挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

192/288

191.あたしバカだから

 エバルの一件の後、テリオス軍は加速度に敗退していった。
 一つの街を燃やし尽くし、住民を無理矢理徴用する暴挙はたちまちアイギナ全土に広がり、ただでさえ離れた民心が決定的になくなった。

 国王軍は行く先々で迎え入れられ、無用な戦いを避けることが出来た。
 それだけではなかった。

 国王と王女のために戦いたい、聖剣クシフォスとともに戦いたい、悪逆非道なテリオスを討ちたい。
 様々な考えを持った人間が集まって、国王軍の数は雪だるま式に膨らみあがった。

 王都レティムに迫ったときには、総兵力五万という威容を誇るようになっていて、逆にテリオス軍は三千にも満たなかった。

 勝敗はもはや誰の目にもあきらかである。

 そして、たった一度の総攻撃で。
 アイギナ国王が――正統なる支配者が戻ったことで、残った三千人からも寝返った者がでて、いざという時は一年以上は籠城出来るレティムの門はあっさり開き、国王軍は一斉にレティムになだれ込んだのだった。

     ☆


「テリオス!」
「来たか、小娘」

 夏の宮殿、謁見の間。
 玉座に腰掛けるテリオスはセレーネが最後にあったときと違う格好をしていた。

 王冠をかぶり、マントを身につけ。
 国王にのみ許される格好をして、玉座にふんぞりかえっていた。

「そこからどいて! そこはあんたがすわっていい場所じゃない!」
「なら誰がふさわしいというのだ? まさか、あの偽物だとはいうまいな」
「うっ」

 セレーネはうめいた。
 確かにあの偽国王――カケルがふさわしいかと聞かれれば、もっと違うと言わざるをえない。

 セレーネはカケルを憧れている、崇拝していると言っていい。
 一方で、アイギナを愛し、アイギナをよりよくしていく事を考える彼女はそれを否定出来なかった。

 が、迷うほどではない。

「それでもあんたじゃない」

 静かに言い放つセレーネ。
 そう、彼じゃない。メリナではあり得ない。

「自分の欲と保身のために街を焼き尽くしたあんたなんかもっとふさわしくない」
「だったら誰がふさわしいというのだ。まさか自分がなどど言うまいな、かんしゃく持ちのわがまま姫よ」
「うん、あたしする」
「なっ――」
「あたしが――総理王大臣になってする」
「ムリだ、お前にはな」

「だったらみんなに助けてもらう」
「なに?」
「わからない事は一生懸命勉強する、勉強してもまだわからない事はわかる人に助けてもらう。あたしは、ただ――」

 セレーネはメリナを見つめて、迷いのない口調で宣言する。

     ☆

「――迷わないでいればいい」

 月と雲と風のない夜。
 レティム攻撃を明日に控えた、魔法コテージの中。

 おれは不安そうな顔をするセレーネにそう言った。

「迷わないでいる?」
「前にもいったが、お前自身の能力が足りなければまわりの人間の力を借りればいいって」
「うん」
「つまりお前の元で大勢の人間が動くって訳だ。いいか、大勢の人間だぞ。そんな大勢の人間が動くんだ、トップにいる人間が迷ってふらふらしてたらどうなると思う?

「えっと……」

「人間で考えて見ろ、左足が前にいく、でも右足は後ろに行っちゃう」
「こ、転ぶ、かな」
「そういうことだ。お前は迷わずに、常に自分が進む方向性を示しておけばいい。それだけでいい」

「それだけでいいの?」
「それだけでいい」
「でも……」

 うつむくセレーネ。
 浮かない顔をしている。
 言いたい事は分かるけど、それでも……って顔だ。

「あたし、ダメっ子だから」
「ふむ。ならおまじないをしてやろう」
「おまじない?」

「ヘレネーとイリスを知ってるな?」
「うん」
「リカとアウラは?」
「知ってる」
「オルティアとデルフィナは?」
「ものすごくすごい人」

 挙げた名前は、セレーネにつけた家庭教師達だ。
 セレーネは名前を聞く度に瞳に尊敬の色がよぎる。

「そいつらには一つ共通点がある」
「え? それってなに?」

 好奇心で身を乗り出すセレーネの腰に手を回して、唇を塞いだ。

 唇を押しつけるキス。
 彼女は驚き、体が硬直した。

「全員おれの女だ」
「う、うん。それは知ってる――」
「今からお前もおれの女だ」
「えええええ!? でもあたしは――」
「おれの女だからデキる女なのか、デキる女だからおれの女になったのか。どっちだと思う?」
「それは……デキる女だから?」
「両方だ」
「え」
「両方。つまりだ、お前はもうデキる女で、おれの女でいる限りもっともっと成長して、デキるいい女になるって事だ」
「……」
「それでも自分がダメだと思うか? おれを信じられないか?」

 セレーネはプルプル首を振った。

「信じる! あたし、ショウを信じる。ショウを信じて、迷わないいい女になる!」
「いい子だ」

 彼女を抱き寄せて、もう一度キスをした。
 今度は脱力して、おれに体を預けてきた。

「まずは明日だ。見ててやるから、しっかりやってこい」
「うん!」

     ☆

 力強いキス、それいじょうに力強い言葉。
 カケルの唇から紡がれたものを脳裏に浮かべて、セレーネはテリオスをまっすぐにらみつけた。
 クシフォスを抜き放ち、赤く脈動する切っ先を突きつける。

