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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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214.魔王エレノア(sideオルティア)

 帝都・イーリオン。
 地上でもっとも栄えていながらも、もっとも邪悪に包まれている場所である。

 王宮の華美にして広大な廊下を一人で進む。
 途中ですれ違った衛兵も女官も、誰一人彼女を止める事はない。

 オルティア、ロドトスの盟友。
 無官ながらも、実質帝国のナンバー2として認識されている女。

 そんな彼女は眉間に深いしわを作ったまま、謁見の前にやってきた。
 衛兵に目配せして、権力の象徴たる重厚な門を開け放たせ、中に入る。

 玉座に一人の青年がいた。
 この帝国の最高権力者にして、地上を統一に導いた皇帝。
 英雄・ロドトス。

 そんな英雄は一人の美女を抱きかかえていた。
 玉座にふんぞりかえってすわり、美女を膝の上に載せる。

 皇帝に美女、と来れば色事と相場は決まっているのだが、それは半分当たっていて、半分外れである。

 美女は嬌声を上げていた、この世のあらゆる快楽を受けているかのように、荘厳な謁見の間に声を響き渡らせた。
 ウブな少年少女がそれだけで赤面していたたまれなくて逃げ出すような、艶やかな声である。

 一方で、ロドトスも女も着衣に乱れはない。
 女はロドトスの首に手を回しているが、ロドトスは女の頭をわしづかみにしているだけ。

 なのに、女は快感に身を震わせる。

 オルティアは入り口に立ったままそれを見守った。
 おぞましさ――恐怖を覚えた。

 彼女が恐怖を覚えたのは、これに(、、、)遭遇したのがはじめてではないからだ。
 だから、この先どうなるのかも知っている。
 ちらっと玉座の後ろに突き立てられている魔剣エレノアをみた。

 エレノアはまるで笑っているかのように、刀身が波打っている。

 しばらくすると、女はつま先をピーンと伸ばして、それからぐったりと四肢を投げ出す。

 ――と思いきや、びくりとけいれんし始めた。
 自分の喉を両手で掴み、顔をかきむしって、苦痛に悶える。
 それもほんのわずかの間に過ぎない、ほんの一分足らずで、女は白目を剥いて絶命した。

 ロドトスの口角が満悦にゆがんだ。

 頭のてっぺんをわしづかみにしただけで性的快楽を与えつつ、その後命を吸い上げる行為。
 ロドトスではなく、魔剣エレノアがさせている行為。

 ロドトスは完全にエレノアに支配されていった。
 こうして魔の快楽と命のやりとりを繰り返す度に、オルティアはロドトスの魂が濁っていくのを感じていた。

 今まではそれを食い止めるためにやってきたが。

「もう……限界ね」

 オルティアはぎゅっと目をつぶり、歯ぎしりして、意を決して歩き出す。
 背後の門がゆっくりと閉じていく中、玉座にむかう。

「来たかオルティア、オリビア討伐はどうなった」
「話があるの――エレノア」

 ロドトスは一瞬きょとんとした。
 魔剣に支配された人間にありがちな濁った目を細めて、オルティアとじっと見つめる。

 直後、口調が変わる。
 ロドトスであって、ロドトスではない口調に。

「なんだ、われに話とは」
「彼を解放してほしい」
「何を」

 ロドトス――エレノアは口角をゆがめた。

「これはわれとこやつの契約だ。地上をとらせてやる代わりに後半の人生、その肉体をわれがもらい受ける。そういう契約だ」
「……」
「貴様らが何かをしているのか知っている、何をしようとわれからこやつを引き離せぬのをしっているから、あえて見逃してやっているだけだ」
「やはり手のひらの上だったのね」
「余計な事をかんがえるな、貴様はヤツの功績を享受するがいい。契約には貴様は入っていないのだからな」
「あなたの肉体と引き換えなら?」
「……なんだと」

