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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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233.特殊な好き

 夜、メルクーリ反乱軍の野営陣地。
 まだ「帝国に対しての反乱軍」であるそこは、3000の兵が夜を明かすためのテントがびっしり張られていた。

 その中で一際目立つのが魔法コテージ、くじ引きで引いた、どこにいても一戸建てレベルの暮らしができるチートアイテムだ。

 その寝室で、おれは二人のタニアを侍らせていた。
 左はメイド幽霊、エレノアの力を介して実体化させた元の時代のタニア。
 右はまだ素朴な村娘、この時代に生きる幽霊になる前のタニア。

 まったく同じ姿、しかし大分違う性格の二人を抱いた後、ベッドの上で寝そべっていた。

「もうすぐ……なんですね」
「ん? なにが」
「もうすぐ、カケルさんとのお別れなんですね」

 タニアが切なげにつぶやく。
 おれはくじ引きの賞品でこの時代にやってきた、素敵な冒険ペアチケットで、イオと共にやってきた。
 それが終わりに近づいてると、タニアもさすがに分かっているようだ。

 そんな風に切なくつぶやく姿が見たくなくて、軽口を言って彼女を慰めることにした。

「ところがどっこい、ここからかかるかもしれないぞ。もうちょっとだけつづくんじゃ、くらいに続くかもしれん」
「ううん、わかります。いえ、わかるようになりました」

 おれの腕に抱かれたまま、タニアは裸で身をよじらせ、強くしがみついてくる。

「イオさんから色々勉強して、カケルさんの事をずっと見てたらわかるようになりました、もうすぐなんだって。だってカケルさんがまけるはずないから」
『だね、カケル様があんなのに負けるはず――ひゃっ』
「どうしたタニア」
『いまなんかチクッとした』
「……エレノアだな。今のエレノアをあんなのっていうから」
『ごめんなさーい』

 謝る幽霊タニア、まあエレノアもちょっとしたじゃれ合いの様なもんだろう。
 あいつが本気を出せば、魔剣の使い魔になってるタニアなんて一瞬で消去されるからチクッとなんて程度で済むわけがない。

 やっぱり丸くなったな、エレノア。
 おっと、今はタニアだ。

「そうだな、もうすぐだな。この時代のあいつを斬ったら多分終わりだ」
「はい……でも寂しくありません」

 おれにしがみついてたのが、一転顔をあげて微笑んでくる。

「カケルさんとまた会えるのは分かってますから。ちょっとだけ我慢したらまた出会えて、それからずっと一緒にいられますよね」
「もちろんだ。おれはおれの女の手放さない」

 そう言って、彼女ではなく、幽霊タニアにキスをする。
 誓いと、予言をするかのように。

『あっ、エレノア様から伝言』
「え?」
『こいつの女好きはいささか特殊だが、その分安心しろ。だって』
「――はい!」

 まったく、エレノアめ余計な事をいう。
 が、それでタニアが嬉しそうな顔になってくれたんだ、文句はない。

「でも、未だに信じられない事が一つあります」
「なにが?」
「わたしがこうなることです」
『ふぇ?』
「だって性格が違いすぎるじゃないですか」
「うーん、それも確かに。まだ何かあるのかな」
『あるのかなあ』

