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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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228.あの子にしてこの親あり

 トロイゼがおちた後、悠然と歩いて町に入った。
 あっちこっちから黒煙が上がっていて、建物が氷漬けにされてたりする。
 死傷者もそれなりに出ていて、生き残った兵や住民が怯える目でおれをみている。

 それを一通り眺めた後、不意にエレノアが言った。

(住民への被害は少ないようだな)
「空襲したイオたちがうまく狙ったんだろ、それに制圧の地上部隊がドレイク兵だけなのも大きい。普通の兵だとどれだけ徹底させても勝った後の略奪が起きるからな」
(うむ、ひかりとそのおともだち(、、、、、)がそうするはずがないからな)
「魔剣の母としては物足りないか?」
(率直に言えばそうだが、悪くはない)
「へえ?」
(みろ、あの辺に転がっている兵の死体。雷でも氷の魔法でもない)
「切り傷……地上部隊と戦ってやられたやつだな」
(敵を容赦なく屠っている、充分といえば充分だ)
「そうか」
(貴様とて、ひかりをそういう風に育てるつもりはなかろう?)
不殺(ころさず)のひかりってか? 確かにないな」

 ひかりは魔剣だ、魔剣には魔剣のいきかたがある。
 おれが躊躇した――母親であるエレノアを切らせたくない事さえ余計なお世話だったんが、戦闘で誰も切らせないというのは押しつけが過ぎる。

(くく、これが他の女であればここまでの忖度はまったくなかっただろうな)
「むぅ……」

 遠回しに親馬鹿って言われたけど、返す言葉がなかった。

「おとーさーん」

 遠くからひかりが小走りでやってきた。
 背後にドレイク兵数十名を従えて、ばたばたと走ってくる。

 トロイゼの街中、遠巻きに様子をうかがっている住民たちが怪訝そうな顔をしている。

「ただいまおとーさん」
「おかえり。よくやったな」

 戻ってきたひかりの頭を撫でてやった。

「えへへ……。おとーさんの言うとおり、降伏した兵士さんたちを一箇所にまとめたよ」
「そうか、そこにつれてってくれ」
「はーい」

 戦後処理に向かうのにはおよそふさわしくない、無邪気な声で応じるひかり。
 まわりの視線がますます不思議なものをみるものになった。

 そのひかりとドレイク兵に先導され、奥まった所にある広場にやってきた。
 兵はざっと五百人いて、ひとまとめにされている。

 パッと見た感じ無傷か軽傷までの人間だけがいて、そのまわりをさっき戻ってこなかった分のドレイク兵が監視していた。

 つかまっている兵をぐるっと見回して、一人、指揮官っぽい男を見つけた。
 歳は30くらいか? 顔や体に傷跡が数え切れないくらいある、いかにも歴戦の猛者って感じの男だ。

「お前が指揮官か?」
「トロイゼ守備隊副隊長のガブラスだ」
「副隊長?」

 もう一度兵士たちをみる、ガブラス以上に指揮官っぽい男はいなかった。

「隊長は? しんだのか?」
「死んではいない」
「じゃあどうした」
「それは――」
「こう言うことよ」

 ガブラスが答えようとしたらおれの背後からオリビアの声がした。
 振り向くと、彼女は一メートル四方の氷の塊を持っている。

 巨大なサイコロの様な固まりで、一人の男が下半身を氷らせている。
 上半身は外に露出しているが、ぐったりして氷の上に伏せている。

 人の姿のオリビアがそれを片手で持ってきて、その後ろにイオと二人のタニアがついている。
 氷を担いできたオリビアの登場に兵達がざわざわした。

「お待たせ人の子、こいつが氷ってたから運んできた」
「氷ってた?」
「矢避けの穴に下半身ごと氷ってたんだ。多分身を隠してた時に真上から幽霊の子の魔法が直撃したんだと思う」
「ああ」

 矢避けっていうのは初めて聞いたけど、推測するに遠くからの遠距離攻撃をよけるためのなにかだろう。そしてそれが真上の攻撃に対応出来るものじゃなくて、オリビアたちの空襲を受けてこの有様ってわけだ。

「生きてるのか?」
「うん、ぎりぎり」

「そうか――こいつが隊長なのか?」

 振り向き、ガブラスに聞く。
 歴戦の勇者っぽいガブラスは顔面蒼白になって、コクコクと頷いた。

「よし。オリビア、そいつを氷からだしてやれ。回復も頼む」
「わかったー」

 オリビアは軽いのりで応じると、口から火を噴いて氷を溶かした。
 タニアの魔法で作られた氷はあっという間に溶かされて、男は地面に倒れた。
 その後手をかざして魔法を使い、隊長のケガを直す。

 みるみる内に体力と顔色を取り戻した男はゆっくりと立ち上がった。

「なんのつもりだ」
「お前、名前は?」
「……ビフレスだ」
「ビフレスか。こっちの要求はただ一つ、お前と、お前の部下丸ごと降伏してこっちにつけ、それだけだ」
「ふざけるな、おれはロドトス様からこのトロイゼを預かった――」

 ビフレスは長剣を抜き放ち、怒鳴りながら斬りつけてきた。
 オーラで正体を隠したエレノアですれ違いざまの一閃、ビフレスを縦に真っ二つに切り捨てた。

 ビフレスは口でなにかもごもご言いながら、しかしはっきりとした言葉にならず、崩れ落ち絶命する。

 そいつの死体を一瞥して、ガブラスにむき直す。

「これで一番の上役は副隊長のお前になったな?」
「あ、ああ……」
「こっちの要求はただ一つ」

 一拍おいて、ちらっとビフレスの死体を一瞥して、まったく同じセリフを口にする。

「お前と、お前の部下丸ごと降伏してこっちにつけ、それだけだ」

 言われたガブラスは目を見開き驚愕した。
 しかしおれと、今し方切り捨てられたビフレスの死体を交互にみて、やがて意図を理解し、こくこくと頷いたのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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