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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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197.もっとも邪悪な存在

 山ウシを倒した後、タニアの家に向かって再出発した。

 先頭に案内するタニア、そしてイオとひかりが並んで歩く。
 おれは山ウシを担いで、一番後ろにくっついていく。

 山ウシを担いでるのは、せっかくの獲物だから、今夜の飯に持っていく事にしたからだ。
 フィオナの山ウシ焼きめしを作ろうかって考えてる。

 先頭で案内するタニアはさっきからずっと頬をそめたまま、何度もちらちらとおれをみてくる。
 そんな彼女について行きながら、こっちの(、、、、)のタニアを呼び出して話を聞いた。

「あれはお前だよな」
(わからない、多分そうだとおもうんけど)

 メイド幽霊のタニアは、生きてる方のタニアに比べてかなり明るい性格だった。
 明るくて可愛らしくて、何かにつけてはおどおどしてるあっちのタニアと対照的だ。

 でも顔は一緒だ。
 よく似てる他人という訳じゃなくて、何かが違う本人。
 そんなイメージがする二人のタニアだが、当の本人もわからないと言う。。

「多分?」
(他人とは思えないんです。多分あたしだけど、生きてる時の事はあんまり覚えてないの。だからわかんない)
「そうなのか」
(うん、だって気がついたらカケルに助けられてたもん。屋敷にいるときの事だってぼんやりとしか覚えてないくらいだし)
「そうか。お前もか」

 エレノアもタニアも、この過去の世界で再会――出会った二人とも記憶にないという。
 何なんだろうな、これ。

 エレノアにデコピンして、肩をすくめた。

「まあ、こっちはいい歳だから仕方ないけど」
(われをもうろく婆あつかいするな)
「でもおぼえてないんだろ」
(……)

 ふてくされた気配が伝わってきた。
 覚えてない事を指摘されるとなにも言い返せないみたいだ。

「ちなみにお前はどう思う? あれはタニア本人なのか?」
(魂の色は一緒だ)
「へえ?」
(そういう意味では間違いなく本人だ)
「ますます謎がふかまったな」

 エレノアみたいに唯一無二の存在ならわかりやすいのに。
 と、そんな事を思いつつ、タニアについていった。

     ☆

 連れてこられたタニアのほとんど山の中にあった。
 村からだいぶ離れた山の中。
 辺鄙なところにある、作りがシンプルな家。

 建物の作りもシンプルなら、中も貧相だった。
 家具らしい家具はほとんどなくて、慎ましくひっそり生きてる、そんなイメージを受けた。

 山ウシはかなりのごちそうになった。
 冒険者歴が長いイオが美味く調理してくれて、エレノアをのぞいた四人で美味しく食べた。
 食後、ひかりは早々におねむになって、イオがつきそって一緒に寝た。

 二人が寝た後で、タニアがおずおず切り出した。

「あの……ひかりちゃんってカケルさんの娘さん……ですか」
「そうだ。かわいかろう?」
(親ばかも大概にしろ)