「迷わない? はっ、言うに事をかいて」
「だったらもう言わない。お前はここで倒す。それだけだから」
「こざかしい。いいだろう、王家剣術指南役でさえ負かしたわたしの剣術を見せてやる」

 メリナはマントの下から剣を抜いた。
 両者、真っ向から向き合う。

 先に動いたのはセレーネだった。
 ……動けたのもセレーネだけだった。

 ナナ・カノー直伝の踏み込みと斬撃はメリナのそれを遥かに上回り、一撃で懐に潜り込んで、腰から真っ二つに斬った。

「な、ば、ばかな……こんな……」
「え?」

 驚愕するメリナ、そして当のセレーネも驚愕していた。

「よ、弱い……」

 とつぶやくセレーネ。
 彼女は未だに実感がない。

 ナナ・カノーに認められた彼女は、剣士としては既に一流、達人の域にいる。
 ナナはカケルの命令でしか動かない、ゴマをすったりお世辞なども言わない。
 ただ、思った事をいうだけ。

 一方のメリナは公爵である。王家剣術指南役に認められたといっても、そこに遠慮とごますりが多分に含まれている。
 持ち上げられていたただの人間だ。

 達人とただの人間、勝敗は当然の結果にしかならなかった。

 両断されたメリナは地面を這いつくばり、呪詛の言葉を吐いて、息絶えた。

「これで、終わった。かな」

 息をついて、クシフォスをおさめるセレーネ。
 メリナは死んだ、他の兵も続々と投降している。
 久しぶりに戻ってきた夏の宮殿で、セレーネは、この戦いが終わった事を実感した。

「あとは……ショウに……」

 昨日の事を思い出す、カケルがあげた女達の名前を思い出す。
 自分も……彼女達のようにカケルのものに……。
 胸がどきどきした、かつてない程高鳴った。
 そうだ、カケルに会いに行こう。
 彼女はそう思った。

 ――魔法が彼女めがけて飛んで来た!!!

 慌ててクシフォスを抜き放ち、拘束のための魔法を打ち払う。

 謁見の間にぞろぞろと兵士がなだれ込んできて、あっという間にセレーネを取り囲んだ。

「な、なにこれ。どういう事?」

 慌てるセレーネ、彼女は突然起きた事に対処できず、頭がパニックになりかかっていた。

 兵がなだれ込んできた入り口から一人の男が現われた。
 ぼろぼろの格好、やせこけた頬。

 手首の赤い痕はついさっきまで鎖につながれていた事を示している。
 男は――。

「久しぶりです、殿下」
「アブラアム! どこにいたの?」
「そんな事はそうでもいいのです。わたしがここに――うっ」

 アブラアムがふらつく、そばの兵士が慌てて支える。
 他の兵士も心配そうな表情を浮かべる。
 どうやら彼個人を慕っている兵士達のようだ。

 アブラアムは手をかざして兵士をどかせ、自分の足でたって、ふらつく足と反比例するくらい強い光を持った眼差しでセレーネを見た。

「わたしがここに来たのは殿下に一つだけお聞きしたい事があるから。殿下はこれから――」
「ごめんなさい!」
「――この国を、へ?」

 セレーネがパッと頭を下げた、腰を直角に折るほど頭を下げた。
 いきなりの事でアブラアムは間抜けな声を漏らしてしまった。
 まわりの兵士達も信じられないって顔をしている。

「で、殿下?」
「本当にごめんなさい! 昔、あなたに色々乱暴をしたり、わがまま言ったり。あの時のあたしは何もしらないバカだったの。ううん、いまもバカなのは変わらないけど――じゃなくて、だからごめんなさい!」
「えっと……その……」

 アブラアムは困り果てた、どうしたらいいのか分からなかった。

 王国軍が城内になだれ込んできたのを見計らって、彼の部下がメリナに投獄された彼を助け出した。
 助け出された彼はセレーネが戻ってきた事を知った。
 彼は思った。もし、セレーネが前のセレーネのままだったら、あのわがまま姫のままだったら。

 命を賭してても止める――殺さなければならない。
 そうして隙をうかがって、セレーネを包囲したのはよかった。
 が、彼女の反応は全くの予想外だった。
 アブラアムからすれば別人に見える程の変貌っぷりだ。

「本当にごめんなさい!」
「……殿下。一つだけ聞かせて下さい」

 なんとか落ち着きを取り戻したアブラアムが聞く。

「殿下はこれから、何をなさるおつもりですか?」
「総理王大臣になる!」

 それは、彼女がかつてアブラアムに語って、その方法の助言を求めたものと同じ言葉だ。
 そして、あの時語らなかった言葉も、アブラアムに告げた。

「総理王大臣になって、お父様がよくしたこの国をもっとよくする!」
「そうですか……」

 アブラアムは微笑んだ。
 一歩下がって、そのままセレーネに傅いた。

「数々のご無礼、お許し下さい。いかなる処分も受け入れます」
「だったらあたしを許して。そしてできたらあたしに協力して。あたしバカだから、やりたい事はわかるけどどうすればいいのか分からないの」
「承知いたしました。全身全霊を込めて尽くします」

 頭を下げるアブラアム、同時に、彼を慕う兵達は武器を下げた。

 今度こそ、戦いは終わったのである。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