ち合う。

 初めてだ、こんなパワーは。
 レッドドラゴン・オリビアさえも軽く凌駕する魔王エレノアの力。

 そのエレノアの底はいまだ見えない。
 打ち合うたびに少しずつ上がっていって、限界かと思えば次の打ち合いでさらにそれを上回る一撃を繰り出してくる。

 それが――。

「何がおかしい」

 エレノアはいきなり攻撃の手を止めて、俺から距離をとった。

「おかしい?」
「ニヤニヤしおって、我をバカにしているのか」
「ニヤニヤ……してたか?」

 ついひかりを地面に突き立て、左手で自分の顔を触ってみた。

(うん、おとーさん楽しそうだった)
(貴様にバトルジャンキーの属性がつくのかと思ったぞ)

 無邪気に喜ぶひかり、あきれかえったエレノア。
 そうか、おれニヤニヤしてたのか。
 まあ、当然だ。

「お前が生き生きしてたからな」
「なんだと?」
「お前が生き生きしてたからだよ。今のお前、好きだぞ」
「なっ――」

(わー、おとーさんとおかーさんラブラブだ)
(……我にも言ったことないのに)

 ひかりとエレノアはあのくじ引き所にいる、「変な家族団らん」の空気を出していた。
 一方で、魔王エレノアは怒りに肩をふるわせた。

「ふざけ……おって!」

 次の瞬間、一直線に突進してきた。
 背中がぞくっとした。かつてない程の力を感じる。

 エレノアをぎゅっと握り締めた。
 全力――100%中の100%を込めて、エレノアを振り下ろして迎え撃つ。

 ――――

 声までも消失した打ち合い、空間が陽炎の如くゆがみ、おれとエレノアは互いに弾き飛ばされた。

 空中で一回転して態勢を立て直して着陸、エレノアは「ふん!」と気合で空中に静止した。

 右手がしびれる、エレノアを握る手がプルプルと震えだした。
 怒りが爆発した一撃は、おれが異世界に来てから受けた中で最強の一撃だ。
 空間がゆがむほどのパワーだ。

「やっぱり、おまえ、いいな」
「なっ……めるな!」

 更に歯を剥いて、激怒しながら飛び込んでくる。
 ひかりで迎え撃つ――が直前でエレノアが揺らいで、変則的な軌道で俺の懐に潜り込んだ。
 そして、下からおれの首を掴む。

「とった」

 オーラが俺を包む、エレノアのオーラがだ。
 そのオーラは俺の中にはいってこようとする、が。

「なっ――ばかな! 我が支配できぬだと!?」
「そういうことだ。ああ、おれにお前の支配は通じない」
「馬鹿な、我が支配できない人間がこの世にいるはずがない」
「ここにいるんだ。そら」

 オーラの腕をだしてエレノアを掴んだ。

「何をする」
「今度は俺の番だ」

 オーラを出して、エレノアを包む。
 クシフォスの件、メルクーリ王の時に産みだしたあの技を使う。

 オーラがエレノアを完全に包んだ後、そこにいたのは。

「こ、これは……きちゃまなにをした!」
「俺の番っていった。お前がやったのを同じ事だ」
(ええいその技を使うな!)
(おかーさんかわいい)

 抗議をする俺の中のエレノア、そして楽しげなひかり。
 前にもエレノアを子供にしたことがあって、ひかり的にはあの時の事を思い出したんだろう。

「にゃめるな!」

 腕を振り下ろしてくるエレノア、ひかりでうちあう。
 小さくなってもパワーはまったく変わらなかった。

「ぬん!」

 そして浸食も続かなかった。
 全盛期のパワーをもつ魔王エレノアは、おれの浸食を気合で弾き飛ばした。

 つよい、やっぱり強いこのエレノア。
 おれが知ってる限り最強の相手だ。

 そのエレノアとうちあった、まわりの環境が変わるほどのパワーで打ち合った。
 エレノアは強かった、がおれの方が――魔剣の母娘をもっている俺のほうがわずかに上回った。

 打ち合いを続けて、徐々にエレノアを押していく。

 やがてエレノア()エレノア()が打ち合って、力がはっきりと弱ったのを感じ取って、掬うように彼女の腕をかち上げた。

 そして――ひかり。
 前はためらったひかりを――こんどは迷いなく振り下ろした。

 ザクッ!

 腕をあげてガードするエレノア、その腕ごと体を切った。

 空を舞うエレノア右腕、血しぶきのように上がる漆黒の闇。

「くっ……うぅ……」

 後ずさり、よろめくエレノア。

「……うおおぉぉ」

 怒号と共に、エレノアは無理矢理腕を再生し、切ったところをつないだ。
 体は一瞬で元通り、しかし服はさけ、額に脂汗を浮かべている。

 この瞬間完全におれがエレノアを上回った、勝負ありだ。
 それをエレノアも察したようだ。

「……殺せ」

 エレノアはドサっと地面に座り込み、達観した顔で天を仰いだ。
 俺はエレノアとひかりをおさめた。

「なに!? なぜ殺さない」
「お前を殺すなんていついった?」
「我は貴様を殺そうとしたのだぞ」
「俺はお前を殺さない。絶対に」
「コケにするか貴様!」
「……」

 おれは無言で首を振って、促した。
 つぎの瞬間、ひかりが魔剣から人に戻った。
 エレノアは絶句した、目の前の光景が信じられないって顔をする。

「魔剣が……人間に、だと?」
「おれの娘だ」
「ひかりです! えっと、はじめまして、かな。おかーさん」
「……娘、魔剣、人間……まて、今なんと言った」
「ひかりです」
「それじゃない、そのあとだ」
「はじめまして?」
「その後」
「おかーさん」
「何故我をそう呼ぶ」
「ひかりのおかーさんだから」
「ええいそれではわからん」

 エレノアは俺を睨んだ。貴様が説明しろ、って顔だ。

(ちゃんと説明してやれ)
「そうだな。その前に」

 おれはエレノアに近づき、手を差し伸べた。

「なんの真似だ」

 おれはひかりをちらっと見た。

「おれがお前を殺さない理由が分かっただろ? ゆっくり話そう、話は長くなる」
「……」

 エレノアはおれとひかり、そして俺の腰にあるもう一人のエレノアを順番にみた。
 表情に訝しみが残ったが、怒りや憎しみ、戦う意思などはすっぽりと消えた。

「……自分でたてる」

 それでも意地を張るエレノアは、おれが差し出した手を払った。
 まったくこいつは……いや、これでこそエレノアだな。

 と、おれが納得していると。

 ビシッ。
 俺のエレノアの間に何かがひび割れた音が聞こえた。
 何もなかったそこに裂け目ができて、そこから黒い何かが見えた。

 闇――。

 そんな言葉が頭に浮かんで、背中がゾクッとした。


「にげろ!」

 おれは叫んで、せめて二人だけでも逃がそうとしたが……解き既に遅し。

 ひび割れ――空間に出来た裂け目は急激に大きくなって、俺たちをまとめて呑み込んでしまったのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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