 エレノアの顔色が変わった。
 話の主導権はオルティアに渡った。

「このままあなたに支配されれば、ロドトスの魂は汚れきって、未来永劫生まれ変わることすらできなくなる」
「そういう契約だ。それよりも肉体と引き換えとはなんだ」

 エレノアはイライラした様子でオルティアをせっついた。
 オルティアは無表情のまま、懐からガラスの瓶を取り出した。
 瓶の中は極彩色の液体が入っている。

「これを飲めばあなたは肉体を得ることが出来ます。かりそめではない、自分の肉体を」
「馬鹿な! そんなものがこの世に――」
「試せばわかることだわ」

 オルティアは静かに言い切った、逆にエレノアは黙らされてしまった。
 やがて、長い沈黙の後。

「ロドトスを解放すればいいのか?」

 聞くエレノアに、オルティアは微苦笑した。

「その時はもう、彼の肉体なんてどうでもいいって思うようになってるはず」
「むっ」

 エレノアはその永き命の果てで、人を超えた知性を身につけたものだ。
 オルティアが言わんとする事はすぐに理解し、同時に――少なくともオルティアにとっては――それが本物であると理解した。

「いいだろう、よこせ」

 オルティアは近づき、ガラスの瓶を渡した。

「これをどうすればいい」
「飲み干す、それだけよ」
「……」
「迷うのはいいけど、せめてロドトスの浸食を止めた上でまよって」
「ええい、いちいち本物だと主張しなくてもよいわ!」

 エレノアはいらいらした様子で言って、そのまま瓶を空けて、極彩色の液体をぐいっと飲み干した。

 どっくん!

 オルティアにも聞こえる程の鼓動が響き渡った。
 エレノア――ロドトスは苦しそうにうずくまり、やがて、体が分裂した。

 元となった青年――皇帝ロドトスはそのままに、もう片方は漆黒のドレスにマントをまとった、凜然とした顔の少女だった。

「そんな姿だったのね」

 オルティアは無感動につぶやいた。
 それとは対照的に、エレノアは自分の手を、体を、全身をくまなく見回して、わなわなと歓喜に震えていた。

「肉体だ! われの肉体だ!」
「ええ」
「力もふるえる! ふ、ふふ、ふははははは」
「約束通り、ロドトスを解放して」
「その前に聞かせろオルティア、この肉体は期限は? 寿命はどうなっている」
「不老、しかし不死ではない」
「充分だ!」

 エレノアは天を仰いで大笑いした。
 そして手をかざすと、床に倒れたままのロドトスの顔色が変わった。

 魔剣に支配されていた禍々しさが消え、代わりに血色のない、蒼白な顔色になった。

 ロドトスの魂が解き放たれたことを、オルティアは、ほっとした様な、複雑な表情をするのだった。

     ☆

 エレノアが上機嫌で外に飛び出し、どこかへ消えていったあと。
 オルティアはその場に残って、ロドトスの頭を膝の上に載せた。

 ロドトスは既に息絶えている。
 長い間魔剣に支配され、体をむしばまれてボロボロになっていた。
 エレノアが出て行った瞬間、そのまま絶命してしまったのだ。

 そんなロドトスの体から光を放つ魂が抜けて出てきた。
 オルティアはそれをいったん手のひらに載せてから、手を掲げて空に送り出す。
 魂は、ゆっくりと空に昇っていく。

「次は、普通の人間として生まれなさい。もう、あんなのと運命が交錯しないような普通の人間に」

 オルティアは魂を見送った。
 弱々しくも、しかし光を放つ魂は、ギリギリでロドトスを救えた事を意味していた。

 見送った後、上機嫌でさっていったエレノアの姿を思い出す。
 漆黒のドレスにマント、全身から発散する邪悪な気配。
 幼い少女の姿ながらも、その見た目はまるで「魔王」という言葉を想起させるものだった。

「不老だけど、不死ではない」

 オルティアはつぶやく。
 脳裏にもう一人、邪悪の気配がほとんどしない漆黒のオーラを使いこなす男の姿を思い出す。
 未来の自分が信じて、気に入った男。

「その意味をわかってるよね」

 オルティアは、自分を(、、、)信じようと思った。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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