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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

エレノア編

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196.未来図

「お前何者だ!」
「アカンサ様に失礼だぞ!」
「あやまれーっ!」

 一瞬静まりかえった後、村人が一斉におれをバッシングし出した。
 よっぽどこのアカンサっていう老婆を尊敬してるんだな。

 ありとあらゆる罵声がとんできて、イオとひかりは怯えておれの服をぎゅってつかんだ、エレノアは何もいわないけど面白がってるのが伝わっていた。
 当事者の一人、生きてる方のタニアはアワアワしていた。

 アカンサが手をすぅーとあげた、途端、村人達の罵声がとまった。
 すごいな、って思っていると、老婆に見つめられてる事に気づく。

 窪んだ眼窩、底の見えない瞳。
 そんな目で見つめられた。

「気をつけなされ、異邦人よ」

 アカンサがそう言うと、村人はがやがやしだした。
 さっきからみてると、老婆は占い師の類で、村人からものすごい信頼されている。
 しかも、だれでもみてもらえる訳じゃない。

 それがおれを実質うらなう事になった。
 村人からすれば、暴言を吐いた人間をみて、忠告までした。
 ざわつくのもムリはない。

 そんな外野をまとめて無視して、アカンサに聞き返した。
 異邦人、って呼び方が少しだけ引っかかったからだ。

「気をつけるって何を?」
「そなたの行く末は分からぬ」
「へえ?」
「何か大きな、底知れぬ闇に覆われている」
(くく、われに取り憑かれているのだからな)

 エレノアはますます面白がった。
 大きな闇……まあこいつのせいだな。

「だのに」
「うん?」
「十が吉で凶はなし。凶がなくて全てが吉。………………ありえぬ事だ」

 まわりのざわざわが大きくなった。
 それをいったアカンサは首を振った。
 そんなのばからしい、自分で見えたものをも否定しようとしてるように見える。

 エレノアのせいで迷わせてしまったみたいだな、ちょっとだけ申し訳ない気分になった。

     ☆

 老婆がどこかに立ち去った後、広場に集まった村人も次々と散っていった。
 残ったのはおれ達と、出会ったこの時代のタニアだけだ。

「あの……」
「うん?」
「慰めてくれてありがとうございます、おかげで気がちょっと楽になりました」

 タニアはそう言って頭をさげた。
 まだちょっと顔が切なげで、痛々しい感じだ。

「慰めじゃない、おれは事実を言ったまでだ」
「え? 事実って……」
「お前、タニアなんだろ」
「はい……タニアって言いますけど……」
「タニア・チチアキス。氷の魔法は使えるよな」
「え? ちょ、ちょっとだけ。どうして知ってるんですか? 水滴を一粒二粒凍らせる程度で使えないから、誰にも言ったことないのに……」

 タニアは、信じられないものをみた様な顔をした。
 そんな彼女をみて、おれは出会った時の事を思い出していた。

     ☆

 タニア・チチアキス。
 最初にあったのは屋敷だった。

 格安で買った屋敷は地縛霊が住み着いてる幽霊屋敷だった。
 その幽霊は生者を襲い、氷の魔法をばんばん撃ってくる悪霊だった。

 一度はそれを退治した、それでいなくなったのだと思った。
 しかしエレノアを手に入れた後、エレノアの中から死霊の軍勢を追い出したあと、代わりに彼女が入って来た。
 メイド服を来た可愛らしい幽霊、屋敷に縛られていた彼女はエレノアという新たな依り代を得た。
 そして正気に戻った、はきはきと喋る、明るい幽霊になった。

 その後、普通の人間には見えないし触れない事を利用して、数々の戦場で斥候として役立った。

 そんな彼女の生前の姿と出会うのは、エレノア以上に驚きの出来事だった。

     ☆

 タニアの家に招かれた。
 ……が、彼女の後ろについていくと、何故か村をでた。
 あぜ道をとおって、田んぼさえもなくなった野外にでた。

「タニア、どこに行くんだ?」
「わたしの家です、もうすぐそこですから」
「村の中には住んでないのか?」
「……はい」

 頷くタニア。

(一瞬間があったな。なにか事情があるようだ)

 そうみたいだ。
 そこから話を聞こうか、なんて思ってると。

「おとーさん、何かくるよ」
「カケルさん、あれ」

 イオが指さす先をみた。
 人気のなくなった野外、どこからともなく巨大な山ウシが現われた。
 遠目からはウシに見えるが、その割には立派なたてがみに鋭い牙が生えてる、凶暴な肉食獣のような見た目だ。

「に、逃げましょう!」

 タニアは慌てて来た道を引き返そうとした。
 彼女の手をつかんで、引き留める。

「大丈夫だ」
「でも! あれは山ウシです。すごく凶暴な生き物で、目をつけられたら――」
「大丈夫だ。みてろ」

 おれはエレノアに手をかけた。
 久しぶりの山ウシ――そうだな今日の晩飯にするか。

「カケルさん」
「うん?」
「あたしに任せて」
「そうか」

 エレノアから手を離して、イオに任せた。
 彼女は杖を持って、前にでた。
 肩で風を切って歩く姿は綺麗だった。

 杖を構えて、呪文を詠唱する。
 直後、山ウシの頭上に黒い雨雲が現われた、轟音と共に稲妻が落ちた。
 一撃で山ウシを仕留めたイオ。

 凜々しい後ろ姿だ――と思っていたら、彼女はちら、とおれを見た。

(いじらしいな)
「うん?」
(失点を取り戻そうとしているのだな、あれは。ロドトスの時腰を抜かしてたから、ここで貴様にいいところを見せたいのだろう)
「なるほど」

 そんな事は別にしなくてもいいんだがな……がそういうことなら。

「よくやったイオ。いつもながら、お前の雷のキレはみててほれぼれする」
「――っ。そ、そんなことないです」

 顔を赤く染めて、まんざらでもなさそうに顔をほころばせた。

(褒め方がエグい、この女殺しが)
「思った事を言ったまでだ」
(くくく)

 楽しげに笑うエレノア、ほめられてニヤニヤするイオ。
 一方、タニアは絶句していた。

 山ウシと、それを一撃で倒したイオを見比べる。
 目の前の光景に目を疑う表情をしてから、その表情は徐々にイオへの憧れに変わる。
 顔を赤くして、イオを見つめる。
 まるでジュリアとアグネをみてるかのようだ。こりゃ惚れたか?

「すごい……わたしもあんな風になれたら……」
「なれるさ」
「え?」
「お前もああなれる」
「そんな……わたしなんて……」
「なれる」

 有無を言わさない口調でそれを突きつけた。

「タニア、お前もああなれる。おれが保証する」
「……わたし、も?」
「ああ」

 はっきり頷いてやると、タニアはイオを見つめた時以上に顔を赤くして、うつむいてしまうのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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