 幽霊タニアも首をかしげる。
 タニアの冗談だと分かりつつも、それに乗って大げさに考え込むフリをしてくれたようだ。

 冗談を交わして、しばらくして。

「あの、カケルさん……」
「うん?」
「もう一回……してもらってもいいですか」

 タニアは右側からおれにしがみついたまま、上目遣いでおねだりをしてきた。
 まだ少し臆病で、控えめなおねだり。

「一回でいいのか?」
「その……あっ」

 チュッ、と軽いキスをして、更に目を見つめる。

「一回でいいのか?」
「い、いっぱい……カケルさんにいっぱいしてほしいです」
「いい子だ」

 誘導したとおりに本心を口にしたタニアに更にキス。

 最後の晩、俺はタニアを抱き続けた。

     ☆

 朝になって、タニアは魔法コテージの外にでた。
 カケルはコテージの中で寝ている。

 かれの腕の中の居心地はとてつもなくよかった、そのまま抱かれて、いっそ溶けてしまいたいくらい心地よかった。
 でもタニアは抜け出した。

 別れの時は近い、それを知っているタニアは甘えきってしまわないように、自らカケルの腕を抜け出した。

 東の空が白みはじめている、それを眺めつつ、タニアはそらんじるかのように静かにつぶやいた。

「つらく、苦しい、永劫のような地獄の苦しみがお主を待っている」

 占い師、アカンサに占われた内容だ。
 それは間違いなく、自分に訪れる未来。

「乗り越えよ。その先に一筋の光明がある。吉が一で凶が九。吉が一で凶が九だ」

 未来は向こうからやってきた、圧倒的な、苦難を全て打ち破るほどの圧倒的な力とともにやってきた。

「前半はあってる、後半は間違ってる」

 つぶやきは、カケルの言葉に変わった。

「吉が十で凶はゼロ。彼女の運命は決まってる」

 最後の言葉を口にした後、彼女はぎゅっ、と胸もとに手を合わせた。
 祈るような、大事なものを抱える様な仕草で。
 カケルの言葉を、予言された未来を胸に抱くように。

「うん、がんばろ」

 顔を上げた彼女は、朝日の中で微笑んでいた。
 本人は気づいていない、弱気な村娘はすでに、幽霊メイドの陽気さとしたたかさに近づきつつあるということを。

「うん、がんばろう」
「けっ」
「え?」

 いきなり男の声がして、タニアは驚いた。
 慌てて振り向くと、そこに一人の兵士がたっていた。

 夜番の兵士は見下すような、侮蔑の眼差しをタニアに投げつけてきた。

「な、なんですか」
「いい気なもんだな、戦争してる時に一人だけ女つれこんでいい思いをするなんてよ」
「……」
「オルティア様の推薦だとかいうけど、ああいうすましたヤローにかぎって大したことねえんだよ。どうせ混乱に混じって甘い汁を吸おうとする火事場泥棒だぜ」
「……さい」
「あん?」
「取り消してください!」

 拳をぎゅっと握り締め、兵士をにらみつけるタニア。

「おーおー、健気だなあてめえ。あたしの男をぶじょくするなー。ってか?」
「……っ、取り消してください、今の言葉を」
「取り消さなかったらどうするんだ、ああん!」

 兵士は持っている槍をタニアに突きつけた。
 喉先に突きつけた鈍色の切っ先は、かすかに彼女の肌にめり込んでいた。

 騒ぎを聞きつけて、他の兵士たちがやってくる。
 しかし誰も介入しようとはせず、遠巻きに事態を見守っている。

「とり……」

 タニアは切っ先を掴んだ、そして兵士を更に睨んだ。

「……消してください!」
「だから何だってんだ――」

 兵士は更に怒鳴って、ヤリを引いて突こうとしたが、ある事に気づいて顔を強ばらせた。

 ヤリが、氷っていた。
 タニアが掴んでいるところから氷って、切っ先も、柄も、ヤリそのものが氷っていた。

「ふ、ざけるなあああ売女があああ!」

 ヤリを捨てて、両手をがばっとあげてタニアに襲いかかる兵士。
 まわりから悲鳴と制止のこえが上がった。

「――っ」

 タニアは一歩も引かなかった、それどころか更に一歩踏み込んで、兵士に肉薄してから氷の魔法を放った。

 上がった腕は振り下ろされなかった、両腕が一瞬で氷らされてしまった。

「な、なんだ……これは!?」
「取り消してください、今すぐに!」

 三度、兵士を怒鳴りつけるタニア。
 事ここに至って、兵士はようやく自分がケンカを売った相手が悪かったことに気づき。

「わ、悪かった。取り消す、取り消すから勘弁してくれ」

 慌ててあやまり、許しを乞うたのだった。

     ☆

 テントのなかにはいると、そこに治療を受けている兵士の姿がみえた。
 両腕は凍傷にかかっていて、動かせないでいるも。

「くそ、あの女め。今度あったらただじゃおかねえ」
「いや、今度はない」
「はあ? なに言ってんだ――うっ」

 顔をあげた兵士は鬼でも見た様な顔をした。
 治療をしている別の男はサッと手を引いて、テントの端っこに逃げた。

(ふむ、危険察知能力はそこそこだな)

 からかうエレノアのセリフ、もちろん相づちをうつつもりはない。
 おれは、タニアを罵って、襲った兵士を冷ややかな目で見下ろしていた。

「な、なんだよ。おれ何もしてねえぞ。ていうかそう! こっちが被害者だよ、みろよこの腕――」
「……」

 無言でエレノアを振り抜いた。
 男の首が宙を舞い、遅れて鮮血を間欠泉のごとく吹きだした。

 おれは手当てしていた男に「始末しとけ」といい、そのままテントを出た。

(よく我慢したな)

 出るなり、エレノアのからかいの声が聞こえた。

 タニアと男の諍い、おれは一部始終聞いていた。
 タニアがおれの腕を離れた瞬間気づいていた、何をするのかと壁越しに見守っていたらあのいざこざがおきた。

 おれは最後まで介入しなかった。

(結局こうするのなら最初から貴様がきればよかったろうに)
「だから何度も言わせるな」

 ため息をつきつつ、エレノアにいう。

「おれの女がいい女になっていくのを止めてどうする」
(くく、難儀な性格だなあ。やはり貴様の女好きは特殊だ)

 頭の中で楽しげに笑うエレノア。
 どうとでもいえ。
 そのおかげで、タニアがいい女になっていくのが見れたんだからな。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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