 ひかりは可愛い、これは譲れんところだ。

「は、はい。すごく可愛いです」
「うんうん」
「その……じゃあイオさんが奥さん……ですか?」
「うん? いや違う」
「え? でも……」

 タニアはおれと、寝てるイオとひかりを順に見ていった。
 なるほど、そういう勘違いか。
 おれとイオが夫婦で、ひかりが二人の愛娘。そんな風に見えたんだな。

「違う。イオは妻じゃない」
「え? じゃあ……?」

 イオとはどういう関係になるんだろうな。
 ある日いきなりパーティーに入れてっていってきて、その後一緒に冒険したり戦場に出たりしたから。

「仲間、が一番近いのかもな」
「仲間……」

 その二文字を舌の上で転がして、今度はおれとイオを交互に見比べる。

「……わたしにもチャンスが」

 蚊の鳴くような声でつぶやくタニア。
 そういう意味で聞いてきたのか。
 それなら普通にある、と、答えてやりたかったが。

 おれは横をちらっと見た。
 話を聞いた後、ずっと隣で浮かんでるメイド幽霊タニアの方を見た。

 彼女をみてると、言いたい事が自然と脳裏に浮かんだ。
 おれは人間の方のタニアをまっすぐ見つめて、言った。

「お前に会いたかった」
「……え?」
「ずっと、こうしたいと思った」

 手をつかんで、ぐいっと引っ張った。
 バランスを崩してきたタニアを抱き留めた。

「あっ……」

 小さい悲鳴を漏らしたが、タニアは拒まなかった。
 おれの腕の中で、服を――胸もとをぎゅっとつかんできた。

 幽霊タニアが横にやってきた。
 タニアの横に並んで、おれを見つめる。
 明るくてはつらつな顔が、切なく潤んでいる。

 タニア(幽霊)をみて、タニア(人間)の頭を撫でて、あごを摘まんでキスをした。
 タニアは拒まなかった。一瞬だけ硬直しただけ、そのまま力を抜いてキスを受け入れた。

「……わたし、ずっと諦めてました」
「諦め。なんでだ?」
「わたしが生まれるとき、お母さんが夢をみたらしいんです。お前の娘は呪われてる。499個の災厄をその身に受けて、死んだ後でも成仏出来なくて、この世界でもっとも邪悪な存在につかまって成仏出来ない娘だって」

 タニアの母親は予言師かなんかか?
 499個の災厄とやらはなんだか知らないが、死んだ後ともっとも邪悪な存在ってのはあってる。
 うん、あってる。

「実際いろいろ災厄に見舞われて、それで両親にも見捨てられて、ここで一人で暮らすようになって」
「なるほどな」
「だからずっと諦めてました……カケルさんがそれをきいて気味悪がるかもしれないですけど、でもわたし――」
「気にするな」
「え?」
「もっとも邪悪な存在とやら、おれがどうとでもしてやる。なんだったらそいつの尻を蹴っ飛ばしてやる」

 エレノアは空気を読んで、笑い声だけ伝えてきた。

「カケルさん……っ!」

 おれの言葉にタニアは感涙して、ますますおれにしがみついて、終いには泣き出したのだった。

     ☆

「ごめんなさい、みっともないところを見せてしまいました」
「気にするな」

 これまでも色々あったんだろう。
 タニアはおれの胸の中でわんわんと泣いた。
 イオとひかりを起こさないように、彼女に存分に泣かせてやるために、おれは彼女を抱きしめたまま、そっと家の外にでた。

 タニアは泣き止んだあと、自分の居場所に気づいてちょっと驚いた。

「いつの間に」
「もう大丈夫か」
「はい……ありがとうございます。カケルさんの言葉があれば、わたし――」
「いっとくが、言葉だけじゃないぞ」

「え?」
「おれを信じろ。もっとも邪悪なるなんとかはおれがなんとかしてやる」
「――はい、信じます」
「いい子だ」

 もう一度彼女を抱き寄せた。
 体を預けてくるタニア。
 魔法コテージをだして、そこで彼女を――って思っていたら。

「あそこに家があるぞ」
「聞いてみよう」

 誰かが近づいてきた。
 タニアは体を強ばらせて、ぱっと離れた。

 山の奥から二人組が現われて、明かりをもっとこっちに近づいてきた
 離れたタニアは恥じらいながらも、目をふしつつおれをちらちらと見る。
 とっとと二人組をやり過ごして、改めて彼女を――。

「すみません、ちょっと訪ねたいことがあるんだが」
「ここにマラトンの泉ってのがあるってきいたんですけど」

 男女の二人組だった。
 どっちも若く、微妙に顔が似ている。

「マラトンの泉なら山の反対側ですけど」

 この山に住んでるタニアが答えた。

「反対側?」
「山をぐるっと一周してきちゃったって事か」
「あの、マラトンの泉になんの用ですか? あそこって動物たちでも、魔物さえも近づかないよう神聖で、違う意味で危険な場所ですよ?」

 タニアは心配そうな顔で聞く。
 へえ、そういう所があるのか。

 それを聞いた二人組は怖じ気づくところか、逆に興奮気味の表情をうかべた。

「知ってる、だから行くんだ」
「ええ。マラトンの泉にいって、邪王ロドトスと――」
「魔剣エレノアを消滅させるために」

(なんだと)

 二人組の男女から、ちょっと聞き捨てならない言葉が飛び出てきた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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